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【追う蜃気楼は】鈴仙奮闘記39【誰が背か】


[632]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/15(土) 11:54:07 ID:q4DCjWuQ
静葉「(彼は私以上の想いと、私以上の努力と、そして私以上の技術をもって、ドリブル突破を図ろうとしている)」

オルヘスの渾身のドリブルはまさしく会心の出来と言え、相対する静葉もまた、彼の洗練された技術に目を瞠った。
自分のタックルでは到底ボールを奪えないという確信を抱きながら、彼女は当初、満足に動けなかった。
しかし――同時に静葉は思う。

静葉「(――だけど。私もまた、サッカーを通して様々な想いを抱いて来た。
     終末と破滅を望み、腕にカッターナイフをあてがう日々もあったけれど。
     自分の素直な恋情を、ぶつけられずに苦しむ日々もあったけれど。
     それすらも自分の糧として乗り越え、私はここに立っているのよ!)」

オルヘスが彼なりの事情で成長して来たのと同じく、
自分もまた、自分なりの苦しみを抱きながらもここまで成長して来た。
ならば――自分とて、負ける理由はないのだ、と。

静葉「(私が自慢できる所は、紅葉を散らして秋を終わらせる為の脚力だけ。
    でも――その脚力があれば、彼の柔のドリブルすらも防げるはずよ!)――止める!」

ズザアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! ――バシッ!

静葉は相手への一切の躊躇を止め、全力でタックルに向かう事が出来た。
それには奇しくも、先ほどドリブルにおいて見せた美技と同じく、彼女の辛抱強さと潜在的な美意識が現れていた。

オルヘス「な、なんでだよ……!」

静葉「(――静かに、美しく。しかし決然と、力強く。これが私のサッカーよ……!)」

実況「静葉選手、この試合2度目のファインプレー! 美しく激しいタックルで、
    オルヘス選手の完璧なドリブルを制して見せました〜〜〜!!」



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0ch BBS 2007-01-24