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【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】


[442]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/01(土) 12:06:36 ID:???
トニーニョ、と声をかけるよりも早く、ぼそりと呟く声。

「俺は自分が赦せずにいる」

その声は独り言じみていて、ひどく聞き取りづらい。
森崎に向けて語っているのではないようでもあった。

「俺にもっと……もっと力があれば、隊長を、隊の皆を死なせずに済んだのではないかと、
 そればかりを考えている。あの日から、毎日、毎晩。ずっとだ」
「お前、それは……」

言いかけた森崎を遮るように、トニーニョが首を振って続ける。

「わかっている。俺一人の力で変わる戦況などない。百人、千人の敵を相手にできるはずもない。
 無駄で、無為で、無様な後悔だ。唾棄すべき思い上がりですらある。
 それでも考えずにはいられない。考えていなければ、忘れてしまうからだ」

ふと息をついて、トニーニョが天を見上げる。
木漏れ日が、その顔を斑模様に照らす。
ざわめく梢の向こうに何を見ているのか、森崎にはわからない。

「俺はな、モリサキ」

やがて視線を下ろしたトニーニョの、木漏れ日を集めて霞んでしまったような灰色の瞳が、
森崎を見やる。

「かつて毎晩のように見ていた悪夢を、最近、ほとんど見なくなった。
 見られなく、なったんだよ」

言って、口の端を上げる。
無理やりに作られたその笑みは、決して届かないどこかに向かって泣くような、ひどくねじれた笑い方のように、思えた。


0ch BBS 2007-01-24