※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
【SSです】幻想でない軽業師
[52]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:49:04 ID:??? 反町「(……改めて見ると個性的な面子だなぁ、本当)」 手の中にある杯(中身は酒ではなくジュースにしてもらった)を傾けながら、内心そう思う反町。 実際、全日本にも負けずとも劣らない個性的な面々ばかりだ。 彼女らとの思い出を肴に、しみじみと杯の中(何度も言うがジュース)を啜る反町だったが……。 穣子「反町、飲んでる!?」 反町「おぶふっ!」 リグル「ひえぇ……」 静葉「穣子、そんな急に叩いちゃ駄目でしょ。 ……はい、ハンカチ」 途端、背中を強くたたかれ思い切り口の中身を吐き出す。 中身は綺麗な飛沫となり、いつの間にか目の前にいた蟲の妖怪の顔面を直撃した。 思わず咳き込む反町は手渡されたハンカチでひとまずは目の前にいる少女の顔を拭き……。 続いて裏面を使って自身の口元を拭う。 反町「な、何するんだよ穣子」 穣子「1人でこんな所でボケーッと突っ立ってんのが悪い! 何やってんのよ、優勝の立役者が」 そこまでやってようやく落ち着いてから……反町は振り返り、文句を垂れた。 そこにいるのは――豊穣の女神、秋穣子。 悪びれた様子もなく、快活な笑みを浮かべてそう言い放つ様はいっそ清々しい。 ただ、当の本人が悪気が無く、言葉の通り祝勝会にも関わらず1人でいる反町を見かねて声をかけたというのは事実だろう。 それくらいの事は、決して浅くない関係である反町には理解が出来た。 出来たが、それについて素直に感謝するというのも微妙に気恥ずかしい。 反町はそんな感情を誤魔化すかのように、もう一度口元を拭った。 反町「ありがとうございます静葉さん」 静葉「いいえ。 それより服にはつかなかったかしら? 染みになったりすると大変だから……」 反町「大丈夫です。 ……リグルも悪いな」 リグル「……甘い。 これ美味しいね」 反町「(えぇ……)」
[53]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:50:50 ID:??? そのまま、借りていたハンカチを穣子の姉である秋静葉へと返し、 そしてオータムスカイズで常にツートップを張り続けた相棒――リグル=ナイトバグの具合を心配する。 因みに、リグル自身は思った以上に顔にかかったジュースが甘かった為、喜んでいたという。 甘い水は蛍の大好物だからね。仕方ないね。 穣子「にしたってなんでこんな端っこにいんのよ。 あんたがキャプテンで大会MVPまで取ったんだから、 もっと堂々とど真ん中にデーンと立ってなさいよ」 反町「なんの用事もないのにど真ん中に立つ訳いかないだろ……それに、ここが落ち着くんだよ。 みんなが騒いでるのを見るだけでも結構楽しいし」 静葉「まぁ……それはわかるわ。 (正直あまり触れたくない人とかもいるし)」 リグル「反町の飲んでた奴どこにあるの?」 反町「さあ? 適当に取ってきた奴だからどこにあるかまでは……」 リグル「ちょっと探してくる!」 駆け出すリグルを見やりながら、反町は彼女たちとの事について考える。 弱小チームだったオータムスカイズを名門へと導いたのは、反町自身の力によるところが大きいと大多数の者は考える。 しかしながら、当の本人は――当然ながらそんな事はあまり考えておらず、 むしろ周囲の者たちの支えと努力があったからこそと考えていた。 反町「(リグルも、昔はシュートしか出来なかったうえ……そのシュートの威力もお世辞にも高いとは言えなかったもんなぁ)」 オータムスカイズの中で、誰が一番成長を遂げたのか。 その質問に対する幻想郷のサッカー通の答えは、大きく二分に分けられる。 1つは、先立って話題に上っていたヒューイ。 名無し妖精の身ながら驚異的なセンスと試合を通しての成長、そして練習の成果により、 フィジカル面に大きな不安こそ残るものの攻撃面もそこそここなす、ボール狩りに長けたボランチとして既に幻想郷を代表する存在である。 そしてもう1つは、リグル=ナイトバグである。 反町の回想通り、当初は空中シュート一芸――かつ、そのシュートの威力もとても高いとは言えない弱小FW。 そこからまずは空中シュートにおいて才覚を発揮、高低どちらでも打てる強力なダイレクトシュートを武器に反町とツートップを組み、 更には何故か無駄に回るドリブル技を開発。ポストプレイもこなし、今や幻想郷全土を見渡してもトップクラスの万能型のCFWだ。
[54]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:52:15 ID:??? 反町「(静葉さんも……)」 オータムスカイズを誰よりも思っていたのは誰か。 これについても意見は分かれるだろうが、恐らく、1番強くチームを強く思っていたのは秋静葉に違いない。 まだチームの人員自体が足りない頃は、その微笑みを持ってして仲間を勧誘し、 チームが結成してからは中盤の要としてチームを牽引した。 途中、風見幽香が加入をした際にはいざこざがあったものの……。 それも、全てはチームを思っての行動である。 そりゃ誰だってジャイアンがいきなりチームに入れてくれと言って来たら警戒する。 まさか映画版のジャイアンだとは誰も思わない。 反町「(穣子も…………)」 オータムスカイズで反町と最も近しいのは誰か。 ――やはりこれも意見が分かれるが……その答えは秋穣子だろう。 日常生活では、反町をはじめとしたメンバー達の食事の用意などの家事を一手に引き受け。 それでサッカーに手を抜く事なく、むしろ熱心に練習には精を出し。 そして時には反町の事を勝気で前向きな姉として引っ張り――。 また時として――その勝気さの裏に潜む弱さも、反町に見せた事もあった。 反町自身、誰よりも自身の心中を理解してくれていると考えているのは穣子である。 数か月という短い期間。しかし、それ以上に濃い関係性が2人にはあったのだ。
[55]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:55:15 ID:??? 反町「(もしも俺が帰るとすれば……オータムスカイズはどうなるんだ?)」 先ほど、輝夜と話した反町の今後の身の振り方。 もしも外の世界に帰るとなった場合――オータムスカイズはどうなるのだろう、と夢想をする。 自分1人が抜けた所で大丈夫だろう、と安易に考えられる程には、反町は卑屈でもなければ責任感が無い訳でもない。 キャプテンであり、エースストライカーである。その程度の自覚はある。 ただ、だからといっていつまでも幻想郷にいていいものか……という思いもいくばくかはある。 全日本というチームに対して、東邦学園という居場所に対しては未練も決して無かったが、 やはり外の世界にも友人や両親は残してきている。 常識的に考えれば、少なくとも両親を安心させる為にも、一度は帰郷しなければならないだろう。 反町「(それに将来を考えればやっぱり高校くらいは出ておかないと……。 将来……いや、幻想郷で将来を過ごすなら外の世界での学歴は意味無いのか? 高校を出るってなっても3年はかかる訳だし、その間チームを離れるっていうのも問題だし。 そもそも高校はどうしよう。 東邦……いや、うーん……別に今更日向は怖くない、けど。 かといって好き好んであいつが牛耳ってる所で過ごすっていうのもなぁ。 ただ、他校を受験するのは……そもそも俺受験勉強してないしなぁ。 いや、勉強はそこそこ出来るとは思うけど。 東邦はエスカレーター式だからまるで対策とかもしてないし……やっぱり幻想郷に残った方が……でも……)」
[56]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:56:47 ID:??? むにぃ 反町「ふへ?」 穣子「なーにをまたムッツリ考え込んでんのよ、私と姉さんを前にしときながら」 と、反町が悶々とまた考え事を始めた所で、不意に頬をムニンと引っ張られた。 意識を再び現実へと引き戻してみれば、そこには頬を膨らませながら右手で反町の頬を抓む穣子。 その横では苦笑をしながら、そんな2人の様子を見守る静葉の姿がある。 穣子「こんな時まで難しい顔してうんうん唸る事無いでしょ」 反町「にゃにするんだよ……」 穣子「大会がやっと終わったってのにまだなんか心配事でもあるわけ?」 反町「いや……」 静葉「……何かあるなら、相談に乗るわよ一樹くん?」 口調はあれではあるが、穣子も心配をして言ってくれているのだろう。 その程度の事は、反町にもわかる。 しかしながら――外の世界に戻るべきか否か、2人に相談をしてもいいものだろうか。 2人が引き留めるかもしれない……と考えての躊躇では無い。 恐らくは今後の生き方を決める、大事な人生の岐路である。 だからこそ、これは――。 反町「これは多分、俺が答えを出さないといけない事だから……」 ようやく離してくれた頬を摩りながら、それだけ答えた反町。 穣子は未だに納得がいかない様子ではあったが……これ以上聞いても仕方ないと判断したのか、プイと怒ったように顔を背け。 一方で静葉は困ったように、やはり微笑を浮かべるだけで――。
[57]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:58:03 ID:??? 早苗「反町くーん♪」 反町「へ? え、早苗さん?」 と、そこに反町の耳に飛び込んできたのは――やけに陽気な声。 振り向けばそこには、頬を赤らめグラスを片手にニコニコと笑みを浮かべる緑の巫女。 その背後で疲れ切ったような表情を浮かべぐったりしている、赤の巫女。 東風谷早苗と博麗霊夢、両者の姿があった。 早苗「えへへ、大会お疲れ様でした!」 反町「は、はい……(あれー?なんだか凄く上機嫌だぞ……?)」 かつては常識に囚われず、フィールドで堂々と寝釈迦のポーズを取ってみたりGKながらオーバーラップをしたり、 はたまたゴールバーで懸垂をしてみたりと、それはそれは奇行を幾度となく繰り返してきた早苗。 ただ、反町と出会い常識の大切さを取り戻してからは、以前のような訳のわからない言動やハイテンションは鳴りを潜め、 どちらかといえば大人しい部類の性格へと戻っていた筈である。 ところが、今の早苗はといえば――いつもの様子は失せ、かといって常識に囚われなくなった訳でもない。 一体どうしたのかと目を白黒させる反町だったが……。 穣子「あー……飲んでるのね、早苗」 早苗「はいっ! 飲んでます!!」 反町「つまり……(酔っぱらってるのか……)」 静葉「(あまりお酒に強くないようだものね……おまけに酒癖がいい方でもないし……)」 同じ妖怪の山に住まう者、八百万の神と風祝。 何かと親交がある静葉と穣子は、早苗の様子について見当をつけ、的確に言い当てる。 そう、何が会ったのかと言えば……単に酔っぱらっているだけ。 本来、あまり酒を好んで飲む方ではない早苗であったが、祝勝会で高揚していたという事もあってか、ついぐいぐいと。 一口が二口、二口が三口となっている間にアルコールはどんどん体内に吸収され……ご覧の有様である。
[58]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:00:28 ID:??? 反町「で、霊夢さんは一体どうしてそんなに疲れ切ってるんです?」 霊夢「……こいつがあんたんとこ行くって言って聞かないのを止めてたのよ」 反町「? なんでまた……」 霊夢「嫌な予感するのよねぇ……すっごい嫌な予感」 酔っ払いを放っておく、というのは――確かにあまりいい事ではない。 が、あくまで所詮は酔っ払いである。 倒れこむ程飲んでいる訳でもなければ、気分を悪くしている訳でもない。 ただ単純にいつも以上にテンションが上がり、いつも以上に気が大きくなっているだけだ。 霊夢がわざわざ早苗の手綱を握る――しかも、反町に会いに行こうとするというのを止めていた、という言葉を聞き、 反町は首を捻るのだが……霊夢は盛大に溜息を吐く。 しかし、そんな事は今の早苗には関係ない。 早苗「反町くん、あの……約束の事なんですがっ!!」 反町「約束?」 穣子「なんかしてたの反町? っていうか早苗、声おっきい」 霊夢「(あーこれは……これは駄目な奴だわ、うん)」 思いのほか大きな声を出した早苗に、一体何事かと会場にいる者たちも反町達に視線を向ける。 そんな視線を知ってか知らずか、早苗は更に声量を上げ、満面の笑みで――。 早苗「はいっ! 大会が終わったら、ほら、その……」 反町「あ――」 早苗「私と正式に、お付き合いしていただけると!!!!!!」 ぶちかました。 ……… …… …
[59]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:01:48 ID:??? 「「「「「はあああああああああああああああああああああああああああああああっ!?!?!?!?!?!?」」」」」
[60]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:03:35 ID:??? 反町一樹と東風谷早苗。 2人の出会いは遥か昔である。 かつて常識に囚われないとしていた早苗は、常識にまるで捉えられないシュート力を持つ反町に一目ぼれ。 その後、早苗は紆余曲折を得てやっぱり常識は大切ですねと無意味にオーバーラップをする事を控えるようになり、 また、反町もなんだかんだで容姿端麗で(常識が戻れば)大和撫子。 男の理想とするタイプを具現化したような早苗に惹かれたのは当然の事であり、 両者は紅魔杯が終わった際、人知れず両想いの恋人となっていた。 しかしながら、その後全幻想郷Jrユースというチームに召集されるとわかっていた2人。 真面目な反町と常識的な感性を取り戻した早苗である。 大会が終わるまでは2人の関係を黙っていよう、と約束をしたのだが――。 反町「(そういや……大会終わったから、黙ってる必要も無いのか!)」 無論、あけすけに話すような必要も無い。無いが――今の東風谷早苗は酔いどれである。 1.酔っ払い 2.フランス国際Jrユース大会優勝でテンション上がりっぱなし 3.それよりとっとと愛しの反町くんとちゅっちゅしたい これらの要因が重なり合い、早苗はとんでもない爆弾発言をした。 大声で、である。 ざわ……! ざわ……!!
[61]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:07:05 ID:??? これには思わず、周囲の者たちもどよめくのだが……。 早苗「……反町くん、お答えを」 反町「え、え? いや、その……(まさかいきなり来るとは思わなかったっていうか!? え、ここで俺が答え出すの!?)」 東風谷早苗は反町一樹が逃げる事を許早苗。 魔王がにげるコマンドを選ぶ事を選択出来ないとはどういう事かと混乱する反町だったが、 それでも……それでも……! 反町「(そ、そうだよな。 思えばようやく……)はい……そうですね、ようやく表に出せますね早苗さん」 反町個人としても、思春期。 色々と豊満でグラマーで浮き球3/3な早苗が相手な事はあり、また、それは差し置いても好きあっている仲である。 逃げる事は当然なく、肯定の意志を小さくうなずきながら告げ――。 早苗「えへへ……ぎゅーっ!」 反町「(う、うわーっ!? うわーっ!? ああああああああっ!?!?!?!)」 それを聞いて、早苗はやはり満面の笑みで……反町の腕に絡みついてきた。 一同が絶句をする中で――それだけ、このビッグカップルの誕生は衝撃だったのだろう――。 ともかく、早苗は幸せそうに反町の腕に絡みついてきた。 これに対して反町は右腕に伝わるたわわな幸せと恥じらいとどうしていいのかわからなさに翻弄される。 反町一樹15歳、6点フェイスの男は言うほど女性に慣れていない。 早苗「うふふふ……」 反町「さ、早苗さん?」 早苗「これからは……これからは、我慢だってしなくていいんですもんね?」 反町「え、え、ええ……まあ……その……」 早苗「じゃあ……」 言いながら、早苗はすっと身を翻し――。
[62]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:08:53 ID:??? ちゅっ……
前
次
写
名前
E-mail
0ch BBS 2007-01-24