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【SSです】幻想でない軽業師
[324]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/01(木) 21:23:24 ID:??? 本日も更新はお休みさせていただきます。土曜日あたりに更新出来ればと思います。
[325]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/03(土) 22:58:41 ID:??? 申し訳ないですが本日も更新はお休みさせていただきます。 明日まで、明日までお待ちください(ガレリ並感
[326]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:48:43 ID:??? そして数日が過ぎた。 当初八雲紫がサッカー留学の話を出してから、日数にして数週間。 この頃になると、ようやくほぼ全ての組織からサッカー留学に向かわせる選手の目途が立ち。 また、人員が不足をしている組織からもその最高責任者が他に適任と思しき選手を補填としてスカウトする事も出来ていた。 紅魔館、白玉楼、マヨヒガ、永遠亭、守矢神社、地霊殿、命蓮寺、地獄――。 それぞれ8つの勢力からの留学選手。 彼女たちは各自、秘めたる想いを胸にして博麗神社から八雲紫の能力を用いて既に出立をしていた。 佐野「はー……しかし朝はえらい大騒ぎだったな本当」 そんな中、我らが今はまだ幻想郷にいる軽業師は、住まいとする命蓮寺でのんびりと過ごしながら、 今朝方の事を思い出していた。 留学選手に立候補をし、白蓮の期待に応えようと意気揚々と留学に備えていた一輪。 基本的に思い立ったが最後、普段は大人し目であまり目立つ事のない彼女であるが、 一旦火がつくと誰にも止められない程に暴走をするのは以前の何も考えず飛び出した経緯から見ても察して貰えるだろう。 そう、火がつくと止められない――だが、いつまでも燃え続ける火など無い。 当初はやる気に満ちていた一輪も、段々留学の日時が近づくにつれて、 やはり白蓮と離れるというのが寂しく、悲しく、名残惜しくなってきたのだろう。 結局、当日の今日――留学に向かう為に博麗神社に行く直前、 赤子のように、白蓮のそれはそれは豊満な高い浮き球4程あるだろう胸に顔を押し付け咽び泣いた。 これには白蓮はもとより命蓮寺の一同も困り果てたのだが、 最終的には一輪の性格を良く知るムラサの「聖の為にも強くなって帰ってきてね」の一言で全てが解決した。 佐野「イチさんも単純だよなぁ」 佐野に言われてはおしまいであるが、実際の所事実なのだから仕方ない。
[327]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:49:54 ID:??? ムラサ「……真面目で機転が利き要領がいい性格だったんだけどなぁ、あの子も」 佐野「おっ、キャプテン。 ……イチさんが真面目なのはわかるけど、間違いなく要領とかそういうのはよくなさそうじゃね?」 ムラサ「聖が関わらなければいい子なのよ、ホント」 佐野「そりゃわかるけど……(そーいやなんで皆が白蓮さんの事慕ってるかとか、そーいう理由も俺詳しくしらねーなぁ)」 佐野の言葉に困ったように相槌を打つのは、その一輪の盟友――村紗水蜜である。 呆れ半分にそう呟く彼女の姿に、思えばそもそも命蓮寺の一同が、 聖白蓮の事を異様に慕っている理由を佐野は知らなかったと思い至るのだが、 なんとなくここで聞くのは今更過ぎるような気がして口には出せない。 ムラサ「で? 佐野くんはいつごろ出発なんだっけ?」 佐野「俺もどうせなら他の皆と同じ日にって師匠は言ってたけど……。 まだこねーな師匠、もう昼だってのに」 魅魔の推薦により、魔界からの使者として留学選手に決定した佐野満。 八雲紫の提案した留学計画とは別口の件で留学に向かうのだから、 当然ながら他の者たちと同様、八雲紫のスキマ経由で外の世界に行ける道理もない。 よって、彼はその外の世界への移動手段に関しては完全に発起人である魅魔任せであった。 だが、その魅魔が留学予定日の当時になっても、一向に姿を現さない。 これにはさしもの佐野も、少しばかり焦りを見せるのだが……。 魅魔「あたしゃここにいるよ〜」 佐野「あっ、師匠!」 言っている傍から、ようやく魅魔が姿を現した。 命蓮寺の居住スペースとなっている区画の玄関口。 いつもの間延びしたような、それでいて凛とした決め台詞を聞いた佐野が振り返れば、 そこには果たして、当の魅魔と彼女を出迎えていた命蓮寺の面々――そして。
[328]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:51:58 ID:??? 魔理沙「よう!」 佐野「あ、魔理沙だ」 魔理沙「……だから『さん』をつけろって何度言えばわかんだ? あぁん?」 佐野の姉弟子にあたる霧雨魔理沙――彼女の姿もその中には見受けられた。 魅魔「準備は終わったかい、佐野?」 佐野「おうよ。 まぁ、つっても荷物なんて大して無いんだけどな」 相変わらずあまり仲がいいとは言えない佐野と魔理沙が言い争いをする前に、 魅魔が佐野に問いかけると佐野はグッと右手を掲げながら準備は万端であると宣言する。 実際、幻想郷に何も持たずにやってきて、この命蓮寺で過ごしてきた佐野の手荷物というのは多くは無い。 精々数日分の着替えや日用品程度である。 佐野「外の世界に比べてこっちは娯楽ってのが少ないからなぁ……思えば私物ってのも殆どねーや。 あーあ、ドラゴンスフィアの続きが読みてぇなぁ」 ナズーリン「(なんだろうな……そんなにその続きが読みたいなら人里の酒商店にでも行った方がいいと思ってしまう)」 魅魔「遠足に行くんじゃないんだ、それくらいの方がかえってサッパリしてていいだろ」 足りない分は現地で買い足せばいい、金なら一応魔界から出る事になっている、と魅魔は説明する。 魅魔「そろそろ出発だ。 佐野……何か挨拶はあるかい?」 佐野「ん……そーだな」 言われ、佐野はむくりと立ち上がると魅魔の背後にいた命蓮寺メンバーへと視線を向けた。 思えば、この幻想郷にいたのも――長いようで短かった。 勝手気ままに幻想郷へと召喚され、勝手気ままにいらない子扱いされ、 勝手気ままに利用価値があるとされ、勝手気ままに創設間もないチームの指導者となった。 なんとも周囲に翻弄され続けた運命であったが、佐野自身は命蓮寺のメンバーを嫌っていないし、ここに来れて良かったと思っている。
[329]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:53:10 ID:??? 誰もかれもが個性的ではあるが、それでもサッカーに対して真摯だったのは指導者だった佐野もわかっている。 幻想郷においては珍しい、他者を思いやる心がある者たちばかりだという事も知っている(一名例外はいたが)。 召喚されはしたものの、衣食住――人が最低限生活するのに必要なものを持っていなかった佐野としては、 そんな自分を必要としてくれ、保護してくれた一同に感謝する気持ちが無い筈もない。 佐野「(つってもなんつっていいもんか……こういうのはこっぱずかしくていけねぇな) あー……まぁ、なんだ。 イチさんと同じく、俺も外で頑張ってくっからよ!! 皆もその間、幻想郷で頑張ってくれよな! 俺っていうスーパーエースがいなくなって、イチさんっていう正ゴールキーパーがいなくなって苦労するとは思うけど」 それでも思春期特有の、感謝を口にするのが恥ずかしいと思ってしまう性分故か。 佐野はどこか斜に構えたようにそう宣言するのが精いっぱいだった。 精一杯だったのだが……。 ぬえ「誰がスーパーエースって? ねぇ、誰が?」 ムラサ「(佐野くんには申し訳ないけど……正直、『超人化』した白蓮なら佐野くんの代わりにはなるけど、 GKの不在の方が痛手だから……ぶっちゃけ、佐野くんより一輪の離脱の方が辛いのよねぇ)」 佐野「なにィ!?」 案外佐野の評価自体は大した事なかった。 無論、彼の能力が低いという訳でもなければ、命蓮寺メンバーから嫌われていた訳でもない(一部例外を除く)。 ただ、実際問題佐野という1人のドリブラーの離脱よりは、ゴールを守る一輪の離脱の方が痛手であったというだけの話である。 しかしながら、この反応には流石の佐野も凹む。 口に出して指摘をするのはぬえだけだが、他の者たちもなんとも言えない表情で佐野を見守っているのだから。 佐野「なんだよ!? 俺がいなくなったら誰がボール持って突破すんだよ!? ヒールリフトを誰がするんだよ!?」 ぬえ「ヒールリフトを超必殺技みたいな言い方する男の人って……」 星「ま、まぁまぁ佐野くん。 佐野くんがいなくなって寂しいのは私達もなんですよ。 ……外の世界でも、留学、頑張ってきてくださいね」 佐野「お、おう?」
[330]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:54:18 ID:??? 思わず自分の得意技の有用性について言及してしまう佐野だったが、それすらも一笑に伏される。 実際の所、今更ヒールリフトの有無程度で自慢げにされた所で……という話ではあるのだが。 佐野に対してやけに突っかかるぬえを制しながら、温厚な者たちで占められる命蓮寺の中で人一倍温厚である星が仲介に入る。 思いがけず優しい言葉をかけられて佐野はいつもの流れとはちょっと違うなと感じながら周囲を見やり……。 小町「短い間だったけど同じ釜の飯を食ったんだ。 ま、達者でやりなよ」 ルーミア「お土産はいきのいい人肉がいいな〜」 まずは外様である小町とルーミアが、別れの言葉を告げる。 小町の言う通り、短い間とはいえ共に過ごした仲だ。 そこに情が沸くのはまた人情というものであり、ひらひらと軽く手を振りながら別れを惜しみ。 逆にルーミアは平常運転といった様子で呑気に、いつも通りの対応を見せた。 ナズーリン「……まぁ、幻想郷にいる私達が、元々外の世界にいた君を心配するというのは非常に滑稽なのだろうが。 くれぐれも気を付けてね」 ムラサ「強くなって帰ってくる一輪と佐野くんの事、楽しみにはしてるんだからね」 命蓮寺のメンバーであり、当初から佐野と付き合いのあるナズーリンとムラサは佐野の行く末を心配しつつ期待もしていた。 彼女たちにとって、今は然程能力的に大きな差異が無くなったとはいえ――。 佐野が初めて来訪した時は、佐野は彼女たちにサッカーのイロハを教える指導者だったのだ。 そこに感謝の気持ちと尊敬の気持ちは当然ながらある。……後者に関しては、最近薄れてはいたものの。 ともかく、彼女たちにとって佐野はヒーロー……とは到底言えないが、 それでも相応には特別な立場の選手であった事は変わり無かった。 白蓮「佐渡くん」 佐野「……あの、佐野です」
[331]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:55:20 ID:??? そして、この命蓮寺の代表――聖白蓮がそっと歩み寄りながら口を開く。 ……案の定、佐野の名前を間違えていた事に、佐野自身は丁寧に訂正を入れるのだが、 白蓮は聞いていないのかそれとも気にしていないのか、ふわりとやわらかな笑みを浮かべたままだ。 白蓮「貴方がこの命蓮寺に来てからの数か月……我々が、まるで知らなかったサッカーというものを教えて貰い、本当に感謝しています。 終ぞ、幻想郷での大会には参加が出来ませんでしたが……。 全幻想郷との練習試合、思えばあれが、私達の――初めて、表舞台に立てた試合でしたね」 佐野「………………」 言われて、佐野の胸にはチクリと痛みが走る。 命蓮寺メンバーと修練に励み、更には魔界へと向かい幻想郷以上に優れた環境の中で練習をした。 白蓮の言うように幻想郷での大会には出場出来なかったが……。 しかし、ようやく彼ら――反町達を相手に表舞台での試合を慣行する事が出来た。 かつては雲の上の存在であった反町、そしてその他の幻想郷メンバーを相手に。 佐野達、命蓮寺のメンバーは懸命に努力をしてその前に立ちふさがろうとしたのだが……。 ……佐野達は敗北をした、あまりにも呆気なく、あまりにもあっさりと。 佐野「(折角強くなったと思ったのに、反町さん達ときたらそれ以上に強くなってんだもんな……。 ……そーいや、あん時は魔理沙さんも敵だったか)」 魔理沙「………………」 どうにも相性の悪い佐野と魔理沙であるが、そんな佐野とて魔理沙の実力の高さについては知っている。 豪快なシュートに突破力。おまけに守備意識の高さと、その守備力についても文句無し。 幻想郷どころか、世界中で見てもトップクラスのFW。 いや、FWとしてだけでなく――1人の選手として見た場合でも、名選手と言える程の実力を有していた。 そんな魔理沙ですら、霞む程の――当時の全幻想郷Jrユースの選手層の厚さ。 そして、そんな魔理沙をもってしても、第二FWの地位を掴むのが精々という反町という存在。 今更ながらに、佐野は一体どうしてそこまで反町が強くなったのか――反町だけではない、 何故自分たちと反町の周囲にいる者たちとで、ここまで大きな差があるのかと疑問に思ってしまう。
[332]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:57:22 ID:??? 佐野「(不公平だぜ……俺だって、俺達だって頑張ってきたのによ……。 畜生……)」 白蓮「佐古くん」 佐野「……だから佐野だって」 少しばかりネガティブになってしまう佐野であったが、再び白蓮に呼ばれ、現実に引き戻される。 再三に渡って名前を間違える白蓮に、やはり佐野は訂正するのだが……。 白蓮はやっぱり気にする素振りは見せず、慈愛に満ちた表情で口を開く。 白蓮「貴方が私達に教えてくれた事、口では色々と言いながらも努力をし、鳥町さん達に勝とうとしていた事。 私達もそれに感化され、サッカーというものに情熱を傾ける事が出来ました。 ……結果は残念でしたが、それは御仏もご覧になられている事でしょう」 佐野「(鳥町じゃなくて反町さんなんだけどなぁ……)」 白蓮「一切皆苦――思うが儘にならぬのが、人の生。 どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、結果が出せぬという事に苛立ち、悲嘆にくれる事もあるでしょう。 ですがサモくんは今一度――いえ、これまで幾度となくあった敗北を前にしても、 何度も立ち上がり……このたびも、魅魔さんが持ってきた留学話を快諾しました」 佐野「あの……俺、佐野……」 白蓮「御仏のみならず、不肖ながらこの私も――そして、他の者たちも遠く離れた幻想郷にて応援をします。 どうかこの旅路が、サミュエルくんにとってより良きものとなりますように」ペカー 佐野「もはや日本人じゃねーじゃん……ってうおっ、まぶしっ!!」 いい加減訂正するのにも疲れてきた佐野であったが、 白蓮が真摯に佐野の事を心配し、想い、彼の成功を祈ってくれている事だけはわかった。 実際、瞳を閉じて祈るように手を合わせる彼女の背後からは目に見えて後光が刺している。 あまりにも強烈過ぎる仏パワーに、佐野は目がチカチカするのだが……。 それならばそれでしっかりと名前くらいは覚えておいて欲しいと思わないでもない。
[333]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:58:56 ID:??? 佐野「ま、まあ……さっきも言ったけど俺も頑張ってくっから! 白蓮さん達も頑張ってな! レベル不足で前までは幻想郷での大会にも出られなかったけど、今なら全然出れるだろうし!」 ぬえ「へーんだ、アンタに言われなくたってそのつもりだよっ! アンタがいなくたってこの私の力で優勝させてやるんだから!」 佐野「にゃにおう!? この俺のローリングオーバーヘッドが無くても優勝が出来ると言うのか!?」 ぬえ「浮き球補正も特に高くない上にシュート力も低いのにローリングオーバーヘッドが得意技な男の人って……」 逆に素直に佐野を応援していない者もいる。 封獣ぬえ――彼女はとにかく、佐野と折り合いが悪かった。 当初この命蓮寺がチームを結成し、メンバーがそもそも11人にも満たなかった頃の事である。 ムラサ、一輪と古馴染であったぬえは、彼女たちの助けになるならばと加入しようとしていた。 しかしながら、生来天邪鬼な性格なのがこのぬえである。 素直にチームに入れて欲しいと言う事も出来ず、おまけに命蓮寺のメンバーの多くはドがつく程の天然が多い。 幸いにして、その時、その場にいた佐野はぬえの真意について察知したのだが……。 素直でないぬえの態度からからかい半分で追い返した事より、2人の関係は決して良いものとは言えないものになっていた。 ……その後、紆余曲折を経てぬえがチームに加入をしてからも、互いに反目する間柄である。 もっとも、周囲からはケンカ友達としてほのぼのとした視線で見られる事が多いのだが。 ムラサ「ほらほら、ぬえも佐野くんも喧嘩しない。 ……佐野くんもあんまり気を悪くしないでね。 ぬえもこれで寂しがってるのよ」 ぬえ「か、勝手な事言わぬぇでくれるムラサ!? 逆にコイツがいなくなってくれてせーせーするくらいだわ!」 べー、と舌を出して威嚇するぬえに苦笑しながらムラサが突っ込みを入れ……。 とりあえずはこの場も丸く収まるのだった。
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0ch BBS 2007-01-24