※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
【SSです】幻想でない軽業師
[402]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:14:30 ID:??? 佐野「あ、あれっ?(反則でプレイ止まらないのこれ?)」 カルネバーレ「……今のが反則とでも思ったか? バカタレ、あれくらいの当たりで根を上げるな!」 マンチーニ「(言い方はともかく……まぁ、あれくらいなら試合でも普通にある事だからなぁ。 ただカルネバーレ、レクリエーションなんだから怪我の可能性のあるプレイは……)」 目を丸くしている佐野に対して、カルネバーレは叱るように怒鳴りつける。 実際、彼の言うようにこのイタリア――サッカー先進国の中でも有数の国の中においては、 先ほどのカルネバーレのプレイもそこまで危険なものと判断はされない。 ……幻想郷や魔界といった、色々と常識外れな環境でプレイをしてきた佐野ではあるが、 逆にこのような一般的な範疇の乱暴なプレイが流されるという事に微妙に新鮮味を感じるのであった。 お燐「じゃじゃ〜んっ! あたい、参上!!」 そして試合の方はといえば、佐野の零したボールをお燐がフォローしていた。 久方ぶりの試合、久方ぶりのボールの感触。 お燐は笑みを浮かべながら、佐野が突き進んでいた方向とは逆サイドへと流れながらドリブルを開始する。 佐野「おっ、やるじゃねーかお燐」 お燐「ふふ〜ん、ドリブルが得意なのはお兄さんだけじゃないんだよ!」 代表落ちをしたとはいえ、彼女も幻想郷では名の知れたサッカー選手である。 特にその磨かれたネコ科特有のしなやかさを生かしたドリブルは、佐野には及ばずとも上々の出来。 実際にお燐もその軽やかなステップでプレスに来る選手たちをかわし突破を成功させてしまう。 カルネバーレ「(ふん……あいつも、まあ中々やるようだが……)」 お燐「(おっとと、メガネのお兄さんが近づいてきてる……あのお兄さんはちょっと組しにくそうだねぇ。 それじゃま、ここは逃げよっか)天狗のお姉さん、いくよー!」 マンチーニ「(おっと、逃げられたか)」 パコーンッ!!
[403]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:15:57 ID:??? そしてサイドを完全に抉ろうかといった所で、お燐は斜め前方からやってきていたマンチーニに視線を一つやると、 勝負は避けた方が無難と判断し大きく逆サイドに振った。 これにはマンチーニも追いつけず、また中盤のメンバーもカットには向かえなかったのだが……。 ピューン お燐「ありゃ……」 佐野「おいおい、ライン割っちまうぞあれ」 試合勘が鈍っていたのか、お燐の蹴ったボールははたての遥か前方目掛けて飛んでいた。 これには流石にはたても追いつけず、スローインから仕切り直しかと一同が考える中……。 はたて「わ、わ……(ボールが来た! 取らないと……怒られるっ!!)」 ギュ…… 佐野「ん?」 ギュオォオオオオオオオオオオオオオオッ!! バシィッ!! 佐野「な、なにィ!?」 しかしである、はたてはこのお燐のボールをしっかりと受け取った。 ボールがラインを割ろうかというギリギリ、はたては急加速。 『走れましゅ』と宣言をしていた通り、全速力で走り――その上でガッチリと足でトラップをしていた。 お燐「にゃ〜、凄いねお姉さん。 あの虚報新聞の方のお姉さんみたいに速いや」
[404]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:17:13 ID:??? 実際の所は文の方がはたての数段上を行く俊足である。 が、それを差し引いてもはたてもまた種族としての特性か足は非常に速い部類であった。 おまけにそれだけの全速力を出しながら、ボールをあっさりとトラップする技術。 少なくともサッカー素人とは思えない動きであるのは間違いない。 佐野「(追いつけたとしても零すくらいが精々かと思ったけどキープ出来てるもんな……って) おいはたて! 前、前!! 敵が来てるぞ!!」 はたて「へ……ぴ、ぴぃっ!?」 期待していなかった選手が予想以上のプレイを見せた事に内心驚く佐野であったが、 そんな事はおかまいなしとばかりに敵チームのDF達ははたてにプレスをかける。 ブルノ「なーに、相手が上手くフォローをしたところでそれを奪い返せば問題無い!! お前ら、いつまでも新入りなんかにいい恰好させてるんじゃないぜ!!」 佐野「(くそっ、アイツの指示か! トラップした直後を狙うとは……アイツ、中々頭も切れる!)」 敵チームゴール前で大声を出すブルノを後目に、佐野ははたてをフォローできる位置へと急いで走る。 が、当然ながら佐野がどれだけ急いでもDF達がはたてからボールを奪いに向かう方が速い。 ボールを持ったままどうしたものかとまごまごしていたはたては、眼前に迫るDF達に対し……。 はたて「(やだやだなんでこんなにいっぱい来るの!? と、とにかく逃げなきゃ!!)」 シュッ……タタタタァァァァーッ!!! 佐野「うおっ……おお!?(やっぱ速い! それに……結構上手いぞ!?)」
[405]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:18:36 ID:??? とにかく逃げるべく、サイドから離れるように中央へと寄りながらドリブルを開始した。 やはりその速度は速く、おまけにドリブル技術自体も決して下手な訳ではない。 少なくとも佐野には及ばないが、それでもお燐同様そこそこは出来るといった様子である。 マンチーニ「(これは嬉しい誤算だな。 試合もした事が無いというのが事実なら……それでもあれだけ出来るというなら、果たして経験を積めばどうなるか)」 佐野「よーし、いいぞはたて! こっちにパスだ!!」 このままとりあえず一本打っとくか、と、佐野はペナルティエリアに侵入をしハイボールを要求した。 ご自慢のそこまで高い訳ではない浮き球補正と低くは無いけど一流レベルではないシュート力を生かした、 世界レベルでは火力不足である補正のローリングオーバーヘッドを打つ心算である。 はたて「パ、パシュ……(そ、そっか! ボールを手放せば追いかけられなくて済むんだわ! うん、そうよね! よしあの……えっと、誰だっけ? ……名前も知らないロンゲの人に渡しましょう!!)」 そしてこの指示を受けたはたては、素直に佐野にパスを出す事にした。 DFに追いかけられるのが(足の速さ的に追いつかれはしないが)怖いからという一心で、 その右足を振り上げてボールを蹴りぬく。 ぱしゅっ…… 蹴られたボールは打ち上げられた……ぱしゅっ、と音を立てて、それはそれは弱弱しく。
[406]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:19:36 ID:??? 佐野「ほげっ……」 あまりの弱弱しさに佐野は思わず息を飲み。 お燐「蹴りそこにゃい……じゃ、にゃいよね……?」 お燐は思わずずっこけそうになりながら、必死そうな表情のはたてとパスとの温度差に引きつった笑みを浮かべ。 マンチーニ「…………よっ!」 このパスコースに飛んでいたマンチーニは、悠々とパスカットをした。 たった1人で練習を繰り返し、ドリブルの技術は佐野達からもそこそこという評価を受けていたはたて。 しかしたった1人で練習をし、試合経験が全く無い彼女は、ドリブルで走る為以外にボールを蹴った事がまるで無い。 何故ならパスを受けてくれる者も、シュートを止めてくれる者もいないのだから。 更に言えば、あの射命丸文をもってして、大局的に物事を見る事が出来ず、視野が狭く、コミュニケーションが下手と言われているはたて。 これが何を意味するのか。 大局的に物事が見れず視野が狭いという事は、パスコースを探す事が苦手であるという事。 そして、パスがボールを通したコミュニケーションという言葉もある通り――。 姫海棠はたてという少女は、パスとシュートがドがつく程に下手であった。
[407]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:28:44 ID:??? 一旦ここまで。 なんだかはたてちゃんがメインみたいになってますがそんな事はなく、 前作で出てこなかったキャラなので色々と掘り下げている形となっています。 それでは。
[408]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:51:09 ID:??? はたて「ひぅっ!?」 ガーン、と大きなショックを受けながら悲鳴を上げるはたて。 彼女の中ではとっととボールを手放してDF達に追いかけられず、 また、注目されるような事から解放されると思っていた筈が結果はパスミス。 彼女なりに精いっぱい頑張ってのパスであったが、悲しい事にそれはやはり弱弱しく。 ド下手で精度も速度もまるで無いそれを見て周囲の者たちが深い溜息を吐くのを、 彼女はその場で立ち尽くして聞くしか出来ないのであった。 はたて「(失敗しちゃった怒られる〜!? っていうか、ボール手放したのになんでみんなが私見てるの!?)」 佐野「(見た限りパスはへっぽこ……あれじゃシュート打たせようとしても多分キック力不足だろうなぁ。 ドリブルだけは実践レベルってトコだけど動きも不安定だし……。 っていうかパスに至っては高杉さんとかと同じくらいのレベルじゃねーか?)」 注目されている事に気づき顔を真っ赤に染めるはたてを見やりながら、佐野は考える。 某日本代表で同チームにいたの先輩を軽くディスっているが気にしてはいけない。 彼はDFの数が少ないが故に選出されているだけであり、 得意であるブロックとクリアー以外はまったくもってお話にならないのは事実なのだ。 マンチーニ「(試合経験が無い……それにしてもパスが出来ないというのは大問題だな。 これからの練習で向上が見られればいいんだが……それよりもまずは)」 カルネバーレ「マンチーニ!」 マンチーニ「ああ、いくぞっ!」 バシュウッ! 一方でボールをカットしたマンチーニは、そのまま一気に前線へと放り込んだ。 自陣深くから一気にセンターライン付近まで飛んだボール目掛けてカルネバーレは走り込み、 慌ててこれにはDFのバルトロメオとMFのモゼが連携をして競り合いに向かう。
[409]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:52:09 ID:??? バルトロメオ「くそっ、二人がかりなら!」 カルネバーレ「止められると思うか!?」 ダダッ! バッ!! ガシィイッ!! モゼ「だ、駄目だ……」 佐野「(うげ、やっぱあいつ見た目通り競り合いに強い……上に案外ジャンプ力もあるぞ!?)」 体格がいい上に跳躍力も人並み以上にはあるカルネバーレ。 2人がかりで阻みに来たバルトロメオ達をあっさりと蹴散らしながら空中でボールを確保すると、 そのまま脇目も振らずドリブルで中央を突き進む。 流石にキャプテンというだけあって実力は確からしいと佐野が感心する中……。 カルネバーレ「…………」ドタドタ 佐野「って、足おそっ!?」 しかし、そのドリブルスピードの速さが巧さや力に比較をしてあまりに遅い為に思わずそう叫んでいた。 あまりの遅さ……というか鈍重さに、走る音も『タタタ』や『ダダダ』でなく『ドタドタ』であった。 一気に前線に放り込んだはいいものの、これではカウンターにはならない。 実際にカルネバーレはすぐに戻り始めたお燐にもチェックをかけられたのだが……。 お燐「ふふ〜ん、あたいは他のネコ科と違って守備も出来るんだからね! ゴリラのお兄さんボールちょうだい!」 カルネバーレ「誰がゴリラだァッ!!」 バギィッ!! お燐「うにゃ〜んっ!?」 佐野「うお、やべっ! みんな、そのゴリラ止めるんだ!!」
[410]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:53:41 ID:??? 横からスライディングタックルにやってきたお燐を、強引に吹き飛ばしながら更にカルネバーレは突き進む。 やはりスピードだけは完全に欠如しているが、パワーについては疑う余地も無い。 このままでは一気にシュートチャンスを作られてしまうと佐野は慌てて守備陣に指示を飛ばし、 これを受けて守備陣もカルネバーレの危険性をよく知っているのだろうすぐさまプレスをかけに向かう。 シュタタタタッ!! はたて「うぇひっ……(い、勢いで戻っちゃったけど……これ私も行かなきゃいけないの!?)」 佐野「おお……はえぇ。 よしはたて! そのままゴリラに突撃だ突撃!!」 はたて「ぅへあ……」 その中にはなんと先ほどまで前線にいた筈のはたてもいた。 いくらカルネバーレが鈍足といえど、大きく距離が離れていたにも関わらずチェックに行けるあたり、 彼女の足の速さについてはもはや疑う余地も無いだろう。 ……割と足が速いつもりであった佐野ですら、まだ追いつけていないのだから。 はたて「(突撃って言ったってどどど、どうすりゃいいのよ〜!? えっとえっと……)」 カルネバーレ「(上手く俺にマークが集中してきたな。 よし、頃合いだ!)マンチーニ!!」 はたて「(うぇっ、あ、ボール蹴る!? さ、触らなきゃ!!)」 指示を受けてもまごまごしていたはたてであったが、 そんなはたてを後目に、カルネバーレはここで強引に突破を図らずパスを選択した。 自身にマークが集中する今、再びマンチーニへと預けて彼にボール運びをしてもらう為である。 その右足を小さく振りかぶり、サイド際に流れてゆくマンチーニにパスを出そうとするのだが……。 ビュンッ!! はたて「え、ええ〜いいっ!!」 カルネバーレ「むっ!?」 バチィッ!!
[411]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:55:07 ID:??? 直接ぶつかるのではなくパス相手にならと、思い切って飛び出したはたて。 そのスピードはやはり速く、彼女の突き出した足は辛うじてボールに触れて軌道を変えた。 カルネバーレ「(……俺自身、あまりパスが得意という訳ではないのもあるがそれでも触れたか。 身体の使い方がてんでバラバラだが……守備がそこまで苦手という訳ではないか?)」 はたて「うぃ、うぃひひ……(なんでこのゴリラ私じっと見てるの!? 食べる気!?)」 ドリブルは上手いがパスは苦手。守備はまるで形がなっていないがスピードには目を見張るものがある。 なんともちぐはぐなはたての動きに、カルネバーレは訝しむような視線を向け。 一方で目の前で凝視されたはたては愛想笑い(のつもりだが完全に引きつっている)を浮かべながら半歩下がった。 ちなみに愛想笑いを浮かべている最中も、はたてはカルネバーレの目をまるで見れていなかった。 そしてこぼれたボールはカルネバーレチームのMFがフォローした。 直接とはならなかったが、そこを経由してボールはマンチーニへ。 結果的にはカルネバーレの狙い通りとなったが、それでも間に1人挟んだ分時間はかかっている。 故にこのマンチーニには佐野が向かう事が出来た。 佐野「よーし、ここで俺が颯爽とボールを奪って……」 マンチーニ「………………」 スッ ササッ タターッ!! 佐野「……あれ?」 マンチーニ「(国際Jrユース大会を見ていてわかったが、やはり情報通り彼の守備は軽いな……)」 もっとも、向かう事が出来ただけで、ボールを奪えはしなかったのだが。
前
次
写
名前
E-mail
0ch BBS 2007-01-24