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【不屈の心は】鈴仙奮闘記40【この胸に】


[542]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/21(土) 00:03:32 ID:???
コーチ「……さてと。サンパウロとの決勝戦は、今日だったな?」

そう独り言ちて、彼は再度リオカップの日程を確認する。間違いない。
今日こそが、コリンチャンスがブラジル若手サッカーの登竜門・リオカップの決勝戦にて、
超強豪・サンパウロと対峙するその日である。彼は祈る。

コーチ「神よ。願わくば……私を今日も生かして欲しい」

――『サッカーで世界を平和にする』。若き日の彼の口癖だった。
そして、そのバカげた言葉を真に受けて、更にバカげた言葉を言った娘が傍にいる。

「――だったら。私がコーチの夢を引き継ぎます。
 前に言いましたよね。『私はサッカーで世界を平和にするんだ』……って。
 コーチがもう動かないなら、私が、貴方の代わりに夢を叶えます」

始めは鬱陶しいとも思ったが、今は違う。
彼女の暢気で、狂気で、しかし、真っ直ぐな赤い瞳を、彼はどこまでも信じたかった。
だからこそ、彼は毎日――鈴仙が自分を起こしてくれたあの日から毎日――祈り、願い続けている。

コーチ「レイセンが――私の理想を継ぐと言ってくれた、私の愛する義娘が。
     彼女が成長する姿を、今日もまた、その傍で見せて欲しい。
     いつか、彼女が理想を叶えてくれるその日まで……私を生き永らえさせてほしい」


そして。この世に神が居るとすれば――それは少なくともこの老人にとって、最後までどこまでも残酷だった。




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