キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【真・東洋の】キャプテン森崎36【守護神】

1 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/02/27(土) 12:17:08 ID:thPpn4g/
キャプテン森崎は、高橋陽一氏作のサッカー漫画「キャプテン翼」の二次創作です。
大空翼に代わって主人公になった森崎有三を読者の投票によって操作していき、
他のキャラクター達と交流を深めながらサッカー選手として大成するのが目的の
読者参加型企画です。いわゆるゲームブックを想像して頂ければ分かり易いかも。

基本は毎回出る選択肢の中から読者が投票によってどれかひとつを選ぶ事によって
森崎の各数値が上下したり結果が分岐し、その結果によって森崎が活躍したり
しなかったりして物語が進んでいく…といった展開です。例えば敵にシュートを撃たれたら、
森崎の能力値+ある程度のランダム要素によってゴールを守れたり守れなかったりします。

投票や判定では2ch式(注:似ているだけで2chとは別サーバー)の掲示板で
ID付の投票書き込みを行ったりスクリプトでカードやダイスを引いてもらったりします。

過去スレのログはこちらのまとめページで見られます↓
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/11.html

ミス指摘、質問以外の雑談は下のURLの雑談スレでお願いします。
本スレでも更新毎に30レス程度までの反応レスなら問題無しとしています。
尚、30レスを超え雑談スレへの誘導が始まったら速やかに誘導に従って下さい。それがルールです。
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1266421492/l50
2ちゃんねるとは別の場所の板なので、ブラウザによっては外部板登録が必要です。
なんらかの理由で雑談スレが落ちている時は、本スレでも遠慮なく雑談をどうぞ。

【前スレまでの簡単なあらすじ】
第一回フランス国際Jrユース大会でMVPとなった若き日本サッカー界の星、森崎有三!
サッカー王国ブラジルのプロへの登竜門と言われる大会、リオカップへ挑んだ彼は
宿敵大空翼率いるサンパウロFCに1−4と言う大敗を喫してしまった。森崎はリベンジの為に
全日本ユースに合流しジャパンカップで強敵ウルグアイユースを撃破し決勝戦に駒を進める。
しかし決勝戦の相手は翼とサンパウロFCではなく、彼らを倒したハンブルガーSV!
森崎の怨敵若林源三が守るゴールを破れず、全日本ユースは前半30分0−1で苦戦中。
…こんな感じで話は進んでいます。

303 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 13:25:56 ID:F2bPm3s9
だがそれがいい

304 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 13:31:29 ID:ShjjSqVH
〜静岡県南葛市、南葛中学〜

森崎の入院、日向の失踪、若林の敗走。
全日本ユースのキャプテン候補者達が次々と苦難に道を閉ざされる中、
最後のキャプテン候補も一つの試練を迎えようとしていた。

この日の昼翼は母校の門前に立っていた。高校に進学せず中卒でブラジルに渡った翼にとって南葛高校は馴染みが無く、
小学生時代は何回か引越ししていた為3年間通い続け思い入れが出来た学校はここだけである。
帰国して以来何故か自分の部屋で落ち着けなかった翼は気晴らしになればと思ってここに散歩に来ていた。

翼「(俺の居た頃よりサッカーの設備は立派になっている…のかな?
でもサンパウロFCに慣れちゃうと凄く貧相な環境に見えるや。あ、部室のドアに何か貼り付けてあるな…
”目標全国制覇!取り戻せ南葛中最強伝説!”…そうか、もう日本一じゃないんだ)」

塀越しに見た母校の様子は何処か見覚えがあるものの記憶の中の物とは明らかに違っており、
翼は少しの懐かしさとその倍程の寂しさを感じずには居られない。
そんな彼にためらいがちに近づく者が居た。

早苗「あのう…翼くんだよね?」

翼「えっ…?さ、早苗ちゃん!」

翼と浅からぬ縁である少女、中沢早苗だ。

早苗「やっぱり…良かった、人違いかと思っちゃった」

翼「どうしてここに…?」

早苗「昔が懐かしくなったの(本当はおばさまが電話で教えてくれたんだけど)」

305 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 13:31:52 ID:ShjjSqVH
翼「そうか、アッハハハ。凄い偶然だね(早苗ちゃん綺麗になったなァ)」

思わぬ嬉しいサプライズに翼は朗らかに笑うが、早苗は後ろめたい事もあって僅かに苦笑しただけだった。
サッカー以外ではお世辞にも鋭いとは言えない翼はそれに気付く事も無く会話を続ける。

翼「でも人違いだなんて…そんなに変わったかな?顔も体格もほとんど変わらないと思うんだけど」

早苗「うん、顔と体格は昔とほとんど同じだったから分かったんだけど…その格好、何?」

ちなみに今の二人の格好は以下の通りである。

早苗はカーディガン、ワンピース、ストッキング、パンプスと言うカジュアルな私服だが
どれもさりげなくお洒落な代物であり、入り過ぎない程度に気合が入った格好である。

対する翼はシャツと長ズボンとスニーカーまでは良かったが、それに加えてロングコート、サングラス、キャスケットを
装着している為何処か不審な印象を与えかねないいでたちだった。
しかも足下には当たり前の様にサッカーボールがある為ますます悪い意味での注目を集めやすい。

翼「これ?顔出してるとしょっちゅうサインを求められたから着ているんだけど…何処か変?」

早苗「う〜ん…普通で居るならともかく、中学校を塀越しに覗き込む時はちょっと…その…」



少し離れた女子生徒達「誰あの怪しい男?」「まさか露出狂!?」「先生を呼んできた方が良いんじゃ…」



翼「ば、場所変えようか…(俺この学校のヒーローの筈なのに…)」

早苗「そ、そうね!私良い場所知っているわ!」

306 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 13:33:18 ID:ShjjSqVH
いったんここまで。

307 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 14:29:15 ID:F2bPm3s9
変質者フラグwwwwwwwwwwwwwww

308 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:03:28 ID:4+eV3PfU
初登場時のロベルトファッションじゃないのかこれw

309 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 15:13:33 ID:ShjjSqVH
>>308
いいえ、WY編の若島津ファッションです。

310 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:32:10 ID:J85nDBvQ
その一方では
琴音「念願の山森君ユニホームを手に入れたわ!」

311 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:34:18 ID:k2fTkON3
>>310 ふっとばしてでも うばいとる

312 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:46:09 ID:4+eV3PfU
>>309
ああ、あのどう見ても不審者の…… 納得しましたw

313 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:53:52 ID:Sas6fB79
若島津は昔からなんだかおかしなセンスしてるからなあ
Jrユース終了後、静岡県の新人戦を見に来た時もかなりひどいものだったw

314 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 16:59:09 ID:PTIHz2fJ
あのサスペンダーのついたアレかw

315 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:10:06 ID:ShjjSqVH
約二十分後、翼は早苗に連れられ南葛市を見下ろせる小山に来ていた。
ここは翼が南葛市に引っ越してきた直後に石崎に案内された場所で、
若林邸に挑戦状代わりのサッカーボールを蹴り込んだのもここからである。

翼「うわあ、懐かしいなこの場所も!やっぱり良い眺めだ」

早苗「あら、知ってたの?ランニングで来た事があるとか?」

翼「ううん、ここは南葛市に引っ越してきた日に石崎くんに連れられてきた場所なんだ。
懐かしいなあ…あの後若林くんと勝負して、その後修哲少との対抗戦があって…」

思い出の場所とその光景に翼は頬を緩ませ見るからに機嫌が良くなった。
分かりやすい反応に早苗もクスクスと笑う。

早苗「小学校の頃なのに良く覚えているのね」

翼「そりゃあ、楽しかったし…早苗ちゃんは覚えていないの?」

早苗「いいえ、私もはっきりと覚えているわ。ある日突然転校してきたサッカーの
天才少年が当時全国ナンバー1の修哲少に挑戦状を叩きつけたんだもの。それに…」

翼「それに?」

早苗「それに…その対抗戦が翼くんと出会ったキッカケだし…」

翼「…そ、そうだね。俺も覚えているよ、俺の名前が描かれた手作りの大きな旗を
振り回す女の子が観客席に現れた時は凄くビックリしたし…」

早苗「うっ…と、当時の私って今から考えてみると凄く恥ずかしい事していたのね…」

翼「いや、その…俺も、恥ずかしかったけど嬉しかったよ?」

早苗「そ、そう?それならやった甲斐があったわ」

316 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:10:20 ID:ShjjSqVH
そのまま二人は甘酸っぱい会話に勤しみ、時に笑いを交わし時に顔を赤らめ
三年ぶりの二人きりの時間を楽しむ。今ここに居るのは翼と早苗とサッカーボールだけだった。

翼「南葛少と言えば、あの頃の皆は今どうしている?学とか」

早苗「皆受験したり就職活動をしたり様々だわ。小田くんみたいに実家の稼業を継いだ人も居るし」

翼「そうか…もうサッカーしていないのかな?」

早苗「大学でもやるって言っているのは南葛高に進んだ長野くんと岩見くんだけね。
大川くんも高校ではサッカーをやっていなかったし、4月からは普通のサラリーマンよ」

翼「ううん、長野と岩見だけなのか…日本にプロリーグがあれば皆も
プロ選手になれたかも知れないのに(世界には通用しないだろうけど)」

早苗「そうね。今の所は翼くんみたいに海外でプロになるしかないみたい」

翼「…そうだね。日本にプロリーグが出来るにはまだ数年かかるらしいよ。
日本サッカー協会の人に聞いた話では水面下で色々進めているらしいけど…」

早苗「(………あら?)」

翼「…?どうかしたの、早苗ちゃん?」

早苗「え?い、いえ、なんでもないわ(翼くんだったらブラジルのプロリーグがどれだけ素晴らしいか
凄い勢いで話し始めると思ったのに…なんだか顔が曇っている?)」

だが二人の青春丸出しの語らいは徐々に明るくなくなっていった。
話題が現実的になってきたせいもあるが、それ以上に何故か
翼の顔から微笑みが徐々に消え早苗がそれに違和感を感じ始めたのだ。

317 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:10:54 ID:ShjjSqVH
早苗「…ねえ。ブラジルのプロって、やっぱり凄い?」

翼「うん、それは勿論。中学卒業前に実業団のチームの練習に混ぜてもらっていた事があったけど
ブラジルに渡ってから実際にプロの試合を見てみたら、実業団の人たちには悪いけど
日本のレベルの低さが恥ずかしくなる位だったよ。これじゃ日本がサッカー後進国なのも当然だってね」

早苗「…そこまで?(昔から実力主義だったけど、そこまでハッキリ言うなんて…)」

翼「うん。日本人って言うだけでバカにされる環境だったよ。だから努力し続けたんだ。
練習は辛くて苦しくて嫌だったけど、バカにされるのはもっと嫌だったから…」

早苗「(れ、練習が辛くて苦しくて…嫌だった?翼くんが…大好きなサッカーの練習が嫌だった!?)」

話題が翼自身のサッカーに移ると、いよいよ早苗は驚きを隠せなくなった。
彼女が一度も見た事も無い程鋭く固い表情の翼から、翼の口から出たとは思えない言葉が出てくる。

翼「その甲斐あって俺をバカにする奴は居なくなったよ。日本人はサッカーが出来ない、
なんて言う奴らも居なくなった。まあ、これは同じ時期に森崎も活躍していたのもあるんだろうけど…」

早苗「(何か相槌、相槌…)森崎くんが…そう言えばリオカップって言う大会で森崎くんに勝ったのよね?」

翼「…うん。ブラジルの強豪チームを複数倒して勝ちあがってきた森崎を大差で倒し、
俺は名実共にブラジルリーグの若手ナンバー1として認められたんだ。マスコミもファンも大騒ぎしてくれた」

早苗「(な…なんで…楽しい話題の筈なのになんで…)」

翼「クラブも手放しで褒めて凄い高額のプロ契約をしてくれたんだ。俺は来月からプロとして戦う。
引退するまでの長い長い戦いの舞台に立てるんだ…なのに」

早苗「(子供の頃の夢が叶ったんでしょう?思う存分サッカーが出来るんでしょう!?
なのに…なのになんでそんなに怖い顔をしているのよ、翼くん!)」

318 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:11:53 ID:ShjjSqVH
話が進む毎に翼の顔と声は固く重くなっていき、それは最早叶い始めた夢を追う若者ではなく
終わりが見えない戦争に徴兵された若者の様な姿だった。三年間思い描いてきた前向きで凛々しい翼とは
あまりにも違うその様子に早苗は恐怖で竦み上がり声が出せなくなってしまう。

翼「なのに…(なのに、なんだか不愉快で堪らないんだ。森崎に勝ってプロ選手になれたのに、念願をいくつも叶えたのに)」

早苗「(つばさ、くん、よね…?私が好きな翼くんなのよね?)」

翼「(…ってこんな事早苗ちゃんに言えないよ!何考えているんだ俺!…あれ?)早苗ちゃん?どうしたの?」

ようやく翼が我に返った時、早苗は自分を抱きしめながらガタガタ震えていた。
慌てた翼が普段の顔と声に無意識に戻り、それを見た早苗も怯えが収まる。



だが二人の破滅はここからだった。



翼「ゴ、ゴメン!俺、何か傷つける様な事言ったの!?」

早苗「う、ううん。そうじゃないの。ちょっと怖かっただけ…」

それは、早苗にとってはなんでもない一言だった。



翼「怖かった?お、俺が?」

早苗「うん…さっきの翼くん、なんだか凄く張り詰めた表情と声で…」

目の前の恐怖から解放されて深く考えずに出した素直な一言だった。

319 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:12:14 ID:ShjjSqVH
翼「そんなに?確かにサンパウロでもそんな事を言われた事はあったけど…」

早苗「きっと私の知らなかった翼くんなんだわ。でも当然よね、私達二人とも大人になったんだもの」

だがそれは翼にとって呪いの一言となる。



翼「そうなのかな…俺、そんなに変わった?」

早苗「うん。そういえば、ジャパンカップでプレイを見た時も、あれ?って思っていたわ」

サッカーと共に育ち、サッカーを愛し、サッカーに人生を捧げるのが当たり前だった翼に。



                     早苗「今の翼くんって、まるでサッカーが好きじゃないみたい」

                          彼女はその一言を言ってしまった。



翼「………え?」

傍目には翼は驚きで固まった様にしか見えなかっただろう。
早苗もそう判断し、慌てて弁解を試みた。だがそれが翼の心に届く事は無かった。

早苗「あ、ごめんなさい!私バカな事言ったわね」

翼「(サッカーが…好きじゃない…?)」

320 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:12:46 ID:ShjjSqVH
いったんここまで。

321 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:28:40 ID:ShjjSqVH
その概念は今まで翼の意識下に眠っていた。

早苗「自分からサッカーバカって認めちゃう翼くんがサッカーを楽しんでいないなんて事、有り得ないのに…クスッ」

翼「(俺は…サッカーが好きじゃない…?)」

翼の心の中に何時の間にか根付き、宿主に気付かれる事無く成長し続け奥底から心を少しずつ蝕んでいた。

早苗「一生貴方を応援し続けるって決めたのに、こんな事を言うなんて…私もまだまだね」

翼「(そんな筈無い。俺はずっとサッカーをやってきたんだ)」

翼はひょっとしたら気付いていたかも知れない。自分の心に走る痛みとその原因に。

早苗「…翼くん?どうしたの?」

翼「(俺がサッカーを嫌っているって?馬鹿げている!)」

だがその概念の存在を認めるのが怖くて翼はそれを放置し続けた。

早苗「つばさくん…?」

翼「俺がサッカーが好きじゃないなんて…そんなの…」

早苗の言葉が水となった今、その概念は一気に芽を出した。



             翼「 そ ん な の ウ ソ だ ぁ あ あ あ あ ー ー ー っ ! ! 」




322 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:28:59 ID:ShjjSqVH
翼は叫んでいた。何時の間にか立ち上がって叫んでいた。

早苗「きゃあっ!?」

早苗がショックで仰け反り倒れ、弾みで側にあったサッカーボールを転がしてしまう。

翼「………!!」

この時翼は早苗より傾斜の下の位置に居た為、ボールは翼の方にゆっくりと転がり始めた。

自分に近づいてくるボールとその向こうから自分を見つめてくる早苗を見た時、翼は走り出していた。

気がついたらまるで殺人鬼に追われている様に走っていた。

鍛えに鍛えた脚と肺が彼の望み通り速度を提供し続け、目に映る光景が
次々と絵の具の様に流れて消えていく。後ろの方で彼の名を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、
翼は振り返らなかった。振り返られなかった。もっともっと速く走っていた。

ぜいぜいと息を吐く音が聞こえる。それが自分の息だと理解した時、
翼は実家の玄関に辿りついていた。笑う膝と破裂しそうな肺を叱咤し鍵をかけ、
ようやく翼は一息をつき僅かながら落ち着きを取り戻した。

ただ、その僅かな落ち着きも長持ちしなかった。

翼「な、何を…やっているんだ俺は…早苗ちゃん、置いてきちゃったな…
後で電話をかけて、謝らなきゃ…でもその前に、横になろう…」

翼は安息を求め自室に向かった。

そしてまた絶叫を上げそうになった。

323 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:30:01 ID:ShjjSqVH
翼「あ…ああ…あ…!」

壁と窓ガラスにはマラドーナなど名選手のポスターに様々のサイズのサッカーボールやクラブロゴのシール。
柱には中学生時代に刻んだ「おれたちの夢全国制覇V3!」の文字。
本の類はサッカーに無関係な物など殆ど見当たらず、子供の頃遊んだおもちゃもサッカー関連の物ばかり。
勿論サッカーボールは部屋中にいくつも転がっており、ユニフォームや運動着が大半を占める
衣装箪笥の底にも使えなくなったサッカーボールの残骸がどっさり。
安息を求めに来た筈のベッドのかけ布団まで水玉模様ならぬサッカーボール模様である。

大空翼と言う一人の人間のこれまでの生き様が凝縮された部屋。
数え切れない程の思い出を積み上げてこうしてきた自室。

それは今の翼には恐怖しかもたらさなかった。

翼「か…帰ろう…じゃなくて、戻ろう…」

這う様に自室から遠ざかりながら翼は自分に言い聞かせる様に呟いていた。
だが今の彼に自分を安心させられる言葉は何も思いつかなかった。

翼「ブラジルへ戻ろう…寮の部屋はあんなになっていないから…ブラジルに戻って…戻って…
何をするんだ…トップチームに混ざって、サッカーを…サッカーをしに、戻る…」

彼は今、怯えていた。サッカーが好きではないと言う概念に。その概念を否定できない事に。

翼「嫌だ…嫌だ…サッカーが嫌いだなんて…嫌だ。そんなの、嫌だ…」



ピンポーン。




324 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:30:19 ID:ShjjSqVH
大空家のインターホンが鳴ったのはその時だった。
そしてそれを押したのは勿論今翼がもっとも会いたくない人物だった。

早苗「ハァ…ハァ…つ、翼くん、居る…?居るよね…靴が外に脱ぎ捨ててあるし…ハァ…ハァ…」

インターホン越しの早苗の息は荒かった。翼の脚についてこようと相当無理をしたのは明らかだった。

早苗「フゥフゥ…スゥ…ごめんなさい!私、プロデビューを控えた翼くんの心を乱す様な事を…」



翼「帰ってくれ!」



気が付いたら翼はまた叫んでいた。気が付いても止まらなかった。

翼「(えっ、今俺はなんて…)」

早苗「え?つ、翼く…」

翼「帰ってくれよ!どうしてあんな事を俺に言えるんだ!(違う!早苗ちゃんは悪くない!)」

早苗「つば、さ…く、ん…」

翼「(止めろ!止めるんだ大空翼!)酷いじゃないか!君のせいでサッカーが嫌いになったんだよ!」

早苗「つ………」

翼「(頼むから誰か止めてくれーーーっ!!)頼むから帰ってくれーーーっ!!」

325 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:30:42 ID:ShjjSqVH
早苗「……………」

翼「ゲホッ!ゲホゲホゲホッ…」

あまりに甲高く叫びすぎて翼は咳き込みそれ以上声を出す事が出来なくなった。
しばらく痛々しく咳き込む音だけが響いた後、早苗の涙ぐんだか細い声が翼の耳に届いた。

早苗「ごめん、なさい…わたしが、よけいな、こと…」

翼「(違う、違うんだ!君は悪くなんかない、全部俺のせいなんだ!)」

早苗「きょうは、かえるね…あした、ううん、あさってまたくる…」

翼「(明後日?それじゃダメなんだ、俺は明日の便でブラジルに戻るから…)」

早苗「かえさないと、いけないものが、あるから…」

翼「(返さないといけない物…?俺があげたプレゼントとか?)」



早苗「さよ、うなら…」



翼「(立て!何をやっているんだ翼、今すぐ追いかけて謝るんだ!お前は今とても
大切な物を失おうとしているんだぞ!早く立て!頼むから立ってくれーーーっ!!)」



翌日翼はブラジル行きの飛行機に乗っていた。壮絶な疲れを堪えている表情で。

その次の日早苗が大空家を訪れた時、翼は当然そこには居なかった。

326 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:33:26 ID:ShjjSqVH
今日はここまで。

たまには厨二っぽい展開も良いかなと思いました。
なんだか厨二の解釈を間違えている気もしますが。

327 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 18:41:40 ID:x5c9QXVQ
乙です

ていうかお前早苗に何かプレゼントしたことあんのかいw

なんて野暮なツッコミは置いといて
厨二展開ごちそうさまでした
これもまた青春
しかし2ねいさんは早苗の影が薄いとか言ってたから
油断してたらまさかこんな役回りにw

328 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 18:45:49 ID:F2bPm3s9
なんだろう、翼ざまぁとしか思えない俺は病んでいるな

329 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 18:58:46 ID:J85nDBvQ
なんかこの翼の方が好感持てるんだが・・・
まぁ翼ざまあは変わらないけど

330 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 19:22:55 ID:WuvepcBd
翼ざまぁよりあねご可哀想のが強い

331 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 17:05:46 ID:+aFuhJ9Q
なんというサッカーサイボーグ

332 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 18:15:15 ID:23D2B1tB
さすがに翼に同情するぜ
森崎みたいに最初からひねくれていたらある意味楽だったろうに…

333 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 23:15:21 ID:EkC7NTxb
あねごの傷心はかなり酷そうだな
普通に彼氏に言われただけでも相当ショックな言葉なのに
日本期待のエースの立場にある選手から
お前のせいでこの競技嫌いになったとか言われたら
個人の感情越えた責任感つか罪悪感みたいなものまで芽生えそうだ

334 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 23:21:54 ID:jxYpGtnX
これで翼に再会する前にアネゴが事故に遭ったら韓流ドラマだなw

335 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 23:48:58 ID:dk0AZ2xn
これ乗り越えて元のサッカー好きに戻ったら
キャプテン争いとか執着しなくなりそうだなー

336 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 00:01:44 ID:0lDzQtTZ
いや、逆に「森崎くん、勝負だ!(キラッ」みたいなテンションになりそう

337 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:13:12 ID:kMe4/qku
〜東京都のとある病院〜

入院三日目、森崎は申し訳なさそうな顔の医者の前で口を開けて呆然としていた。
更に彼の周りには見上と賀茂も居り、二人もまた顔を顰めていた。

曰く、森崎の腰はかなりのダメージが溜まっている。

曰く、今の痛みは1週間もコルセットをつけていれば消えるが運動をすればその日の内にぶり返す。

曰く、腰の筋と骨を半年は休ませないと再び痛み無しに運動出来る状態にはならない。

曰く、その半年後もリハビリと腰の補強に費やさないと今後の腰の負傷は予防できない。

医者「…と、言う訳でだ。私が薦めるのは自宅で安静にして療養する事なんだ」

森崎「冗談じゃないですよ…俺、日本代表なんですよ?後ちょっとでプロにもなれるんですよ?
それが半年も安静にしていたら腕が錆びるなんてモンじゃないです!
来年の春にワールドユースがあるってのに、それに出られなかったら俺の将来お先真っ暗ですよ…」

医者「うむ。いやあ実は私もサッカーファンでね、なんとかならないかと知り合いの
スポーツドクターに片っ端から連絡を取っているんだが…皆言う事は一緒だ。
大きな施設で専門の医者をつけ、毎日診断を繰り返しながら腰を痛めない
リハビリプログラムを早期から組めばなんとかなる見込みはあるってね」

森崎「…えっと、それ、どんだけの金がかかるんですか?」

医者「…どれだけ低く見積もっても、千万以下では済まないだろうね…」

森崎「いっせんまんえん…」

338 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:13:34 ID:kMe4/qku
見上「森崎。お前の親御さんは千万円を出せるか?」

森崎「…日本サッカー協会の負担でパルメイラス行きが決まった時、親父もお袋もお前はなんて孝行息子なんだって
泣いて喜びましたよ。俺の高校進学の為に溜めておいたお金をローンの返済に使えるって…」

見上「そうか…」

絶望しかもたらさない医者の説明に焦れた見上が口を挟んでも事態は好転しなかった。
森崎は決して金持ちの家の子ではなく、千万円を用意しろと言われてもはいそうですかと出せる訳が無い。

見上「賀茂、協会の方でなんとかならんか?」

賀茂「今朝片桐が会議に出ている筈だが…望み薄だろうな」

森崎「………そうですか………」

医者「あの、私もなんとかならないか知り合いにかけあってきますので。それではまた後程」

流石の森崎もこの状況では空元気も出せず、見かねた見上も珍しく親身になって賀茂に
相談するが色よい返事は返ってこない。居心地が悪くなった医者が部屋から出て行き、
それと入れ替わる様に片桐が入ってくると3人の視線は彼に集まった。

片桐はサングラス越しでも分かる程濃いクマを目の下に作っており、何時もはビシッと決まっている服装も
今はまるで徹夜の飲み会帰りの中年サラリーマンの様にヨレヨレになっていた。

賀茂「…ダメだったか」

片桐「無理でした。協会内には”せっかくブラジルに行かせてやったのに結果はこれか!”と
森崎を責める声もありまして…更に見上さんの責任論まで出ていました」

339 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:13:55 ID:kMe4/qku
見上「フン。日本のユース代表監督なぞ大して儲かる仕事でもないのに身勝手な責任論だ」

片桐「今回はそれが逆に作用して見上さんの立場は守れましたよ。
ただ、やはり森崎にそこまでの金は出せないと言う結論は覆せませんでした」

賀茂「まーそりゃーしょうがないわな。どんな事情があったにせよ、森崎にもっと金をかけなきゃいけなくなるってのは
協会としちゃ無理難題だ。プロリーグの設立構想、W杯招致活動、アジア予選の準備…
金がいくらあっても足りゃあしねえ。この状況で更に一選手に金をかけるのは大問題だろうよ」

見上「しかも若林が居るからな。贔屓だと非難されてまで森崎を救済する必要は無い。合理的だ」

森崎が側で聞いているのもお構いなしに裏事情を語り合う大人3人。
最初は大人として扱っていてくれているのかな、などと現実逃避していた森崎も
話が進むに連れ黙ってはいられなくなった。

森崎「…するってえとなんですか?俺は日向に泣きつく位しか選択肢が無いって事ですか?」

見上「その選択肢すら無いぞ。一昨日から日向は行方不明だ」

森崎「は!?なんですかそりゃ!もうすぐオランダユースとやるんでしょ?」

見上「それを伝えられる前に居なくなってしまったのだ。若島津達でも何処に居るかは分からん」

森崎「マジですか…こうなったら若林…つってもあいつん家は日向ほどの金持ちじゃないし、
あいつは半ば勘当気味な三男坊らしいし…例えあいつが協力的でも無理っぽいな。
じゃあ翼は確か親父が船の船長で…滅多に家に帰ってこないから話もできそうにないか。
それ以前に若林も翼ももう日本に居ないじゃねーか!ああもう八方塞かよ!」

ガシガシガシッ!

340 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:14:11 ID:kMe4/qku
事態は最早森崎がプライドを投げ捨ててもどうにかなる状態ではなく、
世知辛すぎる問題に彼は髪をかきむしらずには居られなかった。
必要ならどんな事でもすると言う方針でここまで辿りついた森崎にとって
何も出来る事が無いと言う状況はあまりにも過酷な物だった。

賀茂「こうなったら募金でもしてみるかあ?確か三杉もそれで心臓病の手術費を稼いだんだろ?」

森崎「…上手く行ったとしても、何ヶ月かかるんですかねそれ」

賀茂「さあなあ…あいつは小学生時代から女子ファンクラブがあって、その会員達が
芸能人に金をつぎ込む勢いで貢ぎまくっても半年以上かかったそうだからなあ…
テレビでさらし者になったとしても、1ヶ月2ヶ月で足りるかどうか」

森崎「意味無いじゃないですかそれじゃ!俺はまとまった金が今すぐ必要なんですよ!」

片桐「落ち着け森崎。気持ちは分かるが賀茂さんに食って掛かっても問題は解決しないぞ」

森崎「…畜生!ここまで来たってのに…」

見上「………」

本音を隠さず荒れて嘆く森崎の姿に大人たち3人もかける言葉がみつからなくなる。
彼らも皆志半ばのまま現役を退いた元サッカー選手であり、今の森崎の境遇に共感せずには居られないが
金ばかりはそう簡単に都合がつけられる物ではない。地獄の沙汰も金次第なのである。

だが捨てる神あれば拾う神あり。森崎の運はまだ尽きていなかった。

ガチャッ。

陽子「失礼します!森崎くん、とびっきりの救世主を連れてきたわよ!」

森崎「へ?陽子さん…と…な、なにィ!貴方は!」

341 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:15:38 ID:kMe4/qku
いったんここまで。今夜中にもう一回更新出来るかな?

342 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 00:21:26 ID:thQkbHHv
クッ!なんて気になるヒキをしてくれるんだ…

343 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 01:02:18 ID:kMe4/qku
流石に間に合いませんでした。今日はここまで。



今日のキャプ森に関係無い事。
モスクワの本田、凄いですね。中田、中村、小野以上の
選手として大成して欲しいものです。
平山みたいなオチは勘弁…

344 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 01:18:07 ID:urOt/C29
世紀末救世主乙でしたー

345 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 03:45:12 ID:kvKqfp0W
乙です!
平山にも期待してあげて下さいw
出戻りしたとはいえ代表クラスのFW、学年も本田と一つしか違わないんだから…

346 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 05:07:36 ID:4esORPPI
平山というとどうしてもダメギが(

347 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:53:20 ID:kMe4/qku
>>345
平山はホームシックで帰っちゃったと言うメンタルの弱さが…
勝てば官軍負ければ賊軍のストライカーがそんなんでやっていけるか!と
当時リアルタイムで相当ガッカリした思い出があるんですよ。
実力と才能は疑い様が無いぶん余計ガッカリで…
それでも活躍してくれれば良いんですが、果たしてどうなるやら。

348 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:55:14 ID:kMe4/qku
ルーカス「HI!久しぶりですね、モリサキ!」

森崎「ルーカスさん!」

バウミール・ルーカス。3年前森崎をスカウトしたパルメイラスのスカウトである。

ルーカス「ジャパンカップ優勝おめでとうございます。そして今大変な事になっている様ですね」

森崎「ええ、そりゃもう…ってそれを知った上で日本に来たって事はまさか!」

ルーカス「YES! THAT’S RIGHT!」

ここでルーカスは深呼吸をしてから朗々とした声で宣言した。



ルーカス「ユーゾー・モリサキ!SEパルメイラスは貴方に2年契約をオファーします!」



森崎「…おいくら程で?(こういう時、真っ先に値段を聞くのは失礼じゃないよな。多分)」

ルーカス「はい、それはこちらの書類に」

降って湧いた様な話に森崎は興奮を必死に抑えながらルーカスの差し出した書類を確認する。
そこにあった額は森崎の治療とリハビリ代を差し引いても尚余りある物だった。

賀茂「ほう!これだけありゃ余裕じゃねえか!」

森崎「…有難うございますルーカスさん。これが無ければ俺はどうなっていたか…」

陽子「良かったわね森崎くん!」

349 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:55:43 ID:kMe4/qku
こうして森崎の金銭的問題は予想していなかった方向からあっさり解決した。
天の助けとばかりに喜ぶ森崎だったがルーカスは釘を刺す様な話を続けた。

ルーカス「HAHAHA、お礼は必要ありませんよ。私はあくまでパルメイラスの為にビジネスをしているのです。
君を見捨てるよりも君に投資した方が将来のリターンが大きいと判断した為オファーしたんですよ。
実際に上層部は満場一致で決めた訳ではなく、本来なら4年契約を結び後で移籍金を
ガッポリ稼ぐつもりだったんですが君がリハビリの甲斐無く腕を落としてしまった場合も考えて
2年契約に変えたんです。その場合君は本当にゴミの様に捨てられ見向きもされなくなりますよ?」

森崎「そりゃそうでしょうね(エベルトン監督も上手い事を言ったもんだぜ。
俺達サッカー選手はより良い牧場に買われる為に日夜努力する家畜か…ヘッ、上等だ)」

見上「(これでなんとかなるか…ここに来て森崎がキャプテンから降りていたらどんな混乱が
発生していた事か。後に復帰した場合は更にややこしい事になっていただろうしな)」

ルーカス「それともう二つ。これは契約条件ではありませんが、私から二つリクエストを」

森崎「はい?」



ルーカス「まず一つ。必ず来年のワールドユースで活躍して下さい。出るだけじゃダメですよ」



森崎「…任せて下さいよ。例えダメって言われてもMVPを掴んでやりますよ」

見上「あまり大口を叩くな。GKがMVPを取るとなると大会通算失点率をかなり低くしないといけないぞ?」

賀茂「まあ意気込みとしてはブルってるより良いんじゃねえか?Jrユース大会では実際にMVPだったんだしな」

350 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:55:58 ID:kMe4/qku
悩み事が解決された森崎が立ち直るのは速かった。出世払いの様な物だと促されても
平気で巨大な目標をぶち上げ、周りが苦笑しても全く悪びれようともしない。

ルーカス「良いメンタルです。何時までも勇敢なキーパーのままで居て下さいよ」

森崎「当然!で、もう一つのリクエストはなんです?」

ルーカス「ええ、こちらの方がより大事なリクエストなのですが…」

それも束の間の事で、ルーカスがより真剣な表情になると森崎も笑顔を引っ込めた。
ただならぬ様子に見上、賀茂、片桐兄妹までも沈黙したのを見計らい、ルーカスは口を開き…



ルーカス「ギロッポンのGEISHAガールと遊びたいので良いお店を紹介してください」



ニマーっとお世辞にも上品ではない笑みを浮かべた。

森崎「ぎ…ぎろっぽん?何ですかそれ?」

ルーカス「おや?トーキョーのミナトクと言う地域にそういう名前の繁華街があると聞いていたのですが…」

陽子「東京の港区…六本木の事ですか?」

ルーカス「OH!ロッポンギと言うのですか。間違えて覚えていた様ですね、HAHAHAHA!」

陽子「(どうやったら間違えられるのかしら…)」

大真面目な話をしていた筈なのに突然下卑た話題になり、日本人5人は目が点になった。

351 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:56:17 ID:kMe4/qku
森崎「…えーっと、要はエッチな事が出来る飲み屋に行きたいって事で良いんですか…?」

ルーカス「YES, YES!」

陽子「(なんてワクワクした顔…子供みたいに瞳を輝かせてるし…)」

森崎「(そういや旅先での浮気が趣味だったなこの人…)ルーカスさん、
日本の飲酒年齢は20歳からなんですよ。俺今18歳なんで、そういう店には行けません」

ルーカス「WHAT?それは残念ですね。ではどなたか別の人に案内を…」

年齢の都合で森崎が頼みを断るとルーカスは後ろの4人に視線を向けた。
たちまち同じく未成年でありそれ以前に女である陽子が顔を背け、残りの3人が醜い押し付け合いを始める。

片桐「私はオランダユース戦の準備で忙しいので、見上さんお願いします」

見上「私だって合宿を監督せねばならん!賀茂、ここは頼んだぞ」

賀茂「待て、俺はお前らと違って貧乏人なんだ!金持ちの片桐が行けよ!」

片桐「無理です!私はそんな店に行ったら…私の家庭の事情はご存知でしょう!」

見上「私なんか妻子持ちだ!家庭を崩壊させろと言うのか!」

賀茂「汚えぞてめえら!いくら裏方だからって汚れ役を全部引き受けて堪るか!」

ルーカス「ホッホッホ、遠慮せずに4人で行きましょうよ。皆で楽しく命の洗濯をしましょう」

片桐・見上・賀茂『そういう訳にはいかないんですよ!』

352 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:56:31 ID:kMe4/qku
陽子「キャバクラの案内を押し付けあう日本サッカー協会の役員達…な、情けないわ」

森崎「つーかルーカスさん、俺がワールドユースのMVPを取るよりも女遊びが大事なのかよ…」

呆れて見ていられなくなった森崎と陽子は廊下に退散し、そのまま病院の庭に出た。
冬を超えて春に備えている桜の木を見ると恥ずかしい気持ちも無くなり二人に笑顔が戻る。

陽子「なにはともあれ、お金の工面がついて良かったわね森崎くん」

森崎「全くだぜ。世の中金だって思い知った。この大事な時期を逃していたらと思うとゾッとするぜ」

A 「ところでさっき片桐さんが言ってた家庭の事情って何なんだ?」
B 「とは言っても、リハビリもしっかりやらないと腕が落ちちまうな」
C 「有難う陽子さん。マジで救世主だったよ、助かった」
D 「ここで一句詠むか。枝折れど 尚も華咲く 森の先」
E 「元気になったらまた海にでも行こうぜ、陽子さん」

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1267790375/l50にて
            ☆2010/3/24 11:00:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。どれか一つに確定した場合はその時点で投票を
         止めて下さい。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

353 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:58:07 ID:kMe4/qku
投票期間を☆2010/3/24 10:00:00☆からに訂正します。


354 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 12:27:34 ID:kMe4/qku
>C 「有難う陽子さん。マジで救世主だったよ、助かった」

陽子「どういたしまして。でも実際に助けに来てくれたのはルーカスさんとパルメイラスよ。
私はただの連絡員だからあんまり胸を張れた事でも無いわ」

森崎「まあ、そうなんだけどさ。連絡が遅れていたらそれだけで俺どんどん嫌な気持ちになっていただろうよ。
それに上司…じゃないけど敬わないといけないおっさん4人に囲まれていたらそれだけで気がめいるし」

早苗「あら、森崎くんはまだ良いわよ。私なんかそういうおじさん達と日常的に顔を会わせているんだから。
いやらしい目で見られる事も珍しくないんだから、ホントいやんなっちゃう」

森崎「そりゃあ、陽子さんのナイスバディじゃなあ…」

陽子「あら、硬派な学生時代を過ごした森崎くんとは思えないセリフね」

森崎「俺だって女に興味はあるさ。っていうか俺の学生時代まで調べているのか?
(まさか俺が覗き好きだって言うのまではバレていないよな…)」

陽子「あくまで学校側の報告を聞いた程度よ。浮ついた話が無く、更にかなり腕白だったらしいわね?
パルメイラス時代もGK達と殴り合いをした事があったって聞いているわよ」

森崎「ちぇっ。有名税って奴かよ」

森崎と陽子はしばし散歩しながら他愛の無い会話に花を咲かせた。
しかし病院の庭は狭く、見られる物も少ない。

森崎「そろそろ中に戻るか?」

陽子「う〜ん…兄さん達がまだまだケンカしていそうでちょっとイヤね…」

355 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 12:27:50 ID:kMe4/qku
森崎「確かに…って言うか片桐さんこんな所でノンビリしていて良いのか?
オランダユース戦が急に決まったから不眠不休で走り回っているって聞いたけど」

陽子「それは今朝までの事よ。もう60時間くらい寝ていないそうだけど、それだけ
頑張った甲斐あって急ピッチで手続きが進んだんだって。今日の午後からは明日の朝まで休みよ」

森崎「そうか。しかしこんだけ迷惑をかけるなんてオランダユースもふてえ奴らだな」

陽子「全くね。ただ、彼らはそれだけ自惚れる資格のある強さを持っているかも知れないわよ」

森崎「西ドイツユースを4−1で倒したってアレか?一体どうすればそんな事が出来るんだか…」

陽子「私もビデオを見た事が無いから詳しい事は分からないんだけれど…
どうやら彼らはトータルフットボールと言う戦術を使い、試合の主導権を握ったそうよ」

森崎「トータルフットボール…?」

陽子「私はその単語を聞く事自体初めてでどんな戦術か知らないんだけど…森崎くんは知ってる?」

森崎「なんか何時かのオランダ代表がワールドカップで使っていた戦術…だったと思うが詳しい事は知らん」

陽子「そう…試合で実物を拝むしかなさそうね」

二人の会話は自然とサッカー関係の物に移り数日後に行われる全日本対オランダの話題になる。
例え森崎が参加出来ない試合であっても、二人が安息を得られる時ではなかった。



ちなみにルーカスの案内は結局マスコミに見られてもスキャンダルの心配が無い賀茂が
金は見上と片桐が半分づつ出すと言う条件付で押し付けられる事になった。
「クノイチは何処ですか?」などと日本文化誤解を繰り返すルーカスにさぞや手を焼いたとの事である。

356 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 12:28:28 ID:kMe4/qku
いったんここまで。

357 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:52:16 ID:kMe4/qku
そして試合の三日前、オランダユースは来日した。
彼らは試合前の二日間を都内の練習場で調整に費やした後試合前日の夕方に記者会見を開いた。
ただでさえジャパンカップの成功でサッカー熱が高まっている時期に
間違いなく強豪国と言えるオランダがやってきた為マスコミの注目度は高く、
記者会見にはスポーツ関係に限定されない大手新聞やテレビの記者が詰め掛けた。

記者会見に出席したのはデニス・クラマー監督とキャプテンのブライアン・クライフォート。
全日本ユースも見上と暫定キャプテンの三杉が出席した。

まずはオランダユース側へのインタビューが行われた。

記者A「クラマー監督、日本の印象はどうでしょうか?」

クラマー「実はわしは以前何度か日本に来た事がありまして、これが一度目では無いんですよ。
日本は過ごしやすくて良いですね。ラッシュアワーの電車だけは疲れますが」

記者A「ではクライフォートくん、君は日本は初めてかな?」

クライフォート「ええ。感想を言うと…ハシが使いにくくてしょうがありませんね。テンプラは気に入りましたが」

記者B「来年のワールドユースに向けて、ヨーロッパ予選を突破出来る自信はありますか?」

クラマー「それは勿論。予選にも強いチームは沢山出てきますが、我々は一位突破を目指します。
皆さんが来年の4月ブラジルに赴けば、そこで凄く強いオランダユースを見られると思いますよ」

最初は当たり障りの無い質問から始まり、クラマーとクライフォートもニコニコと友好的に答える。
だが質問が明日の試合に関係する様になると途端に二人の態度は豹変した。

358 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:52:30 ID:kMe4/qku
記者C「お二人両方に答えて頂きたいのですが、全日本ユースの選手で特に注目している選手は居ますか?」

クラマー「そうですね。やはりツバサ・オオゾラ、ユーゾー・モリサキ、ゲンゾー・ワカバヤシの3人でしょうか。
この3人がいずれもそれぞれの事情で今回の試合に出れないと知って大変残念に感じました」

クライフォート「正直言ってこの3人の内誰も居ないんじゃ負ける気はしませんね」

三杉「!」

ォオオオオオオオオオ…

記者D「で、では他には脅威に感じる選手は全く居ないと…?」

クラマー「前述の3人には劣りますが、コジロー・ヒューガ、シンゴ・アオイ、トメヤ・アカイの3人も中々ですね。
ただヒューガも出場しないそうですし、アオイとアカイはジャパンカップの怪我から回復したてだと聞いております」

クライフォート「そしてそこに居るジュン・ミスギもテクニックは素晴らしい物がありますが…それだけです。
所詮はプロサッカーに縁の無い日本育ちの選手。既にアヤックスの一軍でプレイしている俺の敵ではありません」

三杉「………」

いきなり慇懃無礼になった二人の発言に記者達はどよめき、同席している三杉は目を冷たく光らせる。
更にクライフォートは立ち上がって腕を広げ、黙り込んでしまった記者達にスピーチをする様に堂々と宣言をした。

クライフォート「今のやり取りを聞いて皆さんはどんな感想を抱いたでしょうか?自信過剰、大言壮語、無礼千万…
そう言った単語で集約できる感想でしょう。3年前フランス国際Jrユース大会を制した日本を侮ったら後悔するぞ…と。
しかし明日その思いは裏切られ、今我々が言った事はただのシンプルな事実であったと理解出来るでしょう。
我々オランダユースは全日本ユースを敬意を持って大差で倒しますので、一方的な虐殺ゲームをぜひぜひお楽しみ下さい」

359 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:52:43 ID:kMe4/qku
ザワザワザワ…

記者達「(な、なんて傲慢な…)」「(いくら自信があってもそこまで言うか?)」「(監督もニコニコしてて咎めようともしないなんて!)」

スタッフ「で、ではオランダユースへの質問を終わりにします!続きまして全日本ユースへの質問をどうぞ!」

親善試合に来たとは思えない態度での大勝宣言に場内に不穏な空気が流れ始める。
それを敏感に察したスタッフによってオランダ側への質問時間は打ち切られ、日本側への質問が始まった。
だがスタッフの配慮も空しく記者達はオランダ側の態度に関した質問を我先にと飛ばす。

記者C「見上監督!今のオランダ側の発言をどう思いますか!」

見上「自信があると言う事でしょう。こちらにも自信はあります。自信の無いチーム同士で戦っても意味がありませんから」

記者D「しかし、実際に主力選手が何人も欠けているこの状態では勝利は難しいのでは…」

見上「戦力と勝率が落ちたのは事実です。それをなんとかするのが私の仕事です」

記者E「具体的にはどうするんですか?」

見上「それを今ここで言っては敵に塩を送ってしまうでしょう。明日まで秘密ですよ」

幸い見上は模範的な対応で上手く煙に巻き、自分やチームの立場を危うくする失言を一切しなかった。
それでも特ダネが欲しい記者達は今度は矛先を三杉に向ける。

記者A「三杉くん!クライフォートくんは君の事を格下だと思っている様だけど?」

三杉「その様ですね。実際に実績とコンディションから見れば
僕達全日本ユースはオランダユースにとってかませ犬にちょうど良いでしょう」

クライフォート「(ほう…)」

360 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:52:57 ID:kMe4/qku
記者B「そ、それは最初から勝利を諦めているって事!?」

三杉「全然違います。かませ犬にはかませ犬なりの戦い方があります。そして明日の試合に勝つ為に
まず必要な事は相手が格上だと認めておく事。次に格下らしく大物食いを狙いに行く事ですよ」

記者達「れ、冷静だ…」「流石貴公子、三杉淳」「こりゃあ良い記事になるぞ!」

クライフォート「(この程度の挑発には乗らないか。頭は良い様だな)」

三杉「ブライアン・クライフォート」

スクッ。

三杉もまた見上同様失言を避けたが、同時にマスコミ受けが良くなる味付けをしたコメントをした。
更に三杉はドラマ性を求めて先ほどのクライフォートに対抗する様に立ち上がりオランダ側を向く。

スクッ。

クライフォート「何かな?」

三杉「明日は良い試合にしよう」

クライフォート「…フフフ、それは勿論。我々サッカー選手はスポーツマンであると同時にエンターテイナーでもある。
明日はお客さん達を退屈させない試合にしよう…それがどんな結果であってもな」

ガシッ。

見上「(似た者同士だな)」

クラマー「(同類嫌悪で絶対に仲良くできない二人だな)」

冷笑に満ちた記者会見は両チームのキャプテンの握手で幕を閉じた。

361 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:55:57 ID:kMe4/qku
いったんここまで。

362 :創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 01:23:31 ID:RMYY27zW
>>354
あねご・・・いつの間に
流石にキャプ翼2の2Pキャラといえようw

363 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/25(木) 22:15:17 ID:5aKhpk8M
〜東京都新宿区、国立霞ヶ丘陸上競技場〜

観客「頑張れ全日本ー!」「今度も勝てよー!」「傲慢なオランダの目に物を見せてやれ!」
「森崎と日向が居ないからって負けるなよ!」「三杉ー!クライフォートなんかに負けんな!」

放送「ジャパンカップに続き今日も超満員のここ国立霞ヶ丘陸上競技場からお茶の間の皆様にお届けします!
今日の相手は前日の記者会見で大胆極まる大勝宣言をぶち上げたオランダユース!
森崎くんと日向くんを欠いている全日本ユースもここまで言われては負けられません!」

試合当日の会場は雨が降りそうな曇り具合だったにも関わらず盛況だった。
世界への夢を見せてくれたこの世代の日本代表がバカにされた事でオランダユースに対する敵意は高く、
森崎と(マスコミはヒューガーに関わろうとしないので勝手な推測が飛び交っている)日向が
居なくても全日本ユースの勝利を期待していた。

だが現場レベルではそう楽観的にはなれなかった。
全日本ユースのミーティングの空気は真剣そのもので、誰もがピリピリした表情になっていた。

見上「作戦は以上だ。苦しく不利な戦いになるだろうが、そういう時こそ本当の強さが問われるぞ」

全日本メンバー『はいっ!!』

若島津「(こんな形でスタメンが回ってくるとはな…だが、作戦通りやればきっと無失点に抑えきれる!)」

中山「(森崎が負傷したのは俺が何の役にも立っていなかったせいもある。今日こそは…!)」

葵「(ハンブルグ戦では完全にチームに迷惑をかけちゃった。ここで挽回だ!)」

三杉「(オランダユースの戦力はしっかりと分析した。逆に彼らは僕らを侮って油断している。そこに勝機はある)」

主力抜きで強豪相手に何処まで出来るのか。その答えが間も無く出ようとしている。

364 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/25(木) 22:15:35 ID:5aKhpk8M
全日本ユース 5−3−2
−−−−−
−J−H− J政夫 H和夫
−−−−−
F−I−G F中里 I三杉 G葵
−−−−−
−E−D− E早田 D赤井
−ACB− A石崎 C次藤 B中山
−−@−− @若島津

オランダユース 4−3−3
J−H−F Jカイザー Hイスラス Fレンセンブリンク
−−−−−
−−−−−
G−I−E Gクリスマン Iクライフォート Eスルバラン
−−−−−
A−−−B Aオーゴ Bキクサリ
−C−D− Cリブタ Dディック
−−@−− @ドールマン

365 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/25(木) 22:16:36 ID:5aKhpk8M
いったんここまで。
さて、試合展開の詳細を決めなくては…

366 :創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 23:20:52 ID:DCfswkJk
ここからが本当の地獄だ……

367 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/25(木) 23:52:48 ID:5aKhpk8M
中途半端に書くよりも今夜はここまでとします。
また明日お会いしましょう。



今日のキャプ森に関係ない事。
初めて闘神伝をプレイした時の様な胸のドキドキをもう一度味わいたい…

368 :創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 00:00:13 ID:yc86iG4C
闘神伝2を二晩ぶっ通しで対戦し続けたあの若かりし日よ…

369 :創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 02:32:08 ID:R6266FAs
エリス「2ねいさんのバカー!」

370 :創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 07:21:09 ID:EGqdSKWK
にとうしんでん……だと?

371 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 19:42:15 ID:LAco4xJk
>>368
なんと熱い思い出。ヴァーミリオンは禁止でしたか?

>>369
ごめんねエリス、1では簡単で強力すぎるチェインコンボが嫌いで、
2以降では弱体化していたのが嫌いだったの。ごめんね。

>>370
それはやってません。VFキッズと違ってクソゲーっぽかったので。

372 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 19:43:25 ID:LAco4xJk
ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

放送「さあ試合開始です!オランダボールでキックオフ!彼らが使うと言う
トータルフットボールなる戦術は一体どんな物なのか、そして全日本ユースはそれにどう対抗するのか?」

クライフォート「(5バックか、最善の選択をしてきたな。だがそれも無駄となる)」

バコッ!

放送「キャプテンのクライフォートくん、まずはクリスマンくんにパス。
三杉くんが向かっていましたが、いきなりのキャプテン対決は実現しない様です」

三杉「おや、意外だな。すぐに僕の自信をへし折りに来ると思ったんだが」

クライフォート「焦るな。ダンスパーティは始まったばかりさ」



放送「クリスマンくんが中心になったパスワークで徐々に攻め入るオランダ!
全日本は5バックを使っている事もあってこれをカット出来なさそうです。
ハンブルガーSV戦同様カウンターアタックを仕掛けるチャンスは巡ってくるのでしょうか?」

森崎「(今日も5バックか…実際に三杉と葵しか世界で通用するMFが居ないから
しょうがないが、FWは日向抜きで立花兄弟だな…もし勝てるとしたら1−0だけだな。
まあ俺抜きで勝たれても困るが…今はそれよりも)運チャン!まだかよ!」

運転手「いや〜すまんね。なんか工事中で渋滞していて…」

その頃森崎はラジオ中継を聞きながらタクシーで国立霞ヶ丘競技場に向かっていたが、
しかし運悪く交通事情で時間通りに辿りつけずに居た。

373 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 19:43:46 ID:LAco4xJk
森崎「なんでだよ、こんな時に…あ、前空いたぞ!」

運転手「いや、空いたっつっても赤信号だから」

森崎「畜生!もうすぐそこまで見えているってのに…ええいもう良い!
ここからは歩いていくから降りる!運チャンいくらだ?」

運転手「(なんて態度のデカいガキだ…)え〜、4780円だよ」

森崎「ほら、5千円札!釣りは要らないから早くドア開けてくれ!
(くそっ、コルセットのせいで走れないってのに!)」

結局この後森崎は観客席にたどり着くまで約10分かかった。



早田「てやっ!」

バチィッ!

スルバラン「オーケー!」



葵「このっ!」

ボコッ!

カイザー「おっとっと」

374 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 19:44:05 ID:LAco4xJk
放送「全日本ユースの堅守!なんとかボールを奪い返そうと必死に守りを固め
今の所決定的なチャンスを作らせていません!しかしこぼれ球を確保する余裕まではなく、
ここまでずっとオランダユースが一方的に攻めています!」

観客「あいつらデカい口を叩くだけの実力はあるぞ!」「踏ん張れ日本!この程度はピンチじゃないぞ!」

前半の序盤は主導権を握ったオランダの攻めを全日本がじっくりと耐えると言う展開になった。
相手が間違いなく強敵でありながら全日本の逆襲が期待出来る試合の流れの観客も喜び盛んに声援を送る。
しかし全日本側のベンチは相変わらず楽観的になれず、それどころか一部の選手が早くも不安を監督に訴えかけていた。

松山「あの、監督…」

見上「なんだ?」

松山「その…何か違和感を感じませんか?この展開」

見上「…感じない事も無いが、思い当たるフシは一つではない。お前は何を感じているのだ?」

松山「ええと、なんて言ったら良いか。すみません、上手く言葉に出来ないんですが
俺はオランダユースの戦い方に何かデジャヴの様な物を感じて…それが気になって」

見上「では私がそれを言葉にしてやろう。お前が無意識に理想としていた
サッカーと重なるのだろう?オランダのトータルフットボールが」

松山「えっ!?」



放送「ここで中里くんがボールを確保!ようやく反撃のチャンスがやってきました!」

375 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 19:44:34 ID:LAco4xJk
早田「よっしゃ行けェ中里!」

中山「自慢の俊足を見せてやれ!!

中里「応!」

ダダダダッ!

レンセンブリンク「させん」

スルバラン「はっ!」

バチッ!

中里「くっ、ぬかった…!?」

クリスマン「ナイスだレンセン、スルバラン!」

放送「しかし中里くんレンセンブリンクくんとスルバランくんに止められた!
このこぼれ球はクリスマンくんがフォロー!またしてもオランダユースの攻撃となります!」

松山「なっ…ちょっと待て!あのクリスマンって奴は逆サイドのSMFじゃなかったのか!?」

見上「そうだ。だがこの絶好のタイミングで必要な場所に居たのだ」

岬「松山。オランダは優れた個人技と組織プレイを併せ持つスタイルで有名なんだ」

松山「そ、そうなのか(なんなんだこれ…デジャヴみたいな感覚がますます強く…)」

クラマー「うむうむ、良いぞクリスマン」

三杉「(なるほど…初めて体感するが、これがトータルフットボールか)」

376 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 19:44:56 ID:LAco4xJk
そして試合は動いた。早い時間帯で。

クライフォート「…そろそろやれ、イスラス!俺が許可する!」

バコッ!

放送「クライフォートくんパスを出しました。これはイスラスくんに渡り…」

若島津「(あいつは確かドリブラータイプのFWだったな。だが5バックならそう簡単には…)」

イスラス「良いだろう待ちくたびれていた所だオランダユースの切り込み隊長たる
このアーロン・イスラスが先制点を獲得させてもらう勝負だ全日本ユース!」

政夫「あれ?なんだあいつ、ボールを持った途端急に早口に…」



ビュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!!



和夫「キ…キキャーッ!?(な…なんだありゃあああ!?)」

中里「せ、拙者よりも速いだと!?」

放送「こ、これは!?イスラスくん突如凄い速さで走り出しました!
信じられないスピードであっと言う間にバイタルエリアに…」

早田「な、なんだこいつは!」

赤井「やべっ、早くチェックを…」

377 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 19:45:13 ID:LAco4xJk
イスラス「遅い遅い遅すぎるもっと真面目にやれそれでもタックル自慢か!」

ビュワァッ!!

早田「な…なにィ!?」

赤井「げええっ!!」

三杉「(速いだけじゃない!上手い!あのスピードを全く落とさず高等技術を連発している!)」

放送「な、何が起きているのか!?早田くんと赤井くんが棒立ちのままで抜かれ…」

次藤「いかん!PKでもかんまん、止めるタイ!」

中山「このまま通させて堪るか!」

石崎「う、うぉおおおおっ!!」

ズザザザーッ!!

イスラス「甘いぞそんな腑抜けたタックルでこの俺は止められないぞそれが何故分からん
もっと速くもっと上手く守れ歯応えがなさ過ぎて逆に侮辱された気分だ!」

ヒュンッ!
ヒュンッ!
ヒュンッ!

若島津「な…何が…」

イスラス「誰も俺についてこれないのかフランス国際Jrユース大会を制したのは
やはりマグレだったのか俺を失望させるな全日本ユースよ!」

378 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 19:45:42 ID:LAco4xJk
若島津「何が起こっているんだーーーっ!?」

バッ!
ササッ!

イスラス「やはりこんな物か僅かでも期待してここに来たのは間違いだった様だ!」

バサッ。



イスラスの嘆きに満ちたゴールの直後、競技場は静寂に満ちた。
ほぼ同じタイミングで昇降口を出て観客席に辿りついた森崎はとてつもなく戸惑った。

森崎「ふう、やっとついたぜ…ってなんでこんなに静かなんだ?」

ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

森崎「えっ!?えっ!?なんだ、なんだこのホイッスル!」

放送「こ、これは…これは!?い、何時の間にかイスラスくんがゴールにボールを蹴りこんでいました!
実況の私ですら置いていかれる程のあっと言う間の展開をどう表現すれば良いか分かりません!
前半12分!オランダユースが雷撃的な先制点を奪い取りました〜〜〜!!!」

ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

観客「な、なんだ今の!?」「何時の間にゴールされていたんだ!」「誰か説明してくれよ!」

森崎「説明して欲しいのは俺の方だっての!なんでいきなりゴールされてんだ!」



全日本ユース 0−1 オランダユース

379 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 19:46:24 ID:LAco4xJk
いったんここまで。

380 :創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 21:44:58 ID:vN/74f/c
アルター使い!

381 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 22:14:44 ID:LAco4xJk
森崎「えーと、あのイスラスってのがドリブルゴールを奪った…のか?ああっくそっ、大事な所を見逃しちまうなんて!」

最初の山場を見逃した事で森崎は金切り声を上げたくなる程いきり立っていた。
ここで森崎には二つ幸運な事があった。一つは周りの観客達も混乱しており
彼の存在に気付かなかった事。そしてもう一つは…

シュナイダー「モリサキ…?モリサキなのか?」

森崎「えっ?…んなっ!?シュナイダーだと!」

近くに居たシュナイダーとフライハイトに発見された事である。

森崎「なんでお前が日本に居るんだよ?お前バイエルンのトップでプレイしているんじゃなかったのか?」

シュナイダー「…右足の負傷で1ヶ月程休養が必要でな。クラブの許可を取って
ジャパンカップの見物に来た。急遽オランダユースとの試合が追加された時は驚いたがな」

森崎「そうか…ん、そっちのお前は?」

フライハイト「ジークムント・フライハイト、シュナイダーの同僚の東ドイツ人だ。
俺は国籍関係のゴタゴタでまだ公式試合に出られんのでここに居る。
ユーゾー・モリサキだな?シュナイダーから話は聞いている、よろしく」

Jrユース大会以来となるライバルとの再会にシュナイダーは僅かな笑みを隠さなかった。
一方フライハイトは台詞こそ友好的だったが声は淡々としており、
森崎に向けて手を伸ばし握手を求める際も表情はニコリともしていなかった。

A 「こちらこそよろしく。全日本ユースキャプテンの森崎だ」無難に応じる。
B 「おう、よろしく。それにしてもなんか暗い奴だな」フランクに応じる。
C 「なんかあんまりよろしくされたくないんじゃないのか?」握手を断る。
D 「今はそれより試合の事だ!一体何が起きたんだ!?」問い詰める。

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1267790375/l50にて
            ☆2010/3/26 22:30:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。どれか一つに確定した場合はその時点で投票を
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382 :創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 23:22:28 ID:pw0ZPAgY
シュナイダー、怪我してるとはいえ観光しすぎだろw
>>2ねいさん、シュナイダーがこの一週間何してたか軽くでいいから教えてください

383 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 23:27:09 ID:LAco4xJk
>B 「おう、よろしく。それにしてもなんか暗い奴だな」フランクに応じる。

森崎は持ち前の無遠慮さでフライハイトの第一印象をストレートに本人に伝えた。
ともすれば失礼と取られて相手が怒りかねない返答だったが、
フライハイトは怒らずシュナイダーに到っては何故か視線を背けると言う謎の反応だった。

フライハイト「よく言われる。生まれつきの性分なので気にしないでくれると有難い」

シュナイダー「(こいつが暗いのは晴天時だけだ…ああ、今日は雨が降りそうだな。全く)」

森崎「………?あ、そう言えばさっきの得点シーン!」

予想外の反応に森崎は首を傾げたが、すぐにもっと大きな謎が目の前にあった事を思い出し慌ててフィールドに向き直る。
そこではちょうどオランダユースの選手達ががお手柄のイスラスを囲んでいた所だった。

森崎「なあ、さっき何があったんだ?俺が来たら丁度ゴールされていて、訳分からねえよ」

シュナイダー「アーロン・イスラス。奴の高速ドリブルで全日本ユースの選手達は
キーパーも含めて6人抜きされゴールを奪われたんだ」

フライハイト「イスラスは間違いなく欧州…いや、世界トップクラスのドリブラーと言える逸材だ」

森崎「そんなに凄いのか…(でも若島津が相手じゃどう凄いのかいまいち想像できんな)」

384 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 23:27:33 ID:LAco4xJk
クライフォート「良くやったイスラス。まずは一点だ」

イスラス「オランダの勝利の為に当然の事をしたまでだ」

カイザー「それは置いといて、あのラップみたいな口調なんとかならないのか〜?」

イスラス「…何時も言っている事だが、俺はドリブル時も普段通りに喋っているつもりなのだが?」

レンセンブリンク「変人め」

クリスマン「こら、くだらん理由で内紛なんかするな。相手が付け入る隙になるぞ」

クライフォート「心配は要らん。ここからじわじわといたぶっていけば良いさ」

早い時間帯での先制点はオランダユースの元々たっぷりあった余裕を更に増し、
逆に全日本ユースの元々無かった余裕を更に減らし焦らせていた。

早田「畜生!何なんだあいつは!」

赤井「ビ、ビデオで見たのより更に速いッス…」

三杉「スピードも技術も、ビデオでは本物のインパクトに及ばなかったと言う事だね」

無論彼らとてイスラスのドリブルは警戒していた。だが遠くの第三者の視点から取られたビデオと
実際に対峙した際のイスラスのスピードとテクニックはあまりにも違いすぎた。

ここに居るメンバーで唯一イスラスのドリブルに近い領域に立つ三杉が
冷静にそれを指摘し、チームメイト達が救いを求める様に彼に視線を集める。

385 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 23:27:50 ID:LAco4xJk
若島津「三杉…どうするんだ?悪いが、あいつと1対1にされたら弾くだけでもおぼつかんかも知れん…」

石崎「マ、マークをつけようぜ!あいつにドリブルさせなければ…」

三杉「…いや、さっきから観察していたんだがオランダはポジションチェンジとセカンドボールの
確保が非常に上手い。例えイスラスへのパスを完全に遮断出来てもあまり意味が無いな」

次藤「そいぎんた、どげんすればよかね?」

三杉「早田と赤井がなんとかするしかないね。今ので目が慣れたと思うが…出来そうかい?」

早田「…おう!二度も同じ手を通用させて堪るか!」

赤井「なんとか出来る…と思います」

三杉「じゃあ次は攻撃だ。とりあえずキックオフから立花兄弟が仕掛けてくれ。
それがダメだった場合はじっとカウンターチャンスを待とう」

政夫「分かった!」

和夫「任せとけ!」

三杉「よし…皆、オランダは僕らが怯えれば喜ぶ。それだけは絶対にやらない事にしよう」

全日本メンバー『おう!!』

普段は反感を買いやすい三杉の冷徹さと傲慢さも敵に向けられれば頼もしい物である。
彼のカリスマで全日本ユースは今一度持ち直そうとしていた。

386 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/26(金) 23:30:49 ID:LAco4xJk
今日はここまで。また明日お会いしましょう。

>>382
シュナイダー「マリーへのおみやげを集めていた」

フライハイト「ツケモノは良いモノだ」

との事です。



今日のキャプ森に関係ない事。
ビスコッティを初めて焼いてみたら生地の練りが足りなくて
バラバラに崩れました…くすん。

387 :創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 23:33:06 ID:a1Wyouh5
高速乙でした!

388 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 08:40:08 ID:YCluU3WS
ピィイイイイイイイイイイイイイイイ!!

観客「ビビるなよ全日本!」「こんな1点すぐに返せるぞ!」「得意の逆転を見せてやれーっ!」

放送「早くもリードされてしまった全日本ですがここで怯んでは居られません!
反撃開始に出るべくキックオフし、立花兄弟が…」

政夫「行くぞ和夫!」

和夫「おう政夫!」

パンッ!ダダッ!パンッ!ダダッ!

放送「出ました!双子ならではの息が合った高速連続ワンツー!これでオランダの守りを切り裂けるでしょうか?」

クライフォート「ザコが」

バッ!
グルンッ!
バシッ!

政夫・和夫『な、なにィイッ!?』

三杉「(やはり引き寄せてからじゃないと攻められないか。厳しいな)」

放送「ダメでした!クライフォートくんが華麗なムーンサルトパスカットで立花兄弟の速攻を
いともあっさりと断ち切りました!全日本ユースに反撃の波を作らせません!」

リブタ「これは今日は俺達の出番は無いかもな」

ディック「退屈になっちまいそうだぜ」

ドールマン「一応ラインを上げるだけは上げておけよ。じゃないと監督から叱られるぞ」

389 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 08:40:25 ID:YCluU3WS
フライハイト「やはり大した物だ、ブライアン・クライフォート。トータルフットボールの司令塔の異名は伊達ではない」

森崎「チッ、あっさり止められやがって…それにしてもトータルフットボールって一体何なんだ?」

シュナイダー「知らないのか?」

森崎「1974年のW杯でオランダ代表が使ってたって事しか知らん。それ以上は日本じゃ情報が無いんだよ」

気を取り直して攻めたは良いものの敵陣侵攻もままならない全日本。
その苦境に森崎は悪態をつき、次いでかねてからの疑問を二人のドイツ人に問いかける。

シュナイダー「戦術の話なら俺よりフライハイトが向いている。頼む」

フライハイト「了解した…トータルフットボールは定義が難しいが、あえて一言にまとめるのなら
”最適化されたポジションチェンジの活用による全員攻撃と全員守備”と俺は解釈している」

森崎「ん〜?つまり…オールラウンダーを10人揃える戦術なのか?」

フライハイト「いや、そうではない。現に今プレイしているオランダユースを見ろ、
FWはFWらしい能力とスタイル、MFはMFらしく、DFもDFらしい選手ばかりだ。
無論どの選手も高い実力の持ち主だが、FWとDFを入れ替えても機能する訳ではない」

森崎「じゃあ何なんだよ。普通に全員攻撃と全員守備をやるのとどう違うんだ?」

フライハイト「トータルフットボールの特徴を一つ一つ上げていくと、単体では大した事には聞こえない。
運動量を増やして頻繁にポジションチェンジを行う。DFが積極的に攻撃参加し、
FWも積極的に守備参加する。DFラインを高く保つ事でプレイエリアを狭くしオフサイドトラップを狙っていく。
両サイドを活用する事でフィールドを広く使い相手の守りを薄める…どれもある意味当たり前の事だ」

390 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 08:40:50 ID:YCluU3WS
森崎「…そのある意味当たり前の事をチーム単位で全て徹底するのがトータルフットボールか?」

フライハイト「そうだ。フィールド、選手、戦術、ルール。サッカーに存在する要素”全て”を
”全部”使う事で攻防両方を”全員で”行い試合”全般”を支配する。
オランダ人に言わせればまた違うかも知れんが、これが俺の見たトータルフットボールだ」

森崎「…理論は分かるが、いまいちピンと来ねえなあ」

フライハイトの説明は抽象的な部分が多く、森崎は再び首を傾げざるを得なかった。
無理も無いと苦笑したシュナイダーが補足する様に言葉を加える。

シュナイダー「論より証拠だ。試合を見ればトータルフットボールの恐ろしさは
ただの全員守備と全員攻撃には留まらない事が分かるだろう。
だがとりあえず一番分かりやすいトータルフットボールの効果を一つ上げておこう」

森崎「分かりやすい効果?何の事だ?」

シュナイダー「この試合全日本が中盤を捨て5バックでカウンターを狙っているのも一因だが…
ここまでのオランダのボールキープ率は80%を超えている。俺の勘での概算だが」

森崎「は…80%だと!?」



三杉「恐れ入ったよ。戦慄を禁じえない…これがトータルフットボールか」

クライフォート「そうだ。俺達は全てを支配する側、お前達が全てを支配される側だ」

391 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 08:43:10 ID:YCluU3WS
いったんここまで。

トータルフットボールは定義、描写ともに難しく
ゲームシステムに組み込むのは尚難しいので
色々と突っ込み所があるかも知れません。
何か気になる点があったら是非指摘してください。

392 :創る名無しに見る名無し:2010/03/27(土) 13:59:19 ID:Uh9VNwqE
フライハイトの解説が格好いいぜ!

なんとなくこのオランダユースのは、クライフがいた時のそれより現実的なトータルフットボールだと思いました。

クライフ+優秀なオールラウンダー9人も揃えられねえよ。だから出来る範囲で実現しようぜって感じで。

393 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 17:24:55 ID:YCluU3WS
全日本ユースのメンバーだけでなく観客もトータルフットボールの恐ろしさに気付くのにそう時間はかからなかった。

観客「お、おいどうなってるんだよ…」「試合が始まってからずーっと攻められっぱなしじゃないか!」
「それどころかさっきのキックオフの時しか相手側に入ってないぞ!」「コラー真面目にやれ全日本!」

放送「前半20分、相変わらずオランダユースの猛攻が続いています!
1点奪われてから更に必死に守る全日本ですが反撃にチャンスがまるで巡ってきません!」

葵「くそっ!なんで攻撃できないんだよ!」

中里「何故こうもボールに触れぬ!?」

岬「セカンドボールを全部向こうに押さえられて、支配率が悲惨な事になっている…」

松山「(そ、そうか…ようやく分かった!オランダの戦い方は監督の言った通り俺の理想だったんだ!
まるで攻撃だけじゃなく守備まで常になだれ攻撃をしているみたいな、流れる様な
全員攻撃と全員守備の実現!特定のエースに頼るんじゃない、チームとしての強さ!
俺がふらので挑戦し続け、遂に実現出来なかったサッカーが敵として現れるなんて…!)」

流れを掴まれるどころの話ではない、完全に防戦一方にされると言う体験に
全日本ユースは完全に圧倒されていた。個で劣る上に集団で更に劣る場合はどうすれば良いのか?
今の彼らに縋れる物は精々精神力位の物だった。

放送「おおっとォ!ここでまたしてもイスラスくんがボールを持った!
中央からやや左側のルートで全日本PA内への切り込みを狙う!」

イスラス「さあ俺を止めてみせろ全日本よ出来る物ならなさもなくば2点目を献上しろ!」

赤井「何言ってんだか聞き取れねーよ!この…ラップ野郎っ!」

394 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 17:25:10 ID:YCluU3WS
ズザザーッ!
バチッ!

赤井「どうよ!」

イスラス「…やれば出来るじゃないか!」

レンセンブリンク「敵を褒めるな」

放送「赤井くんがなんとかこぼしボールはファーサイドへ!
高い弾にレンセンブリンクくん早田くん次藤くんが群がる!」

早田「二人がかりだ!」

次藤「これならいけ…」

バッ!バッ!バッ!
ビシィッ!

早田・次藤『な、なにィ!?』

レンセンブリンク「甘すぎる」

放送「レンセンブリンクくん凄いポストプレイ!早田くんと次藤くんをまるで
寄せ付けずにボールを逆サイドのカイザーくんに折り返しました!」

カイザー「よっしゃーっ!頂きィ!」

バッ!

放送「カイザーくんこれをジャンピングボレーに行くっ!まずいまずいまずい!!」

395 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 17:25:31 ID:YCluU3WS
中山「そうはさせん!援護するぞ若島津!」

若島津「分かっている!キェエエエエエエエエエエッ!!」

バッ!バッ!
グワアアアッ!!

ガキィイイイイイン!!

カイザー「く…ぉおおおおおお!?」
中山「(若島津が押し切れない…!見かけによらずなんてパワーだ!)」
若島津「(日向さん並だ…いかん、クリアしきれない!)」

バァーーーーン!!

クリスマン「チャンスだ!」

クルッ!
バッ!

放送「若島津くんの浴びせ蹴り!ボールは更に宙を舞い…ああ〜っとォ、
これに更にクリスマンくんがオーバーヘッドに行く!全日本のゴールは空っぽだ!!」

若島津「あーーーっ!?」

バシュウウウッ!

石崎「くそったれーっ!ちゃんとクリアしとけよ!」

バッ!
バゴォオオオオオッ!!

396 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 17:25:46 ID:YCluU3WS
石崎「ぶふぅえあああっ!!」

クリスマン「なにィ!」

ポーン…
パシッ。
ズザザーッ!

レンセンブリンク「!」

早田「ハー、ハー…ざまあ見やがれ!」

放送「だが石崎くんが間一髪顔面ブロック!ボールはPA外に跳ね返されました!
これを更にレンセンブリンクくんが拾い…早田くんが即タックルで奪った!
目まぐるしいゴール前の攻防を全日本ユースがかろうじて守りきりました!」

ザワザワザワ…

観客「あ、あっぶねぇえええ!!」「今の本当にヤバ過ぎたぞ…」「もっと安心させてくれよ〜!」

クラマー「(気力で止められたか。まあ良かろう)」

見上「(今のはなんとか持ち堪えたが…次を防げる保障など何処にも無いな)」



森崎「(…心臓に悪いぜ。ったく、若島津の野郎もう少しマシな守りが出来ないのか。
それに三杉も三杉だ、いい加減反撃しとかないと守りきれなくなっちまう…お?)」

397 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 17:26:02 ID:YCluU3WS
全日本ユースは猛攻に次ぐ猛攻に晒され続けていたが前半半ばのゴール前での
ダイレクトプレーの嵐をなんとか耐え切った事によりようやく反撃のチャンスを掴んだ。
それはついに成功した葵の右サイドアタックから始まった。

葵「うりゃ〜!富士山大爆発〜!」

バコーン!
ダダダッ!

オーゴ「うわっ!?」

前方頭上に大きくボールを蹴り上げ、後はダッシュ力に任せて振り切る。
葵は自ら編み出したドリブルテクニック”富士山大爆発”で
オランダのサイドバックを突破し、やっとの思いでオランダサイドに駆け込んだ。

ディック「お、中々良いドリブルじゃないか。当たりに行くか?」

リブタ「いや、結構すばしっこい奴だ。ここはゴール前に戻ろう」

ドールマン「ようやくか。ヒマ過ぎて寝ちまいそうだったぜ」

政夫「(こいつら…完全に見下しやがって!)」

和夫「(後悔させてやる!)」

ただオランダ側は少しも慌てず冷静に戦線を下げ守りに移った。
当然全日本の選手達はそれを気に入る訳が無く、
やっと巡ってきたチャンスを全力で叩き込んでやろうと意気込む。

398 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 17:26:21 ID:YCluU3WS
放送「おおっと!やっと、やっと日本のシュートチャンスが生まれそうです!
葵くんが必死に右サイドライン際を駆け上がりセンタリングを狙いに行く!
立花兄弟は既にPA内、三杉くんもフォローの構え!これは行けるか!?」

ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

観客「やっとだ!待ちくたびれたぜ!」「そろそろ同点にしてくれよ!」「ここで一気に決めるんだ!」

森崎「行けるか…!なあ、相手のDFとGKはどんな奴らなんだ?」

シュナイダー「ディック、リブタ、ドールマン。3人とも一級の選手達だ。悪いがあの…
タチバナだったか?双子の選手達ではゴールを奪えるとは思えん。かく乱が精々だろう」

森崎「そうかい…お前の見立てなら多分当たるだろうな…」

しかし全日本ユースにとっては不幸な事に、シュナイダーの判断通り立花兄弟では役不足だった。

葵「お願いします立花さん達!」

バシュウン!

政夫・和夫『おう!行くぜ、俺達の空中技!!』

ダダダダダッ!
ババッ!
ガィイイイイン!!

放送「葵くんの高いセンタリング!そして…出た出た出たァ!立花兄弟の大技!」

ドールマン「おおおっ!?」

399 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 17:26:42 ID:YCluU3WS
政夫・和夫『デルタツインシュートだァ!!』

バッグワァアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

リブタ「うおっ!?」

チッ…

ディック「こ、これは!」

チッ…

ドールマン「…こ、ここだっ!」

バッ!
バコォン!
ヒューン…
ポサッ…

クライフォート「(やれやれ、大道芸もあそこまで行くと流石に最初の一回限りは驚かざるを得んか。)」

政夫・和夫『…くそおっ!』

立花兄弟の大技、デルタツインシュートはその奇抜さからオランダの守備陣を驚かせる事には成功したが
DF達に威力を弱められた末にGKに真上に弾かれ、ゴールにはならなかった。

放送「デルタツインシュート…決まらず!GKのドールマンくんがかろうじてパンチングに成功し
ボールはゴールネット上部にゆっくりと着地しました!得点はならず、しかし全日本のCKです!」

400 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/27(土) 17:32:52 ID:YCluU3WS
いったんここまで。

>>392
ユース代表とフル代表じゃ選べる選手の数が違いますからねえ…
ピエールみたいなのが10人居れば究極のトータルフットボールば実現できるかも知れませんが。

401 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/28(日) 17:10:40 ID:4lF08ZKu
得点直前まで行ったデルタツインシュートは様々な反応を呼び起こした。

観客「惜しい〜〜〜っ!!」「大丈夫だ、通じるって事だ!もう一回撃てーっ!」

観客は今までの鬱憤が晴れる予感に大喜びで騒ぎ出した。

全日本メンバー「(いける…!)」「(コーナーキックだ!このチャンスは絶対物にする!)」

全日本の選手達はようやく攻撃出来た実感で興奮した。



パチパチパチパチ!

クライフォート「ハッハッハッハッ!これは良い!素晴らしいショーだ、尊敬するぞ全日本!
これが日本に伝わる伝統芸”サルマワシ”か!一度に二匹も躍らせてみせるなんて豪華じゃないか!」



全日本メンバー『な…なにィ!?』

ドタッ!
ゴロゴロゴロゴロ…

カイザー「なんだあれ!なんだあれ!面白すぎるぜ畜生!」

ドールマン「ブハハハハ!あまりに面白すぎて思わずゴールさせてあげたくなったぞこの野郎!」

そしてオランダユースは…爆笑した。盛大に拍手しながら高笑いをしてみせた
クライフォートの後に続くかの様にカイザーとドールマンが腹を抱えて地面を転がる。

402 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/28(日) 17:11:23 ID:4lF08ZKu
政夫「ギギーッ!(てめえら笑うんじゃねえ!)」

和夫「ギャッギャッ!(ぎりぎり防いだだけのクセして!)」

レンセンブリンク「ブフォッ!」

イスラス「くくくくく…い、いかん。真剣勝負の場で笑うなど無礼の極み…」

クリスマン「いや、これは笑って欲しいんだろう!わざわざ猿の鳴き真似までしているし!」

ディック「ガハハハハハ!こんなに笑えるなんて、日本に来て良かったぜ!」

リブタ「もう一回!もう一回やってみせてくれ!アンコールを頼む!」

激昂した立花兄弟が思わず猿言語で叫びだすといよいよオランダユースの面々はあからさまに笑い出した。
ある者は吹き出して口を押さえ、またある者は拳で地面を何度も叩いて喜ぶその様は
観客席からでも分かる程の爆笑ぶりであり、そこに焦りや危機感は全く無かった。

観客「あ、あれ?あいつら…笑ってるぞ?」「そりゃあまあ、立花兄弟のあれは笑えるかも知れんが…」
「傍目から見ているんならともかく、あいつら当事者だろ?」「もう一度撃たれたら入るかも知れないんだぞ?なんかムカつくな」

放送「こ、ここでオランダユースが笑い出しました。どうやら立花兄弟のデルタツインシュートを見て
大喜びしている様です。え〜、確かにサッカーの常識に捕らわれないスペクタクルなプレイなので無理も無いでしょう」

森崎「あ〜あ、笑われてやんの。あの二人の技じゃ珍しい事じゃねえが」

シュナイダー「確かにアレは非常識だからな…」

フライハイト「妙な技だな…だがオランダを警戒させられる程の物ではない」

403 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/28(日) 17:11:51 ID:4lF08ZKu
オランダユースの態度は当然観客と実況の戸惑いを買い、それ以上に全日本ユースを怒らせた。

早田「てめえら笑ってんじゃねえ!」

中山「反則じゃない限りどんな技でも技は技だ!失礼だと思わないのか!」

石崎「そうだそうだ!もしゴールされていたら笑えなかったクセによ!」

葵「ムカつくーっ!もっとマジメにやれよ!」

バッ。

三杉「…皆、落ち着け」

全日本メンバー『三杉!』

三杉「ここは彼らのリクエスト通り低い浮き球でデルタツインシュートのアンコールと行こう。
それで同点弾を奪えば彼らはもう二度と笑えなくなるさ」

全日本メンバー『おう!!』

次藤「(ん?三杉の奴が怒っちょるっちゃ珍しかのう)」

乱闘すら起きかねない程の形相で迫ってもニヤニヤし続けるオランダユースの面々には
三杉すら怒りを隠さなかったが、それでも彼はチームメイトを抑えCKに向けた指示を出した。
オロオロし始めていた審判もこれ幸いと位置につく事を両陣に促しようやく試合が再開される。

三杉「次藤、キッカーは君に頼む。葵はシュート要員になってくれ」

葵「はい!」

次藤「ワシか?まあ良かね(こいつ、ひょっとして…)」

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