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【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】


[186]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 14:24:15 ID:???
***

C「死にたいのか」


そういうものを、いくつも見てきた。
望んでいくさ場に身を置く者の中には、少なからずいる。
生き死にへの関わり方という、人の最奥が朽ちてしまったものたちだ。
自決を大いなる罪と信仰が定めるこの欧州において、傭兵という職は彼らの前に蠱惑的な煌めきを放つ。
そこには、彼らの何より望むものが淡々と存在しているからだ。
彼らにとって死の危険は恐怖でも不運でも、あるいは一部の狂人がそう感じるような快楽でも愉悦でもない。
それはただ、招く手だ。
己をあるべき姿に戻してくれる、原初の扉への誘いだ。
そして今、森崎の眼前に立つ男の瞳は、そういうものたちと同じ色をしている。
だから森崎は、もう一度その言葉を繰り返した。

「お前は、死にたいのか」

責める意図はない。
それはいわば、確認だった。
森崎自身の信仰において、自死は生理的な忌避の対象でこそあれ、最も救われぬ罪であるという認識はない。
遥か遠い故郷を思えば、それは時に賞賛の対象ですらあり得た。
この欧州でいくさ場に飛び交う矢や刃や銃弾をその道具としようとする彼らの動機は、それら極東の世に語られる
美事の正逆ではあっただろうが、しかしそのことを叱責できるほどには、森崎は欧州の人ではなかった。
それでも部隊を預かる者として生きる意志のない者は懸案事項であり、その把握は必須といっていい。
彼らの精神はある局面では非常に有効に機能するが、しかし別の局面では隊を極めて大きな危険に晒す可能性もあった。
レヴィンの返答は、

「ふふ……、ははは」

失笑である。
北欧特有の、色の薄い白皙の美貌が歪むような、暗く静かな笑い方だった。


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0ch BBS 2007-01-24