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【SSです】幻想でない軽業師
[320]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/27(火) 23:55:00 ID:??? まず第一に文が思いついたのは、同じ天狗仲間である犬走椛や、河童のにとりといった組織の一員。 文が声をかければ、嫌な顔はするだろうがそれでも渋々と従っていた筈である。昔なら。 ただ、今の2人はそれぞれ妖怪の山から離れ――それぞれ別チームの選手として活動をしていた。 無論、それでも行かせるだけなら問題は無いのかもしれないが、 かといって守矢フルーツズと敵対をしているチームの者が留学に行って力をつけて戻ってきた場合、責任の所在は文にあるという事になる。 にとりはともかく椛にそこまでの才覚があるとは文は思えなかったが、 それでも万一の可能性を考えると避けたい事だった。 ではこの山に住まう神様――秋静葉、穣子の姉妹。そして厄神である鍵山雛はどうだろう。 これもまた、無理である。 反町一樹が移籍をした際、静葉と穣子がチームを解体せずにオータムスカイズに残留した。 これは幻想郷サッカー界的には決して小さくないニュースであり、文自身も取材に赴いた事がある。 残念ながら明確な答えを得る事は出来なかったが、それでもその際の態度や様子から、おぼろげにはチームに残った理由も見えた。 即ち、『信仰』の為。 サッカーを通じて名声を得、それを信仰につなげようとするのは守矢神社も秋姉妹も同じである。 彼女たちが守矢フルーツズに移籍をしないというのも、それが可能かどうかは別としてそう取らざるを得なかった理由としては尤もであり。 だからこそ、この『守矢神社から来た』留学という話に、彼女たちが乗る訳もない。 建前はどうあれ、彼女たちは事実上敵対しているも同然なのだ。 鍵山雛に至っては単純である。 厄神である彼女――そこに存在をするだけで災厄を振りまく彼女が、 人間の多く住まう外界に3年間という長い期間行ける筈がそもそも無いのだ。 文「(うぐぐ……せめて、椛がいればなぁ……)」 いなくなってはじめてわかる、部下のありがたみである。いや、別に直属の部下という訳ではないが。 しかしながら、いよいよ文としては困る。 自分は留学に行きたくない。だが、代わりになるような人材も用意出来ない。
[321]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/27(火) 23:56:27 ID:??? 今はまだ自宅に話を持ち帰ってじっくり考えてくれと言われただけであるが、 しばらくすれば嫌でも留学に向かう選手として、正式に決定してしまうだろう。 社会において考えておいてくれという言葉は、放っておけば了承を示したものと受け止められてしまうのである。 文「(誰か他に適当な、サッカーが出来る者……妖怪の山にいて、それでいてフリーで……。 って、そんな珍しい選手はもう大体いないか。 今や大体の選手は所属するチーム自体が決まっているし、それこそ最近出てきた新参選手くらいしか……っ!?)」 と、そこまで考えていた文は――ふと机の上に散らばっていた新聞に目をやり、思考を停止させる。 思わずそれを引っ掴み、あまり乗り気ではないもののパラパラと捲っていく。 自分が執筆をした新聞――文々。新聞とは違うそれは、文が他の記者がどのような記事を書くかの研究用に入手したものである。 『文から見れば』稚拙で面白味も無く、そもそも事実無根の妄想ばかりが書き連ねられたような記事ばかり。 おまけに記事の内容自体が、今更フランス国際Jrユース大会の結果や経緯などが書かれたものだった。 あれから既に数週間は経過している。 スピードが命であると考え、その通りに帰郷後即座に新聞を発行をした文からしてみれば、 あまりにも遅すぎるその発刊速度。更には実際に大会に参加をした文に比較をし、外から見ていただけのそれは酷く抽象的だ。 以前、実際にこの感想を記者に素直に文は告げ――その記者は酷く立腹していたのだが。 文「(ただ、それと同時にやっぱり実体験するしかないのかと凹んでたし。 ……サッカーの腕も、最近始めたばかりにしちゃ悪くない)」 一手遅れているその記者は、やはりサッカーも最近始めたばかりの新参であった。 当然ながら文には到底敵わない程度の実力しか持たず、おまけに性格にも難があってどのチームにも所属はしていない。 だが、それでも文が知る限りでは留学に行かせられるだけの実力者でフリーの人材というのはその『彼女』くらいしかいない。 文「(駄目で元々だしね。 割と世間知らずだし、上手く話を運べば乗ってくれるでしょう)」 名案と思しきものがが思い付くと、すぐさま行動に移るのが射命丸文という少女である。こういう面でも彼女はスピーディだった。 彼女は立ち上がるとお供の鴉を呼び出し、我が家を出てその記者の住まうねぐらへと向かう。 家を出た際、閉じたドアの風圧でペラペラと捲れていく新聞――その紙面には、『花果子念報』と記されてあった。
[322]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/27(火) 23:58:31 ID:??? 短いですが一旦ここまで。 幻想のポイズン内で出てこなかった新しい東方キャラは、今回の彼女含めて3名を予定してます。
[323]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/28(水) 22:59:03 ID:??? 本日は更新をお休みさせていただきます。 次回あたりから、佐野くんがどこに留学に行くかの発表とかが出来ると思います。 それでは。
[324]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/01(木) 21:23:24 ID:??? 本日も更新はお休みさせていただきます。土曜日あたりに更新出来ればと思います。
[325]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/03(土) 22:58:41 ID:??? 申し訳ないですが本日も更新はお休みさせていただきます。 明日まで、明日までお待ちください(ガレリ並感
[326]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:48:43 ID:??? そして数日が過ぎた。 当初八雲紫がサッカー留学の話を出してから、日数にして数週間。 この頃になると、ようやくほぼ全ての組織からサッカー留学に向かわせる選手の目途が立ち。 また、人員が不足をしている組織からもその最高責任者が他に適任と思しき選手を補填としてスカウトする事も出来ていた。 紅魔館、白玉楼、マヨヒガ、永遠亭、守矢神社、地霊殿、命蓮寺、地獄――。 それぞれ8つの勢力からの留学選手。 彼女たちは各自、秘めたる想いを胸にして博麗神社から八雲紫の能力を用いて既に出立をしていた。 佐野「はー……しかし朝はえらい大騒ぎだったな本当」 そんな中、我らが今はまだ幻想郷にいる軽業師は、住まいとする命蓮寺でのんびりと過ごしながら、 今朝方の事を思い出していた。 留学選手に立候補をし、白蓮の期待に応えようと意気揚々と留学に備えていた一輪。 基本的に思い立ったが最後、普段は大人し目であまり目立つ事のない彼女であるが、 一旦火がつくと誰にも止められない程に暴走をするのは以前の何も考えず飛び出した経緯から見ても察して貰えるだろう。 そう、火がつくと止められない――だが、いつまでも燃え続ける火など無い。 当初はやる気に満ちていた一輪も、段々留学の日時が近づくにつれて、 やはり白蓮と離れるというのが寂しく、悲しく、名残惜しくなってきたのだろう。 結局、当日の今日――留学に向かう為に博麗神社に行く直前、 赤子のように、白蓮のそれはそれは豊満な高い浮き球4程あるだろう胸に顔を押し付け咽び泣いた。 これには白蓮はもとより命蓮寺の一同も困り果てたのだが、 最終的には一輪の性格を良く知るムラサの「聖の為にも強くなって帰ってきてね」の一言で全てが解決した。 佐野「イチさんも単純だよなぁ」 佐野に言われてはおしまいであるが、実際の所事実なのだから仕方ない。
[327]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:49:54 ID:??? ムラサ「……真面目で機転が利き要領がいい性格だったんだけどなぁ、あの子も」 佐野「おっ、キャプテン。 ……イチさんが真面目なのはわかるけど、間違いなく要領とかそういうのはよくなさそうじゃね?」 ムラサ「聖が関わらなければいい子なのよ、ホント」 佐野「そりゃわかるけど……(そーいやなんで皆が白蓮さんの事慕ってるかとか、そーいう理由も俺詳しくしらねーなぁ)」 佐野の言葉に困ったように相槌を打つのは、その一輪の盟友――村紗水蜜である。 呆れ半分にそう呟く彼女の姿に、思えばそもそも命蓮寺の一同が、 聖白蓮の事を異様に慕っている理由を佐野は知らなかったと思い至るのだが、 なんとなくここで聞くのは今更過ぎるような気がして口には出せない。 ムラサ「で? 佐野くんはいつごろ出発なんだっけ?」 佐野「俺もどうせなら他の皆と同じ日にって師匠は言ってたけど……。 まだこねーな師匠、もう昼だってのに」 魅魔の推薦により、魔界からの使者として留学選手に決定した佐野満。 八雲紫の提案した留学計画とは別口の件で留学に向かうのだから、 当然ながら他の者たちと同様、八雲紫のスキマ経由で外の世界に行ける道理もない。 よって、彼はその外の世界への移動手段に関しては完全に発起人である魅魔任せであった。 だが、その魅魔が留学予定日の当時になっても、一向に姿を現さない。 これにはさしもの佐野も、少しばかり焦りを見せるのだが……。 魅魔「あたしゃここにいるよ〜」 佐野「あっ、師匠!」 言っている傍から、ようやく魅魔が姿を現した。 命蓮寺の居住スペースとなっている区画の玄関口。 いつもの間延びしたような、それでいて凛とした決め台詞を聞いた佐野が振り返れば、 そこには果たして、当の魅魔と彼女を出迎えていた命蓮寺の面々――そして。
[328]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:51:58 ID:??? 魔理沙「よう!」 佐野「あ、魔理沙だ」 魔理沙「……だから『さん』をつけろって何度言えばわかんだ? あぁん?」 佐野の姉弟子にあたる霧雨魔理沙――彼女の姿もその中には見受けられた。 魅魔「準備は終わったかい、佐野?」 佐野「おうよ。 まぁ、つっても荷物なんて大して無いんだけどな」 相変わらずあまり仲がいいとは言えない佐野と魔理沙が言い争いをする前に、 魅魔が佐野に問いかけると佐野はグッと右手を掲げながら準備は万端であると宣言する。 実際、幻想郷に何も持たずにやってきて、この命蓮寺で過ごしてきた佐野の手荷物というのは多くは無い。 精々数日分の着替えや日用品程度である。 佐野「外の世界に比べてこっちは娯楽ってのが少ないからなぁ……思えば私物ってのも殆どねーや。 あーあ、ドラゴンスフィアの続きが読みてぇなぁ」 ナズーリン「(なんだろうな……そんなにその続きが読みたいなら人里の酒商店にでも行った方がいいと思ってしまう)」 魅魔「遠足に行くんじゃないんだ、それくらいの方がかえってサッパリしてていいだろ」 足りない分は現地で買い足せばいい、金なら一応魔界から出る事になっている、と魅魔は説明する。 魅魔「そろそろ出発だ。 佐野……何か挨拶はあるかい?」 佐野「ん……そーだな」 言われ、佐野はむくりと立ち上がると魅魔の背後にいた命蓮寺メンバーへと視線を向けた。 思えば、この幻想郷にいたのも――長いようで短かった。 勝手気ままに幻想郷へと召喚され、勝手気ままにいらない子扱いされ、 勝手気ままに利用価値があるとされ、勝手気ままに創設間もないチームの指導者となった。 なんとも周囲に翻弄され続けた運命であったが、佐野自身は命蓮寺のメンバーを嫌っていないし、ここに来れて良かったと思っている。
[329]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:53:10 ID:??? 誰もかれもが個性的ではあるが、それでもサッカーに対して真摯だったのは指導者だった佐野もわかっている。 幻想郷においては珍しい、他者を思いやる心がある者たちばかりだという事も知っている(一名例外はいたが)。 召喚されはしたものの、衣食住――人が最低限生活するのに必要なものを持っていなかった佐野としては、 そんな自分を必要としてくれ、保護してくれた一同に感謝する気持ちが無い筈もない。 佐野「(つってもなんつっていいもんか……こういうのはこっぱずかしくていけねぇな) あー……まぁ、なんだ。 イチさんと同じく、俺も外で頑張ってくっからよ!! 皆もその間、幻想郷で頑張ってくれよな! 俺っていうスーパーエースがいなくなって、イチさんっていう正ゴールキーパーがいなくなって苦労するとは思うけど」 それでも思春期特有の、感謝を口にするのが恥ずかしいと思ってしまう性分故か。 佐野はどこか斜に構えたようにそう宣言するのが精いっぱいだった。 精一杯だったのだが……。 ぬえ「誰がスーパーエースって? ねぇ、誰が?」 ムラサ「(佐野くんには申し訳ないけど……正直、『超人化』した白蓮なら佐野くんの代わりにはなるけど、 GKの不在の方が痛手だから……ぶっちゃけ、佐野くんより一輪の離脱の方が辛いのよねぇ)」 佐野「なにィ!?」 案外佐野の評価自体は大した事なかった。 無論、彼の能力が低いという訳でもなければ、命蓮寺メンバーから嫌われていた訳でもない(一部例外を除く)。 ただ、実際問題佐野という1人のドリブラーの離脱よりは、ゴールを守る一輪の離脱の方が痛手であったというだけの話である。 しかしながら、この反応には流石の佐野も凹む。 口に出して指摘をするのはぬえだけだが、他の者たちもなんとも言えない表情で佐野を見守っているのだから。 佐野「なんだよ!? 俺がいなくなったら誰がボール持って突破すんだよ!? ヒールリフトを誰がするんだよ!?」 ぬえ「ヒールリフトを超必殺技みたいな言い方する男の人って……」 星「ま、まぁまぁ佐野くん。 佐野くんがいなくなって寂しいのは私達もなんですよ。 ……外の世界でも、留学、頑張ってきてくださいね」 佐野「お、おう?」
[330]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:54:18 ID:??? 思わず自分の得意技の有用性について言及してしまう佐野だったが、それすらも一笑に伏される。 実際の所、今更ヒールリフトの有無程度で自慢げにされた所で……という話ではあるのだが。 佐野に対してやけに突っかかるぬえを制しながら、温厚な者たちで占められる命蓮寺の中で人一倍温厚である星が仲介に入る。 思いがけず優しい言葉をかけられて佐野はいつもの流れとはちょっと違うなと感じながら周囲を見やり……。 小町「短い間だったけど同じ釜の飯を食ったんだ。 ま、達者でやりなよ」 ルーミア「お土産はいきのいい人肉がいいな〜」 まずは外様である小町とルーミアが、別れの言葉を告げる。 小町の言う通り、短い間とはいえ共に過ごした仲だ。 そこに情が沸くのはまた人情というものであり、ひらひらと軽く手を振りながら別れを惜しみ。 逆にルーミアは平常運転といった様子で呑気に、いつも通りの対応を見せた。 ナズーリン「……まぁ、幻想郷にいる私達が、元々外の世界にいた君を心配するというのは非常に滑稽なのだろうが。 くれぐれも気を付けてね」 ムラサ「強くなって帰ってくる一輪と佐野くんの事、楽しみにはしてるんだからね」 命蓮寺のメンバーであり、当初から佐野と付き合いのあるナズーリンとムラサは佐野の行く末を心配しつつ期待もしていた。 彼女たちにとって、今は然程能力的に大きな差異が無くなったとはいえ――。 佐野が初めて来訪した時は、佐野は彼女たちにサッカーのイロハを教える指導者だったのだ。 そこに感謝の気持ちと尊敬の気持ちは当然ながらある。……後者に関しては、最近薄れてはいたものの。 ともかく、彼女たちにとって佐野はヒーロー……とは到底言えないが、 それでも相応には特別な立場の選手であった事は変わり無かった。 白蓮「佐渡くん」 佐野「……あの、佐野です」
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0ch BBS 2007-01-24