キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】
1 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/07/25(水) 23:41:56 ID:bpgysf+M
本作は恋愛SLG『みつめてナイト』を基にした二次創作です。
騎士の時代が終わりつつある南欧は架空の小国、ドルファン王国。
戦火の迫るこの国に傭兵として降り立った東洋人、森崎有三の体験する
波乱万丈の三年間を描きます。
716 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/21(金) 12:17:25 ID:???
***
スペード・ハート・ダイヤ→ 「一回だけよ」ゴーサイン。
「やった!」
「ありがとうございます、クレアさん。ご面倒かけちまって……」
「いいえ。こういうのは、変に抑えると隠れてでもやりたくなってしまうものですから。ね?」
「はは……」
にっこりと笑顔を向けられ、気まずそうに頬を掻くレズリー。
そんなレズリーに、背後に立った森崎が言う。
「じゃ、勝っても負けても恨みっこなし。ズルズル続けるのもなし。いいな?」
「わーかってるって、もう! うるさいなあ」
小言のように念を押す森崎に煩わしげに手を振ると、レズリーが卓に身を乗り出す。
尻尾があればぶんぶんと勢い良く振り回されていそうなその様子に苦笑したクレアが、
しかし一瞬で営業用の微笑以外を表情から消すと、カードデッキを手に取って構える。
「では、始めます」
こうして、レズリーのギャンブル初体験が開始されたのだったが―――
717 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/21(金) 12:18:48 ID:6SH/EfKY
*ドロー
ビギナーズ……? → ! card
※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。
結果によって展開が分岐します。
スペード・ハート→ 「楽しいな、これ!」 ビギナーズラック炸裂! 勝ったレズリーは喜んでいる。
ダイヤ・クラブ→ 「も、もう一回だ!」 負けて思いっきり熱くなっている……。
JOKER→ 「……もうチップ置く場所ないんだけど」 女賭博師の誕生である。
718 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/21(金) 12:21:24 ID:???
ビギナーズ……? →
ダイヤ9
719 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/21(金) 12:27:36 ID:???
【リドロー】
ビギナーズ……? →
クラブ10
720 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/21(金) 12:29:17 ID:???
たいして重要では、ない気もするんですが。
721 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/21(金) 14:16:53 ID:???
>>720
はい、レズリーの性格付けに若干の影響はしますが、展開に大きく関わるわけではありませんね。
***
ハート・ダイヤ・クラブ→ 「も、もう一回だ!」 負けて熱くなっている……。
「―――クラブの10。……バーストですね」
最終ゲーム、ラストコールである。
残った全額を賭けての勝負が失敗に終わったことを告げる、破滅の鐘であった。
「そんな……」
「まあ、負けるときはこんなもんだ。気が済んだろ」
羅紗の引かれた緑色の卓の上、呆然とカードを見つめるレズリーに肩をすくめる森崎。
しかし、レズリーは立ち上がろうとしない。
ふるふると震えたかと思うと、決然と顔を上げ、叫ぶように言う。
「……も、もう一回! もう一回、勝負だ!」
「おい、レズリー!」
念を押したはずの約束をあっさりと破られ、思わず声を荒げる森崎を抑えたのは、
卓を挟んだクレアがちらりと向けた視線である。
口を噤んだ森崎に代わるようにレズリーを見つめるクレア。
真正面からの目に怯みながら、しかしレズリーが縋るように口を開いた。
「な、なあ……頼むよ、負けっぱなしじゃ悔しいんだ。もう一度だけ、」
「ふふ、いけません」
優しい口調の、しかしレズリーの懇願を断ち切るような、きっぱりとした即答。
722 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/21(金) 14:17:54 ID:???
「……」
「……ですよね」
不満気に口を尖らせたレズリーだったが、しかしそれ以上は食い下がろうとしない。
子供の駄々をどう片付けたものかと思案していた森崎が、ほっと胸を撫で下ろす。
森崎一人の説得であれば強い反発が返ってきたかもしれなかったが、クレアという人物には
こういうとき、ある種の強制力とでもいうべきものが備わっているようだった。
「つーか、もうすぐ日が暮れちまうぜ」
「え……そんな時間?」
この機を逃してなるかとばかりに帰り支度を促す森崎に、レズリーが目を丸くする。
窓のない半地下の店内では外の明るさが分からず、定期的に刻限を知らせる鐘の音も聞こえない。
自然、時間間隔も曖昧になってくるのだった。
「そうね。そろそろ、夜の仕込みが終わる頃じゃないかしら」
「だってよ……って、」
クレアが頷くのに振り返る森崎を迎えたのは、少女の上目遣いである。
「……もう、帰んなきゃダメか?」
一瞬、森崎が息を呑む。
僅かに頬を染めて眦を下げ、哀願するように言うその姿態は、おそらくは無意識のうちに
行なっているものであったろうが、驚くほど効果的に女というものを使いこなしている。
「お前なあ……」
媚態、と言い表されるであろう少女の表情に、盛大なため息を漏らす森崎。
723 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/21(金) 14:18:54 ID:???
「今、俺がどんな風にその台詞を受け取ったか知ったら、きっと激怒するんだろうな」
「……?」
言われたレズリーはといえば、やはり意味を取りかねているらしい。
怪訝そうな顔をするばかりであった。
「―――モリサキさん」
そんな二人の間にすう、と滲むような声は、クレアである。
心臓を爪の先で引っかかれるような悪寒に、森崎が飛び上がって返事をする。
「は、はいっ!?」
「きちんと、お家まで送ってあげて下さいね」
肯定をのみ要求する、それは絶対者の微笑である。
森崎の背筋を、冷や汗が垂れ落ちる。
「は、はは……はい、勿論ですって」
「お願いね」
引きつった顔で何度も頷く森崎に、クレアから無言の威圧感が引いていく。
「……また、改めてご挨拶にでも伺いますんで」
「そんな、気にしないでいいのよ。お仕事、頑張って下さいね」
「はい」
迷いなく、頷く。
それは取りも直さず、ヤング・マジョラムの後継者として隊を率いていくということである。
一縷の躊躇も許されない問いと、答えであった。
724 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/21(金) 14:19:55 ID:???
「それじゃ……。ほら、帰るぞ」
頭を下げた森崎が、レズリーを促すと少し離れたカウンターの向こうに声をかける。
「勘定、頼むわ」
「かしこまりました。……こちらになります」
間髪を入れず歩み寄ってきた店主が、森崎に伝票を渡す。
その末尾に記された数字を見た森崎が、
「げ」
一瞬、絶句した。
その様子に、森崎の手元を覗き込もうとするレズリー。
「……いくらだったんだい?」
「いや、まあ……気にすんな」
咄嗟に紙片を裏返す森崎に、レズリーが口を尖らせる。
「隠すことないじゃないか」
「痩せ我慢したがってる男には、させておいてやるもんだぜ」
「何だい、それ」
眉根を寄せるレズリーに、森崎が一度首を振ると、改めて退店を促す。
「いいから。ほら、先に出てな」
「あ、こら、押すなって! もう、分かったから!」
「……ふぅ」
どうにかレズリーを扉の外に追いやると、森崎が疲れきったように肩を落として店主へと向き直った。
725 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/21(金) 14:20:56 ID:???
「これで、足りるかい」
腰に下げた、財布代わりの革袋から十数枚の銀貨を取り出すと、
店主の恭しく掲げる皿へと並べてみせる森崎。
「……はい、承ります。ありがとうございました」
「さっきの勝ち分がすっ飛んで、まだこれかよ。とほほ……」
銀貨の種類と枚数を瞬時に見分け、深々と頭を下げる店主に背を向けると、森崎が力なく
片手を振って扉の方へと歩み出す。
「またご贔屓に」
背にかけられる店主の声は、軽くなった財布を安々と突き抜けて森崎の精神に突き刺さる。
押し出されるように、ため息が漏れた。
(……けど、まあ)
しかし、と。
重厚な扉を押し開けて、隙間から流れ込んでくる夏の夜の匂いを感じながら、
森崎は階上できっと不機嫌そうな顔をしているであろう少女を思い浮かべる。
今日という一日。
これまでとは違う、様々な表情を見せたレズリーという少女。
その代価としては、この出費も決して高くはないのかもしれない。
そんな風に、森崎は思うのだった。
『overreach yourself』(了)
.
726 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/21(金) 14:25:02 ID:???
*D26.9月
フレーバーテキスト選択
*ドロー
今月の巻頭特集は → ! card
スペード→ 情報「ダナン造反疑惑」
ハート→ 日常「燐光石と悪代官」
ダイヤ→ 情報「ヴァン=トルキア継承戦争」
クラブ→ 歴史「ハンガリア革命」
JOKER→ 視点「老婦人の憂鬱」
※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。
このドローでの分岐は順不同です。JOKERを除いてカード序列による有利・不利は特にありません。
******
といったところで、一旦ここまでの更新とさせていただきます。
9月の訓練所イベントでは兵数補充と、そして皆様から案を頂いた追加ネームドキャラが登場します。
それではまた、次回更新にて。
727 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/09/21(金) 14:53:48 ID:???
今月の巻頭特集は →
クラブ3
久しぶりに選択肢JOKERを拝みたいのう
728 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 18:03:32 ID:???
>>727
せっかく用意したものですし、いつか陽の目を見てほしいですねw
******
◎ハンガリア革命
ハンガリア共和国は新興国家である。
革命によって王政を打破し、議会共和制を敷いた。
旧国名をボルキア王国という。
このボルキア王国、人口で多数を占めていたのはハンガリア人であったが、
支配階層にあったのはボルキア人であった。
ボルキア人とはハンガリア人と祖を一にしながら、かつて北西熱帯圏に覇を唱えた
アマーズィーグ人の血脈を受け継ぐ人種である。
彼らは血統による貴族主義を貫き、長らく多数派のハンガリア人を支配した。
しかし近年、同じ南欧のゲルタニアで成功した市民革命を目の当たりにすることにより、
不遇をかこっていたハンガリア人には革命への火種が燻っていた。
きっかけとなったのは、テロリズムである。
ボルキア王都ナオネトで起きた、政府施設連続爆破事件。
犯行声明はなく、動機も犯人もいまだ杳として知れぬその事件で、一人の男が死んだ。
フェルナンド・E・ルシタン。
ボルキア王国皇太子、次期国王となるはずであった青年である。
国王を筆頭とするボルキア人支配層はこれを当然の如くハンガリア人によるものと断定した。
報復は、苛烈であった。
国内で左派とされていた組織の関係者、ハンガリア系の文化人、知識層が軒並み検挙され、
相次いで壮絶な獄死を遂げた。
そうしてこれが、結果的にボルキア王国の致命傷となる。
ハンガリア人の怒りに火がついたのである。
革命戦争が、始まった。
729 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 18:04:34 ID:???
国軍士官の四分の一、下士官の半数強、兵卒に至っては八割を占めるハンガリア人が
雪崩をうって革命軍に参加した。
膨大な兵力差に焦りを覚えた王権派は隣国に救援を要請したものの、先のゲルタニア革命戦争への
介入失敗で手痛い打撃を受けたプロキアはこれを無視。
同じく介入に失敗し、加えてボルキアとは西洋圏−マルタギニア交易の中継点として
鎬を削っていたドルファンもまた、国内安定を優先するとの名目で出兵を拒絶する。
このとき港の実権を握っていた富裕商人層の多くはボルキア系であり、ハンガリア系商人は
その傘下に過ぎなかった。
ドルファンの介入を操作したのは、このハンガリア系商人である。
彼らは、革命政権が成立した暁には銀の輸入に高率の関税を設定するとドルファンに打診した。
事実上、西洋圏航路からの全面撤退宣言である。
これにドルファン海運局交易顧問、ベイラム・オーリマンが呼応。
王室会議に強く働きかけ、遂に出兵拒否に漕ぎ着けたのであった。
王権派は残る隣国ヴァン=トルキアに望みを託すものの、地域領主による自治意識の強い
ヴァン=トルキアの足並みは一向に揃わなかった。
西部諸侯は旧来よりボルキア王国との地縁・血縁による関係が深く、救援要請に対して
即時の出兵を主張したが、財政上の問題から軍事行動を倦厭する東部諸侯は対応を留保。
ようやく連合議会での採決に持ち込まれたのが王都ナオネト陥落の前日という有様であった。
ナオネト陥落の翌週、革命軍の拠点ボルドーを新たな首都としてハンガリア暫定政府が発足。
国王以下、王位継承権十七位までの男子は処刑台の露と消えた。
暫定政府は亡命に成功した一部貴族の引渡しを周辺諸国へ求めたものの、これは悉く拒絶される。
南欧の慣習法上、血縁関係にある貴族を見捨てることは領有地の所有権を放棄するに等しいと
一般的に考えられており、引渡しの拒絶は無理からぬことであった。
730 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 18:05:47 ID:???
またこのとき、爵位を持たぬ中流ボルキア人の多くが迫害を恐れ、難民として大量に
ドルファンやヴァン=トルキアへ流入したため、無数の摩擦を引き起こしている。
このボルキア難民による混乱は南欧諸国、特にドルファン王室会議においては
アレルギーとなって尾を引き、後に新たな、そして大きな社会問題の引き金となった。
(※歴史『ハンガリア革命戦争』がオープンされました)
******
731 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 18:06:47 ID:???
*D26.9 「気のいい一級ギャンブラー」森崎有三
訓練所イベント
ドルファン陸軍第一総合訓練所、運動場。
ただの荒野と呼ぶより他にないそこに、三百に近い数の男たちが集っている。
人種も外見も統一感のない彼らこそが、外国人傭兵大隊であった。
「総員二百八十九名、揃っている」
傍らに立つトニーニョが灰色の瞳で言うのへ頷いて、森崎有三が眼前の男たちを見回す。
すう、と息を吸うと、
「―――地獄へようこそ、新入りどもォ!!」
腹の底から、声を出した。
「俺は隊長のユーゾー・モリサキ! 明日には聞くのも嫌になる名前だ、よォく覚えとけ!」
言って、前列に立った男たちを睨みつける森崎。
どよめき、互いに目を見合わせる者。
果敢に睨み返してくる者。
我関せずと視線すら動かさない者も、中にはいた。
『うわー、見事にバラッバラ……使えなそーだね』
くるりと森崎の頭上を回ったピコが呆れたように漏らすのを、森崎は内心だけで首肯する。
732 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 18:07:48 ID:???
『……ま、もっとも、キミたちもちょっと前まではこんなもんだったけどさ』
散々な言われようの面々は、この九月に新規入隊を遂げた傭兵たちである。
その数、五十。
軍馬と共に編成部が調達した、補充要員であった。
『確か、三ヶ月に一度はこうやって補充されるって話だったけど……。
このままじゃ、数合わせにしかなんないね。ビッシビシ鍛えてやんないと!』
むん、と小枝のような腕に爪の先ほどの力こぶを作ってみせる相棒は、
無論のこと実際の訓練で何をするでもない。
数百の耳目が集まる中、呆れた顔を表には出さないように気をつけながら、
森崎が通り一遍の説明と恫喝を終える。
(さて、この中で使えそうなのは……っと)
居並ぶ男たちをざっと見渡す森崎の目が、一人の男に吸い寄せられた。
ほとんどがゴロツキ同然の荒くれ者どもの中、その男だけが異彩を放っている。
「アイツは……?」
733 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 18:08:52 ID:ULGpoErA
*ドロー
戦える男、出てこいや! → ! card
スペード→ 小柄だが、がっしりとした体型の男だ。なぜか楊枝を咥えている。
ハート→ 静かに佇む青年だ。しかし淡い金髪の下から覗く目は氷のように冷たい……。
ダイヤ→ 老境に達しつつある古強者のようだ。濃い色眼鏡で表情は見えない。
クラブ→ 凄まじい巨漢だ! アラブ系のようだが、頭のアレは……髷か?
JOKER→ 上記よりランダムで二名!
※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。
このドローでの分岐は順不同です。JOKERを除いてカード序列による有利・不利は特にありません。
734 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/09/24(月) 18:09:44 ID:???
戦える男、出てこいや! →
JOKER
カルツと・・あと誰だっけ(おい
735 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/24(月) 18:10:59 ID:???
JOKER出たね。
736 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/09/24(月) 18:18:31 ID:???
行った先から拝んじゃったねえ。
737 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 18:20:26 ID:???
>>734
なんという引きの強さ……!
いや感服いたしました、CP2を進呈いたします。
ちなみに他はレヴィン、見上、バルカンとなっております。
>>735
驚きましたw
そんなわけで、改めて「二人」を選んでいただくことになりますね。
*ドロー
★
戦える男一人目、出てこいや! → ! card
★
★
戦える男二人目、出てこいや! → ! card
★
スペード→ 小柄だが、がっしりとした体型の男だ。なぜか楊枝を咥えている。
ハート→ 静かに佇む青年だ。しかし淡い金髪の下から覗く目は氷のように冷たい……。
ダイヤ→ 老境に達しつつある古強者のようだ。濃い色眼鏡で表情は見えない。
クラブ→ 凄まじい巨漢だ! アラブ系のようだが、頭のアレは……髷か?
JOKER→ 更に一名追加! 難易度調整にGMが泣くぞ!
※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。
二人目で同じスートが出た場合は引き直して下さい。
このドローでの分岐は順不同です。JOKERを除いてカード序列による有利・不利は特にありません。
738 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/09/24(月) 18:22:16 ID:???
★
戦える男一人目、出てこいや! →
スペード7
★
じゃあおかわりで(おい
739 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/24(月) 18:24:26 ID:???
★
戦える男二人目、出てこいや! →
スペード6
★
740 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/24(月) 18:27:32 ID:???
★
戦える男二人目、出てこいや! →
ハート4
★
741 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 18:44:07 ID:???
ドローありがとうございます。
おかわりがなくて安心しましたw
カルツとレヴィンに決定したところで、一旦ここまでとさせていただきます。
それではまた後ほど。
742 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/24(月) 20:28:54 ID:???
騎馬の補充も50ですかね?
743 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 20:52:28 ID:???
>>742
はい、システム的にはこの後で表記されますが、兵数・騎馬数とも50ずつ増加しています。
但し新兵の加入によって部隊練度が15下がり、現在値は15となっています。
744 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 23:39:37 ID:???
***
JOKER→ 上記よりランダムで二名!
スペード→ 小柄だが、がっしりとした体型の男だ。なぜか楊枝を咥えている。
ハート→ 静かに佇む青年だ。しかし淡い金髪の下から覗く目は氷のように冷たい……。
「アイツは……?」
森崎がまず目をつけたのは、頑丈そうな体躯を持った男である。
金髪を短い角刈りにしたその男は背丈こそ決して大きくはなかったが、
分厚い胸板と盛り上がった肩は十二分に存在感を発揮している。
この訓練所に来てまで素浪人のように楊枝を咥えているのが不気味といえば不気味であったが、
何らかのジンクスを頑なに守り続けるのは戦場に立つ者には珍しくない。
この男にとっての楊枝もその類であろうと無理やりに自分を納得させた森崎がふと気づく。
(あの角刈りの陰……何だ? 嫌な気配がする……)
それは、微かな悪寒である。
風に撫でられた肌の、ほんの一瞬だけ粟立つような怖気。
その元を辿ると、そこには一人の青年がいる。
一見、何の変哲もない細身の青年だ。
人形のように端正な、感情の起伏の薄そうな顔立ち。
森崎の恫喝じみた挨拶を聞いていたのかいないのか、伏し目がちに立ち尽くすその姿は
学究の徒を名乗っても違和感がない。
故に、森崎も一度はその青年を見過ごしていた。
しかし、
『……怖い目、だね』
(間違いない。アイツだ、今の……殺気の主は)
745 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 23:40:39 ID:???
ふわりと、肩に舞い降りたピコが言う。
ひとたび気がついてしまえば物憂げな表情の奥、瞳の底に燃える青白い鬼火を見誤ることはない。
それは、何かを捨てた者の目だ。
決して捨ててはならぬ何かを捨ててしまった者にぽっかりと空いた、虚だった。
「アイツ、は……」
「―――ステファン・レヴィン、そ、それから……ヘルマン・カルツ、ですね。
レヴィンはスウェーデン出身、前歴不詳。カルツはオースティニア出身、傭兵としての経験は豊富、
と身上書にはあります」
「うお!?」
思わず声に出した森崎の呟きに、即答を返す者がいた。
青年の方を凝視していた森崎が驚いて声の方へと視線を移す。
「ん? トニーニョ……な、わけねえか」
「……どういう意味かは聞かないでおく。モリサキ、お前に用があるそうだ」
いつもの仏頂面に、更に数本の皺を増やして言うトニーニョの後ろ。
小さな、人影があった。
「ん? お前は……」
『どこから迷い込んだ子?』
森崎が危ういところで飲み込んだ言葉を、ピコが容赦なく吐き出す。
誰にも聞こえないのが救いであった。
一歩進み出たそれは、ほとんど少年である。
僅かに潤んだ、大きな栃色の瞳。
あどけない表情に、やわからそうな頬。
さらりとした栗毛が、初秋の風に揺れた。
しかし彼が外見そのままの少年でないことは、その服装が物語っている。
746 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 23:42:04 ID:???
『……軍服?』
墨染の黒は、ドルファン陸軍制式の略装である。
戦時の強制徴募を除けばドルファンに少年兵は存在せず、またそういった兵に貸与されるのは
せいぜいが安物の胴丸と盾、長槍だけであった。
個別の略装など与えられるはずもない。
ならばその黒装を纏う以上は満年齢にして十八を越えている。
男子であれば、少年とは既に呼べぬ歳である。
「何だ、ルーカス大佐の使いか?」
「あ、いえ、失礼いたしました!」
怪訝そうに軍装を見やる森崎に、慌てて姿勢を正す青年。
「本日付けで外国人傭兵大隊に配属となりました、か、カイル・マクライオンと申します!
大佐からは、た、隊長の補佐として、事務関連を担当するよう仰せつかっています!」
頬を紅潮させながら述べるその姿は、軍務よりも丁稚奉公がよく似合う。
『手代さんにもまだちょっと早そうだね』
「……あー、大佐の言ってた補佐役か。やっと来たんだな」
執務机を埋め尽くす書類の山と陽子の売り込み攻勢を思い出してげんなりとした顔をする森崎。
その表情を不満と捉えたか、カイルと名乗った青年はひどく萎縮したように、言う。
傍から見れば、素浪人が小僧に絡んでいるような絵面である。
「す、すみません! 色々と事前に知っておかなきゃいけないことが多くて、
た、大佐のところで手ほどきを受けていまして、それで……」
「それで、配属が遅れたってか」
森崎にしてみれば、単なる事実確認である。
しかしカイルはどうやらそれを譴責と受け取めたようで、ほとんど泣きそうな顔になりながら、続ける
747 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 23:43:09 ID:???
「も、申し開きの言葉もありません……。で、ですが、傭兵の中にはあまり、
こういう仕事のできる人がいないらしくって……、それで僕が、あの、僕、故郷では
商売の手伝いなんかもしていまして、」
『あ、本当に丁稚どんだったんだ』
しどろもどろに釈明を試みるカイルに、頭上で呑気にピコが言う。
ふと気付いたように、森崎がカイルへと尋ねる。
「故郷で商売……ってーとお前、もしかして軍部の人間じゃないのか?」
「は、はい、僕も傭兵です、隊長!」
「何だ、そうかよ。ならその軍服は……」
『掠めてきたとかだったら、ちょっと驚くよね。―――ひゃあっ』
茶々を入れるピコを無言で払いのけると、森崎が促す。
「あ、あの、僕は職務上、向こうの軍令部にも出入りしなきゃいけないので それで大佐から、
特別に制服を支給されて……」
「ああ、軍令部は王城の隅っこだもんな。平服じゃ色々マズいか」
「は、はい。隊長くらい有名な方なら、構わないんでしょうけど……」
「いや、結構じろじろ睨まれるぜ。正直、あんまり顔出したくない場所だ」
隊長就任以来、顔合わせなどを行うために幾度か足を運んだ記憶を思い起こす森崎。
正門は文字通りの門前払い、物資搬入の勝手口へ通され、白眼視と嘲笑を浴びながら
狭く汚れた通路を行き来したのは良い思い出ではない。
748 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 23:44:14 ID:???
「まあ、普段着で行っちまったからなあ……」
「あの、隊長……隊長にも、士官用の礼装と略装、用意されているはずなんですが……」
「へ」
「え……?」
目を丸くする森崎と、その反応にやはり大きな瞳を見開くカイル。
「は、はは……」
「あは、あはは……」
カイルの愛想笑いは、見事に乾ききっている。
膨大な仕事量がその双肩にのしかかりつつあることを、早くも悟ったようだった。
※兵数が50、騎馬数が50増加しました。
部隊練度が15低下しました。
749 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 23:45:15 ID:???
******
『ヘルマン・カルツ』『ステファン・レヴィン』が傭兵団に加入しました。
所持スキルはそれぞれ以下の通りです。
カルツ:針鼠Lv1
効果:
使用ターン、所属部隊の防御ダメージを80%とし、本来受けるはずのダメージの20%を
相手に反射する。
レヴィン:破壊Lv1
効果:
使用ターン、所属部隊の攻撃で発生した死亡判定について、目標値を+10する。
******
『カイル・マクライオン』が傭兵団に加入しました。
このキャラクターは戦場に出撃しません。
******
750 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 23:46:16 ID:???
*D26.9月
訓練選択
『今月は何をするの?』
森崎有三
称号:気のいい一級ギャンブラー
個人パラメータ
現在のガッツ:135
剣術:68 馬術:66 体術:62 魅力:78 評価:69
ATK:134 DEF:140 SPD:128 ini:25
部隊パラメータ
兵数:289 騎馬:103 練度:15
所属隊員:
トニーニョ(威圧Lv2)
ネイ(鼓舞Lv1)
ジェトーリオ(撹乱Lv1)
カルツ(針鼠Lv1)
レヴィン(破壊Lv1)
751 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 23:48:04 ID:ULGpoErA
剣術・馬術・体術・魅力・礼法・墓守・休憩・部隊訓練の中から『二種類』選んで下さい。
同じ訓練を二つ選んでも構いません。
また「剣術・馬術・体術」を選んだ場合は部隊員と共同訓練が可能です。
誰と訓練をするのかも付記して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願い致します。
期限は『9/25 23:00』です。
******
コピペミスで句点が抜けてしまってああ恥ずかしい、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。
752 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/24(月) 23:53:21 ID:ULGpoErA
>>751
訂正です。
選べる行動選択肢に『陳情』が抜けていました。
申し訳ありません。
陳情については
>>412
をご覧下さいませ。
753 :
Q513
◆RZdXGG2sGw
:2012/09/25(火) 18:10:07 ID:???
部隊訓練・休憩
部隊訓練でどれだけ上がるか把握しておきたいので
それと、ガッツは高めに保っておきたいので
754 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/25(火) 19:13:56 ID:???
体術ジュトーリオ 陳情 兵士100騎馬50の増加
体術に関しては数値が低くなってきましたし、ジュトーリオとも話がしたいです。
兵数が多い方が有利だと思いますし騎馬数も少し足りない様に思いますので陳情します。評価値25は勿体ない気もしますが。
755 :
◆9OlIjdgJmY
:2012/09/25(火) 20:49:23 ID:???
剣術 ジュトーリオ
剣術 カルツ
判定上昇スキルの恩恵&剣術大会があるかもなので。
スキル強化で兵数を補えたらなおよし、傍観者さんの神引きで固有キャラ増えましたし。
756 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/26(水) 18:09:44 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、
>>751-752
の選択については……
>>755
◆9OlIjdgJmY様の回答を採用させていただきます!
はい、夏至祭で得た『幸運の星』の効果は今月が最終月となりますので、
ばっちり稼いでおきたいですね。
収穫祭に備えて現状で一番高いパラメータである剣術が選ばれているのも
非常に効率的なプレイスタイルだと思います。
ただ残りガッツが100を切りますので、その点には注意してあげて下さいね。
>>753
訓練成功率UPと収穫祭がなければ鉄板の選択でした。
部隊練度は打撃力・スキルと戦争のかなり重要な部分に関わるパラメータですので、
計画的に上昇させたいところです。
そのためにも上昇量の把握は重要ですね。
>>754
定期供給ではまだ不足、という判断ですね。
確かに兵を100追加するだけで戦争ではだいぶ有利に、そして何より死亡判定が遠くなりますからね。
二ヶ月連続の陳情選択ということですし、ちょっとだけヒントを。
現状の政治情勢ですと、次回の戦争パートはかなり間が空いて来年の春くらい……となります。
特定のフレーバーテキスト選択でJOKERが出ると若干前後したりしなかったり……?
また騎馬も陳情されているのは意外でしたが、陳情での補充単位は100ずつとなっておりますので
それも含めて次回以降の参考にして下さいませ。
それと一点、皆様に申し上げておきたいのですが……ネイにくっついてる彼は「ジェ」トーリオですw
いえまあ、キャプ森本編とも違うキャラ付けですし、もしかしたら本名はジュトさんというまったくの別人……との
可能性も微レ存ですが、とりあえず登録名は『ジェトーリオ』となっております!
「仕方ないさ、どうせ僕、パルメイラスじゃないしね……」と拗ねてしまう前に皆様、何卒宜しくお願いいたしますw
757 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/26(水) 18:10:45 ID:AfjlHluY
******
*訓練ダイス
※訓練は前後半に分かれています。
★マークごとにお一人づつ、!と numnumの間のスペースを消してダイスを引いてください。
目標値【30】に対しプラスマイナス30以内で成功、プラス31以上で大成功、マイナス31以下で失敗となります。
大成功時は成果が1.5倍、失敗時は0.5倍となります。
★
前半(剣術 ジェトーリオ)1
! numnum + ! numnum + ! numnum =
★
前半(剣術 ジェトーリオ)2
! numnum + ! numnum + ! numnum =
★
後半(剣術 カルツ)1
! numnum + ! numnum + ! numnum =
★
後半(剣術 カルツ)2
! numnum + ! numnum + ! numnum =
★
******
758 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/26(水) 18:18:52 ID:???
★
前半(剣術 ジェトーリオ)1
49
+
61
+
33
=
★
759 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/26(水) 18:32:16 ID:???
左の数値をEP12使って61にします。
760 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/09/26(水) 19:06:43 ID:???
★
前半(剣術 ジェトーリオ)2
07
+
57
+
95
=
★
761 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/09/26(水) 19:08:45 ID:???
EP5使って真ん中の数字を62に。
762 :
◆9OlIjdgJmY
:2012/09/26(水) 19:24:48 ID:???
後半(剣術 カルツ)1
23
+
80
+
23
=
763 :
◆9OlIjdgJmY
:2012/09/26(水) 23:36:18 ID:???
後半(剣術 カルツ)2
02
+
11
+
11
=
764 :
◆9OlIjdgJmY
:2012/09/26(水) 23:41:45 ID:???
焦れて二回引いてこの出目…
なんかごめんなさい
759、761のEPを4ずつ代理消費します。
765 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/26(水) 23:48:02 ID:???
引きは仕方ないですよ。
766 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/27(木) 13:07:13 ID:???
>>759
申し訳ありません、ルール上ではEP5につき数値加減5(最低単位が5ずつ)となっておりまして、
EP15の使用で左の数値を大成功範囲の64にするということでよろしいでしょうか?
767 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/27(木) 15:15:05 ID:???
はい。結構です。
768 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/27(木) 19:34:35 ID:???
>>764
さら ◆KYCgbi9lqI様も仰っているように(ありがとうございます)、ダイスロールは時の運。
幸運の星の効果で成功扱いということで、通常時から考えれば何と2倍の効果です! と、前向きに。
******
*訓練結果
前半(剣術 ジェトーリオ)1
64 + 61 + 33 = 大成功2 成功1 失敗0
前半(剣術 ジェトーリオ)2
07 + 62 + 95 = 大成功2 成功1 失敗0
→大成功4 成功2 失敗0
後半(剣術 カルツ)1
23 + 80 + 23 = 大成功1 成功2 失敗0
後半(剣術 カルツ)2
02 + 11 + 11 = 大成功0 成功3 失敗0
→大成功1 成功5 失敗0
******
769 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/27(木) 19:35:36 ID:???
***
//剣術 ジェトーリオ
酷暑も徐々に和らぎ始めた九月のこと。
屋内鍛錬場では、いつものように森崎が剣を振るっている。
片手には円盾、上体には鉄の胸甲をつけた武装姿での稽古である。
「百二十八、百二十九、」
『今、何刻だい』
「うるさい黙れ―――百三十」
すっかり退屈して茶々を入れてくる相方を邪険に振り払いながら続ける森崎の、背後。
すう、と影から滲み出すような声が、した。
「―――やあ、モリサキ」
「うお!?」
『ひゃあ!』
何の気配もなく耳元から響いた声に、思わず抜き身の剣を持ったまま飛び上がる森崎。
反射的に手にした刃を横薙ぎに、背後へと向ける。
と、
「ちょ、待った! 僕、僕だってば!」
慌てたような声は、背後の人物である。
無抵抗を示すように両手を挙げたその焦茶色の肌の持ち主は、
「……ジェトーリオ?」
「そう、ジェトーリオくん。斬らなくても大丈夫。……だから剣、下ろしてもらえないかな」
770 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/27(木) 19:36:37 ID:???
ジョゼ・トゥーリオ。
トニーニョやネイと共に西洋圏からやってきた、傭兵大隊の一員である。
「ったく……驚かせんなよ」
『もう、びっくりするなあ!』
「僕だってまさか、練習場で味方にばっさりいかれそうになるとは思わなかったよ……」
「……スマン」
黒人特有の、ぷくりと厚い唇を尖らせるジェトーリオに森崎が頭を下げる。
「まあ、その様子だと身体はすっかりいいみたいだね」
「おかげさんでな……そういや、他の二人はどうした?」
森崎が尋ねたのは、ネイとトニーニョのことである。
この三人はいつも行動を共にしているような印象があった。
無論トニーニョが夏至祭に現れたように、実際にはそれぞれの時間というものがあるのだろうが、
それにしても常日頃からネイに文字通り密着しているジェトーリオがこうして一人でいるところは
少なくとも森崎はほとんど見かけたことがない。
「ネイくんは走り込み……の途中で見かけた女の子と遊びに行ったよ。トニーニョは知らない」
問われたジェトーリオが、さらりと答える。
ネイと共にいる時とは違い、感情の抑揚があまり感じられない口調である。
「あの野郎……」
『ていうか、絶対それを狙って外まで走りに行ったよね』
この訓練場は軍事演習用の広大な敷地を確保している。
外周を走るだけでも相当な距離で、敷地を出てまで走る必要は全くない。
そして訓練場の中には、一部の軍事務官を除いて女性というものはほとんど存在しなかった。
帰ってきたら鍛錬メニュー三倍だ、と決意する森崎が、はたと何かに気づいたように、
ジェトーリオへと問いを重ねる。
771 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/27(木) 19:37:37 ID:???
「お前はついていかなかったのか?」
「女の子、ついうっかり始末しちゃったら隊長の君に迷惑かかるけど……構わなかったかい?」
さらりとした、回答だった。
感情の起伏は、やはり薄い。
しかし、その言葉の意味はどこまでも重く、粘ついたものである。
『うわあ……』
「……」
「……」
溜息ともつかぬ声を漏らしたピコが、逃げるように屋内鍛錬場の高い天井の隅まで舞い上がる。
羽を持たぬ森崎は、ただ沈黙するより他になかった。
「……そ、そうか」
暫しの後、かろうじてそれだけを口にする森崎。
「……」
「……」
手持ち無沙汰であった。
普段はネイを挟んでいたために意識することはなかったが、二人きりになると
見事に話題が続かない。
『ねえ〜』
と、遠くから相方の声。
目線だけを動かすと、ピコが何やら身振りでジェトーリオの方を指している。
『せっかくの機会だし、普段は聞きにくいことでも聞いてみれば〜?』
(ぬ、そうだな……)
772 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/09/27(木) 19:39:15 ID:eHhfXuAk
言いながら決して近づいてこようとしないピコに眉根を寄せた森崎は―――
*選択
A 「お前……ネイとどういう関係なんだ?」 禁断の花園に切り込んだ!
B 「なあ、最近トニーニョと話したか?」 先月のこともある。それとなく……。
C 「俺が隊長って……お前はどう思ってるんだ?」 辛口の批評も覚悟するぞ。
D 「……」 まあいいか。黙々と訓練を続ける。
森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『9/28 0:00』です。
******
神秘のベールに包まれた男の秘密、その一端が明らかに!?
といったところで、早いですが本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。
773 :
◆W1prVEUMOs
:2012/09/27(木) 23:37:28 ID:DRyJxWfI
A
聞かないと始まらない
774 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/09/27(木) 23:40:44 ID:???
A二人の出会いを軽く聞いてみたいですね。
775 :
◆9OlIjdgJmY
:2012/09/27(木) 23:51:16 ID:???
B ネイについて踏んではいけない地雷だったら怖いのでw
776 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/01(月) 19:29:46 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、
>>772
の選択については……
>>773
◆W1prVEUMOs様の案を採用させていただきます!
はい、その通りです。
他に付け加えることのない、シンプルにして真理に近いお答えです。
CP3を進呈いたします。
また
>>775
◆9OlIjdgJmY様のご回答につきまして、こちらも実はその通りです!
この選択肢、アッー的なコメディ処理ではなく、踏み込まなくてもいい、しかし切り抜ければ
将来的にそれなりの見返りはある…かもしれない地雷原です。
幸い人物称号と魅力値、評価値の高さで危険な枝が概ね内部的に処理されておりますが、
そうでなければリスクが高いのでBが採用でしたね。
次点としてCP1を進呈いたします。
>>774
聞くとあまり軽くない話が始まってしまいますw
金がほしい・暴れたい・前科持ちで行き場がないという、アンケート断トツの1位2位3位とは
別の理由で傭兵稼業をやっている面子は多かれ少なかれ、過去に色々ありますね。
777 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/01(月) 19:30:49 ID:???
***
A 「お前……ネイとどういう関係なんだ?」
『うわ、そこ行くの!?』
ピコが驚くのも無理はない。
それは、傭兵大隊の中でも最もアンタッチャブルな話題と言っても過言ではなかった。
ネイとジェトーリオ。
追うジェトーリオ、振り払うネイ。
これまで、彼らの関係をあえて掘り下げる者はいなかった。
何となれば、男色は明白な死罪である。
教会に発覚すれば、即座に告発されることは疑いない。
故に、大隊の人間は彼らの仲について深く考えることをやめたのである。
もしかしたら、邪推するようなものではないのかもしれなかった。
しかし万が一にも不安が的中してしまったとすれば、それは先送りできぬ問題として浮上する。
解決を、図らねばならなくなる。
(……だが、答えを出しさえしなければ)
確定さえしなければ、問題として処理する必要もない。
知らなかった。気づかなかった。思いもかけないことだった。
そういう位相に押し込めておけば、隠匿の罪に問われることもない。
死して神の御前に立つとき、嘘を告解することもせずに済む。
実利的な側面だけでなく、信仰を持つ者たちの精神衛生上も、考えぬことが一番だったのである。
彼らの関係は見たまま「そういうかたちのもの」であり、それ以上でもそれ以下でもない。
それが傭兵大隊の総意であり、不可侵の結論であった。
森崎の問いは、その一線をやすやすと越えるものだったのである。
「―――知りたいの? 本当に?」
778 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/01(月) 19:31:53 ID:???
「う……」
気圧されたように、森崎が喉の奥から音が漏れる。
何故、こんなことを聞いてしまったのか。
そんな後悔がせり上がってきそうになって、森崎は下腹に力を込めた。
決まっている。知るためだ。
ジェトーリオという男を、ネイという男を知るためだ。
知ってどうするのか、それはまだ分からない。
それでも、知らねば何も始まらない。
理解とは、何も耳に心地良いことばかりではない。
時には茨を素手で掴むように、痛みや傷を負うこととてあろう。
それでも知りたいと、森崎は思ったのだ。
だが。だが、悔めば、恐れれば、それは単なる好奇心に堕する。
痛みを負う覚悟もなく人に踏み込む、そういうものに成り果てる。
それを自分に許せる男に、なりたくはなかった。
故に森崎は下腹に力を込め、気圧されかけた心を奮い立たせ、ジェトーリオの
黒曜石の瞳を、半ば睨むように見つめ返す。
音のないせめぎあいは、長い長い数秒。
「……なんて、ね」
先に息を抜いたのは、ジェトーリオである。
「そんな怖い顔、しないでよ。実際のところ、そう御大層に言えるようなものじゃないんだ。
ただ昔から一緒にいるっていうだけでね」
つい、と視線を逸らしたジェトーリオが、採光窓から射し込む細い光を見上げる。
大地の色をした髭も生えていない肌を、こちらは目を逸らさず見つめながら、森崎が問う。
「幼馴染み……ってやつか?」
779 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/01(月) 19:32:54 ID:???
「ううん、違うよ」
何気ない問いに、何気なく首を振る。
「僕たちが生まれた場所は……そうだな、このドルファンとスィーズランドくらいには離れてる」
「そりゃまた……ほとんど違う国だな」
「まあ、そうだね。こっちの人に言わせれば、国っていうほどのものじゃないらしいけど」
軽く笑うジェトーリオ。
色のない笑みだった。
「僕たちはね、モリサキ」
そういう笑みを浮かべる人間を、森崎はよく知っている。
「僕とネイくんは、違う国に生まれて、違う国で育って、そうして―――」
それは癒えぬ傷の、
「同じ人間にね、売られたんだ」
目に見えぬ血を拭う者たちの、笑みだ。
780 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/01(月) 19:38:23 ID:9fpfJ3lc
*選択
A 同情する。
B 無言を貫く。
C 憐れむ。
森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『10/2 18:00』です。
******
ここ、人物称号とネイとの関係、これまでの選択(つまり森崎の人格)次第では
A〜Dくらいまでの手段選択肢という極悪難易度になっていた可能性もありましたw
といったところで本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。
781 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/10/01(月) 19:57:44 ID:???
【ピココール】
この質問自体がジェトーリオを傷つけてる可能性があるけども、どういう反応が隊長として相応しいと思う?
782 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/10/01(月) 20:13:01 ID:???
うーん、多分Bだと思うんだけど(同情すると憐れむは【上から見てる】意味で同じ事)、自信がないなあ。
ピココールに対する回答次第では、ヒントコールも辞さない所存。これは重要と見た。
783 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/10/01(月) 20:17:46 ID:???
Cだけは間違ってる様な気がしますね。
784 :
ピコ
◆ALIENo70zA
:2012/10/01(月) 20:57:22 ID:9fpfJ3lc
>>781
不幸は、どこにでもあるよ。このご時世だもの。
ジェトーリオが言うようなことだって、珍しくないよね。
キミの周りにだって、生まれた頃からいっくらでもあった話じゃない。
だけど、じゃあ彼はどうしてこんな話をしたんだろう。
キミが何を聞いたら、こんな答えが返ってきたんだっけ?
…たとえば今、キミが今の話でジェトーリオを可哀想だと思ったりするのなら、
それは『もう一人』も同じように扱う、っていう風にとられる…のかもしれないね。
だとしたら多分、それは…彼自身に何を言うよりも、敏感に反応されちゃうんじゃないかな。
785 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/10/01(月) 21:04:14 ID:???
…念のため、【ヒントコール】。
私は「同情と憐れむのはこの場合同じ事(上から目線で見ている=侮辱している)なので、
ジェトが悪感情を抱かない選択肢は「無言を貫く」しかない」
と考えていますが、この予想は正しいですか?
正解を聞くような使い方はマズイかと思いましたので、こういうやり方に。
786 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/01(月) 22:44:49 ID:9fpfJ3lc
>>785
極めて的確な状況の捉え方であると回答いたします。
一点、「侮辱」というよりは「違う位相から物を見ている≒観念の共有が
困難であることを改めて確定させる」というようなニュアンスでしょうか。
ですので、悪感情といっても憤りよりは決定的な失望に近いものとなりますね。
787 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/10/01(月) 23:34:14 ID:???
なるほど、思ってたよりもうちょっとジェトは大人でしたか。
ではまあ、Bに投票いたします。理由は
>>785
の通り。
788 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/10/02(火) 14:22:07 ID:???
B
【ピココール】に【ヒントコール】を聞き、B以外の選択肢は選ぶのが難しい様に思いました。
789 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/03(水) 19:25:56 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、
>>780
の選択については……
>>787
傍観者 ◆YtAW.M29KM様の案を採用させていただきます!
ほとんどヒントコールを使うまでもなく答えを出していただいていたようで、お見事です。
ちなみにズバリ正解だけを聞いていただくのも(あまりエレガントではありませんが)、
システム的には有りといえば有りですw
CP3を進呈いたします。
>>788
はい、ここまでくるとそうなってしまいますよねw
勿論ヒント他を吟味した上で、あえて同情するのだ! 理由は〜〜だから!
というのも、充分な説得力があれば押し通すことはできます。
790 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/03(水) 19:26:57 ID:???
***
B 無言を貫く。
ジェトーリオの語ったそれは、ありふれた不幸だ。
ありふれて、だが無感情にやり過ごすことのできぬ、不幸だった。
森崎の中にも、ぐるぐると渦を巻く様々な感情は沸き起こっている。
しかしそのすべてを飲み込んで、森崎は沈黙を守った。
「……」
「お、さすがだね。そういうとこ、嫌いじゃないよ」
同情を寄せることもできただろう。
不幸を憐れみ、共に悲しむこともできただろう。
たとえばそうやって感情を切り分けて、誰とでも共有しやすい形に加工して贈り合うのが
真っ当な世の中というものであるのかもしれない。
しかしそうしてしまったとき、その世の中に、彼らはいなくなる。
黒壇のような肌の男や、褐色の肌の優男は、真っ当なものたちの中から、いなくなるのだ。
それは、線を引くということだ。
不幸という泥のついた者と、そうでない自分たちとの間に線を引いて、その線を挟んで
話をするということに他ならなかった。
故に、森崎は無言を貫いた。
そういう扱われ方を許容する寛容、あるいは愚鈍をジェトーリオという男に求めることは、できなかった。
「……ま、そんな感じで、ね」
森崎の沈黙に何を悟ったか、肩をすくめてジェトーリオが続けた。
「色々あったけど、それからはずっと一緒にいる」
791 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/03(水) 19:27:58 ID:???
『えらく邪険にされてるけどね』
間髪入れずに混ぜ返したのは、いつの間にか舞い戻ってきていたピコである。
思わず眉根を寄せて中空に目をやった森崎に、黒壇の青年は相好を崩す。
「あっはは、その割にネイくんのあの態度は何だ、って顔だね。
ま、不思議に思うのも無理ないけどさ」
「……」
『ありゃ』
勘違い、とも言い切れぬ勘違いではあったが、ともあれ森崎はピコをひと睨みするだけで
ジェトーリオが言葉を紡ぐに任せる。
「ネイくんはね、僕が嫌いなんじゃない。おっと、これは負け惜しみでも、悪あがきでもないよ。
純然たる事実さ。彼は僕を嫌ってなんかいない。そうじゃないんだ」
黒い肌の中、そこだけは薄桃色をした唇の間から、黄ばんだ乱杭歯が覗く。
薄く笑っているようだった。
「彼はね―――怯えてるんだ。怖いんだよ。僕が」
弓型に細められた黒曜石の瞳が、結晶から削りだされた刃のように煌めいた。
皮を裂き肉を抉る、刃。
「僕といると、古い傷が開くんだ。だからあんな風につれなくして、目を逸らしたがる。可愛いね」
傷、と。
ジェトーリオは言った。
その意味を語るつもりはないと、表情が告げていた。
「だけど、それでも構わない」
792 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/03(水) 19:28:59 ID:???
悪鬼と聖母の間に生まれた子のように微笑んで、黒壇の青年が天井を見上げる。
「僕はネイくんに好かれたいわけでも、彼と触れ合いたいわけでもない。
受け入れてほしいとも思わない」
そこには一筋の光が射している。
採光窓から漏れる、白く清らかな陽光だ。
「僕はね。ただ、誰よりも近くで見ていたいんだ。誰よりも」
誰よりも。
生きたまま異教徒を焼く兵がその胸に免罪符を抱えるように、ジェトーリオはその言葉を口にする。
「だって、彼はあんなにも―――綺麗なんだから」
***
793 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/03(水) 19:30:00 ID:+DoZ10Oo
*スキルアップチェック
ジェトーリオとの関係が一定値に達したため、スキルが強化される可能性があります。
目標値は対象キャラクターとの関係によって増減します。
目標値【95】 → ! numnum
※ ! と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。
目標値以上の値が出れば成功しスキルが強化されます。
00が出た場合はスキルが変化します。
成功→ 撹乱Lv2
(ランダムで敵二部隊の行動をキャンセルする。確率はそれぞれ30%。
陣形崩壊中の敵部隊は効果対象から除外される)
00→ 恐慌Lv1
(このターンの間、戦場全体の士気増減処理を通常の200%にする。
この効果はスキルによる増減にも適用される)
***
794 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/10/03(水) 19:58:47 ID:???
目標値【95】 →
04
795 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/03(水) 20:15:04 ID:???
***
※スキルは変化しませんでした。
***
※ガッツが20減少。
剣術が32上がりました。
現在のガッツ:115
剣術:100 馬術:66 体術:62 魅力:78 評価:69
ATK:166 DEF:172 SPD:128 ini:25
******
※称号が『気のいい剣士』になりました。
スキル『シールドワーク』を獲得しました。
種別:アクティブ
消費ガッツ:0
効果:このターンの攻撃ダメージを必中で5、防御ダメージを50%にする。
******
796 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/03(水) 20:16:05 ID:???
//剣術 カルツ
「よう、隊長さん」
新規に配属された傭兵たちを並べ、それぞれの得物を振らせていたときのことである。
ナイフや鉈や、果ては丸太を適当に削ったような棍棒を得意げに振り回す荒くれどもに
内心で頭を抱えていた森崎に声をかけてくる男がいた。
金髪を短く刈り込んだ、背丈は低いががっしりとした体躯を持つ男。
「ん? お前は……」
「こうして話すのは初めてじゃの。ワシゃ、ヘルマン・カルツいうモンじゃ」
『イモみたいな顔した人だね』
相手から見えないのをいいことにくるりと顔の周りを巡ってみせたピコの言葉は、的を射ている。
食習慣のない欧州では見かけないが、東洋圏では馴染みの深い芋特有の土臭さとごつごつとした造形、
そして同時に素朴さと温かみを感じさせる顔立ちをしているのが、カルツという男だった。
要はお世辞にも美男とはいえないが、愛嬌のある男である。
「得物は……戦斧か。随分と使い込んでるな」
「おう、分かるかい」
カルツが立つその脇で地に突き立てられているのは、およそ胸丈ほどまでもある両手斧である。
当世風の長柄は持たず木製の太い握りと巨大な斧頭だけで構成された、質実剛健を
絵に描いたような得物であった。
鎧の上から敵を斬り潰すその重量たるや、刀剣の比ではない。
それを得意とするカルツという男、小柄でありながらおそるべき腕力と体幹を秘めていることは
疑いようがなかった。
797 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/03(水) 20:17:05 ID:+DoZ10Oo
「よろしく頼むぜよ、隊長さん」
奇妙な訛りは男の故郷に由来するものだろうか。
言いながら手を差し伸べてきたカルツに、森崎がその巌のような手を握り返した瞬間である。
「ぐっ……!?」
その手に、凄まじい重圧がかかっていた。
*握手比べ
体術判定
目標値【48】 → ! numnum
※ ! と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。
難易度【ターン係数50+やや難60】−(体術62)を目標値とし、目標値以上の値が出れば成功。
00が出た場合は難易度にかかわらず成功となります。
結果によって展開が分岐します。
成功→ ナメられてたまるか! カルツに負けない力で握り返す!
失敗→ 力負け! 思わず悲鳴が漏れる!
798 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/10/03(水) 20:27:15 ID:???
目標値【48】 →
48
他のスレで色々認識違いに苦しんだもんで、安全策をとりたかったんですよw
799 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/10/03(水) 20:33:43 ID:???
危ない…。D100でピッタリは心臓に悪いのう。
800 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/04(木) 00:32:34 ID:???
>>798
迷ったときや困ったときの命綱、それがEP/CPです!
どんどん活用して下さいませ。
***
成功→ ナメられてたまるか! カルツに負けない力で握り返す!
試されている、と直感した。
隊長を名乗るのが、己が命を預けるに足る男か。
カルツはそれを試しているのだ。
「ぐぬ……ぐうぬぬ……っ!」
「お? ほう……」
他愛もない勝負だ。
負けたからといって隊長の座を追われるわけではない。
それでも、森崎は渾身の力をその手に込める。
「ふぬ……ぐぅ、おおぉ……!」
「く……ぬ、むぅん……」
傍目には異様な光景に映ったことであろう。
男二人、手を握り合ったまま顔を真っ赤に染め、脂汗を浮かべながら唸り声を漏らしている。
意地の張り合いを終わらせたのは、目に見えぬ小さな手である。
801 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/04(木) 00:33:36 ID:???
『はい、そこまで!』
「うおっ!? っと、とと……」
ぺちん、と。
ピコの小さな手で不意に頬を叩かれ、思わず脱力する森崎。
同時に、握られていたカルツの手からも力が抜けるのが分かった。
息をつくと、急に視界が広くなっていくような感覚。
充血していた目から血が引いていくのだった。
「ふう……」
「ハハハ、なかなかやりよるのう、隊長さん」
小さな虫が目の前を無数に飛び回っているようなノイズ混じりの視界の中で、
芋のような男が涼しい顔で笑っている。
先ほどまでの形相が嘘のようだった。
「……お前、まだ本気出してなかっただろ」
「まあ、ちょっとしたお遊びやき。許しとおせ」
言って快活に笑うと、ばしんと森崎の肩を叩くカルツ。
「痛ぇよ! こんの馬鹿力!」
「ガッハハ、そんくらいの方が頼れるろうが」
『豪快なおっちゃんだねえ……』
ピコの呆れたような呟きは無論、カルツには届かない。
上機嫌のまま傍らに突き立てていた戦斧を片手であっさりと持ち上げると、
そのまま肩に担いでみせるカルツ。
ぶうん、と巨大な質量が大気を押しのける音が後からついてくるようだった。
802 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/04(木) 00:34:37 ID:???
「……まあ、そうだな」
「ところで隊長さんよ」
板金鎧でも両断しそうな大斧の迫力に頷いてみせた森崎に、カルツが唐突に話題を変える。
「おんし、こん国の軍がまた徴募かけよるゆう話、聞いちょるかい」
「……? そりゃ、お前らだってそれでここにいるんじゃねえか」
先のイリハ会戦でも多くの将兵を失ったドルファン軍である。
傭兵の徴募は定期的に行なっているという話だった。
「いやの。ワシら、確かにスィーズランドで徴募に応じてこん国に来たんじゃが」
「だろ」
スィーズランドは永世中立を標榜する国家である。
文化的・軍事的にも世界の最先端を担っている大国であり、欧州の熟練した傭兵や
大手の傭兵団はその殆どが同国のギルドに登録することで各地の戦場へと斡旋されている。
中立国ゆえに地域紛争の当事国同士が互いにスィーズランド経由で傭兵を雇用することも
日常茶飯事であり、他ならぬ森崎自身も、そしてイリハで対峙した欧州最強といわれる傭兵団、
ヴァルファバラハリアンもまたスィーズランドの傭兵ギルドに登録されている。
「それがどうも、ドルファンゆう国はワシらの他にも、西洋圏で大規模な徴募を
かけちゅうゆう噂があってのう」
「西洋圏で? ……まあ、ない話じゃねえだろ。現に俺らの仲間にも何人かいるぜ」
トニーニョやネイ、ジェトーリオの顔を思い浮かべながら言う森崎に、
しかしカルツは尚も胡乱げな顔で続ける。
「それが何でも、百や二百じゃきかんゆう話でな」
「なにィ……?」
803 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/04(木) 00:35:49 ID:???
カルツの告げた数に耳を疑う森崎。
今回の徴募で新規に配属されたのが五十人。
それを含めても、現在の傭兵大隊の規模が三百弱である。
「ってそりゃ、俺らの他にもう一大隊作れそうな規模じゃねえか」
「そうやき、隊長なら何ぞ知っちゅうかと」
「……聞いてねえな、少なくとも俺は」
偽りない、本音である。
「ほうか。ま、噂は噂やき。何にせよ、これから宜しくの、隊長さん」
あっさりと頷くと、カルツは斧を肩に担いだまま有象無象の群れに戻っていく。
その背を見送る森崎の手はいまだ腫れの引かぬまま、じんじんと疼いていた。
「……頼りにしてえよ、実際」
***
※ガッツが20減少。
剣術が26上がりました。
※※カルツのスキルLvの上昇確率は現在-40%のため判定は行われません。
現在のガッツ:95
剣術:126 馬術:66 体術:62 魅力:78 評価:69
ATK:192 DEF:198 SPD:128 ini:25
******
804 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/04(木) 00:38:35 ID:???
******
ジャガイモがこの近辺の食卓に上るまではもう少し時間が必要です、
といったところで本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
次回は9月のメインイベントから再開となります。
収穫祭がありますので、イベント自体は短めになる予定です。
それではまた、次回更新にて。
805 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/12(金) 20:19:10 ID:???
******
*D26.9月 「気のいい剣士」森崎有三
メインイベント
『元気!』
「う〜ん……」
『どうしたの? 馬車に轢かれた蛙みたいな声出して』
初秋の陽射しはまだまだ肌を刺激する。
日陰に入れば実感できる涼しさが夏の終わりを告げていたが、森崎有三には
それを堪能する余裕はないようだった。
ピコが訊くのへ、森崎が渋面を作りながら言う。
「いや、なんつーか。俺、この道に呪われてる気がしてよ……」
『あー、まあ……ね』
森崎が歩いているのは、学園通りの並木道である。
傍らには学園の高い塀が決して不審者の侵入を許さぬとばかりに聳え立つ、
朝夕には登下校の学生たちで溢れかえるであろうその道をしみじみと眺めて
森崎が深いため息をつく。
ソフィアの婚約者を名乗る男、ジョアンと初めて遭遇したのもこの道すがらであれば、
犬に吠えられていたロリィを助けて騒動に巻き込まれたのもこの近辺である。
『ていうか、大抵は女のコ絡みだね。しかも若くて可愛い』
「……」
事実を否定もできずにごほんと咳払いをした森崎が、何事もなかったように辺りを見回す。
806 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/12(金) 20:20:11 ID:???
「……ま、しかし今日は大丈夫だろ。誰もいねえし」
森崎の言葉通り、時間帯によっては混雑する道も今は閑散としている。
時折通りすがる乗合馬車の、蹄と車輪が石畳を噛む音が森崎の耳に響いてくるだけだった。
『登校時間はもう終わってるからね。重役出勤なんてキミも偉くなったもんだよ』
「嫌味な言い方すんな! 軍令部に呼び出されてただけだろうが! ほら、あれ! あの書類!」
『はいはい、お疲れ様〜』
「くっそう……人の苦労も知らないで」
『知ってるけどね』
地団駄を踏む森崎にちろりと小さな舌を出すと、白い雲も長閑な空に舞い上がったピコが
くるりと輪を描いてみせる。
『ていうか、前見て歩きなよ。馬車に轢かれるよ』
「大丈夫だって。こうやって見渡す限り誰もいねえんだから。
ははっ、俺を何かに巻き込む運命ってやつがあるなら、是非とも底力を見せてもらいたいもんだね」
言って両手を挙げた森崎が、石畳の上で軽いステップを踏む。
『またそうやって、調子に乗ってると危ないからね!』
「どうなるってんだ? 右見て、左見て、前と後ろも問題なし―――」
と。
森崎の視界にふと影がさしたのは、その瞬間である。
右でも左でも、前後でもないそれは、
「―――ちくしょう! 上だったかよ!」
不意を突かれた森崎が、しかし咄嗟に見上げたその視界に映ったのは、
ふわりと広がるチェック柄の布と小麦色の肌である。
807 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/12(金) 20:22:23 ID:PaEHKKCc
*チェック
(体術+剣術)判定
目標値【16】 → ! numnum
※ ! と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。
難易度【ターン係数50+やや難60】−{(体術+剣術)/2=94}を目標値とし、目標値以上の値が出れば成功。
00が出た場合は難易度にかかわらず成功となります。
結果によって展開が分岐します。
成功→ 落ちてきたものを咄嗟に受け止める!
失敗→ 落ちてきたものを華麗に避ける!
******
なんと一週間のブランクという体たらくには申し開きのしようもありません……!
808 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/10/12(金) 20:30:36 ID:???
目標値【16】 →
15
中世ヨーロッパにジャガイモとトマトはなく、中世日本に醤油はない…というのは結構面白いポイントだよね。
809 :
傍観者
◆YtAW.M29KM
:2012/10/12(金) 20:31:47 ID:???
…EP5を支払います。いきなりこれか!w
810 :
さら
◆KYCgbi9lqI
:2012/10/12(金) 20:34:51 ID:???
あと何人ぐらいヒロイン出て来るんだろう?
811 :
◆W1prVEUMOs
:2012/10/12(金) 20:42:49 ID:???
正ヒロイン候補は五人と言ってたけど、今まで出てきた女性の誰がヒロインで誰が脇役なのか自分には分からない(笑)
812 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/12(金) 21:08:19 ID:???
>>808
トマトのないイタリア料理やポテトのないドイツ料理は、今からだと想像できませんね。
まあ、そもそも料理と呼べるほど食材にバリエーションを持てたのはある程度以上の
富裕層だけかもしれませんが。
>>810-811
正ヒロインはソフィア、レズリー、ロリィ、それから今まさに出てきた娘と、
来月に初お目見えする娘で打ち止めですね。
原作だとこれまでに出てきたキャロル、スー、クレアさん(と、一応ノエル)なども
ヒロインなのですが、本作ではサポートキャラとして登場いただいております。
813 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/12(金) 21:09:50 ID:???
それと万が一全ヒロインの攻略に失敗した場合でも、ピコだけは森崎から離れません!w
***
成功→ 落ちてきたものを咄嗟に受け止める!
「くっ……、っと!」
森崎がそれを受け止めようとしたのは、頭上に差す影の主が女学生であると瞬時に認識した故である。
濃紅色のチェック柄は、学園に通う生徒のスカートの布地であった。
『何でそんなこと覚えてるのさ!』
相方が鋭く指摘するのを聞き流しながら森崎が腰を落とし、両手を差し出す。
足を下に落ちてくるそれを掬うように片腕を差し入れ、切っ先を受け流すようにその軌道を逸らし、
傾いだ上体を、空いた腕で支える。
重量は、ひと一人分。
支えるだけの力を、森崎という男は十二分に持っている。
ふわり、と。
流れるように、その落下物は一切の衝撃なく、森崎の腕の中に収まっていた。
「……ふう」
「……?」
一仕事終えた感で息をつく森崎の眼前。
ほんの拳ひとつ、ふたつの間を空けた向こうに、きょとんとした顔がある。
少年のように襟足で短く切り揃えた髪は栃栗色。
大きく見開かれた瞳は黒に近かったが、吐息を感じるような距離で覗けば濃紺であることがわかる。
そのごく近い顔が、事態を理解できずにいる空隙から驚愕へと変わるのは正しく一瞬のことだった。
814 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/12(金) 21:10:52 ID:???
「―――え、えぇっ!? わわ、なに、きゃぁっ!?」
「あ、こら、暴れるな!」
『いや、驚くでしょ。実際』
遠くから他人事のように言うピコに内心で舌打ちしながら、森崎が腕の中の少女を宥めようとする。
「下ろす! いま下ろすから暴れんな!」
「いや、やだ、はな、離して! なに!?」
「ええい、くそっ……うわっ!?」
「きゃあっ!?」
どすんと重い音は、森崎の腕から解放された少女が石畳の上に落下した音である。
「いったたた……」
「だから暴れんなっつったのに……」
呻きながら腰を擦る少女に、森崎が呆れたように漏らす。
そんな声が聞こえたか、少女がきっと森崎を見上げると、口を開いた。
「もう! 何なのさ、キミは!」
「そりゃこっちの台詞だ!」
さすがに言いがかりも甚だしいと、間髪入れずに言葉を返す森崎。
「いきなり落ちてきたのを受け止めてやったんだろうが! つーかお前は一体何なんだ!
一体どっから降ってきた!?」
「う……」
森崎の剣幕に圧されたか、あるいは痛いところを突かれたのか。
少女の表情から見る間に勢いが失われていく。
ちらりと目をやったのは、傍らの高い壁である。
815 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/12(金) 21:11:53 ID:???
「……お前、学園の生徒だろ」
「え、あ……ははは」
「笑ってごまかそうとするな! つーか、まさかこの壁の上から飛び降りたのか……」
言って森崎が見上げる壁は、彼自身の背丈よりも高い。
自衛意識の現れであろうか、忍び返しの類こそ設置されてはいなかったが、それでも
森崎が腕を伸ばして飛び上がったとしても届かないような位置に、その縁はあった。
「ま、まあ、その……」
と、少女が口ごもった、その時。
「―――ショースキーさん! まだそこにいますね!」
高い塀の向こうから響いたのは、女性の声である。
「おや、この声はいつぞやの……」
『キミが鼻の下を伸ばしてた……』
「やばっ! オルガ先生!」
そうそう、そんな名前だった、と頷いた森崎の手を、がしりと掴むものがある。
小麦色の肌と少し高めの体温。
眼前の少女の手に他ならなかった。
「とにかく、ここはマズいから! こっち!」
「お、おい!? 何で俺を引っ張る!?」
「いいから!」
森崎の声には聞く耳持たず、少女は走りだす。
必然、森崎も共に走る形となった。
816 :
異邦人
◆ALIENo70zA
:2012/10/12(金) 21:12:54 ID:???
『やっさしー。別に振り払ってもいいのに』
「……まあ、大体こんなことになるとは思ってたんだよ」
くるりくるりと頭の周りを回りながら冷やかす相方にもごもごと答えながら、
森崎は手を繋いだまま前を走る少女を見やる。
短い髪が風に靡いて、毛先がふるりふるりと揺れていた。
(つーか……足、早いな)
年端もいかぬ少女である。
しかし日々教練で鍛え抜いている森崎に勝るとも劣らない足を持っているようだった。
無論森崎とてただ早く走るための鍛錬を積んでいるわけではないにせよ、その事実は単純な感心に値した。
しかも僅かながら次第に顎の上がり始めた森崎と比べて、少女の息遣いはまだ小気味のいい律動を
刻んだままでいる。
(……元気なこった)
森崎が初秋に出会った少女の、それが第一印象であった。
***
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