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1- レス

【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】


[518]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/16(日) 22:01:55 ID:???
感情的になりすぎていると、理解はしていた。
この対応では状況が悪化することは火を見るより明らかで、それでも止められない。
今このとき、人としての器を満たしているのは自分の心を守るための緩衝材。
その他のものは、注がれるそばから溢れ、零れ落ちていく。
どこか他人事のようにそんなことを感じる森崎の顔には、未加工のままの拒絶と苛立ちが浮かんでいる。
レズリーが気色ばんで何かを言おうとした瞬間、

「……モリサキさん、でよかったかしら」

ディーラーの女性が、静かに声を発していた。
しん、と。
空気が、変わる。
人ひとりいない湖のような声音が、圧倒的な寂莫と静謐を以て場を支配し、
ただの一瞬で棘や刃や、何かを傷つける概念の何もかもを奪い去っていた。

「いいのよ、気を遣ってもらわなくて」

森崎の名を呼んだ女性が、そう言って微かに笑う。
眉尻を下げた、少し困ったようにも見える、音のない笑み。

「いや、あの……」

森崎が女性との関係について言葉を濁したのは、決して気遣いゆえではなかった。
ただ、自らの中の癒えきらぬ傷から咄嗟に目を背けた、それだけである。
そこへ微笑を向けられ、森崎は二重の気まずさに会話の接ぎ穂を見失う。

「それに、そんな言い方をされたらその子だってきっといい気分じゃないわ」
「……」

レズリーに向き直った女性の顔には、やはり幽かな笑みがある。
秋の夜の煙雨のようなその表情を前に、レズリーから瞬く間に昂ぶりが失われていくのが分かった。
毒気を抜かれたような少女に、女性が一歩近づくと、名乗る。


0ch BBS 2007-01-24