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【道は】鈴仙奮闘記41【違えど】
[531]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ
:2017/12/16(土) 16:15:56 ID:dvNYyXwk
――その例外は、やはり妖夢だった。翼が上機嫌にニコリと笑いながらチームメイトを諭す中、
妖夢だけは針の筵に座らされているような感覚だった。
妖夢「(なぜ、サッカーはこんなにも不公平なの? 私はこんなにも実力が高いのに。
なぜ、サッカーはこんなにも理不尽なの? 私だって、頑張っているのに
なぜ、サッカーはこんなにも不自由なの? 何かをやろうとしても、私には、何もできない……!)」
妖夢の思考は渦巻き続けていた。また失敗した。また責められた。――また、見捨てられた。
力が無い故に自らの弱さに絶望し、それを克服したつもりだったのに、未だ自らの弱さは消えない。
むしろ、肥大化したプライドに比例して、絶望という名の妖夢の中の悪魔もまた、
より一層熾烈に彼女自身を苛み続けるようになった。
妖夢「(弱ければ軽んじられ、蹂躙される。
しかし、強くともまた、勝ち続けない限りは、永久にその恐怖から逃げ出す事ができない。
力を得てもまだ、こんなに辛いなら、私は一体、何の為に……!)」
……そして、そんな弱い彼女を心配し時には檄を入れるとしても、
家族のように傍に寄り添って、いかなる時も無条件で励まし支えてくれる存在は、
このサンパウロには――サンパウロに限らず、この無慈悲なプロの世界には――いない。
そうした弱さへの対処法は、普通、独力で折り合いをつけて解決するか、
あるいは解決できないままプロの世界から逃げ出すか、そのどちらかしかあり得ないのだから。
しかし今の妖夢には自分の弱さに向き合う事も、この場所から逃げ出す事も、どちらも出来ない程、臆病だった。
翼「(ストラットは満身創痍。魂魄さんはまーたメンタルが不調。……こうなったら、俺がやるしかないかな。
折角逆転するんだったら、やっぱり『アレ』を使って逆転する方が余程鮮やかだろうし)」
当然、翼は――『サッカー』は、そうした妖夢の心境などに一切の興味はない。
彼が――『それ』が求めるのは、高い技術と連携。そしてそれが織りなす熱狂のみ。
悩める少女の問いに答える事なく、サッカーは無慈悲に運命を紡ぎ続ける。そして――。
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0ch BBS 2007-01-24