キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【早苗】鈴仙奮闘記28【サッカー好きか?】

580 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:26:43 ID:???
岬「……ところで」

鈴仙「何ですか。またナンパでもするんですか?」

岬「これは手厳しいね」

鈴仙「師匠から、仕事以外で知らない男の人に声を掛けられても相手にするな、って言われてますから」

鈴仙の財布を渡し終わった岬はおもむろに話しだすが、
警戒している鈴仙はそれを真正面から受け取らない。
彼の口の巧さは新聞などの様々な評判や、
何よりあの真面目で一本気な妖夢を籠絡してみせた事実から、鈴仙も良く熟知しているつもりだった。
だから、鈴仙は岬に口を開く暇を与えさせない。
鈴仙は財布をむんずと握って、岬の元から一刻でも早く立ち去ろうとしたが。

岬「――あらら。まあ待ってよ鈴仙さん。僕は決して君にも損にならない情報を持っているんだけどな」

岬は明るい声でそう述べるが、鈴仙はぷいとそっぽを向いたまま振り返らない。
岬の趣旨が仮に鈴仙にとって得な情報であったとしても、その真偽を確かめる方法は無い。
つまり、何を言おうが岬は、鈴仙を惑わせる以上の事をしない。
いくら鈴仙でも、その程度の考えはしっかり整理がついていた。

鈴仙「(多分アイツは私の財布をひったくって、こうやってサシで会話して、
私を混乱させようと目論んだんでしょうけど。 ――アンタの計画は既に割れてるのよ!)」

岬から背を向けた鈴仙は、毅然とした態度で、心の中でそう言い放つ。
――しかし鈴仙は同時に、この時ミスをしていた。
そのミスは通常、ミスとも言えないごく当然な行動だったが――こと岬相手で、それは大きな落ち度だった。
岬は鈴仙のミスに気付き、澄ました声で鈴仙に向かってこう呟いた。


岬「……君は知りたくないのかな。八意永琳の真意を」

581 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:28:01 ID:???
鈴仙「やご……何ですって」

岬は鈴仙の心の琴線に触れ得る言葉を既に知っていた。
それにも関わらず、鈴仙は彼の口を封じもしなければ、自分の耳を塞ぐこともしなかった。
そのごく当然な隙を突かれて、鈴仙は岬の前で足を止め振り返ってしまった。

岬「(僕がわざわざ出向いて来るんだ。全く無為で無謀な行動をする訳が無い。
失敗しない為にもその程度の調査、やっておくに決まってるじゃないか)」

ここで一旦足を止めたならば、こっちのものだ。
蜘蛛の巣に引っかかった蝶へと向かう蜘蛛のように、岬は内心でほくそえんだ。

岬「――やっぱり気になるみたいだね。君のお師匠様。
月の賢者にして地上へ堕ちた裏切り者。永遠亭を実質的に統べる至高の薬剤師にして医師。
八意XX……僕たちの言葉だと、八意永琳のことが」

鈴仙「――良く調べたわね。ウチにスパイでも投げ込んだのかしら?」

岬「さてね。……ところで、君はこの幻想郷に降り立って以来ずっと、
この八意永琳の元で従者として働いているんだったよね?
ああいや、答えなくてもいいよ。答えはイエスと知っているから」

岬は鈴仙に思考させる時間を与えないよう、やや早口で話している。
そうする事で、鈴仙に思考する猶予を与えず――岬はこう、結論を先に言い放った。

岬「――僕は君の為に忠告するよ、鈴仙・優曇華院・イナバ。
……八意永琳は、間違い無く君を利用している。自分自身の計画の成就。ただそれだけの為にね」

鈴仙「――利用、ですって……! そんな事、ある訳ないじゃない!!」

岬の結論は、その真贋を問わずして、鈴仙の耳に重くのしかかった。
永琳の真意については、鈴仙もまた預かり知らぬ事だったのだ。

582 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:31:02 ID:???
岬「――それはどうかな、鈴仙さん。
君はこれまで、色んな人から話を聞いて来たと思うけど――しかし。
その全ては必ずしも真実であるとは限らない。
必ずしも善意で君に全てを教えてくれるとは限らない。
真実とは、様々な語り手から示される情報を基に、自らが構築していくもの――そうは思わないかい?」

鈴仙は既に岬の言葉に釘付けになりつつあった。
それを知った岬は、雄弁に鈴仙に対してこんな提案を持ちかけた。

岬「だから……鈴仙さん。とりあえず、聞いてみたくはないかい?
僕達が調べたところによる、今回の異変における八意永琳の真意を。
それが正しいか間違っているか。その判断は全て君にお任せする。
更に、この内容をもって、僕たちは君に神子様率いる『ハイパーカンピオーネ』計画入りをしてくれ、
……などと頼む気もさらさらないし、恐らく聞いてもならないと思う。
純粋に、僕は君に真実を掴んでもらいたい。そんな意図で、提案をしているんだ」

鈴仙「――そ、そんなの。胡散臭すぎるに決まってるじゃない。目的は何なのよ……!」

鈴仙は辛うじて声をあげた。岬はその質問を想定していたかのように、理路整然と答える。

岬「僕が君に真実を伝える事で、何のメリットがあるか……って事だね。
それなら簡単、僕達は君に気付いて欲しいのさ――八意永琳が必ずしも、君の絶対的な味方では無いという可能性に。
何故なら君は今や、ある意味では中山政男よりも森崎有三よりも、重要な存在となりつつあるんだからね。
そんな凄い君を我々に引き入れるのは……流石に難しいにしても、ある程度の恩は売っておきたいんだ」

鈴仙「……私が重要な存在。それは、『プロジェクト・カウンターハクレイ』のキャプテン候補だからって事?」

岬「……フフ。気になるよね。僕の話を聞くと約束してくれれば、その辺りもサービスとして、詳しく教えてあげようじゃないか。
もっとも、ここは引いて、君の親愛なるお師匠様に問いただす事もアリかもしれない。
流石の八意永琳も、こうして僕達がゆすって来たと知れば、君に幾らか話をしてくれるかもだしね。
――でも、そうなると――どうする、鈴仙さん。君は誰の話を信じる? 怪しいペテン師の僕? それとも、優しいお師匠様?」

583 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:34:18 ID:???
岬はここまで言って、鈴仙の判断を待つ為に沈黙を保った。
永琳の真意は先日、鈴仙が『プロジェクト・カウンターハクレイ』計画を知った際にも明確に教えてくれなかった事。
知りたく無い筈が無い情報であるが――果たして、この岬の発言を信じる価値はあるのだろうか。

鈴仙「(私は必ずしも、ここで岬の発言を聞き入れる価値は無い。
師匠や姫様に問いただしたって、同じように真意を教えてくれる可能性は高い。
そしてそっちの方が、恐らくこの詐欺師の言葉よりも信用出来る筈。だけど――)」

『真実とは、様々な語り手から示される情報を基に、自らが構築していくもの――そうは思わないかい?』
鈴仙には岬のこの台詞が引っかかっていた。彼の指摘にも正しい面はあると思っていた。
確かに、鈴仙は『プロジェクト・カウンターハクレイ』の件について、当事者である永琳と輝夜の話しか聞いていないのだ。
このまま岬から逃げ出して、永琳と輝夜の話のみを信じるのは、真実から逃げ出す行為では無いのか。

鈴仙「(――だけど。それも含めて岬の罠なのかもしれない。私の疑念を加速させて、混乱させるための……)」

鈴仙は冷や汗を拭きながら周囲を見渡す。スタジアムの観客席は既にまばらだが人間も多く残っている。
幻想郷での決まりとして、妖怪は人里で人間を襲ってはいけないというものがある。
そのため、ここで実力差を利用して岬を脅迫する事はもっての外。
(モリヤスタジアムは厳密には人里では無いが、人間の割合が多く、人里のルールを準用する例が多い)
鈴仙はこの場で岬の話を聞くか、それとも逃げ去って永琳の話を聞くかの実質的な二択を強いられていた。

鈴仙「(……たぶん、どう考えてもどっちが正解という事は無い。これは単純に私の在り方の問題。
危険な道を歩んででも、自分の力で真実を掴み取ろうとするか、それとも、
勇気を持って師を信じ、その想いに応えようとするか。
どっちが間違っている訳でも無い。ここは純粋に、私の気持ちで答えるしかないわね……)」

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