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【追う蜃気楼は】鈴仙奮闘記39【誰が背か】
[316]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/06/30(金) 01:00:36 ID:??? とはいえ、松山君達がここに現れたのは、そんな湿っぽい話をする為だけではなかった。 むしろ現実的。幻想郷と外界という隔てはあれども、あたい達4人はイギリスでは珍しい日本人(たぶん)。 お金やら足やら、ここまでの物語と比べたら超絶せせこましい世話の為だけに、一緒に空港まで行こうと言う話だった。 ……もっとも、久しぶりに姉と会えたこいし様的には、すぐの別れに納得いかないようだったが。 「分かって頂戴、こいし。何も知らなかった貴女はともかく、私とお燐はかなりの危険を冒している。 もしも私達の身に何かがあれば、お空は、地霊殿は。そして……旧地獄は、どうなるか分からない。 こいし。家で引き籠っていなさいとは言わない。けれど――あなたには、無事でいて欲しいの」 「でも、そんなのつまんないよ。私もお姉ちゃんと一緒にサッカーしたいよー」 それが姉のエゴである事は、さとり様も重々承知だったろう。 そしてそれで簡単に折れるこいし様でもない。が。そんな少し困った空気を打ち消したのは、 「はぁ。……だったら、お兄ちゃんと一緒に日本まで行こうか?」 「うーん……お兄ちゃんがそう言うなら……」 「!?!!!???!」 ――意外過ぎる事に、ここに来て以来空気を読めずにいた松山くんだった。 ……というか、様子がおかしい。何故こいし様はこの元地獄少年に懐いているんだ? 確かに矢車が実体化したのは、こいし様の能力の影響が強いとは聞いていたけれど。 え? それが何かアレな影響を与えたとか? というか松山君、彼女いるって聞いたけど大丈夫なのか? 「……松山くん? 貴女、ウチのこいしに何を……?」 あたいはさとり様以外に懐かないこいし様が、松山君に懐いているのを驚いていたけれど。 この中でもっとも様子がおかしいのはさとり様である。いや、様子がおかしい理由は明白だけどさ。 これには流石の松山君も危機を察知したのか、 「い、いや。別に。ただ、前の試合の時! 俺の中で兄貴の人格が抜けたと思ったら、そばにはこの子がいて。 それで、色々と面倒を見ている内になんか懐いて……い、イテテテテ!?」
[317]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/06/30(金) 01:01:36 ID:??? 慌てて取り繕っているが、時すでに遅し。 「ウフフ……? 如何に鍛えた人間と言えども、鳩尾を鍛える事は出来ませんからね。 どうですか……恐怖のトラウマで、妹を誑かした事を一生後悔させてあげますよぉ……?」 せりあい力55スキル・飛び出し+5保有者のトラウマ攻撃(物理)が、松山君の痛覚を的確に刺激する。 これはヤバい。心が読めるだけに人が痛みを感じる部分についてヤケに詳しいぞこのお方。 引きこもり読書家やめて、プロレスラーに転向できるんじゃないか? 「ひ、ひいいっ! は、話せばなんとかなります、さとりさん! 俺は貴女に返しきれない恩だって……」 「恩があるからこそ、ですよ? さ、次は爪の間行きますよ……」 「そんなァ。俺はただ、光を掴みたかっただけなのにギャアアアアーー!」 ……と、ふざけた感想は置いといてだ。こうしてジャレつく松山くんとさとり様を見て、真面目に思う事だってあるのだ。 覚妖怪とKYはウマが合うという持論を述べたあたいだが、更に……古明地さとりと松山光は、似た者同士なのではないか、と。 どちらも互いに一人のヒーローの影を追い求めた、というのあるけれど。 さとり様も松山君も、不器用で、生きづらさを抱えてて、幻想に閉じこもりがちな所があって。 だけどそれでいて、どうしようもないまでの理想家で、努力家で、暗闇に居ながらも、光を掴みたがっている。 あたいには、その生き方はしんどすぎて、到底真似をする事ができない。今あるものを守るだけで精一杯なんだから。 「でも。そうしないと、貴女が遠くに行っちゃうって言うんだったら。あたいだって掴んでみせますよ。 日陰者や嫌われ者には丁度お手頃な。だけど充分眩しい――『白夜の光』ってヤツをさ」 ……さとり様が松山くんをシメる事に夢中になっているのをいいことに。 あたいはとてつも無くクサい事を思いながら、今書いているこの手記の筆を一旦置く事にした。
[318]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/06/30(金) 01:02:47 ID:??? かくして、隠者は光を掴み、死を抱く歯車は自らの在り方を見出した。 だが、それは忌み嫌われし二人にとっては始まりにしか過ぎない。 彼女達は空を越え、海を渡り、大地を跨ぎ――そして、迷える少女を照らす光となるだろう。 幻想の友は失せども、その思いは永遠に消えず。 暗い暗い地獄の夢は今、輝ける楽園への礎となった。 〜さとりの章・完〜
[319]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/06/30(金) 01:09:49 ID:??? ***** 〜イングランド・路地裏〜 幽香「想像の3割増しには下らない本だったわね。作者のドヤ顔がチラつく、馴れ馴れしくてうざったい文体が気になったわ」 『サトリピア連続殺人事件』と題された自費出版の古本を投げ捨てながら、 退屈そうに風見幽香は路地裏で倒れる男達を踏みつけるようにして歩く。 彼女は全幻想郷選抜メンバーに選ばれながら、紫や変なTシャツを着る謎のコーチの意向により、 イングランドでのサッカー修行を命ぜられていたのだが、 彼女は編入予定だったリヴァプールの選手を軒並み凌辱し尽くした後、 どこのチームにも所属せず、ストリートサッカーでその嗜虐性を満足させる日々を過ごしていた。 咲夜「――こんなところに居たのね。随分と探したわ」 ……そして、同じく全幻想郷選抜メンバーに選ばれていたにも関わらず、 レミリアの独断専行により、先んじてイングランドに潜入していた咲夜の目的の一つ。 それこそが、風見幽香とのコンタクトにあった。 幽香「あら。誰かと思ったら懐かしい顔ね」 咲夜「別にそこまで懐かしくは無いと思いますけれど。……失礼。 どうでしょうか。あの時のお嬢様からのスカウトについて、考え直してくれましたでしょうか」 幽香「……ああ。となると、リグルに声をかけていたのも貴女達だったという訳ね。 ――で。結論から言うと……下らないわね」
[320]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/06/30(金) 01:10:56 ID:??? 両者ともに緊張を緩めず、互いに牽制する様子を隠さない。 一歩間違えれば殺し合いにすら発展しかねない、そんな危うさが二人を包む。 ……が。それはほんの一瞬の事だった。そもそも彼女達の目的は暴力的な物では無い。紳士的な「話し合い」だった。 幽香「下らないけれど……。確かに、今の全幻想郷選抜の方が更に下らないかもしれない。 紫は崇高な理念を唱え、幻想郷と博麗の巫女の尊さを訴えるけれど、私から言わせると、空虚すぎる。 昔のあいつは、あんなんじゃなかったわ。 ま、その時点で疑念はあったんだけど……今回の『選手派遣』で、その疑念は確信に代わったとも言えるわね」 咲夜「……と、言いますと?」 幽香「簡単よ。紫はイチャモンを付けて私達を海外に飛ばして修行と言っているけれど。 これは私のようなアウトローな大妖怪を外に追いやり、あるいは庇護すべき相手を人質に取る作戦にしか見えないわ。 より大きな、そして人道に欠く『何か』を為そうとする前段階として、ね」 咲夜「成程。そうであれば私達……いえ、お嬢様と同じ考えに、貴女も至ったという訳ですね。 私達が今もこうして泳がせられているという、最大の不安要素はありますが」 幽香「あら。不安に思っていたの? 私は凄くウキウキする要素だと思っていたけれど。 だって、これがもしも相手のミスであれば、その隙を突いて凌辱できるし。 これがもしも相手の罠であれば、その罠を打ち砕いて凌辱できるじゃないの。どっちに転んでも最高だわ」 その嗜虐性、残虐性を隠さずに幽香は可愛らしく微笑む。 かつて謎の向日葵仮面として幻想郷を凌辱の恐怖に叩き落とした怪物は、自身を蔑ろにする部外者達の乱入に、 密やかなフラストレーションを溜め込んでいたのかもしれない。だからこそ、この局面において、漸く彼女は頷く。 他者に追従する事を嫌い、暴力と支配を愛する究極嗜虐怪物が、吸血鬼風情の考えた計画に乗ろうと決意した。 幽香「……ええ。良いわ。やっぱりその方が面白そうだもの。私も一枚噛ませて貰うわ、あんた達の計画――いえ。 計画と呼ぶにも烏滸がましい。最高につまらない、一夜限りのお祭りにね」 その計画の全貌は未だ知れぬが、彼女が浮かべた最高の笑顔を見ると、 それが少なくとも人間にとって好ましい計画では無い事は、火を見るよりも明らかだった。
[321]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/06/30(金) 01:17:16 ID:INDPpa2s ……と、言ったところで今日の更新はここまでにします。 次回からは、鈴仙の章に入りますが、その前にさとりとお燐の最終能力を載せます。 >>313 サイドに居続ける限りでは、お燐は地味に世界最高クラスのプレーヤーですね。 サイド以外でも悪くは無いですが、パッとはしない感じになると思います。 (ちなみにスキル・サイドアタックはスキル・サイドプレイヤー習得時にスポイルされています。もし勘違いしてたらごめんなさい) 【イギリス派遣メンバー 現時点での能力値】 選手名 ド .パ シ タ カ .ブ せ 総 高/低 ガッツ さとり 49 48 48 48 48 47 55 343 2 / 2 825 セーブ力56 お燐 ..54 55 52 53 55 53 47 369 1 / 2 730 〜必殺技・スキルリスト〜 さとり パンチング61、キャッチ58 所持中のフラグ:必殺セーブ 光を掴みます!(1/2でセーブ+3(敵リード時はセーブ+4)) スキル・覚妖怪(PA内のシュートについてセーブ・とびだし・一対一+5、読み違え発生しない) スキル・とびだし+5 スキル・一対一+3 スキル・想起(相対する選手の知り得る技をコピーして使用可。その技に使用するガッツの1.5倍を消費) お燐 所持中のフラグ:サイドディフェンサー、ドリブル、パス、シュート、パスカット、タックル、ブロック キャットランダムウォーク(1/4でドリブル+5) キャッツウォーク(1/4でドリブル+3) スプリーンイーター(シュート+5)160消費 火焔の車輪(1/2でタックル+3、吹飛2) ゾンビフェアリーカット(1/2でパスカット+3) ゴーストブロック(1/4でブロック+4、コーナーキックの時は+6)100消費、 ゴーストタウン(1/4でブロック+6、コーナーキックの時は+8)150消費を習得しました。 スキル・サイドプレイヤー(ライン際に居る時、全能力+2)
[322]森崎名無しさん:2017/06/30(金) 02:13:54 ID:??? 乙でした まあさすがに重複したらドリブルがヤバイことになるからね
[323]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/01(土) 16:48:00 ID:??? 文章パートのみですが、更新再開します。 >>322 乙ありがとうございます。 重複してない現時点でもお燐はかなり強いですし、これで重複だったら流石にヤバいです(汗)
[324]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/01(土) 16:49:12 ID:??? −鈴仙の章C− 〜VS パルメイラス〜 〜回想シーン〜 少年にとって、あの年上の女性は憧れだった。日系を思わせる綺麗な黒髪に、ごく薄く日焼けした肌。 全体的に成熟しきった大人の雰囲気を纏っているのに、その瞳は子供のように、あどけなさと好奇心に光っている。 そして何より――彼女は、少年がサッカーに懸ける人生を歩めるに至った、最大の恩人でもあった。 アヤソフィア「……入団テストに落ちそうなんですか。だったら、一緒に練習しましょうか。 今なら、本物のサッカーボールだってあげちゃいますよ」 カルロス「いいの……?」 ――少年の名はカルロス・サンターナ。 彼が後にここフラメンゴで才能を開花させ、引いては南米随一の選手になる事を、 この時はアヤソフィアを含め、誰一人として知らない。 アヤソフィア「勿論ですとも、天狗はウソをつきません。 ――ただし。一緒に練習をするには、ひとつだけ交換条件があります」 カルロス「交換条件……僕、お金持ってないよ。ここまで来れたのも、今まで頑張って働いて。 父さんと母さんも応援してくれたからだったし……そ、それなのに……もしダメだったら……ううっ」 現に、今のカルロスは自分で話した通り、名門チームの入団テストを受けに遥々上京したが、 夢儚く散りゆく、どこにでも居るブラジルの平均的な少年の一人に過ぎなかった。 正確にはこの時点でもその才能と実力は抜きんでてはいたが、それでも、 早熟ながらその才能を活かしきれず埋没する少年は掃いて捨てる程いたため、彼は特別ではなかった。
[325]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/01(土) 16:50:37 ID:??? アヤソフィア「あ、あややややーっ! 泣かないでください泣かないでなーかーなーいーでっ!? いたいけな子供から金品をせびろうとする程、私も落ちぶれちゃいませんって! ひいいっ、回りの大人の目線が痛いーっ!?」 周囲のスタッフがアヤソフィアに怪訝な目を向ける中、それを否定するように彼女は続ける。 アヤソフィア「コホン。……で、交換条件って言っても、お金とかじゃないです。 ズバリ、ええーっと、カルロス……くんですか。胸の名札にそう書いてあります。 キミがこのチームに入団した暁には、私の弟くんのオトモダチになってあげてほしい。 ――ただ、それだけの事なんですよ」 カルロス「オトモダチ……? 本当に、それだけでいいの?」 アヤソフィア「ええ、そうですよ。というか今日にしたって、私は弟くんのお迎えのために、 わざわざ仕事を切り上げてここに来た位なんですからね」 外見上の年齢よりも幼さを感じさせる、アヤソフィアの悪戯っぽい笑みを見て、 カルロス少年はその警戒心を幾分か和らげていたようだった。 カルロス「うん! わかったよ。僕、お姉ちゃんの弟くんとトモダチになる!」 アヤソフィア「おやおや……入団した暁には、という話だったのに、もう入団できた前提で話してますね? それだけ前向きなキミなら大丈夫だ。ようし、お姉ちゃんが人肌脱いじゃいますよ!」 そしてアヤソフィアもまた、打算の無い満面の笑みでカルロスに頷き――練習を開始した。 アヤソフィアが準備しておいたボールをひったくると、カルロスは無邪気に問いかける。
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0ch BBS 2007-01-24