※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
【SSです】幻想でない軽業師
[333]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:58:56 ID:??? 佐野「ま、まあ……さっきも言ったけど俺も頑張ってくっから! 白蓮さん達も頑張ってな! レベル不足で前までは幻想郷での大会にも出られなかったけど、今なら全然出れるだろうし!」 ぬえ「へーんだ、アンタに言われなくたってそのつもりだよっ! アンタがいなくたってこの私の力で優勝させてやるんだから!」 佐野「にゃにおう!? この俺のローリングオーバーヘッドが無くても優勝が出来ると言うのか!?」 ぬえ「浮き球補正も特に高くない上にシュート力も低いのにローリングオーバーヘッドが得意技な男の人って……」 逆に素直に佐野を応援していない者もいる。 封獣ぬえ――彼女はとにかく、佐野と折り合いが悪かった。 当初この命蓮寺がチームを結成し、メンバーがそもそも11人にも満たなかった頃の事である。 ムラサ、一輪と古馴染であったぬえは、彼女たちの助けになるならばと加入しようとしていた。 しかしながら、生来天邪鬼な性格なのがこのぬえである。 素直にチームに入れて欲しいと言う事も出来ず、おまけに命蓮寺のメンバーの多くはドがつく程の天然が多い。 幸いにして、その時、その場にいた佐野はぬえの真意について察知したのだが……。 素直でないぬえの態度からからかい半分で追い返した事より、2人の関係は決して良いものとは言えないものになっていた。 ……その後、紆余曲折を経てぬえがチームに加入をしてからも、互いに反目する間柄である。 もっとも、周囲からはケンカ友達としてほのぼのとした視線で見られる事が多いのだが。 ムラサ「ほらほら、ぬえも佐野くんも喧嘩しない。 ……佐野くんもあんまり気を悪くしないでね。 ぬえもこれで寂しがってるのよ」 ぬえ「か、勝手な事言わぬぇでくれるムラサ!? 逆にコイツがいなくなってくれてせーせーするくらいだわ!」 べー、と舌を出して威嚇するぬえに苦笑しながらムラサが突っ込みを入れ……。 とりあえずはこの場も丸く収まるのだった。
[334]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:00:16 ID:??? 佐野「(……ま、こいつが生意気なのは今に始まったこっちゃねーしなぁ。 それに、サッカーに関しちゃ真面目なのはわかりきった事だし。 白蓮さん始め、命蓮寺のメンバーはお人よしばっかだ。 1人くらいこういう底意地の悪いのがいた方が安心……か?)」 素直になれないのは佐野もまた同じ。 なんのかんのと言いながらも、ぬえがこのチームの中で締める役割というものが大きいのは知っている。 特に白蓮や星といった、超がつく程の善人達がいる中、 こういった――いい意味であくどい者もまた、サッカーをしていく上では必要な人材であった。 椛「キャプテン……」 佐野「おっ、椛」 そして最後に佐野に声をかけてきたのは椛であった。 彼女はこの騒がしい一同の中においては、あまり目立つようなタイプではない。 おずおずと、苦笑をしながら前に歩み出てきた椛を見て――しかし佐野は嬉しそうに笑みを見せる。 佐野「ケケケ、今のキャプテンは俺じゃなくて椛だろ」 椛「わふ……いや、まぁ、そうッスけど……」 この命蓮寺ナムサンズのキャプテンは――一応は、佐野満という事になっている。 ただ、その佐野が外の世界へと留学に行く以上、佐野がいない間――3年間、キャプテンを代理として勤める選手が必要だった。 当初は実力的にも、そして体面的にもこの命蓮寺の代表でもある白蓮に一任されるのではという話もあったが、 佐野が指名し、またその当人である白蓮も推薦をしたのが犬走椛であった。 彼女もまた、この命蓮寺というサッカー未開の地で佐野と共に一同を鍛え上げた一員の1人である。 無論、小町やルーミアといった経験者もある程度はいるものの、彼女たちはそもそもあまり指導力というものがない。 結果として、佐野と椛――更には佐野が特別に師事を受けていた魅魔らが命蓮寺メンバーの成長に一役買っていた。 こうした点や、試合においてもディフェンス陣のリーダーとして振る舞っている点。 更には生真面目な性格などから椛はキャプテンへと推薦され……周囲の者たちも、特に問題は無いだろうと賛同をしていたのだった。
[335]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:01:29 ID:??? 椛「本当に自分で良かったんスか? やっぱ白蓮さんとかの方が……」 佐野「もう決まった事だろ、似合ってんぜキャプテンマーク?」 椛「わ、わふ……」 ぬえ「(っていうか別に試合じゃないのにつけてるあたり、なんだかんだでこの天狗もキャプテンになれてうれしいんじゃない?)」 その腕に締めた腕章を見て、佐野が言うと椛は照れたように頭をかき……。 しかし、小さくだが溜息を吐いた。 椛「(嬉しいのは嬉しいんスけど……本当に、いいんスかねぇ……。 自分はやっぱりあの試合でも勝てなかったどころか、ろくすっぽ活躍すら出来なかったッス。 ……キャプテン。 いや、佐野くんはもう立ち直って次の道を見据えてるッスけど……)」 出番を求めて命蓮寺へとやってきて、かつてオータムスカイズにいた時よりは大きく成長をして。 更には魔界へまで行って、そこでも大きく成長をして。 ――それでも尚、敵わない。いや、敵わないどころか――勝負にすらなっていなかった、反町一樹との対決。 今、こうして佐野はすっかり立ち直り、前向きに留学に行くことに思いを馳せていた。 今よりも更に強くなり、今度こそ勝って見せるという強い気持ちを持っていた。 それはきっと彼の心が強く、そして実際に反町と相対する事が少なかったが為なのだろう。 ただ椛の場合は違う。彼女はDFであり、反町はFW――次に戦う時も、直接相対する関係だ。 その時自分は勝てるのか。この命蓮寺として大会に出て――本当に彼がいるチームに、勝てるのか。 椛も決してネガティブな性格をしている訳ではない。 だが、ここまで積み重なった敗北。練習をし、努力をしてもそれ以上のスピードで離れていく強者たちの背中。 何よりも一切満足のいく結果を出せていないにも関わらず、キャプテンに就任した焦りと、それでも感じてしまう歓び。 努力だけは認められたが、果たして今の自分にそれに見合う実力はあるのか。生真面目であるが故に、椛の悩みは尽きなかった。 椛「(自分にも佐野くん程の強い心か……反町さんみたいな他者を圧倒出来る才能でもありゃいいんスけどね……)」 佐野「ま、後は頼むぜ椛!」 椛「わふ……はいッス」 それでも辛うじて、そういった悩み――苦しみを周囲に出さなかったのは椛なりの意地だった。
[336]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:02:54 ID:??? 魅魔「……さて、そろそろいいかい?」 佐野「お? おう」 そして全員との挨拶を終えた所で、魅魔は改めて佐野に声をかけた。 名残惜しい思いはあれど、それに縛られてはいけない。 佐野は大きく頷くと、よいしょとオッサン臭い声を上げながらスポーツバッグを肩にかける。 佐野「……って、あれ? どうやって外の世界まで行けばいいんだ?」 魅魔「私の魔法で飛ばす。 ちょいと時間がかかるが……じっとしときな」 佐野「はぇー……師匠ってそんな事も出来んだな」 魔理沙「魅魔様は攻撃魔法だけじゃなく補助も回復も出来るからな。 転送魔法も使えるし……いざって時は2つの魔法を同時に唱える事だって出来る」 佐野「ふーん……。 ……それって凄いの?」 魔理沙「めちゃめちゃすげーよ。 お前は少しは師匠の事を知る努力をするべきだぜ」 魅魔「ま、佐野はサッカーについての弟子だからね。 知らんでも問題無いさ。 それと魔理沙、あんまり人を煽てるもんじゃないよ」 そういえばこの人って魔法使いだったな、と魅魔の持つステッキに目をやりながら佐野は思う。 ともかく、ここは言いつけ通りに佐野はじっと大人しくその場に立ち尽くし……。 しかし、今更ながら聞いていなかった1つの疑問が浮かび上がり、思わず口に出す。
[337]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:04:08 ID:??? 佐野「今更だけどさ、俺が行く留学先ってどこなんだ?」 魅魔「そいつはついてからのお楽しみさ……だが、悪いようにゃせんよ。 しっかりと調べて選んだからね。 ま、環境についてはお前も文句言わんだろうさ」 佐野「ほへー」 明確な答えは貰えなかったものの、魅魔がここまで言うのならばきっとそうなのだろう。 今よりずっといい環境、というとやはりサッカー先進国――ヨーロッパ諸国か南米か。 佐野が新天地に想いを馳せる中で、魅魔は魔力をステッキへと込めると詠唱をし……。 魅魔「トゥエエエエエエエエエエエエエイイァアアッ!!」 佐野「掛け声かっこわるっ!? ってうおおおっ!?」 ステッキを一振りすると同時、佐野は綺麗さっぱりその場から姿を消すのだった。
[338]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:05:22 ID:??? ムラサ「おお、本当にいなくなっちゃってる。 これって送れたって事でいいんだよね? ちょっと動きがあまりに地味すぎてちゃんと送れたのか単純に佐野くんがただ消えちゃったのか判別しにくいんだけど」 魅魔「人里で流行ってるような貸本屋の漫画とかならいわゆる『えふぇくと』とかいうのが出るんだろうが、 本当の魔法ってもんはこういう地味なもんさ。 地面に魔方陣だかを書いて魔力を増幅するのだって、私からいわせりゃ自分の持前の魔力じゃあ不足してるから、 魔方陣を書く事によってその補助とする――。 つまりは自分の力量不足を周囲に見せてるだけの、三流以下のやり方だね」 言いながら、魅魔はステッキを手元で弄びつつその場に腰掛ける。 その場にいる者が魔法に関してはあまり関心が無いか詳しくない――。 もしくは、魔法使いでありながらもこういった転送魔法などについてはまるで専門外であった為に突っ込みは無く。 しかし、唯一――魔理沙だけはそんな魅魔の隣に腰掛け、疑問を口にする。 魔理沙「しかし良かったのか魅魔様? あんな事言って」 魅魔「おや、どうした魔理沙? 何か変な事でも言ってたかねぇ?」 魔理沙「……環境には文句も言わんだろう、って言ってたじゃねーか」 魔理沙が気にかかったのは、先ほど魅魔が佐野に告げた言葉についてだった。 ……本来、そこまで佐野達と仲がいい訳ではない魔理沙。 そんな彼女が、何故わざわざ佐野を見送るような場所にやってきたのか。 魅魔の魔法をこの目で見ておきたいという理由もあったが、それ以外にも理由がある。
[339]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:07:07 ID:??? 魔理沙「私はここに来る前に博麗神社に行ってきた。 ……霊夢と紫の奴が、派遣選手って奴を送るのを見に行ったんだけどさ」 魅魔「ああ、それで?」 魔理沙「咲夜や妖夢、うどんげ……後はさとり。 あいつらは、それぞれがてんでバラバラのチームに送られてたみたいなんだけどな。 ……3人程、同じチームに送られてた奴らもいた」 魅魔「ほうほう」 魔理沙「……魅魔様、私には教えてくれたよな? 佐野がどこに行くのかって」 魅魔「ああ、教えたねぇ」 魔理沙「………………」 今回のサッカー留学は、何度も言われているように各人の大きな成長。 そして、外の世界との交流をメインとして企画されたものである。 ――少なくとも、建前上は。 大きな成長についてはともかくとして、交流をメインとするならば……。 当然ながら、各々は別の国――或いは別のチームに所属をした方が、より多方面との交流になる。 だが、八雲紫が指定をした3名については、それぞれが同じチームに送られた。 ……無論、外の世界のチームとの契約、交渉が上手くいかなかった可能性もある。 何せこちらは留学と称してそのチームの選手の枠を貰い受ける形になるのだ。 金を出し、その枠を買い取る形……それが上手くいかない事も、あり得るだろう。 魔理沙「なら……尚更3人も同じチームってのはおかしいじゃねぇか? よっぽど安く買いたたけたとしても、3つも枠をくれたりするもんか?」 魅魔「………………」 魔理沙「……逆なんじゃねーかなって思うんだよな」
[340]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:09:12 ID:??? 逆。つまり、幻想郷側が――八雲紫が頼み込んでそのチームに3つの枠を貰ったのではない。 そのチームの側が、是が非でも幻想郷からの留学選手を受け入れたいと申し出た。 そう考えれば3人もの選手が同一チームに向かったというのも、納得が出来る。 魔理沙「受け入れたいって言う理由は、考えられる可能性は2つ。 1つは単純に先の大会で幻想郷の選手に興味を持ったチームであるって事。 ……つっても、私が思うにこれは薄い。 なんせ送られた3人はあの大会でロクに活躍どころか、大会に出てすらねーのもいたんだからな」 魅魔「………………」 魔理沙「そして、もう1つは……。 ……留学選手に頼らなきゃならねーくらい、よわっちいチームって事。 ……なぁ魅魔様、私が聞いたその3人が向かったチームってのと。 さっき魅魔様から教えて貰った佐野の留学先、一緒だったんだが……」 この指摘こそ、魔理沙がここに来た理由であった。 ……関係は決していいとは言えないとはいえ、それでも魔理沙にとって佐野は一応は弟弟子である。 師匠である魅魔が、決して弟子をだましたりするような人間――もとい、悪霊ではないと知っているとはいえ、 それでも気になり……魅魔の真意を探ろうとするのだったが……。 魅魔「魔理沙、いい事教えてやるよ」 魔理沙「! ……なんだよ」 魅魔「『優れた環境』っていうのはね、何も『強いチーム』って事じゃあないのさ」 魔理沙「………………」 いたずらっぽく笑みを浮かべてそう言い放つ魅魔を見て、魔理沙は少しだけ佐野に同情したくなるのだった。
[341]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:10:54 ID:??? ……… …… … 佐野「…………」 一方その頃、佐野満は外の世界で立ち尽くしていた。 魅魔の転送魔法は、やはりしっかりと成功をしており……彼は特に何の問題もなく、 目的地――留学先のチームのグラウンドへと降り立つ事が出来ていたのである。 そして、恐らくは留学先のチームも――魅魔の差し金か、佐野がこの時間にやってくることを知っていたのだろう。 外の世界へと久しぶりに帰還し、しかし右も左もわからない場所にやってきた佐野の案内役を、しっかりとつけていた。 栗毛の少年「やあ、ようこそ。 君が最後のメンバー……サノ・ミツルだね?」 佐野「あ、ああ……(最後?)」 辺りをきょろきょろと見回し、知らない者が見れば不審者扱いしそうな佐野にまず声をかけてきたのは、 茶髪の……どこか優等生的な雰囲気を持った、メガネをかけた少年であった。 彼の意味深な言葉にどこか引っかかりを覚えながらも、名前は合っている為に頷く。 栗毛の少年「良かった、時間通りだったね。 さあ、こっちへ……実は君以外にも今日入ったメンバーがいてね。 どうせだから一緒にチームの皆に紹介をしようと、今みんなを集めていた所だったんだ」 佐野「あ、そうなんスか(ほへー、珍しい事もあるもんだ。 さて掴みの挨拶を考えねーとなっと……ん?)」
[342]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:13:46 ID:??? 金髪の少年「………………」 佐野「(なんだこのゴリラ?)」 笑みを浮かべながら案内をする栗毛の少年の後をついていく佐野だったが……。 そんな栗毛の少年がいる一方で、先ほどから不躾にも佐野をジロジロと見ながら、無言で同伴をする金髪の少年がいる事に気づく。 少年、と言ってもその背格好――体格は大人顔負けに見え……。 佐野としては、どことなくかつて比良戸にいた時の先輩――次藤に似た雰囲気を覚える。 ……次藤とは違い、頭は完全に金髪なのだが。 佐野「(っていうか、金髪に茶髪……やっぱ外国か。 少なくともアジアじゃねーな)」 栗毛の少年「さあついた、ここで皆待ってるよ。 入って入って」 佐野「あ、どもども」 やけに人の好さそうな栗毛の少年に先導され、部屋の中へと入る佐野。 ここは一発ギャグで入ると同時に心を鷲掴みにするべきか、などと考えながら入ってみれば――。
前
次
写
名前
E-mail
0ch BBS 2007-01-24