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【SSです】幻想でない軽業師
[47]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 20:17:14 ID:??? こうして活躍出来た者たちもいれば、当然出来なかった者もいる。 選手兼コーチのパチュリーを含めれば総勢25名。 途中、霊夢ら4名の離脱があったとはいえ、出番すらなかった者すらいた。 うどんげ「私たちまで食べていいのかなぁ……後で料金とか請求されるんじゃ……」 てゐ「気にせず食ってりゃえーウサ。 誰もうどんちゃんの事なんて見てないよ」 うどんげ「ひ、酷いっ!!」 一応、本当に一応、出場機会こそあったものの。 いい所はまるで無し、小さな活躍はしても大きく印象に残る事はまるでない。 極端に役立たずだった訳ではないが、かといって存在感は微塵も感じる事もなかった鈴仙=優曇華院=イナバ。 彼女は自分もこんな豪華な食事を食べていいものかとキョドっていたものの、 傍らにいる少女の言うように誰もうどんげには注目をしていなかった。 憤慨するうどんげをいなしながら、少女――因幡てゐは小さく溜息を吐く。 てゐ「(私の出番が無いとは思ってたし、うどんちゃんも活躍するとは微塵も思わなかったけどさぁ……。 流石にアルゼンチンがあそこまでの大敗をする、ってのは痛かったなぁ……)」 この大会が終われば自分たちは幻想郷へと戻る。 一時的に海外のチームへと派遣されている選手たちも、元いた勢力へと戻ってゆく事になるだろう。 そうなった時、果たして自分たちのいる――永遠亭の評判はどうなるか。 うどんげ、てゐの活躍が無かったというのはてゐ自身にしても予想の範疇、というか十中八九そうなるだろうと予期していた事だ。 問題点は永遠亭の誇るエース――八意永琳の所属したアルゼンチンが、まさかの大虐殺をされたという事である。 てゐ「(他の国はそこそこやれてただけに、とんでもなくいてーウサ……。 アルゼンチンに派遣されたのは1人だけ、なんてのも言い訳にしては弱すぎる。 永遠亭の評判は大暴落……いや、評判が大暴落するだけなら、今までの幻想郷サッカー界としては問題ねーんだけど……。 帰った後の展開、それにここまでの幻想郷サッカー界の流れを見るに……。 これ、すっげー痛手になりそうウサ……)」
[48]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 20:19:17 ID:??? お空「うにゅ……(全然活躍できなかったなぁ。 お燐の為にも頑張りたかったのに……。 それに……あの意地悪な人間が凄く活躍して! くそー……もっともっと強くなりたい!)」 メディスン「…………(何の為にわざわざ外の世界までやってきたんだろ)」 部屋の隅で誰とも言葉を交わさず静かに食事をとる者もいた。 地霊殿のストライカー、霊烏路空。 オータムスカイズ所属のMF、メディスン=メランコリー。 彼女たちも活躍出来た、とは言えない部類の選手たちであった。 お空は一応アルゼンチン戦でゴールを決めはしたものの、それは大虐殺試合の中での1つでしかない。 ある意味印象に残らないという点では、うどんげよりも下だったかもしれない。 この幻想郷Jrユースの選考会に残りながら、無念の途中離脱を果たした親友――火焔猫燐に対して、 面目が立たないという心情は理解できるものだった。 メディスンに至っては、そもそも出場機会すら与えられなかった。 敵の体力を削る接触プレイに、エースキラーの極意。 恵まれた才能を持ちながらも、しかし基礎能力で大きく劣る彼女に終ぞ大会では出番が来なかった。 メディスン「(幽香は今頃どうしてるんだろ……そういえば、なんで髪の毛が伸びたのかも教えてくれなかったなぁ)」 彼女の脳裏によぎるのは、常に彼女を気にかけてくれた風見幽香の事であった。 全幻想郷Jrユースの一員として選出され、戦っていた筈の彼女。 誰よりも焦がれ、会いたい相手は、敵対したチームの大事な友人であり。 このチームに対する未練や愛着は微塵程も無かったという。
[49]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 20:21:13 ID:??? 短いですが一旦ここまで。
[50]森崎名無しさん:2018/01/23(火) 20:58:34 ID:??? 一旦乙です 今更だけど章タイトルでちょっとうるっときた……
[51]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:47:42 ID:??? >>50 乙ありです。 ここから章タイトル回収です。ちょっとだけまた投下します。
[52]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:49:04 ID:??? 反町「(……改めて見ると個性的な面子だなぁ、本当)」 手の中にある杯(中身は酒ではなくジュースにしてもらった)を傾けながら、内心そう思う反町。 実際、全日本にも負けずとも劣らない個性的な面々ばかりだ。 彼女らとの思い出を肴に、しみじみと杯の中(何度も言うがジュース)を啜る反町だったが……。 穣子「反町、飲んでる!?」 反町「おぶふっ!」 リグル「ひえぇ……」 静葉「穣子、そんな急に叩いちゃ駄目でしょ。 ……はい、ハンカチ」 途端、背中を強くたたかれ思い切り口の中身を吐き出す。 中身は綺麗な飛沫となり、いつの間にか目の前にいた蟲の妖怪の顔面を直撃した。 思わず咳き込む反町は手渡されたハンカチでひとまずは目の前にいる少女の顔を拭き……。 続いて裏面を使って自身の口元を拭う。 反町「な、何するんだよ穣子」 穣子「1人でこんな所でボケーッと突っ立ってんのが悪い! 何やってんのよ、優勝の立役者が」 そこまでやってようやく落ち着いてから……反町は振り返り、文句を垂れた。 そこにいるのは――豊穣の女神、秋穣子。 悪びれた様子もなく、快活な笑みを浮かべてそう言い放つ様はいっそ清々しい。 ただ、当の本人が悪気が無く、言葉の通り祝勝会にも関わらず1人でいる反町を見かねて声をかけたというのは事実だろう。 それくらいの事は、決して浅くない関係である反町には理解が出来た。 出来たが、それについて素直に感謝するというのも微妙に気恥ずかしい。 反町はそんな感情を誤魔化すかのように、もう一度口元を拭った。 反町「ありがとうございます静葉さん」 静葉「いいえ。 それより服にはつかなかったかしら? 染みになったりすると大変だから……」 反町「大丈夫です。 ……リグルも悪いな」 リグル「……甘い。 これ美味しいね」 反町「(えぇ……)」
[53]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:50:50 ID:??? そのまま、借りていたハンカチを穣子の姉である秋静葉へと返し、 そしてオータムスカイズで常にツートップを張り続けた相棒――リグル=ナイトバグの具合を心配する。 因みに、リグル自身は思った以上に顔にかかったジュースが甘かった為、喜んでいたという。 甘い水は蛍の大好物だからね。仕方ないね。 穣子「にしたってなんでこんな端っこにいんのよ。 あんたがキャプテンで大会MVPまで取ったんだから、 もっと堂々とど真ん中にデーンと立ってなさいよ」 反町「なんの用事もないのにど真ん中に立つ訳いかないだろ……それに、ここが落ち着くんだよ。 みんなが騒いでるのを見るだけでも結構楽しいし」 静葉「まぁ……それはわかるわ。 (正直あまり触れたくない人とかもいるし)」 リグル「反町の飲んでた奴どこにあるの?」 反町「さあ? 適当に取ってきた奴だからどこにあるかまでは……」 リグル「ちょっと探してくる!」 駆け出すリグルを見やりながら、反町は彼女たちとの事について考える。 弱小チームだったオータムスカイズを名門へと導いたのは、反町自身の力によるところが大きいと大多数の者は考える。 しかしながら、当の本人は――当然ながらそんな事はあまり考えておらず、 むしろ周囲の者たちの支えと努力があったからこそと考えていた。 反町「(リグルも、昔はシュートしか出来なかったうえ……そのシュートの威力もお世辞にも高いとは言えなかったもんなぁ)」 オータムスカイズの中で、誰が一番成長を遂げたのか。 その質問に対する幻想郷のサッカー通の答えは、大きく二分に分けられる。 1つは、先立って話題に上っていたヒューイ。 名無し妖精の身ながら驚異的なセンスと試合を通しての成長、そして練習の成果により、 フィジカル面に大きな不安こそ残るものの攻撃面もそこそここなす、ボール狩りに長けたボランチとして既に幻想郷を代表する存在である。 そしてもう1つは、リグル=ナイトバグである。 反町の回想通り、当初は空中シュート一芸――かつ、そのシュートの威力もとても高いとは言えない弱小FW。 そこからまずは空中シュートにおいて才覚を発揮、高低どちらでも打てる強力なダイレクトシュートを武器に反町とツートップを組み、 更には何故か無駄に回るドリブル技を開発。ポストプレイもこなし、今や幻想郷全土を見渡してもトップクラスの万能型のCFWだ。
[54]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:52:15 ID:??? 反町「(静葉さんも……)」 オータムスカイズを誰よりも思っていたのは誰か。 これについても意見は分かれるだろうが、恐らく、1番強くチームを強く思っていたのは秋静葉に違いない。 まだチームの人員自体が足りない頃は、その微笑みを持ってして仲間を勧誘し、 チームが結成してからは中盤の要としてチームを牽引した。 途中、風見幽香が加入をした際にはいざこざがあったものの……。 それも、全てはチームを思っての行動である。 そりゃ誰だってジャイアンがいきなりチームに入れてくれと言って来たら警戒する。 まさか映画版のジャイアンだとは誰も思わない。 反町「(穣子も…………)」 オータムスカイズで反町と最も近しいのは誰か。 ――やはりこれも意見が分かれるが……その答えは秋穣子だろう。 日常生活では、反町をはじめとしたメンバー達の食事の用意などの家事を一手に引き受け。 それでサッカーに手を抜く事なく、むしろ熱心に練習には精を出し。 そして時には反町の事を勝気で前向きな姉として引っ張り――。 また時として――その勝気さの裏に潜む弱さも、反町に見せた事もあった。 反町自身、誰よりも自身の心中を理解してくれていると考えているのは穣子である。 数か月という短い期間。しかし、それ以上に濃い関係性が2人にはあったのだ。
[55]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:55:15 ID:??? 反町「(もしも俺が帰るとすれば……オータムスカイズはどうなるんだ?)」 先ほど、輝夜と話した反町の今後の身の振り方。 もしも外の世界に帰るとなった場合――オータムスカイズはどうなるのだろう、と夢想をする。 自分1人が抜けた所で大丈夫だろう、と安易に考えられる程には、反町は卑屈でもなければ責任感が無い訳でもない。 キャプテンであり、エースストライカーである。その程度の自覚はある。 ただ、だからといっていつまでも幻想郷にいていいものか……という思いもいくばくかはある。 全日本というチームに対して、東邦学園という居場所に対しては未練も決して無かったが、 やはり外の世界にも友人や両親は残してきている。 常識的に考えれば、少なくとも両親を安心させる為にも、一度は帰郷しなければならないだろう。 反町「(それに将来を考えればやっぱり高校くらいは出ておかないと……。 将来……いや、幻想郷で将来を過ごすなら外の世界での学歴は意味無いのか? 高校を出るってなっても3年はかかる訳だし、その間チームを離れるっていうのも問題だし。 そもそも高校はどうしよう。 東邦……いや、うーん……別に今更日向は怖くない、けど。 かといって好き好んであいつが牛耳ってる所で過ごすっていうのもなぁ。 ただ、他校を受験するのは……そもそも俺受験勉強してないしなぁ。 いや、勉強はそこそこ出来るとは思うけど。 東邦はエスカレーター式だからまるで対策とかもしてないし……やっぱり幻想郷に残った方が……でも……)」
[56]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:56:47 ID:??? むにぃ 反町「ふへ?」 穣子「なーにをまたムッツリ考え込んでんのよ、私と姉さんを前にしときながら」 と、反町が悶々とまた考え事を始めた所で、不意に頬をムニンと引っ張られた。 意識を再び現実へと引き戻してみれば、そこには頬を膨らませながら右手で反町の頬を抓む穣子。 その横では苦笑をしながら、そんな2人の様子を見守る静葉の姿がある。 穣子「こんな時まで難しい顔してうんうん唸る事無いでしょ」 反町「にゃにするんだよ……」 穣子「大会がやっと終わったってのにまだなんか心配事でもあるわけ?」 反町「いや……」 静葉「……何かあるなら、相談に乗るわよ一樹くん?」 口調はあれではあるが、穣子も心配をして言ってくれているのだろう。 その程度の事は、反町にもわかる。 しかしながら――外の世界に戻るべきか否か、2人に相談をしてもいいものだろうか。 2人が引き留めるかもしれない……と考えての躊躇では無い。 恐らくは今後の生き方を決める、大事な人生の岐路である。 だからこそ、これは――。 反町「これは多分、俺が答えを出さないといけない事だから……」 ようやく離してくれた頬を摩りながら、それだけ答えた反町。 穣子は未だに納得がいかない様子ではあったが……これ以上聞いても仕方ないと判断したのか、プイと怒ったように顔を背け。 一方で静葉は困ったように、やはり微笑を浮かべるだけで――。
[57]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:58:03 ID:??? 早苗「反町くーん♪」 反町「へ? え、早苗さん?」 と、そこに反町の耳に飛び込んできたのは――やけに陽気な声。 振り向けばそこには、頬を赤らめグラスを片手にニコニコと笑みを浮かべる緑の巫女。 その背後で疲れ切ったような表情を浮かべぐったりしている、赤の巫女。 東風谷早苗と博麗霊夢、両者の姿があった。 早苗「えへへ、大会お疲れ様でした!」 反町「は、はい……(あれー?なんだか凄く上機嫌だぞ……?)」 かつては常識に囚われず、フィールドで堂々と寝釈迦のポーズを取ってみたりGKながらオーバーラップをしたり、 はたまたゴールバーで懸垂をしてみたりと、それはそれは奇行を幾度となく繰り返してきた早苗。 ただ、反町と出会い常識の大切さを取り戻してからは、以前のような訳のわからない言動やハイテンションは鳴りを潜め、 どちらかといえば大人しい部類の性格へと戻っていた筈である。 ところが、今の早苗はといえば――いつもの様子は失せ、かといって常識に囚われなくなった訳でもない。 一体どうしたのかと目を白黒させる反町だったが……。 穣子「あー……飲んでるのね、早苗」 早苗「はいっ! 飲んでます!!」 反町「つまり……(酔っぱらってるのか……)」 静葉「(あまりお酒に強くないようだものね……おまけに酒癖がいい方でもないし……)」 同じ妖怪の山に住まう者、八百万の神と風祝。 何かと親交がある静葉と穣子は、早苗の様子について見当をつけ、的確に言い当てる。 そう、何が会ったのかと言えば……単に酔っぱらっているだけ。 本来、あまり酒を好んで飲む方ではない早苗であったが、祝勝会で高揚していたという事もあってか、ついぐいぐいと。 一口が二口、二口が三口となっている間にアルコールはどんどん体内に吸収され……ご覧の有様である。
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0ch BBS 2007-01-24