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【道は】鈴仙奮闘記41【違えど】
[744]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/12/31(日) 02:30:45 ID:??? 謎の男「(依頼主は――『ハイパーカンピオーネ』は、最初から魂魄妖夢を切り捨てる気だった。 何故なら、彼女の才能には既に見切りがついていたし、代替となる逸材は既に確保済みだからだ。 後は、彼女が鈴仙・優曇華院・イナバとの情に絆されて、『プロジェクト・カウンターハクレイ』側に寝返る事だけを 阻止すれば良い。彼女を二度と、サッカーを出来ない身体にする事で。……成程、合理的な判断だ)」 単なる仕事人である彼には、ターゲットとなる少女への同情や憐憫は一切抱かない。 ただ――と、男は思う。 謎の男「(単なるスポーツであるサッカーに対し、信念や生命を賭ける者の何と多い事か。 これではまるで、俺が渡り歩いてきた戦場と同じだ。……狂気が、満ち満ちている)」 要人の暗殺と言った普段の仕事と比べて、無名な少女を狙い、しかも命すら奪わないという楽な仕事だ。 ――もはやそうは思わない。サッカーという球技のルールを超えて、一人の選手生命を奪う行為は、 狂気を抱いたスタジアムの数十万人に対する冒涜であり、立派な殺人である。 だからこそ、余計に失敗は許されない。男は重圧を前にしくじる人間ではない。 重大な仕事こそ、確実にこなす。彼はそういう部類の人間だった。 グッ。――パァァァァァン……! 確実に。即ち普段通り。男は引き金を引き――銃弾を放った。
[745]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/12/31(日) 02:31:57 ID:??? *** グウウッ……ンッ! 銃弾が迫る。妖夢めがけて、銀色の閃光が――鋭利な殺意を示す、超高速の波長が、『視える』。 男が引き金を引き、妖夢に届くまでの瞬間。鈴仙の視界は、無意識にスローモーションとなった。 鈴仙「(ようむが、あぶない)」 かつて幻想郷中の狂気の波長を取り込んだ鈴仙の瞳は、昔にも増して格段に発達していたため、 彼女だけが、大歓声・大熱狂のスタジアムに紛れたその波を視る事が出来ていた。 ――そして、視る事が出来たが故に、鈴仙は誰よりも先に絶望した。 鈴仙「(……きょりが、ちかすぎる)」 銃弾を放つ者もまた、人間ながらにその道を究めた者に違いなかった。 極限までに薄められた彼の殺意を捉える事は難しく。 鈴仙が完全にその弾丸の軌道を捉え切ったのは、既に弾丸が妖夢の服を掠めている時点だった。 鈴仙「(……まに、あわない)」 鈴仙の瞳は狂気の瞳。弾丸の位相を操作し、妖夢に触れる事を禁ずる事もできれば、 逆位相を操作し、そもそもこの次元から無かった事にすらできる。しかしそれは、操作を行うに足る時間があれば、の話。 秒速1,000メートルで推進する銃弾が、妖夢の肉体まで僅か数センチまでの位置に居る時点で、もはや為す術など無い。 鈴仙「……だめ!」
[746]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/12/31(日) 02:34:03 ID:??? しかし、駄目と分かっていても、鈴仙は動いた。 鈴仙は視神経の全てを眼前の弾丸に集中させ、身体の限界を振り絞り、思いっきり妖夢を突き飛ばそうと身体を投げ出した。 普通ならば届く筈もない距離であるにも関わらず、鈴仙は諦めなかった。 鈴仙「(あの弾丸が命中したら、妖夢はたぶんダメになる。半人半霊だし、死ぬことはないだろうけど、 たぶん、死ぬよりも辛い思いをする事になる……と思う! だから、私が……防がなきゃ。 防いで……今度こそ、しっかりと付ける。妖夢との決着を!)」 ギンッ! ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ………………!! 鈴仙の瞳が、波長が、世界が、狂気が……世界を歪める。位相だけではない。 時間のベクトルすらもが曖昧になる中、鈴仙の瞳は輝き続けて歪みを広げる。 全ての波長を狂わせて、鈴仙は不可能を可能とする。それはもはや、単なる狂気ではない。 今の彼女は、世界の『理』それ自体を操作し、――それが如何なる犠牲を払う事となろうとも ――友人を助けたかった。 鈴仙「(我ガ狂気ノ瞳よ。……そノ限界を超エて世界を騙セ! 世界を――狂わせロ!)」 そして、狂気を超えた鈴仙の意地は奇跡を起こす。
[747]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/12/31(日) 02:35:20 ID:??? ……パ ァ ァ ァ ァ ア ン! 妖夢「……え?」 ――ドンッ! 乾いた銃声が鳴り響いた時、妖夢は、自分が何かに思いっきり押されて、よろめき倒れた事しか認識できなかった。 パシャァッ! その直後、生暖かい物が自分の顔にかかった感覚を覚える。触れてみるとそれは鮮血だった。 倒れた自分を庇うように、見慣れたブレザーの少女が虚空を見つめて立ち塞がっており。 鈴仙「はぁ……はぁ……!」 妖夢「れい、せん……?」 鈴仙「ああ。その声は妖夢……。助かったのね。良か、った……」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 振り返った少女は――鈴仙は。完全に潰れた両目から、滝のように血を流しながら、安堵の笑みを零して。 ――倒れた。 妖夢「鈴仙。……鈴仙!? 私を庇ったの……!? なんで……? なんで、私なんかの為に……!?」
[748]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/12/31(日) 02:37:37 ID:??? ポタ、ポタ、ポタ……。 鈴仙「(血が出てる。銃弾が目に当たっちゃった……のかな? なんだか良く分かんないや。何にも見えないし、身体の感覚も無いし、まるで幽霊になっちゃったみたい。 でも、まあ。妖夢も助かったみたいだし……これで良かったのかな? 皆には迷惑かけちゃうかなぁ……でも、コーチもあれで元医者だし、ちゃちゃっと直してもらえばいいよね。 試合には負けたけれど、きっと、まだ何とかなる。何とかしないといけないもん。 だって、私はキャプテン鈴仙だし。お師匠様とも約束したし、姫様だって…… あれ? まだ暗いな。もう夜なのかしら? まだ何も見えないよ……? 何も見えない……何も聞こえない……何も……考え……ら……れ……)」
[749]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/12/31(日) 02:49:56 ID:??? 唐突な急展開になったところで今日はここまでにします。 詳細は今後の更新で描写しますが、今回のイベントにより、鈴仙は暫くの間、失明状態となります。 ですがこれは、物語の演出上のイベントであるため、参加者の選択肢とは一切関係ありません。 また、玉兎としての高い運動神経と妖力による気配察知により、サッカーや日常生活は普段通り可能です。 ただし、ゲーム開始当初から鈴仙を支えてきたスキル・狂気の瞳については、暫くの間封印されてしまいます。 これにより、1/2発動の能力値減少効果が消滅します。 ※第一部では、スキル・狂気の瞳は必殺シュート強化の効果もありましたが、第二部では記載されておらず、 また、必殺シュートまで弱体化すると鈴仙が全く使われなくなってしまうため、 バランス上、必殺シュート力については弱体化されないこととします。 ですが、この弱体化についても今後の布石であり、鈴仙の更なる成長への伏線となります。(詳細はネタバレの為省きます) 明日と明後日は旅行に行くので、更新できないと思います。 また、それ以降も暫く文章パートが続くかもしれませんが、気長にお付き合い頂ければ幸いです。 本日もお疲れ様でした。
[750]森崎名無しさん:2017/12/31(日) 11:29:30 ID:??? 乙なのです 鈴仙が妖夢を助ける展開はなんとなく予想してましたが、鈴仙がこんなことになるのはビックリでした 今年も楽しい作品をありがとうございます。 鈴仙奮闘記も長編になりましたね、ここまで続ける、しかも読者参加型の作品をというのは 並大抵ではないと思います。 来年も鈴仙奮闘記を楽しみにしています。 作者さんにとって来年が良い年になりますように。
[751]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 02:09:13 ID:??? 今年も更新していきたかったのですが、文章が書ききれなかった為明日更新します(汗) 東方憑依華が出ましたね…私も今日はずっとプレーしてました。 感想としては色々ありますが、とりあえず鈴仙が割と不憫過ぎて笑ってしまいましたw >>750 乙ありがとうございます。昨年は参加ありがとうございました、今年もよろしくお願いします。 キャプ森やキャプ翼を下敷きにしつつ、常識にとらわれない(かつ面白い)展開を目指しているので、 楽しんで読んで頂いて大変嬉しいです。 拙作ももうすぐ開始5周年を迎えますが、漸く全体のラストも僅かに見えて来ました。 (エンディングまで残り9試合で、これまで5年でだいたい21試合やって来たので、 丁度リオカップ終了時点で、21/30=70%は物語を終えた形です) 昨年度は更新が停滞する時もありましたが、今年はクライマックスに向けて、 モチベーション高く続けていきたいと思っています。
[752]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:35:46 ID:??? 〜幻想郷・八雲紫の領域〜 紫「――鈴仙・優曇華院・イナバ。己の分も弁えず、瞳に限界を超えた負荷を掛け。そして、自滅したか」 空間の裂け目から事の顛末を観測していた八雲紫は、僅かな嘲笑を湛えながら、そう吐き捨てた。 紫「貴女の計画も、とうとう失敗に終わるのではないかしら? 八意永琳」 永琳「…………」 永琳は、そんな彼女の傍に寄り添い、共に鈴仙が倒れる瞬間を見ていた。 八雲紫は、永琳が己の計画――霊夢や一部の有力人妖を中心とした全幻想郷代表を優勝させ、 既存の幻想郷の秩序をが盤石である事を世界に知らしめる――に反対している事を知っていたが、 知りつつ尚、彼女は永琳を自らの傍に置きたがり、永琳もまた彼女と行動を共にする事が多かった。 ……無論、互いが互いを監視する為に、である。 紫「私の目的は一つ。今の全幻想郷代表を、来たる幻想スーパーJr.ユース大会で優勝させる。 そしてそれは、より正々堂々とした手段で為される事が望ましい。その方が、我らの強さをより客観的に証明できるから。 ――だから、私は貴女達の手駒を直接妨害する気は無かったのだけれど」 永琳「第三勢力は――豊聡耳神子の『ハイパーカンピオーネ』計画は別よ。 彼女達は、自分達が勝つ為なら何でもやる。それこそ、選手の暗殺だってするでしょう。 別に私は、八雲紫。貴女を疑いなどしていない」 紫「あら、それは助かったわ。……まあ。それは別として、私は貴女の愛弟子が志半ばで倒れても、 それはそれで、悪くは無い結果だとも思ってるんだけどね。正々堂々が理想でも、棚ぼたを拾わない理由は無いもの」 くすくす、と悪趣味な笑いを向ける境界の妖怪を無視して、永琳は続ける。 永琳「……『プロジェクト・カウンターハクレイ』は、鈴仙を中心とした新チームを主軸としていた。 その主軸が、視力を失って倒れたとなれば、私達の計画は徒花に終わる可能性は、 いよいよ高くなったと言わざるを得ないでしょうね。ただ――」
[753]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:37:15 ID:??? 永琳は僅かに口を歪め、 永琳「――あの子、ああ見えて結構しぶといわよ。この程度で棚ぼたを拾ったと思っているようでは、まだまだ読みが甘いわね」 紫「ご忠言、大変助かります。ですがご安心を。兎が一匹沈んだところで、勝利の為の手を緩めるつもり等無い。 ――それは、貴女も良く理解している筈よね?」 紫に対して言い放つも、彼女もまた余裕を崩さない。永琳はそれが虚勢でない事を承知していた。 永琳「(……確かに、全幻想郷選抜代表は、強い。八雲紫本人は勿論として、博麗霊夢も感情を殺し、強くなった。 他のメンバーも海外に派遣させ修行させる事で、実力の底上げを図っていると聞いている。 そして私も、八雲紫に敗北時の言い訳を作らせ、勝負を保留とさせない為にも、手を抜く訳にはいかない。 今回のような挫折が無くても、元々鈴仙に取っては厳しい戦いとなるに決まっている)」 八雲紫は――その内面が月の狂気に侵されているか否かを除いても、賢い妖怪だった。故に彼女は違えない。 常に最善手を取り続け、次の大会における、全幻想郷選抜代表の優勝を日々、盤石なものにしている。 全ては、これまで自分が築いてきた幻想郷の秩序の正当性と強さを、より多くの人間に対し理解させる為。 『プロジェクト・カウンターハクレイ』や『ハイパーカンピオーネ』という”異変”を、これまで通り、博麗の巫女によって解決させる為。 博麗霊夢は、鈴仙・優曇華院・イナバや豊聡耳神子よりも優れた存在であるという事を認識させる為。 永琳「(今回の八雲紫に慢心や油断は無い。対する鈴仙は敗北という大きな挫折を味わい、肉体的にも大きく損なわれた。 加えて更に、豊聡耳神子という、小物ながら厄介な第三勢力の妨害も耐えなくてはならない。 厳しい状況になっているのは、認めざるを得ないわね)」 永琳ですら、もはや今回の状況を楽観視してはいなかった。 しかし、八雲紫という巨大な敵を前に、永琳は監視を続ける事が手一杯であり、打つ手を出せないでいる。 物語はもはや、彼女の掌から離れ、想定を超えて大きなものとなっていた。 故に、永琳は改めて思いを託して祈る事にした。――神ではない。この物語の主人公に対してである。 永琳「(鈴仙。貴女が切り開こうとする道は依然険しい。そして、私はもはや、貴女に一方的な期待を抱く無責任な第三者に過ぎない。 それでも、祈らせて貰うわね。……鈴仙、這い上がりなさい。そして、月の狂気に取り付かれた八雲紫を倒しなさい。 さもなくば、『純狐』が目覚め、地上と月は破滅に導かれる。どうか……諦めないで)」
[754]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:38:35 ID:??? 〜ドイツ・シュツットガルトスタジアム〜 中山「……何だって、鈴仙さんが銃撃を受け意識不明だと!?」 全日本代表メンバーに選ばれた後、協会の意向により、ドイツでサッカー修行を積んでいた中山もまた、 鈴仙が凶弾に倒れた事実を知っていた。――勿論、魔法等ではなく、リオカップ終了後の朝刊を見たためだ。 中山「リオカップは2−3でサンパウロが勝利。その後のウイニングラン中、コリンチャンスの鈴仙・優曇華院・イナバ選手が 目から血を流して倒れて救急搬送。幸い、命に別状はないが目の損傷が激しく、失明は免れず、選手生命は絶望的……」 国外の、しかも無名なサッカー選手の負傷事件故にドイツ国内での扱いはそう大きく無かったが、 その中身は充分にショッキングでかつ絶望的なものだった。 当然の事ながら、視力を失ったサッカー選手が再び現役に戻れる事は100%あり得ない。 一度失った視神経を再生させる技術など、今の医学界において存在しないからだ。 中山「(永琳さんのような名医が居れば……いや、それも難しいか。 今、幻想郷では豊聡耳神子が市長として政治を行っており、裏では八雲紫が手を引いていると聞いているが、 そのどちらもが、鈴仙さんに対立する存在だ。恐らくだが、永琳さんも助けを出そうにも、この二人を牽制する事が手一杯で、 そこまで手が行き届かないに違いない)」 加えて、そうした一般的な常識を超えた医師の存在も中山は知っていたが、 同時に、聡明な彼は、彼女の助けを借りる事は難しいという事実も、何となくではあるが推察出来ていた。 中山「(もはや、打つ手はないのか? 鈴仙さん……)」 中山は思い出す。自分や森崎と違って弱く、しかしひた向きな芯の強さと優しさを持つ少女の横顔を。 中山「(いや。大丈夫だ。鈴仙さんは……強い。そして彼女は、俺には無い、”何か”を持っている。 祈るんじゃあない。信じよう。鈴仙さん……まさか、そこで諦める気じゃあ、ないだろうな? 勿論、君は前に進み続ける筈だ。八方ふさがりの壁があっても、道を切り開くんだ……って、さ)」 これまでの鈴仙の強さと弱さを知る中山は、人知れず鈴仙を信じることにした。
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0ch BBS 2007-01-24