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【深遠なる】鈴仙奮闘記24【蒼きフィールド】


[186]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/12/21(日) 22:48:35 ID:WbgK50x2
鈴仙「……松山君は、どうなったんですか? 矢車君が今もここに居るというのは、失敗したって事……?」

矢車「それは逆だ。 むしろ、相棒は酷く感謝している。
――自分を喪いかけ、俺という虚像のヒーローに救いを求める自分を、それで良いと言ってくれた……とな」

さとり「ただ、やっぱり私達の干渉が彼の未熟な精神にとって重荷だったようで。
なので今は、疲れて眠っている状態らしいです」

鈴仙「……そう。 だったら、それはそれで……良かったのかもね」

最初鈴仙は、松山の精神に間借りして存在する矢車は、消えるべき存在と無意識に考えていた。
二重人格は精神の病だ。 そのため、これを直す事こそが松山にとっての幸せなのだ……と。
医療に従事する者としては当然な、しかし傲慢な発想が残っていた事は否めない。
しかし、今の比較的穏やかな矢車の表情を見ると、その思いにも揺らぎが生じる。

さとり「……中途半端である事は、決して罪では無い。 人は清濁、その両方を合わせ持つ存在だから。
そうした考えを弱さや甘えと受け止める者は、きっと多いのでしょうね。
努力によってそうしたどっち付かずの状況を打破し、更なる成長を求めるべきだ……と。
――ですが、それを押し付けられる方は堪った物では無いと。 そういう話で良かったですかね」

鈴仙「そ、そうだったかしら……?」

矢車「地獄の底こそ至福だと言うのになァ……」

さとり「それはそれで、ちょっと極端過ぎますし。
……だけど、今の松山君にとっては、貴方の地獄が癒しになっていたのも事実。
ですから……私はそれを、否定はしません。 否定はね」

矢車とさとりとの関係も、より近しい物になっているような気がした。
今回の一件がその原因に関係しているかどうかまでは、今の鈴仙には分からないが……。
――しかし矢車の様子もまた、先日の試合に比べて随分と優しげになっているような。そんな気がした。


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0ch BBS 2007-01-24