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【SSです】幻想でない軽業師


[296]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:13:40 ID:???
その上、フランスJrユースはキャプテンであるピエールとストライカーのナポレオン以外は、
幻想郷の各チームに所属をする妖精やら羽目玉やらバケバケやら……そういった類の選手と大差無い実力。
有り体に言って、雑魚である。
このチームで勝てる筈が無い。誰もがそう思う。だからこそ、さとりは諦めていた。

だが、そんなさとりを――2人が救ってくれた。
1人は古明地こいし……さとりの唯一の肉親であり、誰よりも大切な妹。
そしてもう1人は若林源三……さとりと同じくザルキーパーの烙印を押され、地の底へと叩き落された『元』天才キーパーである。

絶望の縁にいたさとりに対し、偶然出会った若林は――しかし、そんなさとりを軽蔑し、奮起した。
それがさとりには不思議でならなかった。
反町一樹に思うが儘に蹂躙され、今まで大事にしてきたものを奪われ、それでも尚立ち上がろうとする気概。
意地の塊のような男である若林の生き様を、さとりはまるで理解が出来なかった。

こいしについてはもっと理解が出来なかった。
弱い弱いとされていたフランスの選手たちを、おはようからおやすみまで――朝から晩まで、練習のサポートを続けた。
気まぐれで飽き性で、何よりも我儘なこいしからは考えられない行動である。

何よりも、弱い選手を鍛えるという『無駄』な行為。何故そんな事をするのか、さとりはわからなかった。
何もかもを諦めていたさとりは、その時点では既に自信どころか戦意を喪失していたのである。
ただ、それでも――泥塗れになりながら呟いたこいしの言葉を、さとりは今でもしっかりと覚えている。
さとりこそが幻想郷でも一番のキーパーだという言葉を。
今度の大会で、今度こそそれを証明して見せて欲しいという言葉を。


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0ch BBS 2007-01-24