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【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】
[406]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/08/28(火) 00:41:37 ID:???
「……終わった、な」
海を望む断崖の上、広い墓地の片隅にある古ぼけた石碑と、その脇の真新しい墓碑を見やって、
森崎が息をつく。
葬儀を終え、周囲には既に人の姿はない。
暮れなずむ夕陽に照らされた古い石碑は、戦死者の慰霊碑である。
個別の名を刻まれることもない、墓とすら呼べぬ古今合同の碑であった。
骸のない棺はようやく葬儀を終え、少し離れた場所に形だけ埋葬されている。
本来であれば土に還り骨だけとなるまでは静かに眠らせるものであったが、何しろ彼らは骸がない。
数日後には再び掘り起こされ、形見の品が納骨堂へと納められる手はずだった。
「……墓が作ってもらえるのはおっさんだけ、か」
慰霊碑の隣、新しい墓碑に刻まれる名はヤング・マジョラム。
正規軍大尉であった彼にのみ、遺族には恩給が支払われ、また隊葬としての経費も支給されている。
しかし、そのヤングとて骸が墓に眠るわけではなかった。
棺に入っているのは苛烈な追撃の中、辛うじて持ち帰れた彼の愛剣とマントのみである。
寡婦となったのであろう女性の、葬儀の間中そのマントを抱き締め震えていた背中を、森崎は思い起こす。
「……」
その悲しみを、推し量ることはできない。
共有することも、できない。
流れのいくさ働きを生業とする森崎が、轡を並べた男たちの死に抱くのは悲しみではなかった。
そうであってはならぬと、自らに任じてもいた。
故に、森崎はただ踵を返す。
その墓に勝利を捧げることも、復讐を誓うこともない。
「あばよ、おっさん」
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0ch BBS 2007-01-24