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【戦わなければ】幻想のポイズン43【生き残れない】


[946]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2010/11/15(月) 23:02:33 ID:???
確かに若林源三は、西ドイツへとサッカー留学をしてから、殆ど己を鍛えていなかった。
否、無論クラブチーム内では日本人という事でされたいじめにも負ける事なく周囲に反発し。
チームで行う練習には当然ながら出て、試合などでも着実に成果を出した。
だが、自主的な練習という意味では、殆どしていなかった。

若林「(それは俺も悪かった……森崎を侮っていたのもある……。
    西ドイツに留学をしたのだから、日本にいる連中には負けないという慢心があったのもわかる。
    それが悪かったのは十二分にはわかっているんだ……だが……)」

果たしてそれだけで、ここまでの屈辱を受けなければならないのか……。
体格こそ大柄とはいえ、一介の中学生である若林源三にとって。
チーム内の誰からも蔑まれるような目で見られ、かつては子分であった者達からも哀れみの目で見られ。
そして、恐らくは少なくとも、このJrユースの時だけは森崎から正ゴールキーパーの椅子を奪えないだろう状況。
ただ少し慢心し、堕落していただけで――若気の至りだけで、ここまでの冷遇をされなければならないのか。
今からではどうしても取り戻せないのか、一時の過ちだけで人生全てを棒に振る事になってしまうのか。
それだけが若林源三の心中では、渦巻いていた。

若林「どうして……」

ザッ……

若林「!?」

今日何度目か、数えるのも嫌になるほどの泣き言を呟き、若林は瞳に涙を溜めながら息を吐く。
名門に生まれた彼は、何かの分野において才覚を発揮するという事を義務付けられており。
それが出来なかった時、彼が家でどのような扱いをされるかは目に見えている事。
このJrユース大会で一度として活躍が出来なければ、それは若林にとってお先真っ暗であるという事と同義である。
将来を不安視する彼がため息を吐いた直後、不意にそんな彼の背後から誰かが歩み寄る声が聞こえ……。

さとり「………………」
若林「(……女?)」


0ch BBS 2007-01-24