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1- レス

キャプテン森崎外伝スレ10


[290]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/08/06(月) 22:33:48 ID:???

各部器具の最終点検を行い、作業工程の手順を念入りに確認しなおして、
とうとう最後はカプセルのボタンを押すのみとなった。このボタンを押した後は
カプセルは完全にロックされ、中から睡眠誘導ガスが噴出される。そうして翼が
眠りについている間に、記憶の調整等が行われる事になる。
「もうすぐ、なんだね」今まで研究所内で使ってきたサッカーボールを抱えながら、翼はつぶやく。
「そう、新たな世界への旅立ちよ、翼くん。嬉しそうというか、随分ワクワクした顔つきになってきたじゃない」
「うん。さっきまでは自分の生まれとか力とか、そういった事があるのに大丈夫かって不安だったけど、
これから外へ出て行って、どんな人と会えるかとか、どんな出来事がおこるかとか、そういうことを考えているうちに、
これからのことが楽しみになってきたんだ。…外に出ても、このボールを博士だと思って大事にするね」
「………ありがとう。…もっと話をしていたいけれど、もう時間ね、カプセルを閉めるわよ」
「待って博士!」ボタンを押そうとしたところで、翼がばっと急いで手を挙げた。
次いで横たわっていた上体を起こして、私に語りかけた。
「どうしたの?」
「ごめんなさい博士、ずっと自分のことばかりで、博士達のことをちっとも考えてなかった、
今絶対に言っておきたいことがあるんだ」
そう言っている翼の顔はこれまで見た事がないほど真剣な面持ちで、誓いを立てるがごとき眼差しで私を見つめていた。
「僕はこの力を、みんなの意志と希望が生かされるようにするために使います。僕のことだから何年も何十年もかかるかもしれないし、
迷って反対方向に行ってしまうこともあるだろうけど、絶対に何度でも立ち直ってみせます」
「……ありがとう、これで私も心残りなく、翼くんを見送っていけるわね」
思わぬ決意表明に感情がこみ上げ、わずかにボタンを押すまいかと戸惑ったが、既に決まっている事、
意を決して翼と永遠の別れとなるボタンを押す。カプセルは少しずつ閉まり、じっと私を見つめる翼に対し、私は最後の言葉を発した。
「さようなら………私の、かわいい息子……」



0ch BBS 2007-01-24