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【道は】鈴仙奮闘記41【違えど】
[756]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:43:05 ID:??? ディアス「昔からお前はおりこうさんで要領が良かったけれど、逆を言えば慎重派過ぎて、やる前から諦めるような事も多かったよな」 そのお蔭で助かった事もあるけどな、と笑いながら親友は続ける。 ディアス「だけど、今は違う。今のパスカルは……なんというか、その。熱くなったよな。どっちかというと、俺に近くなった。 プレースタイルだけ見れば、俺に合わせる事とか戦術とか、相変わらずなんだけどさ。 その、”相変わらず”の範囲内で、凄い攻めるようになった。非現実的な案でも、実際にやり遂げようとするようになった。 やっぱ女が出来ると違うのか〜? ん〜?」 パスカル「おい、何度も言っているだろう。レイセンとはそんなよこしまな関係じゃあないって。 純粋に、切磋琢磨し合い、悩みを共有できる親友だっただけさ」 ディアスははいはい、とまともに取り合わず、しかしパスカルへの信頼を隠さずにこう続けた。 ディアス「……ま。何にせよパスカルの読みは鋭いからな。俺も信じる事にするぜ。 メクラの少女が謎の超能力を駆使して、俺達ゴールデンコンビの前に立ちはだかるって未来をさ」 ただし。もっとも、とディアスは付け加えるので、パスカルもまた言葉を乗せて重ねて宣言する。 ディアス・パスカル「「……どんな状態であろうと、俺達に勝てる事は100%あり得ないけどな」」 彼らにとって、鈴仙との対決は、もはや祈るとか信じるとか以前の『規定事項』となっていた。
[757]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:44:20 ID:??? *** ――鈴仙、這い上がりなさい。そして、月の狂気に取り付かれた八雲紫を倒しなさい。 さもなくば、『純狐』が目覚め、地上と月は破滅に導かれる。どうか……諦めないで。 鈴仙さん……まさか、そこで諦める気じゃあ、ないだろうな? 勿論、君は前に進み続ける筈だ。八方ふさがりの壁があっても、道を切り開くんだ。 レイセンは、きっとまたサッカーをやる。そして、俺達アルゼンチンの最大の脅威となって立ちふさがる筈なんだ。 闇の中から、そんな声が聞こえたような気がした。鈴仙の世界は生まれてくる前の赤子のように、暗く、しかし温かい。 天地がどちらにあるかも分からぬ、混然とした暗闇の中をどの位揺蕩っていただろうか。 ??「……い……せん。……れいせん」 鈴仙「…………」 これまでよりも一際、はっきりとした声が聞こえた。それに答えかけたくて、鈴仙の意識は覚醒を始める。 ??「れいせん……れいせん! ――鈴仙!」 鈴仙「…………。その、声は……」
[758]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:48:34 ID:??? 少女の声が聞こえ、鈴仙は意識を取り戻す。暗闇のまま、鈴仙は声の主に対して呼びかけた。 ――彼女は……。 先着1名様で、 ★声の主→!card★ と書き込んでください。マークで分岐します。 JOKER・クラブA→ロベルト(少女声)「良かったぽよ〜(??>?<?)。??」鈴仙、ショックで心停止!(BADENDです) それ以外→星「良かった。もう二度と目を覚まさなかったらどうしようかと」メキシコに行っていた鈴仙の仲間・寅丸星だった!
[759]森崎名無しさん:2018/01/03(水) 23:49:20 ID:??? ★声の主→ スペードA ★
[760]森崎名無しさん:2018/01/03(水) 23:49:23 ID:??? ★声の主→ ダイヤA ★
[761]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/03(水) 23:49:57 ID:??? ……と、言ったところで短いですが今日はここまでです。 声の主は折角なので判定にしてみました(BADEND分岐だけですが)
[762]森崎名無しさん:2018/01/03(水) 23:52:57 ID:??? 盲目で足をメインに使うとなると南斗白鷺拳習得できそうっすね
[763]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/05(金) 00:01:04 ID:??? ★声の主→ スペードA ★ それ以外→星「良かった。もう二度と目を覚まさなかったらどうしようかと」メキシコに行っていた鈴仙の仲間・寅丸星だった! 星「……良かった。もう二度と目を覚まさなかったらどうしようかと、ずっと心配で眠れなかったんですからね」 鈴仙「……え?」 その温かさと慌ただしさが入り混じった声を聴いて、鈴仙はおもむろにベッドから身体を起こす。 同時に両目に固く巻かれていた包帯に気付いて、もどかしげに身をよじっていると、 その声は、「ああ、取っちゃダメですよ!?」と大袈裟に慌てふためいたので、一旦収める。 ふう、と言った溜息が聞こえた後に、彼女は続きを話し始めた。 星「……命蓮寺の寅丸です。鈴仙、私達もメキシコでの修行を終えて、つい数日前、ようやく貴女達と合流できたんですよ」 鈴仙「ああ。やっぱり星なのね!」 彼女の名前は寅丸星。妖怪寺の命蓮寺で住職兼本尊(代理)を務める寅の妖怪だ。 鈴仙はとある事件をきっかけに彼女との親交を深めており、『プロジェクト・カウンターハクレイ』が作る新チームにおいても、 星は鈴仙と同じFWとして名を連ねている。 諸般の都合上、リオカップには間に合わない事は聞いていたが、まさかこんな形で再開するとは――。 星の人懐っこい笑顔を見たいのに見れない鈴仙は、もどかしく思いながらも旧友との再会を喜んでいたが。 鈴仙「……って、アレ? さっき星、『つい数日前』……って、言った?」 星「ええ。ええ。そうですよ! 私達が無事ブラジルに降り立ったら、鈴仙が大けがをして病院に担ぎ込まれたと聞きまして。 他の皆さんもてんやわんやの大騒ぎ! 皆で持ち回りで看病すると決まったは良いものの、鈴仙はずうっと目を覚まさないし……。 ええっと……計算すると……一週間。そうです。鈴仙。貴女はここ一週間の間、ずっと眠り続けていたんですよ……!」 鈴仙「い、一週間も……!? ウソでしょ……!?」
[764]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/05(金) 00:02:45 ID:??? 鈴仙の脳裏にこれまでの記憶がよみがえる。リオカップ決勝。仲間の奮闘。恐るべきストラットと翼。覆せぬ劣勢。惨めな敗北。 久しぶりの妖夢との会話。銀色の銃弾。真っ赤に燃え上がり、やがて真っ黒に染まった視界。そして――薄れる意識。 つい数秒前のこととして認識できる一連の出来事から、もうそんなに時間が経ったのだと、鈴仙は俄かに信じられなかった。 鈴仙「み、皆は!? 妖夢は!?」 星「皆さんは今ごろ、バラバラです。早速サッカー修行に励む方、病院の待合室で、次の看病の番を待っている方、 孤独に物思いに耽っている方、図書館に籠って研究を進める方……。ただ、皆一緒なのは、鈴仙の事を心配しているって事ですね」 星は優しい笑みを浮かべてそう告げる。ただし、話題が妖夢に至ると顔を曇らせて、 星「……私は、妖夢さんの事は知りません。ただ、リオカップの場に同席していた皆さんによると、 『私は何をしていたんだ』『鈴仙にひどい事をしてしまった』……と、泣きながら、どこかへ去っていったらしいです。 佳歩さんとかは、『妖夢さん、私達と。鈴仙さまと一緒に戦いましょう!』と呼び止めたらしいのですが、 『自分には、鈴仙と共に戦う資格などない』――と頑なに断られたみたいで……」 ――と、詳細に当時の状況を(又聞きではあるが)話してくれた。 鈴仙「そう。……とにかく、妖夢は無事、なんだね……」 星「はい。鈴仙が庇ったお蔭で、凶弾から逃れられたそうです」 そう話す星は、「鈴仙。貴女も無茶はしないでください」と暗に語っているようにも思えた。 鈴仙は改めて、皆にも心配を掛けて済まないと言いかけたところで――。 ガチャリ……。 コーチ「……声が聞こえたから来てみたが。漸く、目を覚ましたようじゃな。鈴仙よ」
[765]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/05(金) 00:03:46 ID:??? 星「ああ、先生!」 鈴仙「(せ、先生?)……その声は、コーチですね」 ゆっくりとした足取りで、老コーチがドアを開けて入って来る。 永遠亭で嗅ぎ慣れた消毒薬の匂いがして、ドアの向こうからは忙しそうな看護師の足音が聞こえたので、 ここが病院であると、鈴仙は改めて認識する事が出来た。 鈴仙「あの、コーチ。私ってやっぱり本当に、ずっと眠っていたんですか……?」 鈴仙はおずおずと元医師の老人に問いかけると、彼は深く頷いた。 コーチ「……眼窩から脳髄に掛けて、深々と弾丸が刺さっておった。緊急手術をしたは良いが、 どうやら弾丸には特殊な神経毒が塗られていたようじゃ。強力な薬により、速やかに解毒は出来たが、 流石に、手術と服薬で体力の限界だったのだろう。……身体機能に問題は無くとも、休息が必要だったという事じゃ」 星「なんでも、数ある筋肉のうち、サッカー筋のみをピンポイントで死滅させる毒薬だったそうです。 もしも先生が手当をして下さらなかったら、今頃は起きてもサッカーができない身体になっていたと……」 鈴仙「そ、そうっすか……」 その答えに対し、鈴仙は現実味を感じられないでいた。 自分はこれまで、形はともあれサッカーをしていただけだ。命を狙われるような事をした覚えはない。 それなのに今の自分は確かに病院のベッドに横たわっており、おまけに周囲を見渡す事すらできない。 が、何かの悪夢ではないかと思って頬っぺたをつねってみても、当然の如く何も起こらない。
[766]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/05(金) 00:04:51 ID:??? コーチ「実感が湧かぬのも仕方あるまいて。……いや。むしろ、実感が湧かぬからこそ、救われる事もあるのかもしれぬ。 ある医師は、『老人の痴呆は、死の恐怖を和らげる為の神からの贈り物である』と話していたが、 今はある意味、それと同じなのかもしれぬな……」 そんな鈴仙の様子を見て、コーチは小さく独り言ちると、星はハッと息を呑む。 ……そんな風に扱われると、暢気な鈴仙も不安だ。鼻や耳をつねるのを止めて、鈴仙は改めて二人に向き直る。 鈴仙「……あの。この包帯、なんですけど」 手で、自分の目を覆う分厚い包帯を触りながら、問いかける。 コーチ「負傷自体は、案外大した事は無いゾイ。もう一、二週間程すれば傷も癒える。 妖怪、とやらであればもっと早いじゃろうて。問題は――」 見えはしないが、続きに窮する老人の顔は、曇っているように思えた。 星なんかは何も喋っても居ないのに、息遣いだけで不安を感じているのが良く分かる。 コーチ「――鈴仙よ。心して聞きなさい」 鈴仙「……はい」 コーチがここまで落ち着き払って、理性ある話し方をしているのは珍しかった。 珍しいだけに、鈴仙は彼が次にどれだけ重大な事を話そうとしているのかが良く分かる。 ……果たして、彼は鈴仙に対して率直に述べた。 コーチ「問題は、眼球だった。銃撃の当たり所が悪く、両目共に粉々に砕けていた。 眼球だけじゃない。その根元の神経が、完全に焼け焦げていた。 ……君も医学を志しているならば、それが何を意味するのか、分かるだろう?」
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0ch BBS 2007-01-24