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屁理屈推理合戦withキャプ森
[487]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 21:52:47 ID:??? すみません、ちょっと遅くなりそうですが、ゲームを初めていきます。 まずは前提となる幻想描写と、その前置きの展開を投下していきます。 (文章を読みたくない人は、幻想描写だけ見て頂ければ結構です)
[488]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 21:54:26 ID:??? +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 【愛が無ければ死ねない】 ストラット「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!」 ストラットはひたすらに逃げ出していた。 雪の積もった山奥を、遭難の危険すら厭わずに。 パァァァァッ……! 彼が逃げているのは、黄金の蝶の大群からだった。 それらの群体は一つの意思を持っているかのように彼を追いかけ続け、 そしてたった今、追い詰めようとしていた。 ストラット「くそっ。やはりホテルに戻るしか……」 一方で、これ以上の逃走には限界があった。逃げ場も無ければ体力もない。 想像以上の追尾性能を誇る蝶達を前に、彼は逃走場所を再検討する必要があった。 タタタタタッ……ガチャッ、バターンッ! 支配人「ど、どうされましたか!?」 ストラット「『閂の扉』を開けてくれ。そして――『離れの祠』の鍵をくれ!」 支配人「状況は察せませぬが、分かりました。今すぐお開けしましょう」 蝶を振り切り、滑り込むようにホテルのロビーへとたどり着いたストラット。 その只ならぬ様子に気圧された支配人は、彼の要求を呑んで、 急いでロビーの向こう側にある大きな閂の扉へと向かう。 支配人が呪文を唱えると、数百年は使われていないであろう閂はギイ、と重厚な大きな音を立て。 ――そして、中庭に向かう扉は開け放たれる。
[489]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 21:55:56 ID:??? 支配人「さあ、急いでください!」 ストラット「ああ、感謝する!」 ダッ! 暫く前に、雪はもう止んでいた。ストラットは新雪の積もった中庭を一直線に走り、 中庭の中央に佇む『離れの祠』へと向かう。 黄金の蝶のうち、幾つかは閂の扉の抗魔力に阻まれているようだったが、 その一部は屋根を越えて空からストラットを追い続ける。 ストラット「……くそっ、間に合え。うおおおおおおおぉぉぉぉぉぁあぉぉぉぉぉっ!」 バァァァァァッ! それから得意なオーバーヘッドキックの要領で、祠のドアに向かって飛び込んで。 蝶々がストラットに死の魔法をかけるよりも早く、ドアを開き、部屋に入り、 そして、……ドアを閉めて鍵を掛ける! ガチャァァァァァァアッ!! ストラット「はぁ、はぁ……よし。逃げられたァァァアアッ!」 ――『離れの祠』は、中世時代の修道士の瞑想場所として用いられていたらしい。 狭い場所で精神を集中し、神への交信を深めるには、この場所は打ってつけだったとか。 だがしかし今となっては、使用する者も殆ど居らず、雪かき用の梯子やシャベル位しか置かれていない。 そしてストラットは視認する。密室には、誰もいないと。
[490]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 21:57:27 ID:??? ストラット「……とにかく、これでもう安心な筈だ」 内側の施錠がしっかりとなされている事を確認しながら、改めてこの密室の強固さを振り返る。 自分の居る『離れの祠』に至るには、ロビーにある『閂の扉』を潜り抜け、 足跡の残る中庭を進み、祠そのものに施された施錠を破る必要がある。 しかし、『閂の扉』にかかっている閂は非常に強固であり、破壊する事は不可能。 奇跡的に扉を破壊出来たとしても、人間は足跡を残さずには中庭を通れぬし、 もし足跡が残れば、それは重大な証拠となる。 それらの困難を潜り抜けて、祠の前まで辿り着く事が出来ても……ダメなのだ。 ストラット「この祠の鍵は、今俺が持っている一つだけ。そして、事前に忍び込むにしても、 この部屋には、隠れられるようなクローゼットやベッドの類は存在しない。 そして何より、今、この部屋には『アイツ』はいない。……俺は、助かったんだ!」 本人による内側からの施錠。そして鍵はその内側にある。 事前に密室内の家具類に隠れている可能性もない。 シンプルながらも最強の密室構築を、ストラットは完成させる事ができた。 これならば、魔女の魔法が入り込める余地などどこにも――― ミアータ「無いと思ったぁ? ウフフ……ストラットったらお馬鹿さん」 ストラット「!?!?!?!?!?!?!?!?」
[491]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 21:58:46 ID:??? ――いや、いた。魔女は既に忍び込んでいた。 金色の鱗粉に姿を変え、扉の隙間から、壁の外側から、地下から、天井から、平行空間から! 魔女の魔法に、ニンゲン風情が考えた密室如きが通用するはずもない。 緑色の体表で体よく草葉に擬態したと思い込んでいる芋虫を、人間が見つける事の如何に容易い事か。 ストラットの必死の努力は、魔女にとっては芋虫の体表程度の欺きにしかならないのだ。 ストラット「ま、待てミアータ! 俺が、俺が悪かった。許してくれ!」 ミアータ「うん、許してるわ。私、貴方の事だったら全てを許そうと思っているもの♪ クビになっても、犯罪をしても、浮気をしても、私を裏切っても。 どんな事をしたって許してあげるわ。だって、私は貴方を愛しているもの」 ストラット「じゃ、じゃあ……頼む。殺さないで……殺さないでくれ!」 同世代のエースストライカーとして、夥しい数のゴールを挙げた彼は今や、 魔女の前では哀れなる乞食も同然だった。しかし、彼に落ち度がある訳ではない。むしろその逆。 彼はあまりに、魔女に愛されていた。それが故に、彼は今こうして、全てを失いつつあるのだから。 ミアータ「あのね、ストラット。私は、貴方を殺す為にここまで来たわけじゃないの。 私は――貴方を黄金郷に招待しに来たのよ?」 ストラット「またそれか! それは聞き飽きた! 何が黄金郷だ。君の言う黄金郷は、ただの無理心中じゃないか!」 ミアータ「……はぁ。本当に可愛そう。反魔法の毒に染まってしまって、黄金の真実が見えなくなっちゃったのね。 でも大丈夫よ。私がそうだったみたいに、すぐに良くなるからね?」 シャキーンッ! カランッ、カランカランカランカランカランッ! ミアータが――愛憎の魔女が指示を出すと、虚空から一本の杭が現れた。 邪悪なる海蛇を象ったそれは、カランカランと部屋中を音速で飛び跳ねまわり、 ストラットの命のカウントダウンを告げる。5、4321……………そして、ゼロ。
[492]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 22:02:38 ID:??? ミアータ「人間の大罪を象りし、煉獄の七姉妹が一。嫉妬のレヴィアタン! あの人を黄金郷に招待しなさい!」 バッ! ズバァァァァァァァンッ! ストラット「あ、が……。な、んで……み、あ……………」 バタリ。 ――彼女が黒き魔女から譲り受けた高級の家具は、あまりにも慈悲深く、男の心臓を貫いた。 そして、倒れ伏せたストラットの亡骸の至る箇所に口づけをしながら、 ……魔女ミアータは、悲し気にこう呟いた。 ミアータ「ごめんね、ストラット。誰よりも愛してるわ。……こんなの、他の男にはしないのよ? 貴方の事が好きで好きで。愛して堪らないからなのよ? 愛が無ければ、殺す事なんてできないんだから」 ある魔女は言った。愛が無ければ、視えないものも存在すると。 ならば、その愛が有り余る場合、一体その風景はどうなるのだろうか? 愛が無ければ、少女は魔女にならなかった。少年は命を落とさなかった。 ……愛が無ければ、視えない。 愛憎の魔女の双眸には、凡百のニンゲンは勿論のこと。 千年以上を生きた大魔女にすらも、視えない風景が広がっているのかもしれない。 彼女を観測する者達は、その風景が、せめて美しいものである事を祈るしかなかった。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++
[493]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 22:04:18 ID:??? ************************************ 〜上位世界・魔女のサロン〜 ベアト「な、なんだこれは……! 妾以外の魔女が、ニンゲンの少女に力を分け与えたと言うのか!?」 ワルギリア「どうやら、そのようです。……航海者権限を与えられたのは、私達だけじゃなかったようですね」 ミアータによる魔法殺人の様子は、森崎達がサッカー合宿を過ごす世界よりも上位に位置する視点にて、 ベアトリーチェとワルギリアによって観測されていた。 碑文を媒体にこの世界へと渡り歩いてきたベアトリーチェとワルギリアだったが、 今回の事件は彼女達にとって想定だったようである。 ベアト「あれだけの力を容易く分け与えられる存在かつ、妾専属の家具であった煉獄の七姉妹を 貸し与えられる者と言えば、おおよそ検討は付くが……今は、犯人探しをしている場合ではない」 ワルギリア「その通りです。彼女を放置しておけば、今殺されたストラットくんだけじゃない。 イタリアJr.ユースのメンバー全体……引いては、この世界のサッカー情勢に致命的な影響が生じます。 そうなると、この世界はロジックエラーを起こし破綻してしまうかもしれない」 ベアトとワルギリアが観測し、今森崎が居る世界は、基本的には『キャプテン森崎』という、 ニネー卿のゲーム盤を下敷きにしたものである。寛大なる彼女の方針もあり、このゲーム盤は 大体の改変や変更は許可されているのだが……その前提となる世界観に破綻が生じた場合、 その波紋はどこまで広がるかは底知れない。別のカケラ世界、別のゲーム盤からやって来たベアト達にとって、 世界の破綻は望む事ではなかった。 ベアト「……魔女の魔法には、ニンゲンのトリックでしか対抗できぬ。 今の妾とお師匠様で魔法対決に持ち込んでも、口惜しいが返り討ちに遭うのがオチか。 ……となると、やはりアイツに。森崎に動いて貰うしかないかァ」 ワルギリア「それが賢明でしょうね。後は、森崎くんが私達の意思に気付くかどうかですが……」 ???「それについては心配ないわ」
[494]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 22:09:12 ID:??? パァァァァッ……。 不意に、靄が生じて人の形をとった魔女が現れる。 ベアトとワルギリアが腰かける椅子の間に立った彼女は、はあ、と溜息を吐きながらもそう応じた。 ベアト「に、ニネー卿ではないかァ! どうもどうも、今日はこのような僻地まで遠路遥々と……」 ニネー「なーにが僻地よ。人の領域で好き勝手に暴れちゃってさ。確かに私、逆転若林とか、 ときめきメモリサキとかはやったけど、屁理屈推理合戦を持ち込まれるとは思わなかったわ。 ……ま、面白いから良いのだけれど」 彼女こそが、話題にも出ていた運命の魔女にしてこの領域の主・大ニネー卿。 あらゆる無限の可能性から絶対の1を抽出し、選び取る魔法に長けた彼女は、 自在に変動する1を無限に並べる魔女のベアト達にも決して引けを取らぬ――いやむしろ、 彼女達を圧倒する佇まいと風格を持って、この場に君臨していた。 ニネー「……で、今回の事件なんだけど、これは一応私の想定の範囲内です。 ストラット君にはナイスなボートが似合うしね。だから、私の方で、もう既に策は打ってあるわ。 いや。策を打たずとも問題無かった、と言うのが正しいかしら」 ワルギリア「ニネー卿。貴方はこの事態を予期していた……と。 私達以外にも、新たな魔女が乱入し、世界を侵食しようと企むであろうと。 そう、仰られるのですね」 ニネー「……ええ。貴女達を前にしては、本音はまだ話せないけれど。大筋はそうね」 おぞましいまでに長く美しい金髪をはためかせ、運命の魔女はそう答える。 決して雄弁ではなく多くを語ろうとはしない彼女であるが、 その言葉の全てには他の者には無い重みがあった。
[495]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 22:21:11 ID:??? ニネー「下。見てみなさい。……さっそくはっちゃけてるからさ。色々と」 ベアト「……む。こ、これは……!?」 故に、ベアトはニネーの指示通りに再び下位世界――森崎達が生活し、今殺人が起きた世界を覗き込む。 すると、そこには――想定外に手早く、事が進んでいるようだった。 ************************************ ミアータ「な、何なのよぉアンタは……私とストラットの愛をジャマしないで!」 森崎「……何なの、って言いたいのはこっちだぜ! クソみたいな合宿場に連れていって、結局やらせるのは殺人事件の屁理屈ゲームかよ! あんのクソ魔女のせいかは知らんが、後で絶対泣かせてやる!」 ――森崎は既に、愛憎の魔女ミアータの存在を認知し、そして早々に勝負を始めようとしていた。 魔女とのゲームもこれで4度目ともなると、森崎も既に手馴れているようだった。 ********* ニネー「(領域の住民たちに、ウイッチハンターの権限を与えておいて正解だったわ。 お蔭で視点である森崎君の志向が強まっている。これなら、少なくとも勝負はすぐに始まりそうね)」 ********* もっとも、それにはニネーの後方での力添えがあってこそ、ではあったが。 ただし少なくとも、彼女の先見の明は、事件の複雑化を防ぐという効果はあった。 早速、森崎とミアータとの間にチェス盤――今回のゲーム盤の情景が再構築されていく。
[496]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 22:25:29 ID:??? 森崎「いいか。ホテルの構図は、こうだ」 森崎はまず、支配人からもらったホテルの平面図を見せながら、状況確認を進めていく。 〜ホテル・プルガトリオ 平面図〜 □□□□□□□□□□□□□□□ □ □ □ □ 会□ □□□□□ □ 議□ □ □ □ 室□ □ 離れ □ □ ・□ □□■□□ □ 客□ ・ □ 室□ ・ □ 等□ ・ □ □ (閂の扉) □ □□□□□□□■□□□□□□□□ (ロビー) □=壁 ■=扉・ドア ・=ストラットの足跡(ロビー→離れ行きの片道のみ) ※壁と壁・扉との間には隙間は無いものとする。 ※その他、魔女側の補足をここに記すものとする。
[497]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/08/26(土) 22:35:18 ID:??? 森崎「問題の焦点は3つ――■で記された扉・ドアの密室と、・で記された足跡のトリックの関係だ。 ひとつ、ロビーと中庭を繋ぐ、『閂の扉』。ここにはストラットが入るまでずっと、閂が掛かっていた筈だ。 そして、ストラットの入室後、閂は降ろされた。にも関わらず、犯人は如何にしてこの扉を抜けたのか? ひとつ、中庭にある足跡。中庭にはストラットの足跡、それもロビーから中庭に向かう足跡しかない。 もしもミアータなり外部犯が殺したのなら、そいつの足跡が無くてはおかしい筈だ。 ではなぜ、中庭にはストラットの足跡しか無いのか? ひとつ、死体発見現場である『離れの祠』の施錠。これはストラットが内側から施錠し、 警察が死体を発見するまで、一度も開かれていない。また、内部に潜んでいた可能性を示すにも、 部屋の内部には、隠れられるような家具類・秘密の部屋類は存在しない。 ではどうやって、犯人は密室に入り、ストラットを殺したのか? またどうやって、犯人はストラットを殺した後、姿を消したのか? ……まずは、俺が定義した今回の問題の焦点に間違いが無いならば、関連する赤き真実を貰おうか」 ミアータ「ええ、分かったわ。……分かったけれど、ちょっと提案があるのよ。 私は今からその3つの問題全てに関連する赤を出す事が出来る。でも、そうすると赤の量が膨大になり、 推理に不要な手間がかかる。……これじゃあ、どっちも楽しくないわ。 そこで提案なんだけど――」 そう言いながらも、ミアータは前提となる赤き真実を組み上げていく。 しかしそれは……完璧では無い。彼女が出した赤き真実は、ごく一部のみだった。
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0ch BBS 2007-01-24