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屁理屈推理合戦withキャプ森
[3]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:33:53 ID:??? 〜198×年 南葛中・部室〜 森崎「明日は木田中との練習試合か。奴らの実力自体は取るに足らんが、 ここで翼との違いを見せつけなくては、俺のキャプテン就任は遠ざかってしまうな……」 練習後の部室で、森崎有三はブツブツと独り言ちていた。割といつもの事である。 森崎「畜生、翼の奴め! なーにが高校選抜との合同合宿だ。なーにが九州だ!! 俺が地道にチームの底力を上げようと努力している間に、勝手に自分だけ特別練習に参加してた奴が、 どうしてこうも人気が集まるんだよ! クソがっ!!」 そして今日の事案は当然、合宿を終えて一躍周囲の空気を持って行った永遠の怨敵・大空翼についてだった。 キャプテン就任を目指す森崎にとって、この大空翼は当然最大のライバルである。 中学に入学してから今まで、森崎は自らの実力を磨き上げる傍ら、 骨川等の部下を使って翼の妨害工作に勤しんで来たが、今日の様子を見て分かる通り、その成果は思わしくない。 森崎「とにかくも、新一年生の浮動票をどう集めるかだな……。 まあ、王道は明日の練習試合で実力を見せつける事なんだが、それだけじゃパンチが弱いかもしれん。 何か良い手は無いもんか……ん?」 そんな時だった。森崎が散らかった部室の床にある一冊の本を見つけたのは。 森崎「これは……詩編か。タイトルは……『最愛の魔女・ベアトリーチェに捧ぐ』……?」 羊皮紙で出来たおどろおどろしい装丁の本には、日本語でそうタイトルが書かれている。 そして、その本を開いてみると、中には如何わしい魔法陣やら呪いの類やらが、びっしりと解説付きで書かれていた。 ゲームやおとぎ話であるような、魔法の本そのものが森崎の手元にあった。
[4]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:35:14 ID:??? 森崎「なんだ、こりゃ。誰の趣味だよ、気持ちわりい」 森崎はそう言って、この本を捨てようとするが――ふと思い立つ。 森崎「いや待てよ。前テレビで見た事がある。こういう本に書いてある黒魔術で、 嫌いな相手を腹痛にしたり、ここぞという時に失敗させたりできるとかできんとか……そうだ! この本に書いてある呪文で翼を呪えば、明日の練習試合で俺が目立てるじゃないか!!」 黒魔術に頼る程森崎は狂っているのかというツッコミがあるかもしれないが、 本編的に考えても森崎は5人で手を繋いでぐるぐると回り大竜巻を発生させたりしている。 (参考:http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1149163758/897) そんな森崎が翼への妨害手段として黒魔術を取り入れる事は何ら不思議ではなかった。 というワケで、森崎はさっそく本の冒頭に書いてあったそれらしい呪文を朗読してみた。 森崎「えーっと……」
[5]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:36:36 ID:??? 懐かしき、故郷を貫く鮎の川。 黄金郷を目指す者よ、これを下りて鍵を探せ。 川を下れば、やがて里あり。 その里にて二人が口にし岸を探れ。 そこに黄金郷への鍵が眠る。 鍵を手にせし者は、以下に従いて黄金郷へ旅立つべし。 第一の晩に、鍵の選びし六人を生け贄に捧げよ。 第二の晩に、残されし者は寄り添う二人を引き裂け。 第三の晩に、残されし者は誉れ高き我が名を讃えよ。 第四の晩に、頭を抉りて殺せ。 第五の晩に、胸を抉りて殺せ。 第六の晩に、腹を抉りて殺せ。 第七の晩に、膝を抉りて殺せ。 第八の晩に、足を抉りて殺せ。 第九の晩に、魔女は蘇り、誰も生き残れはしない。 第十の晩に、旅は終わり、黄金の郷に至るだろう。 魔女は賢者を讃え、四つの宝を授けるだろう。 一つは、黄金郷の全ての黄金。 一つは、全ての死者の魂を蘇らせ。 一つは、失った愛すらも蘇らせる。 一つは、魔女を永遠に眠りにつかせよう。 安らかに眠れ、我が最愛の魔女ベアトリーチェ。
[6]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:39:16 ID:??? 森崎「……意味不明な癖して、嫌に物騒なフレーズだな、オイ」 無人の部室で一人ツッコミをしながら、森崎は呪文を読み上げた。 説明書き等は全く読んでいないので、これで翼がどうなるかは全く分からないが、 まあ、色々殺せとか書いてある以上結構効果はあるだろう……と、そこそこの満足感を抱きつつ、 そのまま家に帰ろうか、と立ち上がったその時だった。 パァァッ……! 森崎「!?」 本から、一匹の蝶々が現れる。その蝶は淡い金色の光を放っていた。 森崎が目を疑ううちに、黄金の蝶は一匹、また一匹と数を増やしていく。 やがて夕方の部室中を埋め尽くさんまでに広がると、そこから収束していき――。 フワァァッ……! 金髪の女性「くっくっく。その碑文を聞くのは実に久しぶりだ……」 森崎「お、おめえ……何者だ!?」 サッカー部の部室に似つかわしくない黒のドレスを纏った、美しい魔女がそこに現れた。 長い髪は後ろで優雅に結び止め、古風な金の煙管を片手に持った彼女は、 その恐ろしく端正な顔を比較的下品に歪ませ、くつくつと笑い声を立てている。 金髪の女性「そこに名前が書いてあるだろう。ベアトリーチェ……。 それが妾の名。千年を生きた黄金の魔女にして無限の魔女。 煉獄の七大悪魔を統べ、あらゆる魔女と盟約を交わした夜の女王よ」
[7]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:40:30 ID:??? 森崎「……頭がおかしいのか?」 ベアトリーチェと名乗った女性に対し、森崎は傲然と食ってかかる。 ベアトリーチェ「くっくくくっ……! まあ、そういう感想となるのも仕方ない。 なんせニンゲンの世界では御伽噺にしか現れない魔女が、間違いなくここに居るのだからなァ。 しかし、このまま狂人扱いばかりされるのは妾としても気に喰わん。 そうだな……。ならば、一つお前に魔法を見せてやろうか」 森崎「だったら翼の奴を魔法で呪殺してくれよ。そんくらい魔女サマなら簡単だろ?」 森崎はこの時、突然自分の目の前に現れた女に対しても、そこまで驚かなかった。 何せ小学生時代にも、突然黒い球体のおかれた謎のワンルームマンションに拉致されたり、 小太りな男から不思議なアイテムを貰ったり等不思議な夢を沢山見ている。 だからこれも夢の一種か何かだろう……と、落ち着き払って魔女と接する事が出来ていた。 ベアトリーチェ「ああ、その位簡単だ。魔女の呪殺は基礎の基礎。 呪殺など妾はもう、物心ついた頃からできていたぞ」 森崎「はいはい。御託は良いからやってくれよ。それともMP切れか?」 ベアトリーチェ「まあ待て……そらっ!」 パァァァッ……ブワァァ。 ベアトリーチェはそう言って黄金の蝶の群れを呼び出し、部室の窓から外へと放った。 翼は恐らく今頃、グラウンドで自主トレーニングでもしているだろうが、 あんな蝶々で翼が殺せるとは到底思えない。というかあれで死ぬなら自分が既に死んでいる。
[8]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:42:05 ID:??? 森崎「……で。結果が分かるのは100年後か?」 ベアトリーチェ「全く、気の短い男よのぉ。まあ、今に見ておれ」 にも拘わらず、ベアトリーチェは自信満々な笑みを崩さない。 森崎はこの時、さっさと覚めねえかなこの夢……位の感想しか抱いていなかったが ――そこから先の出来事は、まさしく魔法だった。 ガタッ……! 滝「おう、森崎! そこに居たのか!」 石崎「あ、あわ、あわわわ……!?」 森崎「……あん? どうしたんだよ、珍しい組み合わせして」 滝「どうもこうも無い! 翼が……翼が……! 兎に角。人手が居るんだ、用具室に来てくれ!!」
[9]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:43:29 ID:??? 〜南葛中グラウンド・用具室〜 森崎「マジかよ……」 森崎は自分の頬をつねった。これで 752 回目だった。 石崎「つ、翼……つばさ、つばさぁぁぁぁっ! うおおおおおっ!!」 滝「……死因は分からない。だけど、確かに翼は死んでいる」 石崎と滝に案内されて用具室の鍵を破ると、……そこには、滝の言う通りだ。翼が死んでいた。 彼の宿敵であり永遠のライバルは、こんな暗くて狭い場所で、ただ孤独に息を引き取ったのだ。 森崎「……そりゃ確かに、何度もお前なんてくたばっちまえ! とか思ってたけどよ。 まさか、マジのマジでくたばる事はねぇだろうよ……!!」 警察の聴取を終え、石崎と滝が帰った後も、森崎は一人立ち尽くしていた。 これまでの人生で最大の宿敵が消えた。それは森崎にとって一つの生きがいの喪失を意味していた。 パァァッ、フワァァァッ……! ベアトリーチェ「どうだ? これでそなたも妾を魔女だと認めてくれるか?」 そんな中に金色の蝶が舞い、そこからベアトリーチェの姿が現れた。 翼が死んだにも関わらず、この魔女は喜色満面の笑みで、 まるで父親に褒められたい子供のようにパタパタと森崎に向かってアピールをしている。
[10]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:46:06 ID:??? ベアトリーチェ「な、な? 妾の魔法は凄いだろう? 完全な密室だぞ? なのに死んでるんだぞ?? あの翼とか言う男の死に顔見たか? 傑作だったよなァ! 『自分は絶対に死なない』って顔しくさっちゃってさァァアァ! あっはははははは! ぶっひゃっひゃひゃひゃ! あー超ウケる!」 森崎「………」 ベアトリーチェは上機嫌だ。 どんなに面白おかしい魔法で、どんな面白おかしく翼を殺したのか、森崎に語りたくて堪らなかった。 本性であろう下品な言葉遣いを隠さずに、上品な顔立ちを汚らしく歪ませて大笑い。 森崎「……ふざけるな!!」 ベアトリーチェ「!?」 ――そんな態度を前にしては、森崎でなくとも激昂するのが普通だった。 森崎「確かに冗談半分で言った俺も悪かったかもしれねぇ。 だが……だからと言って、人を殺して笑うヤツを、誰が魔女として認めてやるかよ! 戻せよ! 俺はこんな形での勝利は望んでない!」 ベアトリーチェ「えー? 別に良いじゃんよー! だって、これでお前がナンバーワンだぜ? キャプテン争いしても勝利不可避! 良いコト尽くめじゃんよ! お前らしくもないなァ、認めろよ〜? 『大嫌いな翼が死んで嬉しいです』って認めろよォ! 別に小学校の道徳の授業じゃねえんだ。本音かっさばいて万歳三唱しちまいなよォオォ!? 比較的、というレベルではもはや済まない。ベアトリーチェという魔女は醜く下品にその本性を剥きだしにしていた。 人の生死を嘲笑い、それをもって千年の生の慰みとする悪魔。 森崎は無配慮に悪魔との契約を結んでしまった事を後悔しながらも、その言葉に対し静かに打ち震えていた。
[11]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:47:52 ID:??? 森崎「……ったく、一周回って可哀想になって来るぜ。 ベアトリーチェさんよ。お前は『男の友情』ってのを、全く何も分かってねぇ!!」 ベアトリーチェ「やれやれ、分かってないのはどっちの方だか……。妾の機嫌を損ねると大変な事になると言うのに」 森崎「んだよ。俺も殺すのか……?」 ベアトリーチェ「いいや、殺さぬ。代わりに、妾はそなたを《屈服》させる事にした」 森崎「屈服……だと……?」 平行線となりそうな会話を打ち切り、ベアトリーチェはそう言い放った。 すると彼女は虚空をまさぐり、大きな水晶玉を取り出して宙に浮かべた。 ベアトリーチェ「先程、そなたは妾に、『人を殺して笑うヤツを、誰が魔女として認めてやるかよ!』 ……と、言ったな。だがしかし、現に魔法はあるのだ。妾はそうやって、翼を殺したのだから」 森崎「ハァ? 確かにお前の存在は魔法っつーか夢みたいだけどよ。実際はトリックか何かで殺してるんだろ? 少なくとも、人間に不可能な事はお前でも出来ない筈だ」 ベアトリーチェ「くっくくく……! 良い事を言ったな、『人間に不可能な事は魔女にもできぬ』。 ――果たして、それが本当かどうか、今お前に魅せてやろうぞ!」 パァァァ……! ベアトリーチェの宣言に応じ、水晶玉が明るく輝いた。 ベアトリーチェ「今から妾がそなたに見せるのは、大空翼なる男の最後の瞬間。 妾の黄金の魔法がヤツの心臓を凍てつかせるその瞬間よ! さあさ御覧なさいな、魔法の実在を! 妾の存在の証明をッッ!!」
[12]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:49:05 ID:??? +++++++++++++++++++++++++++++++ 「一体、どうしてこんな事に……」 大空翼はまさしく今、最期を迎えようとしていた。 「無様な姿だなァ? ヒーロー君。遺言なら幾らでも聞いてあげるぜェ?」 その傍らには、黄金の魔女がその形を成して、煙管片手に傲然と立ち尽くす。 外界から一切閉ざされたこの部屋に、彼女は秘密の魔法で壁をすり抜け侵入したのだ。 「俺は……死にたくない。まだ何も成し得ていないのに……」 「知るか。簡単な理由で生まれも死にもする。それがニンゲンの本質よ」 既に虫の息の翼に対しても、黄金の魔女は何の情けも容赦もない。 千年を生きた魔女にとって、百年も生きぬ人間の生き死にの如何に無価値な事か。
[13]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2016/12/30(金) 03:50:53 ID:??? 「飽いた。醜く生き永らえるよりも余程美しく、この妾がお前を殺してやるよ」 だから魔女は、この哀れな男を自らの魔法の実験台にすることとした。 彼女が煙管を杖のように一振りすると、男の体は宙に浮かび上がる。 「やめろ……やめてくれぇぇぇ」 「良いね良いねその安っぽい命乞い! もっとやってみろ、気紛れで生き永らえさせてやるかもしれんぞ?」 「お願い……俺はプロになって……日本をワールドカップに」 「やっぱ飽きた。死ね」 ――そして、この時点で彼の生存は絶望的だった。 気紛れな魔女に見捨てられた男の全身は空気の入った蛙のように醜悪に膨らんで。 パーン! パーン! パーーーン!! 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁッ!!」 「あっははははははははははははははッ!」 破裂。再生。また破裂。グロテスクな音と魔女の高笑いが密室に響く中、その遊びは数十分程繰り広げられ――。 「くっひゃっひゃっひゃ、はぁはぁ……笑い疲れたから、もう寝る」 ――遊びを終えた魔女は、死体を残したまま、再び壁をすり抜け、どこかへ立ち去るのだった。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++
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0ch BBS 2007-01-24