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【行く風に】鈴仙奮闘記8【夏を知る】


[429]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/08/20(火) 23:06:42 ID:/8VMpBnE
その一方で。中山とパスカルの居る男部屋では尚も明かりが付いていた。

中山「……なあ、パスカル」

中山は静かにパスカルに問いかける。元々の性格的に気の合う二人だったが、
彼らもまたこの旅行で互いの絆を幾ばくか深めていた。

パスカル「どうした…ナカヤマ? 眠れないのかい?」

中山「まあ、な――」

パスカル「…相談なら聞くぜ? ―――最も、俺にその悩みをどうこうするまでの力は恐らくないが」

中山「相談というか――少しだけ、思う事があってな」

中山の口調は静かではあったが―――そこまで思いつめたものではない。
むしろ、自分の発見を誰かに伝えたいかのような、驚きが籠っているような物であった。

中山「……俺は今まで、森崎に並び立つ選手になりたい。そして過去の栄光を再びこの手に取り戻したい。
そう考えて、今までブレる事なく鍛錬と行動を行って来たつもりだった」

パスカル「モリサキ、か…。 (俺はアイツと試合をしたが――。確かに、アイツには何かがあった。
それも、ディアスやシュナイダー、日本の10番(翼)とは全く別物の、しかし輝く何かが)」

パスカルはかつて自分と親友を驚かせた、全日本の奇跡のゴールキーパーを思い出す。
どれだけ幸運に恵まれていようとも、自分のシュートではゴールを揺らせないとまで思ったあの驚異的なセーブ力。
世界最高峰の選手に全く引けを取らない――いや、世界最高峰ではないかと疑わざるを得ないまでのボールキープ。
そして、失点しても、疲労しても尚恐ろしい闘志、勇気、そして狡猾さ。その全てを持ったパーソナリティ。
その底知れぬ恐ろしさは確かに、中山に通ずる…いや、中山を遥かに凌駕していた。


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