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【不屈の心は】鈴仙奮闘記40【この胸に】
[541]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ
:2017/10/21(土) 00:02:15 ID:???
〜コリンチャンス宿舎(ホテル)・コーチの部屋〜
コーチ「……………」
カリ、カリカリ……。
白髪に髭をぼうぼうに生やした老コーチは、ノートに書く手をふと止めた。
外の光が眩しくなっており、気付けば夜を明かしてこれをしたためていた事に気付く。
最近はめっきり起きれなくなっていただけに、自らにここまでの気力が残っていた事を、彼は静かに驚いていた。
コーチ「(……これも、レイセンのお蔭か)」
立ち上がり、曲がった腰を伸ばしながら、老人は――いや、実際の年齢はもっと若いのだが、
様々な困難を経験した彼は既に、他の同年代のどの男よりも老いていた――、そう思う。
コーチ「(富。名声。夢。希望。理想。コリンチャンス。仲間達。家族。そしてサッカー……。
私はこれまで、多くの物を失って来た。残されたのは、この空虚な肉体だけだと、ずっと思っていた。
あの子が、ここに来てくれるまでは……)」
最近の彼は満たされていた。貧しいながらも楽しいクラブハウス(ボロ居酒屋)での日々や、
指揮官としての名声や、旧友との和解は、勿論大きかったが。
何より、文句を言いながらも祖父のように慕ってくれる素直な少女の存在が、今の彼を救っていた。
コーチ「(……思えば、皮肉な物だ。貧しかった私はサッカーで金を得、身を立て医師となり。
サッカーによる活躍で、理想を実現する為の名声を得たにも関わらず、その理想は阻まれ。
そして、全てを失ったと思いきや、再びサッカーを通して、また新たな物を得つつある。
この世に神が居るとすれば聞きたい。何故にサッカーは、私をこうも翻弄するのか)」
ロベルト・本郷やエベルトン・レオンと共にブラジルサッカー黄金時代を築き上げ、
政府の陰謀によりその歴史の表舞台から追放された男は、皮肉気に嗤う。
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0ch BBS 2007-01-24