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【道は】鈴仙奮闘記41【違えど】
[753]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:37:15 ID:??? 永琳は僅かに口を歪め、 永琳「――あの子、ああ見えて結構しぶといわよ。この程度で棚ぼたを拾ったと思っているようでは、まだまだ読みが甘いわね」 紫「ご忠言、大変助かります。ですがご安心を。兎が一匹沈んだところで、勝利の為の手を緩めるつもり等無い。 ――それは、貴女も良く理解している筈よね?」 紫に対して言い放つも、彼女もまた余裕を崩さない。永琳はそれが虚勢でない事を承知していた。 永琳「(……確かに、全幻想郷選抜代表は、強い。八雲紫本人は勿論として、博麗霊夢も感情を殺し、強くなった。 他のメンバーも海外に派遣させ修行させる事で、実力の底上げを図っていると聞いている。 そして私も、八雲紫に敗北時の言い訳を作らせ、勝負を保留とさせない為にも、手を抜く訳にはいかない。 今回のような挫折が無くても、元々鈴仙に取っては厳しい戦いとなるに決まっている)」 八雲紫は――その内面が月の狂気に侵されているか否かを除いても、賢い妖怪だった。故に彼女は違えない。 常に最善手を取り続け、次の大会における、全幻想郷選抜代表の優勝を日々、盤石なものにしている。 全ては、これまで自分が築いてきた幻想郷の秩序の正当性と強さを、より多くの人間に対し理解させる為。 『プロジェクト・カウンターハクレイ』や『ハイパーカンピオーネ』という”異変”を、これまで通り、博麗の巫女によって解決させる為。 博麗霊夢は、鈴仙・優曇華院・イナバや豊聡耳神子よりも優れた存在であるという事を認識させる為。 永琳「(今回の八雲紫に慢心や油断は無い。対する鈴仙は敗北という大きな挫折を味わい、肉体的にも大きく損なわれた。 加えて更に、豊聡耳神子という、小物ながら厄介な第三勢力の妨害も耐えなくてはならない。 厳しい状況になっているのは、認めざるを得ないわね)」 永琳ですら、もはや今回の状況を楽観視してはいなかった。 しかし、八雲紫という巨大な敵を前に、永琳は監視を続ける事が手一杯であり、打つ手を出せないでいる。 物語はもはや、彼女の掌から離れ、想定を超えて大きなものとなっていた。 故に、永琳は改めて思いを託して祈る事にした。――神ではない。この物語の主人公に対してである。 永琳「(鈴仙。貴女が切り開こうとする道は依然険しい。そして、私はもはや、貴女に一方的な期待を抱く無責任な第三者に過ぎない。 それでも、祈らせて貰うわね。……鈴仙、這い上がりなさい。そして、月の狂気に取り付かれた八雲紫を倒しなさい。 さもなくば、『純狐』が目覚め、地上と月は破滅に導かれる。どうか……諦めないで)」
[754]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:38:35 ID:??? 〜ドイツ・シュツットガルトスタジアム〜 中山「……何だって、鈴仙さんが銃撃を受け意識不明だと!?」 全日本代表メンバーに選ばれた後、協会の意向により、ドイツでサッカー修行を積んでいた中山もまた、 鈴仙が凶弾に倒れた事実を知っていた。――勿論、魔法等ではなく、リオカップ終了後の朝刊を見たためだ。 中山「リオカップは2−3でサンパウロが勝利。その後のウイニングラン中、コリンチャンスの鈴仙・優曇華院・イナバ選手が 目から血を流して倒れて救急搬送。幸い、命に別状はないが目の損傷が激しく、失明は免れず、選手生命は絶望的……」 国外の、しかも無名なサッカー選手の負傷事件故にドイツ国内での扱いはそう大きく無かったが、 その中身は充分にショッキングでかつ絶望的なものだった。 当然の事ながら、視力を失ったサッカー選手が再び現役に戻れる事は100%あり得ない。 一度失った視神経を再生させる技術など、今の医学界において存在しないからだ。 中山「(永琳さんのような名医が居れば……いや、それも難しいか。 今、幻想郷では豊聡耳神子が市長として政治を行っており、裏では八雲紫が手を引いていると聞いているが、 そのどちらもが、鈴仙さんに対立する存在だ。恐らくだが、永琳さんも助けを出そうにも、この二人を牽制する事が手一杯で、 そこまで手が行き届かないに違いない)」 加えて、そうした一般的な常識を超えた医師の存在も中山は知っていたが、 同時に、聡明な彼は、彼女の助けを借りる事は難しいという事実も、何となくではあるが推察出来ていた。 中山「(もはや、打つ手はないのか? 鈴仙さん……)」 中山は思い出す。自分や森崎と違って弱く、しかしひた向きな芯の強さと優しさを持つ少女の横顔を。 中山「(いや。大丈夫だ。鈴仙さんは……強い。そして彼女は、俺には無い、”何か”を持っている。 祈るんじゃあない。信じよう。鈴仙さん……まさか、そこで諦める気じゃあ、ないだろうな? 勿論、君は前に進み続ける筈だ。八方ふさがりの壁があっても、道を切り開くんだ……って、さ)」 これまでの鈴仙の強さと弱さを知る中山は、人知れず鈴仙を信じることにした。
[755]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:39:52 ID:??? 〜アルゼンチン・ディアスの私室〜 ディアス「『リオカップ注目のストライカー、鈴仙・優曇華院・イナバ、両目失明により選手引退へ』……だってさ、パスカル」 パスカル「信じてなるもんか。レイセンは両目を失った位でサッカーを止める程おしとやかな女の子じゃない。 あいつは、きっとまたサッカーをやる。そして、俺達アルゼンチンの最大の脅威となって立ちふさがる筈なんだ」 ディアス「ふー。やっぱ変わったよなぁ、パスカル。その……ゲンソーキョーとやらに行ってさ」 鈴仙を信じる者は他にも居た。パスカルは親友が呆れてもなお、繰り返して力説を続けていた。 新聞の報道は嘘だ、本当だとしても彼女は強いから大丈夫だ、彼女は俺達の最大のライバルだ、 ……そんな非論理的な説明が10回を超えた頃合いで、流石のディアスも口を出した。
[756]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:43:05 ID:??? ディアス「昔からお前はおりこうさんで要領が良かったけれど、逆を言えば慎重派過ぎて、やる前から諦めるような事も多かったよな」 そのお蔭で助かった事もあるけどな、と笑いながら親友は続ける。 ディアス「だけど、今は違う。今のパスカルは……なんというか、その。熱くなったよな。どっちかというと、俺に近くなった。 プレースタイルだけ見れば、俺に合わせる事とか戦術とか、相変わらずなんだけどさ。 その、”相変わらず”の範囲内で、凄い攻めるようになった。非現実的な案でも、実際にやり遂げようとするようになった。 やっぱ女が出来ると違うのか〜? ん〜?」 パスカル「おい、何度も言っているだろう。レイセンとはそんなよこしまな関係じゃあないって。 純粋に、切磋琢磨し合い、悩みを共有できる親友だっただけさ」 ディアスははいはい、とまともに取り合わず、しかしパスカルへの信頼を隠さずにこう続けた。 ディアス「……ま。何にせよパスカルの読みは鋭いからな。俺も信じる事にするぜ。 メクラの少女が謎の超能力を駆使して、俺達ゴールデンコンビの前に立ちはだかるって未来をさ」 ただし。もっとも、とディアスは付け加えるので、パスカルもまた言葉を乗せて重ねて宣言する。 ディアス・パスカル「「……どんな状態であろうと、俺達に勝てる事は100%あり得ないけどな」」 彼らにとって、鈴仙との対決は、もはや祈るとか信じるとか以前の『規定事項』となっていた。
[757]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:44:20 ID:??? *** ――鈴仙、這い上がりなさい。そして、月の狂気に取り付かれた八雲紫を倒しなさい。 さもなくば、『純狐』が目覚め、地上と月は破滅に導かれる。どうか……諦めないで。 鈴仙さん……まさか、そこで諦める気じゃあ、ないだろうな? 勿論、君は前に進み続ける筈だ。八方ふさがりの壁があっても、道を切り開くんだ。 レイセンは、きっとまたサッカーをやる。そして、俺達アルゼンチンの最大の脅威となって立ちふさがる筈なんだ。 闇の中から、そんな声が聞こえたような気がした。鈴仙の世界は生まれてくる前の赤子のように、暗く、しかし温かい。 天地がどちらにあるかも分からぬ、混然とした暗闇の中をどの位揺蕩っていただろうか。 ??「……い……せん。……れいせん」 鈴仙「…………」 これまでよりも一際、はっきりとした声が聞こえた。それに答えかけたくて、鈴仙の意識は覚醒を始める。 ??「れいせん……れいせん! ――鈴仙!」 鈴仙「…………。その、声は……」
[758]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:48:34 ID:??? 少女の声が聞こえ、鈴仙は意識を取り戻す。暗闇のまま、鈴仙は声の主に対して呼びかけた。 ――彼女は……。 先着1名様で、 ★声の主→!card★ と書き込んでください。マークで分岐します。 JOKER・クラブA→ロベルト(少女声)「良かったぽよ〜(??>?<?)。??」鈴仙、ショックで心停止!(BADENDです) それ以外→星「良かった。もう二度と目を覚まさなかったらどうしようかと」メキシコに行っていた鈴仙の仲間・寅丸星だった!
[759]森崎名無しさん:2018/01/03(水) 23:49:20 ID:??? ★声の主→ スペードA ★
[760]森崎名無しさん:2018/01/03(水) 23:49:23 ID:??? ★声の主→ ダイヤA ★
[761]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:49:57 ID:??? ……と、言ったところで短いですが今日はここまでです。 声の主は折角なので判定にしてみました(BADEND分岐だけですが)
[762]森崎名無しさん:2018/01/03(水) 23:52:57 ID:??? 盲目で足をメインに使うとなると南斗白鷺拳習得できそうっすね
[763]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/05(金) 00:01:04 ID:??? ★声の主→ スペードA ★ それ以外→星「良かった。もう二度と目を覚まさなかったらどうしようかと」メキシコに行っていた鈴仙の仲間・寅丸星だった! 星「……良かった。もう二度と目を覚まさなかったらどうしようかと、ずっと心配で眠れなかったんですからね」 鈴仙「……え?」 その温かさと慌ただしさが入り混じった声を聴いて、鈴仙はおもむろにベッドから身体を起こす。 同時に両目に固く巻かれていた包帯に気付いて、もどかしげに身をよじっていると、 その声は、「ああ、取っちゃダメですよ!?」と大袈裟に慌てふためいたので、一旦収める。 ふう、と言った溜息が聞こえた後に、彼女は続きを話し始めた。 星「……命蓮寺の寅丸です。鈴仙、私達もメキシコでの修行を終えて、つい数日前、ようやく貴女達と合流できたんですよ」 鈴仙「ああ。やっぱり星なのね!」 彼女の名前は寅丸星。妖怪寺の命蓮寺で住職兼本尊(代理)を務める寅の妖怪だ。 鈴仙はとある事件をきっかけに彼女との親交を深めており、『プロジェクト・カウンターハクレイ』が作る新チームにおいても、 星は鈴仙と同じFWとして名を連ねている。 諸般の都合上、リオカップには間に合わない事は聞いていたが、まさかこんな形で再開するとは――。 星の人懐っこい笑顔を見たいのに見れない鈴仙は、もどかしく思いながらも旧友との再会を喜んでいたが。 鈴仙「……って、アレ? さっき星、『つい数日前』……って、言った?」 星「ええ。ええ。そうですよ! 私達が無事ブラジルに降り立ったら、鈴仙が大けがをして病院に担ぎ込まれたと聞きまして。 他の皆さんもてんやわんやの大騒ぎ! 皆で持ち回りで看病すると決まったは良いものの、鈴仙はずうっと目を覚まさないし……。 ええっと……計算すると……一週間。そうです。鈴仙。貴女はここ一週間の間、ずっと眠り続けていたんですよ……!」 鈴仙「い、一週間も……!? ウソでしょ……!?」
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0ch BBS 2007-01-24