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屁理屈推理合戦withキャプ森
[205]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/10(火) 22:53:17 ID:LKwyGoHo 反町「――はぁ。一体俺は何を考えているんだ……!」 しかし同時に、反町は聡明な少年であった。黒い妄想を抱きこそすれど、決して実行には移さない。 それどころか、こうした妄想が何も生まないという事すらも知っていた。 反町「喉が渇いた。自動販売機で、ドリンクバーでも買って来ようかな……。 って、何言ってるんだ俺。自販機でドリンクバーなんて買える訳ないだろ。 はぁ……疲れてるのかな、俺。独り言ばかりは増えるし……」 ……しかし、大舞台である全国大会の決勝を前にして、少しばかりの気分転換は役に立ちそうになかった。 溜息をつくと、ふと自分の旅行用カバンが目に着く。 すると、反町は最近覚えてしまった、自分の後ろめたい欲求を叶えたくて堪らなくなった。 幸い、ここは一人部屋だ。自分がここで何をしていようとも、決して恥じる必要は無い――。 反町「自分でも気持ち悪い趣味だ、ってのは分かってるけど。やめられないんだよなぁ……」 そう呟きながら大き目の旅行鞄を漁る反町。その目的は如何わしい雑誌……ではなく。 近頃疲れた大人向けへの癒しとして百貨店に販売されるようになった、アリの巣観察キットだった。 反町は最近、小さめの観察キットを買い。日常でも良く持ち歩くようになっていた。 反町「最初はアリでも観察してれば気が楽になるかな、って思っただけだけど……」 しかし、今の反町の目的はアリの観察では無い。アリが目当てである事は間違いなかったが、 その利用方法が一般的な用途とは少しばかり違っていた。
[206]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/10(火) 22:54:44 ID:LKwyGoHo 反町「よし。今日はこいつと……こいつと……こいつだ」 アリの巣をほじくって、適当な働きアリを3匹ほど見繕うと、 机の上にティッシュを敷いて、アリを乗せる。こうするとアリの身体が良く見えるのだ。 しっかりと3匹ともに区別できるよう、細心の注意を払った上で、こう呼びかける。 反町「よし。お前の名前は、『日向小次郎』。真ん中のお前は『若島津健』。 それでフラフラしてるお前は、『吉良耕三』だ。良いな、分かったな」 アリ達「「「…………」」」 ――勿論、アリ達がそう呼びかけて何かをする訳でも無い。 しかし、この命名が反町にとって大事なおまじない――一種の『魔法』だった。 周囲から見てはアリと話すだけの行為だが、この魔法により反町の脳内ではこいつらが確かに、 『日向小次郎』、『若島津健』、『吉良耕三』となるのだ。反町は物言わぬアリ達に続ける。 反町「くそっ……! いつもいつも俺の事をコケにしやがって!! 日向ァ、お前はいつも俺にコーラを実費で買わせる上に、こないだも炭酸の吹いたコーラを飲ませようとしやがった! 若島津ゥ、お前は疲れている俺の背中を蹴り飛ばして、皆の見てる前で転ばせたよな。……畜生、舐めやがって! 吉良監督、いや吉良ァッ! 何が『心臓をぶち破るつもりでタックルしろ』だ! そんなの、反則指南なだけだろ!!」 アリ達「「「…………」」」 反町はこうしてアリ達を日向達に見立てて日頃の不満をぶつける事により、ストレスを発散させていた。 傍から見ては恐ろしいまでに寂しい行為だが、これが無ければ反町は今頃精神を病み(もう病んでるとか言わない)、 サッカーどころでは無かっただろう。アリ達は今や、反町の生命線と言っても良かった。 しかし、その時だった。
[207]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/10(火) 22:56:45 ID:??? アリ達「「「…………」」」 アリ達がティッシュの檻を抜け出し自分の腕を駆け上がろうとしている。 彼らを日向と見立てている反町にとって、これは反抗されたように思えて腹が立った。 反町「くそっ! アリまで俺の事を馬鹿にするのかっ! ……死ねぇえっ!」 ブンッ! ……ブチンッ! アリ達「「………」」 ――反町はアリの内一匹を握りこぶしで潰す。これは日向と名付けたアリだったか。 そして間髪入れずに、 アリ達「「………」」 反町「今ので一匹地面に落ちたか。なら俺のシュートを食らえっ!」 ガシッ、……グシャァァァッ! 床に落ちたアリ(これには若島津と名付けていた)を足で踏みつぶす。 普段は滅多にゴールを奪えない若島津にこうも容易く勝ってみせる自分は、 まるで絶不調でも11人を抜いてゴールを決める、シュートの魔王のようだと陶酔した。 反町「ようし、最後は吉良、お前だなァ。……それ、死ねッ! 死んでしまぇええぇぇぇえぇぇッ!」 アリ「……」 ブンッ、グシャアアアアアアアアアッ!! 最後に、そのまま上機嫌で残された吉良アリを指で潰す。 まるで神話の神々が持つ槍に刺されたかのように、その一撃は絶大だった。……アリにとっては。
[208]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/10(火) 23:03:09 ID:??? 反町「……はぁ。虚しい」 ……そして、吉良耕三を潰してから僅か数秒で陶酔感は消え、死にたくなるほどの絶望感が襲ってくる。 当たり前だ。こんな事をしたところで何も変わらない。 日向は先程ヘリで東京のヒューガー本社に向かい、今は恐らく会議中だろうし、 若島津は人間離れした機動力で、どこかの山奥で熊でも相手に修行中だろう。 吉良は……あの飲んだくれだ。どうせ大会会場の辺りの安居酒屋で引っかけているに違いない。 反町が『魔法』で何億匹のアリを日向達と見立てて殺そうとも、現実の彼らには一切影響しないのだ。 ――それでも。それでも、反町は止められないのだ。いくら周囲から見て惨めであっても、 いくら自身の行為が無益であると自覚し理解していても。 それでも、このアリ虐めだけが、今の反町の疲弊した精神を救う唯一の手段だったからだ。 反町「………………寝よう」 ストレスのせいか、最近はあまり眠れない。しかし、昔は眠る事は好きだった。眠ると夢を見れるから。 夢の中では、自分は強豪アルゼンチン相手に10−0で勝ってみせるシュートの魔王だったり。 可愛らしい容姿の神様に言い寄られるハーレムの中心だったり。自分でもびっくりするような凄い存在になれる。 ……たまにヒューガーの手によって毒の怪人に改造させられる悪夢も見るけど。 反町「……ふふ……。無限と毒の魔術師、ソリマチ・ベアトリウス・ユグドラシル卿……か。 なんだか、悪の天才魔術師みたいで、カッコいいな……」 しかし、今日彼が見れた夢はどうやら幸せな夢のようだった。 ――夢の中で反町は、いやソリマチ卿は輝き続ける。いつかは現実でも……とは、少し欲張り過ぎだろうか。 とりあえず今は、目覚めの朝まで良い夢見て、ゆっくり休めよ。反町……。 **************************************
[209]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/10(火) 23:07:48 ID:??? 『反町一樹が自室で殺害した日向小次郎、若島津健、吉良耕三とは彼がそう名付けたペットのアリの事を指す。 反町は人間の日向、若島津、吉良には一切関与していない為、彼らの生存は当然の事である』 ……と、言ったところで一旦ここまでです。
[210]森崎名無しさん:2017/01/11(水) 12:25:16 ID:??? ソリマチ卿は最初のインパクトが凄まじかったからね そりゃ信徒が出現しますわ では、我らが偉大なる毒々しいソリマチ卿を崇めるのだ乙
[211]森崎名無しさん:2017/01/11(水) 13:16:30 ID:??? 我らが偉大なる毒々しいソリマチ卿よ永遠なれ乙 次も期待してます
[212]森崎名無しさん:2017/01/11(水) 20:48:11 ID:??? 勝負には勝ったけど 信徒を獲得したソリマチ卿にある意味負けたか
[213]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/12(木) 00:56:07 ID:qD5desek >>210 ソリマチ乙ありがとうございます。これだけ崇められたらもはや魔法ですね… 普段の言いたい事を言えない感とのギャップが良いのでしょうかw >>211 ソリマチ乙ありがとうございます。 次回は少し難解な謎&ミステリー寄りなトリックに挑戦したいと思っています。 ただ、ちょっと難解なのでもう少し時間がかかりそうです(汗) 他にも、『ベアトリーチェの密室定義』について解説したいと思っているので、 気長に待って頂ければ幸いです。 >>212 アルゼンチン・ラプュタ文明の末裔パルスダ・アア・メガ・ラプュタ王子とかネタ自体は色々ありますが、 彼らがソリマチ卿を超えられるかは微妙ですね…
[214]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/12(木) 01:02:59 ID:??? ベアトリーチェ「……勝ったな」 森崎「ああ。何とかな」 既に周囲の魔力は消え去り。反町が宿舎に空けた大穴も、何もかもが元通りになっていた。 戦いの内に夜は明けて、白みがかった空が森崎と魔女を優しく照らす。 第二の魔女のゲームにおいても、森崎は勝利した。 森崎「魔法の散り際に、幸薄そうな奴がアリを踏みつけて楽しんでる姿が見えたけど……。 ――あれが、この事件の『真相』って奴だったのか?」 ベアトリーチェ「うむ。魔法が存在しうる猫箱の中身は、今や人間の手によって暴かれた。 そなたが見たという光景こそが、魔法幻想の向こう側にある、一なる真実よ」 魔女ベアトリーチェは未だ不定形の蝶の姿を取ったまま、寂し気に呟く。 世界の崩壊を食い止める立場上、今回は人間側に味方した彼女だったが、 哀れで惨めなソリマチ卿の――いや、反町一樹の『真実』を目にする事は、 真実を幻想で包み隠す事を至上の喜びとする魔女にとっては、辛かったのかもしれない。 その真実の痛みを感じ、ベアトリーチェは……ベアトは思い出す。自分が何故、魔法を使おうと思ったのか。 ベアトリーチェ「……あのさァ、森崎」 森崎「何だよ。気持ち悪い声出して……。そんなに説教が嫌か?」 戦いが終わる前、森崎はベアトに対して説教をしてやりたいと思っていた。 人間の生死をゲームとして嘲笑う事が、いかな冒涜であるかを伝えたかった。 しかし……ベアトに対してそう言いながらも、今の森崎は彼女を糾弾する気が失せていた。 故に、暫し沈黙が続く。その中で、不意にベアトが口火を切った。 ベアトリーチェ「すまぬ。……最初のゲーム。妾は、やり過ぎた」
[215]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/12(木) 01:07:48 ID:??? 人間の少女としての姿が保てぬゆえ、ベアトがどのような表情をしているのかは、森崎には読み取れない。 しかし、少なくとも彼女は純粋な想いからそう言っているのだと。そう感じる事は出来た。 ベアトリーチェ「妾はただ、自分の存在を認めて貰いたかった。 何故なら、そうでなくては、妾はこの世界に存在し続けられないから。 ――先のソリマチ卿のゲーム盤とその真相を見て分かったろう? 憎む人物を無限に殺せる毒の魔術師ソリマチ卿は、 彼の事を理解せぬ第三者に見られれば、あっという間に消え失せる。 何故なら、第三者にとっては、ソリマチ卿の魔法は魔法でなく。単なるアリ虐めに過ぎぬからだ。 ……しかし。そのアリ虐めで、反町一樹は精神を保ち、生きようとする気力を持ち続けた。 妾は、こうした生きる為の魔法すらも、無意味な殺戮で穢そうとしていたようだ」 森崎「……それは、何となく分かったよ。お前も、ソリマチ卿も。 自分の魔法を認めて欲しい。自分の存在を認めて欲しい。それで必死なんだって事は」 森崎とて、魔女の言い分に納得できずとも、理屈としては既に理解していた。 魔女のゲーム――これは魔女にとっては自身の存在承認の為に必要な儀式であるが、 一方で、真実を暴き出す人間による魔女の処刑にもなり得るのだ。 そうした意味では、魔女もまた、生命を投げ出しゲームに挑戦していると言え。 仮にその際に人間の生命を奪ったとしても、その条件は対等とも考えられる。 森崎「……でも、俺は人間だ。魔女側の理屈は分かっても納得できねえ。 毎日を頑張ってる人間を、自分の存在の為とは言え殺すって事は……本当に重い事なんだ。 だから――一つだけ言っておく。仮にお前が今後俺にゲームを挑んで来るとしても。 もう二度と、残酷な殺し方はするな。……人間を、軽んじるな」 しかし、対等であるからこそ、魔女は人間の尊厳を重んじるべきだ。そう森崎は主張する。 ベアトもまた、先のゲーム盤を通してそうした森崎の主張を理解していた。 魔女の魔法が奇跡であるとするならば。如何に魔法を否定されても、惨めな真相を暴かれても、 それでも尚頑張って日々を生きる反町一樹もまた奇跡。彼の生き様もまた、本来ベアトにとって尊い筈なのだ。
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0ch BBS 2007-01-24