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【SSです】幻想でない軽業師
[173]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:27:17 ID:??? ヒューイ「よろしくって何が?」 静葉「?」 最初、言われてる意味が静葉はわからなかった。 よろしくとは言葉通り、これからも同じチームの一員としてよろしく、という意味である。 如何におつむが弱い妖精といえど、それくらいは理解出来る。 出来る筈である――だからこそ、静葉は一瞬虚を突かれた。 妖精1「何が?じゃないわよ……これからも同じチームとして、って事でしょ」 ヒューイ「?」 思わず二の句が継げなかった静葉に代わり、妖精1がフォローをする。 それでも、ヒューイはよくわかってない様子でやはり首を傾げ……口の中で咀嚼していたお芋をごっくんすると、 その大きく丸い瞳をぱちくりさせながら、ただ一言、言った。 ヒューイ「……私、あの人間についてくよ?」 静葉「……は?」 その一言に、静葉は思わず間の抜けた声を出し。 妖精1「え?」 サンタナ「え、えええええええええっ!?」 残る妖精2人は、片方は呆気にとられたように――そして、もう片方は驚きのあまり絶叫をするのだった。
[174]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:28:59 ID:??? 驚愕をしていたのは、3人だけではない。 ほぼオータムスカイズ所属の選手たち、全てが驚いていた。 彼女たちの認識としては、ヒューイは反町と一応の師弟関係こそ結んでいるものの、 その絆については妖精1とにとりのように固いものでは無い。 むしろ縁深く、親しいのは妖精トリオ同士であった。 だからこそ、妖精1とサンタナが残留を決めた際、ヒューイも残るものと決めていた。決めつけていた。 だが、静葉が感じたように、ここまで彼女はこの話し合いの場で一言も喋っていなかった。 己の意志を示してはいなかった。 故に、ここで移籍を表明するというのも――反町についていく、というのも……可能性としては残っていただろう。 静葉「な……何故?」 頭を鈍器で殴られたような、頭痛を覚えながらようやくの想いで静葉は言葉を紡いだ。 いや、妖精は気まぐれなのだ。計算通りに行かない事も、多々ある。 反町についていく――と言っても、それが一時的な思いなのだとしたら、或いは、引き留める事も出来るかもしれない。 サンタナと妖精1が残留を表明しているのだから、少し突いてやれば天秤はこちらに傾く。 そう考えて、静葉はヒューイの言葉を待った。 ただ、結論から言えば静葉のその考えは見当違いのものだった。 ヒューイ「何故って……だってさ」 それは感情ではなく。 ヒューイ「人間の所にいた方が、強くなれるしレギュラーになれるもん」 静葉「…………は」 実利だけを求めての移籍。
[175]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:30:21 ID:??? 今のヒューイなら、どこに行こうがレギュラーを取れるだけの実力がある。 反町がいたから強くなったという訳ではない、 無論、反町がヒューイの練習を見てやったという事も多々あったが、ヒューイ自身の努力の結果もあっての事だ。 ただ、少なくともヒューイはそう感じてしまっている。 かつてサンタナがチルノを忌み嫌い、そして練習で勝利を収め、 チルノに勝った=自分こそが最強であると思いこんだように。 妖精1が代表レベルの闘いで相応の活躍が出来る程に成長をしても、 しかし、未だに過去のトラウマから己の力量に自信を持てていないように。 妖精という種族は根本的に短絡的であり、そして思い込みが激しく、意固地なのだ。 ヒューイの場合もまた、そうだった。 彼女は反町がいたから自分は強くなれた、反町がいたからレギュラーが取れたと思い込んでいる。 それが事実かどうかはさておき、少なくとも、彼女にとっては真実だった。 そんな彼女が、どうして反町から離れられるだろう。 例え妖精1やサンタナと別れる事になったとしても、彼女は反町が移籍をするという話を聞いた時から自分もついていくと決めていた。 静葉「あ、あのね、ヒューイ……落ち着いて聞いて」 ヒューイ「それにさ」 それでもなんとか説得しようとする静葉の言葉を無視して、ヒューイは続ける。 大人びていて、臆病で、劣等感に塗れ、やや斜に構えているが本心は素直な妖精1。 人一倍元気で、やかましく、時に傲慢で暴走する事も多いサンタナ。 彼女らに比べるとヒューイは子供っぽく、いつも腹を空かせ、しかしながら他の妖精たちに比べると人一倍無邪気で――。 ヒューイ「弱いチームにずっといる理由なんて、無いでしょ?」 静葉「…………」 ――人一倍、残酷であった。
[176]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:31:58 ID:??? こうして、話し合いは終わった。 反町と幽香、2人の移籍と失踪を発端とした、4人の離脱。 名門と呼ばれていたオータムスカイズは、計6人――あまりにも大きすぎる戦力を、失った。 妖精1「ヒューイ……」 サンタナ「なんでよ……あっちにはチルノいるじゃん。 なんでよ」 眠くなったと言って我先に部屋へと戻ったヒューイに、妖精1達はかける言葉が見つからなかった。 妖精1とサンタナは何故ついてこないのか、と逆に首を傾げ問いかけてきたヒューイ。 予想だにしない離別を前にして、そもそも自分たちの精神を整える方が彼女たちには先決であった。 リグル「ハッハァー! 大丈夫大丈夫、6人いなくなってもエースが残ってる限りはオータムスカイズは安泰だよ!」 リリーW「……実際リグルに頼るしかないですよー、このチーム」 リリーB「ホワイト、明日から私はGKの練習する……。 ……多分、今更FWとして鍛えてもついてけない」 メディスン「(ホワイトもMFなら使えるかっていうとそうでもないけど……パスだけなら、それなりには出来るしね)」 能天気な者もいる。 ある意味彼女が一番幸せ者であり……そんな彼女に頼るしかない現状に、不安を覚える者たちもいた。 にとり「(妖精1……辛いだろうけど、幻想郷サッカーじゃ移籍や離脱は日常茶飯事だ。 ……敵として戦う時、お前の実力をヒューイに見せてやるんだよ)」 橙「……反町さん達がこの家を出て行くのって、いつになるんですかにゃ? (移籍が決まった以上は、早めに出て行って貰った方がいいんじゃ……このままだと、絶対歪みが出来るにゃ)」 妹紅「具体的にはわからないけど、まあ、近い内になるんじゃないかな。 ……あ、そうだ穣子! 出て行く日には、豪華なお料理作ってよ! 盛大に、送り出そう! ね!!」 穣子「もっちろん、そのつもりよ! (私があいつに料理作ってあげれるのも、もう少しだけだもんね)」 身内を心配する者、チームを考える者、出て行く者を想う者もいた。 確固たる信念で残留を決めた彼女たちはそれなりに表情は明るかったが、それでもいつもに比べればぎこちなかった。
[177]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:33:02 ID:??? 静葉「(弱いチーム……ね)」 そして、率いる者は――残酷にも告げられた言葉を受け止めていた。 事実、現状のこのチームは弱いだろう。チームとしての格どころの話ではなく、純粋な力として。 幻想郷トップクラスチームである紅魔スカーレットムーンズや、博霊神社連合は当然として、 そこから格が落ちるであろう、永遠亭ルナティックス、地霊アンダーグラウンド、ネオ妬ましパルパルズにも……。 かつては勝利を収めたそれらチームにも、今ならば負けてしまうかもしれない。 いや、高い確率で負けるだろう。それ程までに戦力の流出が痛い。 静葉「(でも、やるしかない……やるしかないのよ)」 信仰を集める為に闘う。チームに愛着があるから闘う。倒したい相手がいるから闘う。 己の存在を証明する為に闘う。ただなんとなく闘う者もいる。 それぞれ思いも、その深さも千差万別なのは相変わらずだ。 ただ、これからはそんな一同を――自分がまとめなければならない。 静葉「(私の為にも、穣子の為にも――そして、このオータムスカイズの為にも)」 静葉はこの場にいる10名をぐるりと見回してから……大きく手を叩いて、注目を集める。 一体何事かと一同が勘ぐる中、静葉は些か緊張しながらも……それでも、一同の視線を受けながらその口を開いた。 静葉「みんな、よく聞いて。 それじゃあこれから――明日の予定について、決めるわ!」 何度となく繰り返されてきた、明日の予定を決める夜の恒例行事。 彼女の手には、既に一同から提出をされていた一週間の予定表が記されてある。 後はこれをもとに、練習と自由行動を計画的に織り交ぜていくだけ。 静葉「まずは午前だけど……」 オータムスカイズ新キャプテン――キャプテン静葉の初仕事であった。
[178]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:35:00 ID:??? ……… …… … ちなみに。 うどんげ「いっ、いいのかなぁ……勝手に何も言わないで出てきて」 てゐ「ええんやええんや! どーせ私達がオータムスカイズに加入してた事なんてみんな覚えてへんてウサ!」 夜の帳が落ちた中、竹林を颯爽と走っていたのはうどんげとてゐであった。 彼女たちの肩には私物が入った風呂敷包み……さながら夜逃げ同然の格好をしている理由といえば、 彼女たち自身が行っている通り、オータムスカイズを何も言わずに離脱してきたからに他ならない。 誰も覚えていないかもしれないが、一応、彼女たちもオータムスカイズ所属である。 うどんげ「うぅっ、最後にお別れくらい言いたかったなぁ。 だってみんな、仲間だもんげ!!」 てゐ「そんな事言ってる場合じゃないでしょ! 師匠からとっとと戻って来いって言われてんじゃん! 大体、どーせ私達があそこに入ったのだって、博霊連合じゃアカンわと思って入っただけだし……」 うどんげ「でも結局オータムスカイズも負けちゃったけどね」 てゐ「うっさいウサ!」 ゲシィ! うどんげ「痛い!」
[179]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:36:53 ID:??? そもそも永遠亭所属の彼女たちは、あまりオータムスカイズ所属というイメージが無い。 その上に在籍期間も短かった為、幸か不幸か話し合いの場にいなくても誰も気づかなかった。 ……或いは、気づいていても無視した者もいたかもしれない。 いたらいたで戦力低下している中でありがたい話だが、さりとて無理に引き留める程の実力者ではないのだから仕方ない事だった。 そして、彼女たちは反町の移籍を耳にする前から永遠亭に帰ってくるようにと師匠である永琳と主人の輝夜に告げられていた。 このどさくさに紛れてそのまま帰っちまおう、という魂胆である。 うどんげ「でも師匠もなんでこんな急に戻って来いって言ったんだろ。 私、結構オータムスカイズの事気に入ってたなんだけどなぁ……何も言わなくてもご飯が出てくるし」 てゐ「知らんウサ。 ま、重要な事なんじゃないの?」 割と未練がましいうどんげに対して、てゐの方はさっぱりしている。 ちらちらと来た方角を見ているうどんげは、誰も聞いてはいないのに口を開く。 うどんげ「あそこにいたら私もストライカーとして才能が開花……してたような!」 てゐ「(またうどんちゃんの妄想がはじまったウサ……)」 うどんげ「妖精たちの合体シュートあったでしょ! ああいう感じで、私もてゐと合体シュートしたり! 真実の友情に目覚めたり!!」 てゐ「はいはい、また聞いてあげるからとっととかえろ。 ね?」 うどんげ「あわわ、待ってよー」 呆れを通り越して悲しさすら覚えてきたてゐは、強引に話を打ち切って駆け出した。 慌てて、うどんげもその後を追う。 文字通り、脱兎の如く秋空から脱出する2名であった。 なお、あまり戦力に影響はないもよう。
[180]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:39:19 ID:??? という事で一旦ここまで。 多分新生オータムスカイズのフォーメーションはこうなると思います。 −−J−− Jリグル −−−−H H橙 −−−−− G−I−F Gサンタナ I静葉 FリリーW −−E−− Eメディスン D−B−C D穣子 B妖精1 C妹紅 −−A−− Aにとり −−@−− @リリーB ……うーん。 ひとまず、これで幻想のポイズン、その後の後処理のようなものはおしまいです。ここまでで序章くらいです。 次からは幻想郷の他の勢力、ならびに表題の人も出てくると思います。それでは。
[181]森崎名無しさん:2018/02/05(月) 22:47:34 ID:??? 乙でした 分かってた事だけどヒューイの選択が辛すぎるな 初期は反町の標榜する和を尊重しててくれたのに……まあその反町が自分からその和を捨てたのが原因だけど
[182]森崎名無しさん:2018/02/05(月) 23:23:04 ID:??? 乙でしたー 今回もボリュームあって中身も濃くて読んでて楽しかったです! キャプテン静葉は難易度高そうだけどやってみたいな
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0ch BBS 2007-01-24