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【道は】鈴仙奮闘記41【違えど】
[747]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/12/31(日) 02:35:20 ID:??? ……パ ァ ァ ァ ァ ア ン! 妖夢「……え?」 ――ドンッ! 乾いた銃声が鳴り響いた時、妖夢は、自分が何かに思いっきり押されて、よろめき倒れた事しか認識できなかった。 パシャァッ! その直後、生暖かい物が自分の顔にかかった感覚を覚える。触れてみるとそれは鮮血だった。 倒れた自分を庇うように、見慣れたブレザーの少女が虚空を見つめて立ち塞がっており。 鈴仙「はぁ……はぁ……!」 妖夢「れい、せん……?」 鈴仙「ああ。その声は妖夢……。助かったのね。良か、った……」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 振り返った少女は――鈴仙は。完全に潰れた両目から、滝のように血を流しながら、安堵の笑みを零して。 ――倒れた。 妖夢「鈴仙。……鈴仙!? 私を庇ったの……!? なんで……? なんで、私なんかの為に……!?」
[748]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/12/31(日) 02:37:37 ID:??? ポタ、ポタ、ポタ……。 鈴仙「(血が出てる。銃弾が目に当たっちゃった……のかな? なんだか良く分かんないや。何にも見えないし、身体の感覚も無いし、まるで幽霊になっちゃったみたい。 でも、まあ。妖夢も助かったみたいだし……これで良かったのかな? 皆には迷惑かけちゃうかなぁ……でも、コーチもあれで元医者だし、ちゃちゃっと直してもらえばいいよね。 試合には負けたけれど、きっと、まだ何とかなる。何とかしないといけないもん。 だって、私はキャプテン鈴仙だし。お師匠様とも約束したし、姫様だって…… あれ? まだ暗いな。もう夜なのかしら? まだ何も見えないよ……? 何も見えない……何も聞こえない……何も……考え……ら……れ……)」
[749]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/12/31(日) 02:49:56 ID:??? 唐突な急展開になったところで今日はここまでにします。 詳細は今後の更新で描写しますが、今回のイベントにより、鈴仙は暫くの間、失明状態となります。 ですがこれは、物語の演出上のイベントであるため、参加者の選択肢とは一切関係ありません。 また、玉兎としての高い運動神経と妖力による気配察知により、サッカーや日常生活は普段通り可能です。 ただし、ゲーム開始当初から鈴仙を支えてきたスキル・狂気の瞳については、暫くの間封印されてしまいます。 これにより、1/2発動の能力値減少効果が消滅します。 ※第一部では、スキル・狂気の瞳は必殺シュート強化の効果もありましたが、第二部では記載されておらず、 また、必殺シュートまで弱体化すると鈴仙が全く使われなくなってしまうため、 バランス上、必殺シュート力については弱体化されないこととします。 ですが、この弱体化についても今後の布石であり、鈴仙の更なる成長への伏線となります。(詳細はネタバレの為省きます) 明日と明後日は旅行に行くので、更新できないと思います。 また、それ以降も暫く文章パートが続くかもしれませんが、気長にお付き合い頂ければ幸いです。 本日もお疲れ様でした。
[750]森崎名無しさん:2017/12/31(日) 11:29:30 ID:??? 乙なのです 鈴仙が妖夢を助ける展開はなんとなく予想してましたが、鈴仙がこんなことになるのはビックリでした 今年も楽しい作品をありがとうございます。 鈴仙奮闘記も長編になりましたね、ここまで続ける、しかも読者参加型の作品をというのは 並大抵ではないと思います。 来年も鈴仙奮闘記を楽しみにしています。 作者さんにとって来年が良い年になりますように。
[751]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 02:09:13 ID:??? 今年も更新していきたかったのですが、文章が書ききれなかった為明日更新します(汗) 東方憑依華が出ましたね…私も今日はずっとプレーしてました。 感想としては色々ありますが、とりあえず鈴仙が割と不憫過ぎて笑ってしまいましたw >>750 乙ありがとうございます。昨年は参加ありがとうございました、今年もよろしくお願いします。 キャプ森やキャプ翼を下敷きにしつつ、常識にとらわれない(かつ面白い)展開を目指しているので、 楽しんで読んで頂いて大変嬉しいです。 拙作ももうすぐ開始5周年を迎えますが、漸く全体のラストも僅かに見えて来ました。 (エンディングまで残り9試合で、これまで5年でだいたい21試合やって来たので、 丁度リオカップ終了時点で、21/30=70%は物語を終えた形です) 昨年度は更新が停滞する時もありましたが、今年はクライマックスに向けて、 モチベーション高く続けていきたいと思っています。
[752]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:35:46 ID:??? 〜幻想郷・八雲紫の領域〜 紫「――鈴仙・優曇華院・イナバ。己の分も弁えず、瞳に限界を超えた負荷を掛け。そして、自滅したか」 空間の裂け目から事の顛末を観測していた八雲紫は、僅かな嘲笑を湛えながら、そう吐き捨てた。 紫「貴女の計画も、とうとう失敗に終わるのではないかしら? 八意永琳」 永琳「…………」 永琳は、そんな彼女の傍に寄り添い、共に鈴仙が倒れる瞬間を見ていた。 八雲紫は、永琳が己の計画――霊夢や一部の有力人妖を中心とした全幻想郷代表を優勝させ、 既存の幻想郷の秩序をが盤石である事を世界に知らしめる――に反対している事を知っていたが、 知りつつ尚、彼女は永琳を自らの傍に置きたがり、永琳もまた彼女と行動を共にする事が多かった。 ……無論、互いが互いを監視する為に、である。 紫「私の目的は一つ。今の全幻想郷代表を、来たる幻想スーパーJr.ユース大会で優勝させる。 そしてそれは、より正々堂々とした手段で為される事が望ましい。その方が、我らの強さをより客観的に証明できるから。 ――だから、私は貴女達の手駒を直接妨害する気は無かったのだけれど」 永琳「第三勢力は――豊聡耳神子の『ハイパーカンピオーネ』計画は別よ。 彼女達は、自分達が勝つ為なら何でもやる。それこそ、選手の暗殺だってするでしょう。 別に私は、八雲紫。貴女を疑いなどしていない」 紫「あら、それは助かったわ。……まあ。それは別として、私は貴女の愛弟子が志半ばで倒れても、 それはそれで、悪くは無い結果だとも思ってるんだけどね。正々堂々が理想でも、棚ぼたを拾わない理由は無いもの」 くすくす、と悪趣味な笑いを向ける境界の妖怪を無視して、永琳は続ける。 永琳「……『プロジェクト・カウンターハクレイ』は、鈴仙を中心とした新チームを主軸としていた。 その主軸が、視力を失って倒れたとなれば、私達の計画は徒花に終わる可能性は、 いよいよ高くなったと言わざるを得ないでしょうね。ただ――」
[753]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:37:15 ID:??? 永琳は僅かに口を歪め、 永琳「――あの子、ああ見えて結構しぶといわよ。この程度で棚ぼたを拾ったと思っているようでは、まだまだ読みが甘いわね」 紫「ご忠言、大変助かります。ですがご安心を。兎が一匹沈んだところで、勝利の為の手を緩めるつもり等無い。 ――それは、貴女も良く理解している筈よね?」 紫に対して言い放つも、彼女もまた余裕を崩さない。永琳はそれが虚勢でない事を承知していた。 永琳「(……確かに、全幻想郷選抜代表は、強い。八雲紫本人は勿論として、博麗霊夢も感情を殺し、強くなった。 他のメンバーも海外に派遣させ修行させる事で、実力の底上げを図っていると聞いている。 そして私も、八雲紫に敗北時の言い訳を作らせ、勝負を保留とさせない為にも、手を抜く訳にはいかない。 今回のような挫折が無くても、元々鈴仙に取っては厳しい戦いとなるに決まっている)」 八雲紫は――その内面が月の狂気に侵されているか否かを除いても、賢い妖怪だった。故に彼女は違えない。 常に最善手を取り続け、次の大会における、全幻想郷選抜代表の優勝を日々、盤石なものにしている。 全ては、これまで自分が築いてきた幻想郷の秩序の正当性と強さを、より多くの人間に対し理解させる為。 『プロジェクト・カウンターハクレイ』や『ハイパーカンピオーネ』という”異変”を、これまで通り、博麗の巫女によって解決させる為。 博麗霊夢は、鈴仙・優曇華院・イナバや豊聡耳神子よりも優れた存在であるという事を認識させる為。 永琳「(今回の八雲紫に慢心や油断は無い。対する鈴仙は敗北という大きな挫折を味わい、肉体的にも大きく損なわれた。 加えて更に、豊聡耳神子という、小物ながら厄介な第三勢力の妨害も耐えなくてはならない。 厳しい状況になっているのは、認めざるを得ないわね)」 永琳ですら、もはや今回の状況を楽観視してはいなかった。 しかし、八雲紫という巨大な敵を前に、永琳は監視を続ける事が手一杯であり、打つ手を出せないでいる。 物語はもはや、彼女の掌から離れ、想定を超えて大きなものとなっていた。 故に、永琳は改めて思いを託して祈る事にした。――神ではない。この物語の主人公に対してである。 永琳「(鈴仙。貴女が切り開こうとする道は依然険しい。そして、私はもはや、貴女に一方的な期待を抱く無責任な第三者に過ぎない。 それでも、祈らせて貰うわね。……鈴仙、這い上がりなさい。そして、月の狂気に取り付かれた八雲紫を倒しなさい。 さもなくば、『純狐』が目覚め、地上と月は破滅に導かれる。どうか……諦めないで)」
[754]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:38:35 ID:??? 〜ドイツ・シュツットガルトスタジアム〜 中山「……何だって、鈴仙さんが銃撃を受け意識不明だと!?」 全日本代表メンバーに選ばれた後、協会の意向により、ドイツでサッカー修行を積んでいた中山もまた、 鈴仙が凶弾に倒れた事実を知っていた。――勿論、魔法等ではなく、リオカップ終了後の朝刊を見たためだ。 中山「リオカップは2−3でサンパウロが勝利。その後のウイニングラン中、コリンチャンスの鈴仙・優曇華院・イナバ選手が 目から血を流して倒れて救急搬送。幸い、命に別状はないが目の損傷が激しく、失明は免れず、選手生命は絶望的……」 国外の、しかも無名なサッカー選手の負傷事件故にドイツ国内での扱いはそう大きく無かったが、 その中身は充分にショッキングでかつ絶望的なものだった。 当然の事ながら、視力を失ったサッカー選手が再び現役に戻れる事は100%あり得ない。 一度失った視神経を再生させる技術など、今の医学界において存在しないからだ。 中山「(永琳さんのような名医が居れば……いや、それも難しいか。 今、幻想郷では豊聡耳神子が市長として政治を行っており、裏では八雲紫が手を引いていると聞いているが、 そのどちらもが、鈴仙さんに対立する存在だ。恐らくだが、永琳さんも助けを出そうにも、この二人を牽制する事が手一杯で、 そこまで手が行き届かないに違いない)」 加えて、そうした一般的な常識を超えた医師の存在も中山は知っていたが、 同時に、聡明な彼は、彼女の助けを借りる事は難しいという事実も、何となくではあるが推察出来ていた。 中山「(もはや、打つ手はないのか? 鈴仙さん……)」 中山は思い出す。自分や森崎と違って弱く、しかしひた向きな芯の強さと優しさを持つ少女の横顔を。 中山「(いや。大丈夫だ。鈴仙さんは……強い。そして彼女は、俺には無い、”何か”を持っている。 祈るんじゃあない。信じよう。鈴仙さん……まさか、そこで諦める気じゃあ、ないだろうな? 勿論、君は前に進み続ける筈だ。八方ふさがりの壁があっても、道を切り開くんだ……って、さ)」 これまでの鈴仙の強さと弱さを知る中山は、人知れず鈴仙を信じることにした。
[755]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:39:52 ID:??? 〜アルゼンチン・ディアスの私室〜 ディアス「『リオカップ注目のストライカー、鈴仙・優曇華院・イナバ、両目失明により選手引退へ』……だってさ、パスカル」 パスカル「信じてなるもんか。レイセンは両目を失った位でサッカーを止める程おしとやかな女の子じゃない。 あいつは、きっとまたサッカーをやる。そして、俺達アルゼンチンの最大の脅威となって立ちふさがる筈なんだ」 ディアス「ふー。やっぱ変わったよなぁ、パスカル。その……ゲンソーキョーとやらに行ってさ」 鈴仙を信じる者は他にも居た。パスカルは親友が呆れてもなお、繰り返して力説を続けていた。 新聞の報道は嘘だ、本当だとしても彼女は強いから大丈夫だ、彼女は俺達の最大のライバルだ、 ……そんな非論理的な説明が10回を超えた頃合いで、流石のディアスも口を出した。
[756]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:43:05 ID:??? ディアス「昔からお前はおりこうさんで要領が良かったけれど、逆を言えば慎重派過ぎて、やる前から諦めるような事も多かったよな」 そのお蔭で助かった事もあるけどな、と笑いながら親友は続ける。 ディアス「だけど、今は違う。今のパスカルは……なんというか、その。熱くなったよな。どっちかというと、俺に近くなった。 プレースタイルだけ見れば、俺に合わせる事とか戦術とか、相変わらずなんだけどさ。 その、”相変わらず”の範囲内で、凄い攻めるようになった。非現実的な案でも、実際にやり遂げようとするようになった。 やっぱ女が出来ると違うのか〜? ん〜?」 パスカル「おい、何度も言っているだろう。レイセンとはそんなよこしまな関係じゃあないって。 純粋に、切磋琢磨し合い、悩みを共有できる親友だっただけさ」 ディアスははいはい、とまともに取り合わず、しかしパスカルへの信頼を隠さずにこう続けた。 ディアス「……ま。何にせよパスカルの読みは鋭いからな。俺も信じる事にするぜ。 メクラの少女が謎の超能力を駆使して、俺達ゴールデンコンビの前に立ちはだかるって未来をさ」 ただし。もっとも、とディアスは付け加えるので、パスカルもまた言葉を乗せて重ねて宣言する。 ディアス・パスカル「「……どんな状態であろうと、俺達に勝てる事は100%あり得ないけどな」」 彼らにとって、鈴仙との対決は、もはや祈るとか信じるとか以前の『規定事項』となっていた。
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0ch BBS 2007-01-24