※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
【サッカーも】キャプテン岬3【ゲームも好き】
[291]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2020/04/29(水) 14:52:14 ID:m5u4zQgk A もう少し都合のいいタイミングを見計らって声をかける ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 岬「(もう少し待ってみよう。集中している時に声をかけて気分を悪くさせたら後々面倒だ。 まだ出だしのあたりだし、声をかけるかかけないかはその時に考えても遅くない)」 そう思い定めてもうしばらく、聖薇の読書を眺めている事にした。 そうしてジッと話を追っていくうちに、物語は1つ目の山場に入ってきた。 この物語のヒロイン、公爵令嬢ジナイーダが主人公と下僕たち、 もといジナイーダに片想いの紳士方を自宅に呼び寄せ、「罰金ごっこ」や「縄まわし」に歌舞音曲…… 様々な遊びの中で主人公を含めた恋の下僕たちは ジナイーダに振り回され、道化にされながらもそれによって歓喜に打ち震えているといったあり様だった。 そうしていく中である興味深い影響を読み取る事ができた。これらの遊びの冒頭、「罰金ごっこ」の時だ。 ジナイーダが手に持つ男物の帽子の中にクジが入っており、その中に1枚だけ「キス」 と書かれた紙を引き当てた者は、想い人の手にキスができるという。 『「キス!」と、わたしは思わず大声を上げた。 「ブラヴォー!この人に当ったわ」と、令嬢がすかさず引取って――「まあ嬉しい!」―― そして椅子を下りると、なんともいえず晴れやかな甘い顔つきで、じっとわたしの眼をのぞきこんだので、 私の心臓はワッとばかり踊り立った。 「あなたは嬉しくって?」と、彼女は私にきいた。 ジナイーダは私の前に立つと、私を一層よく見ようとするかのように首を少し横にかしげ、いとも荘重に片手を差しのべた。 私は眼の中が暗くなった。片膝をつこうとしたが、べったり両膝ついてしまって、おそろしく不器用に唇をジナイーダの指に触ふれたので、 むこうの爪つめで自分の鼻さきに、かるい引っかききずをこしらえてしまったほどだった』
[292]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2020/04/29(水) 14:53:56 ID:m5u4zQgk この時だ。 より正確には「あなたは嬉しくって?」とジナイーダが尋ね、主人公が嬉しさに呆然としている時だ。 両手で本を持ち読んでいた聖薇がおもむろに右手を離し、日の光にかざすようにして目の前に手のひらを移した後、 右手のみがジナイーダとなったかのように厳かに彼女の口元に近づき、唇に軽く触れたのだった。 手が唇から離れた瞬間、陶然と、しかしどこか物憂げな様子の表情を浮かべて嘆息を漏らす様を見て、 僕の中に取りとめの無い思いが浮かぶ。 岬「(読書にしては思い入れが激しすぎるような……もしかして、実際に誰か好きな人でもいるのかな?)」 それからしばらくは思い入れが形として表れる事はなく、静かに読み進めていく。 聖薇に次の動きが見られたのは、物語が中盤に入り、即興の創作話をジナイーダが皆に披露するところだ。 その時聖薇は驚嘆すべき事に、目を閉じ一座の1人となって物語に聴き入っている表情で、 令嬢のつぶやきをよどみなく朗読してみせるのだった。
[293]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2020/04/29(水) 14:55:54 ID:m5u4zQgk 『さて女王は、そんなお追従に耳をかしたり、音楽を聴きいたりしているけれど、その実お客の誰だれ一人にだって、目もくれないの。 六つの大窓が、上から下まで、天井から床ゆかまで、すっかりあけ放たれて、 その外には、大きな星くずをちりばめた暗い夜空や、大きな木々の茂しげった暗い庭があります。女王は、その庭に見入っているの。 そこには、木立こだちのそばに噴水があって、闇やみの中でも白々しらじらと、長く長く、まるで幻まぼろしのように見えています。 女王の耳には、人声や音楽の合間々々に、静かな水音が聞えるのです。女王は、闇に見入りながら、こんなことを考えるの―― 皆さん、あなた方はみんな、貴い生れで、賢くて、お金持です。 あなた方は、わたしを取巻いて、わたしの一言一句を重んじて、わたしの足もとで死ぬ覚悟かくごでいらっしゃる。 つまりわたしは、あなた方の生死を、わたしの手に握っているわけです。 ……ところが、あの噴水のそばには、あのさわさわと鳴る水のそばには、 わたしの愛する人、わたしの生死をその手に握っている人が、たたずんで、わたしを待っているのよ。 その人は、おごった衣裳も着ていないし、宝石もつけてはいず、誰もその名を知る人はありません。 けれど、その人はわたしを待ち受けているし、また、わたしがきっと行くものと信じきっています。 ――ええ、わたしは行きますとも。 一旦わたしが、その人のところへ行って、一緒になろうと思ったら最後、 わたしを引留めるほどの力は、この世のどこにもありはしない。 そこでわたしは、あの人と一緒に、あの庭の暗がりへ、木立のそよぐもとへ、 噴水のさわさわ鳴る陰かげへ、姿を消してしまうの……』
[294]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2020/04/29(水) 14:59:16 ID:m5u4zQgk 途中から胸に右手を押し当て、話すたびに愁声が深まっていく。朗読を終えた頃には悲痛さえ感じられた。 岬「(もし実際にいるとしたら、そう順風満帆という訳ではなさそうだ。 自分から相手に惚れているが相手はつれない……そんな感じだろうか)」 感情が完全に登場人物のものになってしまった聖薇を見てまた思う。 今話しかけたら、物語のロマンチックな感覚で僕の言葉を、僕自身をとらえてくれるだろう。 岬「(それともクライマックスはまだ先だし、そこまで待ってみるかな。 余韻にそっと寄り添うように語りかければ効果は絶大のはず。 それとも用心して、読み終わるまで待っていた方がいいだろうか)」 A 今声をかけてみる B クライマックス直後の感極まった時に、そっと声をかける C 読み終わるまで待つ D その他、自由回答(要2票) 先に1票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。 そしていったん席を離れます。続きは夜に投稿できるかもしれませんし、 できないかもしれません。なにとぞご了承願います。
[295]森崎名無しさん:2020/04/29(水) 18:07:23 ID:WWD255rI B
[296]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2020/04/29(水) 22:10:19 ID:m5u4zQgk 済みません、今日はこれ以上続きを投稿できそうにありません。 代わりと言っては語弊がありますが、Bを選んだ295さんへ、貴方の選択は、 _______________ (パーフェクトコミュニケーション)チャッチャッ、チャッチャララーチャン!  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ Aでは懸念通り興を冷ましてしまう結果となりますし、 Cだとクライマックスの後にエピローグを挟んでしまうため興奮がある程度落ち着いてしまっています。 Bを選んだことにより岬君の懸念事項であった「優君の護衛依頼」「賭け試合の承諾」が無条件で受けいれられ、 さらに彼女との特殊イベントが発生します! このイベントも岬君の将来に関わってくるものですので、どうかお楽しみに。
[297]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2020/05/03(日) 15:13:34 ID:ckL9aHIw 申し訳ありませんが、本日は投稿を休ませてください。5月5日の岬君の誕生日に投稿できるよう、 全力を尽くして執筆いたします。
[298]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2020/05/05(火) 00:46:46 ID:2vLj8NCA 今日は我らが主人公岬太郎君の誕生日という事で、 Twitterにて誕生日イラストを投稿してみました。興味のある方はこちらより ご覧になってはいかがでしょうか。 https://twitter.com/sc3loyupbCmTqIC/status/1257324276178235392 この物語につきましては、本日または明日にでも投稿できるよう、努めてまいります。
[299]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2020/05/05(火) 18:59:54 ID:2vLj8NCA 第5.1話『覚悟を決めろ』 B クライマックス直後の感極まった時に、そっと声をかける ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 岬「(やっぱり気分が最高に盛り上がった時が話しやすい。いい気分になって話を受け入れやすくなる。ここは待とう)」 ジナイーダの片想いの相手が分かっていない以上、クライマックスはまだのはずだ。そこまで待って ハイテンションになった時に声をかけてみよう。そう思って声をかけ驚かせたくなる衝動を抑え、あと少しだけ待つことにした。 そして残りのページが爪でつまめそうになる位に少なくなってきた時、遂にその好機が到来した。 『木造の小さな家のあけはなされた窓に向って、背中をこちらへ向けながら、 父が立っていたのである。父は胸を窓がまちにもたせていた。 家の中には、カーテンに半ば隠れながら、黒っぽい服を着た女が坐って、父と話をしている。この女が、ジナイーダだった。 わたしは立ちすくんでしまった。全くのところ、そんなことは思いもかけなかったのである。 わたしのしかけた最初の動作は、逃げ出すことだった。 『父は振返ふりかえるかもしれない』と、わたしは考えた。――『そしたら、もう万事休すだ』…… けれど、不思議な感情が――好奇心よりも強く、嫉妬などよりまだ強く、恐怖よりも強い感情が、わたしを引止めた』 岬「(お…きたきたきましたよ)」
[300]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2020/05/05(火) 19:01:29 ID:2vLj8NCA 思わせぶりな描写、そして残り枚数からして、主人公の父親がジナイーダの片想いの相手だろう。 ここまで来てこの昼ドラ的な展開から見て、ここがクライマックスに違いない。この予感は、すぐに証明された。 『その彼女の顔を、今なおわたしは目の前に見る思いがする。 ――悲しげな、真剣な、美しい顔で、そこには心からの献身と、嘆きと、愛と、一種異様な絶望との、 なんとも言いようのない影がやどっていた。 そうとでも言うほかには、わたしは言葉を考えつかない』 岬「(やっぱりそうだったか、さてどうな)」 聖薇「ああ!」 ハッとして顔を上げる。僕の存在に気付かれたかと思ったが、聖薇は相変わらず視線を本に向けたままだ。 主人公の父を引き留めようとしたジナイーダがその相手から思い切り、腕に鞭を打ちすえられているところを読んで、 哀切な声を上げていたらしかった。その後の聖薇の仕草といったら! 僕の頭では詩的な感情を表せないので、文豪の表現を借りてみたい。 『聖薇は、ぴくりと体を震ふるわしたが、無言のままちらと想像の恋人を目の前に見ると、 その腕をゆっくり唇へ当てがって、(想像上の)一筋真っ赤になった鞭のあとに接吻した』
[301]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2020/05/05(火) 19:03:37 ID:2vLj8NCA そこまで読んでため息をつき、再びそのキズ1つないきれいな腕に口づけした後、 折り畳むようにゆっくりと本を閉じ、ベンチの隅に置いた後に顔を上げ、 葉が散って隙間が大きくなったマロニエの枝の間越しに空を見上げ、つぶやきだした。 聖薇「わが悲しみは、ただひとり君の姿にみたされて……このわびごころ、何ものの乱し騒がすものもなし。 かくて胸は、またも燃え、恋いわたる……愛さでやまぬ胸なれば」(※) 今だ。 岬「お嬢さん、空を見つめてごらんなさい」 ここが機だ。僕が彼女の物語に入り込み、彼女の心へ働きかける絶好のチャンスだ。 岬「日の光と風を感じなさい。鞭の痛みが生きる希望になるものでしょうか」 聖薇「光も、風も、私には届きません。見上げたところで、あの人は……」 悲嘆にくれた表情で返事をしたところで、ハタと口が止まる。悲しみにひたっていた表情が元に戻り、 そしてすぐに、みるみるうちに顔を赤く染めあげながら、サビついたブリキ人形のようにぎこちなく振り向いて、口を開いた。 聖薇「み、み……みみみ、みさ、き、くん……?」 ※:アレクサンドル・プーシキンの抒情詩『グルジヤの丘の上』より。 『初恋』でもジナイーダが主人公にその個所を読ませるシーンがある。
前
次
写
名前
E-mail
0ch BBS 2007-01-24