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1- レス

【SSです】幻想でない軽業師


[38]森崎名無しさん:2018/01/23(火) 01:24:40 ID:???
撃てば入る。
それは所詮射之射というもの、好漢いまだ不射之射を知らぬと見える。
ムッとした反町を導いて、老隠者は、そこから二百歩ばかり離れた絶壁の上まで連れて来る。
脚下は文字通りの屏風のごとき壁立千仭、遥か真下に糸のような細さに見える渓流を
ちょっと覗いただけでたちまち眩暈を感ずるほどの高さである。
その断崖から半ば宙に乗出した危石の上につかつかと老人は駈上り、振返ふりかえって反町に言う。
「どうじゃ。この石の上で先刻のシュートを今一度見せてくれぬか」
今更引込もならぬ。老人と入代りに反町がその石をふんだ時、石は微かにグラリと揺ゆらいだ。
強しいて気を励はげましてシュートしようとすると、ちょうど崖の端から小石が一つ転がり落ちた。
その行方を目で追うた時、覚えず反町は石上に伏した。
脚はワナワナと顫え、汗は流れて踵にまで至った。
老人が笑いながら手を差し伸のべて反町を石から下し、自ら代ってこれに乗ると、
「ではシュートというものをお目にかけようかな」と言った。
まだ動悸がおさまらず蒼ざめた顔をしてはいたが、反町はすぐに気が付いて言った。
「しかし、ボールはどうなさる? ボールは?」
老人はボールを持っていなかったのである。
「ボール?」 と老人は笑う。
「ボールの要いる中はまだ射之射じゃ。不射之射には、ボールもスパイクもいらぬ」
ちょうど彼等らの真上、極めて遠い所を一人の若林が悠々とSGGK伝説を描いていた。
その胡麻粒ほどに小さく見える姿をしばらく見上げていた老人が、やがて、
見えざるボールを無形の形に構え、満月のごとくに引絞ってバシィと放てば、見よ、
若林はとめるとも言えずSGGKからジュストのごとくにザルGKへと落ちて来るではないか。
反町は慄然とした。
今にして始めてシュートの深淵を覗き得た心地であった。


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0ch BBS 2007-01-24