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【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】


[63]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:08:02 ID:???
「ただザクロイドといやあ、この国の燐光石市場を仕切ってる大商人だ。
 外様の俺でもそこかしこで聞く名前だからな、さすがに引っかかってたんだよ」
「……」

一瞬、リンダの表情が曇ったように見えた。
大商人、と森崎が口にした刹那のことである。
ほんの僅かに下がった眉尻は、しかし森崎が目を凝らして確かめるより早く、元に戻ってしまう。
気にはなったが、しかしおくびにも出さず言葉を続ける森崎。

「そこへ、そのすげえ馬車ン中からお嬢様が出てきて唐突にハンナのことを訊かれたわけだ。
 そんな金持ちの心当たりはあんたしかいなかった、ってことさ、リンダお嬢さん」
「……」

言い終え、肩をすくめてみせた森崎をじっと見ていたリンダが、す、と手を動かす。
どこから取り出したのか、白い指に摘まれていたのは豪奢な扇である。
薄紫の絹張りにレースの装飾、縁を彩る毛皮の純白は白貂だろうか。
それ自体がひとつの作品と呼べるような扇が、リンダの口元を隠すように広げられる。

「多少の目端は効くようですわね。無礼な物言いには目を瞑りましょう」
「そりゃどうも。……で、何の用だい」

扇で口元を隠されれば、表情は途端に読めなくなる。
なるほど上流階級かと感心しながら森崎が問い返すと、リンダが目を細めて言う。
もとより細く切れ長の瞳が下弦の月のように弧を描くその様は、銀色の長い髪も相まって、
どこか伝説に謳われる狐を連想させる。

「ハンナ・ショースキーに今の練習を指示したのは貴方、ということですが」
「……」

蒼を纏う狐が、断言する。
どこから調べたのか見当もつかないが、あるいはハンナ自らが聞かれるままに答えた可能性もあるか、
などと考えていた森崎の沈黙をどう捉えたのか、リンダの瞳が僅かに気色ばんだように見えた。


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0ch BBS 2007-01-24