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【行く風に】鈴仙奮闘記8【夏を知る】


[566]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/08/25(日) 17:40:55 ID:rzy11rDM
そして、人ごみを無視してか、それとも気付かずか。若島津は苦々しく華扇に話しかける。

若島津「……今の攻撃には『心』を籠めた一撃。 そしてお前が相手とはいえそう簡単には
防げぬスピードとパワーがあった筈だ。 ――だというのに、なぜ入らない?」

華扇「――ええ、確かに今の一撃は『心』の有る確かな一撃でした。 しかし、今のままでは。
それでも貴方はまだ弱い。 ……なぜなら、貴方の一撃は明確な殺意が籠っていましたが、
明確な殺意は、尖ってはいても脆い。 ――現状では真の強者には勝てません」

若島津「では――どうすれば」

華扇「……『龍』の如く強い心を持ちなさい。 今の貴方の殺意は心ではなく単なる牙。
龍の気高さに、牙の鋭さ。 ―――それが分かった時、きっと貴方は真の強さを手に入れられる筈です」

若島津「―――フッ。 これでも修行を重ねたつもりだったんだがな。 ……やはりまだまだだ」

華扇「あら、謙遜は貴方らしくないですね? ――ですが、有り余る欲は自らを滅ぼす。
……ただでさえ、持ちすぎる貴方には丁度いいのかもしれません」

若島津「小言はそれだけか? ……だったら俺は山に戻る。 修行のやりなおしだ」

師弟関係とも、友人関係とも違った二人の会話には、独特の緊張感に満ちており。
戦いの時と相違無い鋭さを秘めていたのだが―――。

慧音「あー。 盛り上がっている所悪いのだが……――修行は、あまり迷惑のかからない場所でやって頂きたい」

華扇「…えっ? あっ……何時の間に私達、人里へ!?」

若島津「戦いに集中している内に、何時の間にか人里に紛れこんでしまったようだな……」

それは、この人里において余りにも不相応過ぎる物だという事に、この二人は気づいていないようだった。


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0ch BBS 2007-01-24