キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【レイセンガ】鈴仙奮闘記29【タダシイヨ】

386 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/06/05(金) 19:48:11 ID:???
永琳「……前提条件@を崩すには、明確な証拠が今ここに存在しないため困難。
また、……前提条件Bを崩すには、証拠はあっても根拠が弱いため困難。
――では、前提条件Aには。明確かつ、根拠のある証拠が残されている。……そういう事かしら?」

久しぶりに口を開いた永琳に対し、鈴仙は力強く頷く。

鈴仙「……そもそも、今回の謎が複雑だったのは。佳歩が多数のノイズを、私達に投げかけて来たからです。
私の推理が正しければ、佳歩は今ここで一連の証言をでっち上げた。
だから、大がかりなトリックだとか、巧みな隠蔽だとかはどうしたってできようも無い。

――じゃあどうやって、自身の証言に潜む大きなムジュンを包み隠すかだけど。
それは言ってしまえば、手品のトリックの仕込みに似ている。
肝心なタネは単純だけど、それを隠すために、わざと大袈裟で不自然な動きを取って目を眩ませるような。

今回もそれと全く同じ。敢えて不要な情報をペラペラ喋り、不要な証拠をもっともらしく取り出して、
私達がごくごく単純なムジュンに気付く事を妨げたのよ! 本来必要な証拠は、当に出そろっているのにね!」

佳歩「………!!」

鈴仙「――佳歩、流石だわ。『全ての情報は推理の為に有用である』、『新しく出した証言のムジュンには、新しく出た証拠で対応できる』。
そんな私達の思考パターンを読み切った、心理的ミスリード……! まさしく頭脳的で頭の回転が速い佳歩らしいわ」

佳歩の表情が驚愕と――まるで鈴仙が永琳を見る時のような畏怖に染め上げられた。
これは、鈴仙の敵と化したらしい佳歩が今までに見せた事の無い表情だった。

鈴仙「――しかし、その本質はあくまで直情的で単純! 頭脳のノイズに潜ませた真実は、拍子抜けする程に真っ直ぐ!
……さあ佳歩、見ていなさい! これが――あんたの証言を覆す、最も有効な証拠よ!! ……く ら え !!」


バァァァン!!

387 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/06/05(金) 19:49:23 ID:???
――鈴仙は佳歩に対して、……再び、『下剤入りのドリンク』を突きつけた。
すると佳歩の表情は、隠し切れないレベルを通り越して焦りが広がっていく。

鈴仙「――佳歩も気づいたわよね。あんた、注射は雑になっても良いから、【兎に角迅速に】計画を遂行したと言いながら、
この『下剤入りのドリンク』には、新品同然に雑な痕跡が無い。
だけど、佳歩は兎に角迅速に計画を遂行した筈なのに、全てにおいてミスが全くないとは考え難い。
この証拠の現状は、佳歩の証言と大きく食い違っているとは考えられない?」

妹紅「確かに。さっきのタオルだったら耳を隠せたかどうかは微妙な所だけど……」

つかさ「この下剤入りのドリンクは、少なくともそれ以上に不自然な証拠です!」

輝夜「え? でも偶々雑にやったけど、痕跡が出なかったコトもあり得るんじゃないの?」

妹紅とつかさ、それと多くのウサギ達は鈴仙の発言に納得した様子で頷く。
無論、これだけでは納得の行かない様子であるメンバーも少なからずいたが……。

鈴仙「無論、その可能性も完全には否定できません。……ドリンクの数が、1本だけだった場合は」

慧音「ああ……成程。……私は医療関係者では無いから良く分からんが、
極細の注射器で一本一本漏れ等ミスの無いよう注入するのは、さぞかし大変な作業だろう。
――無論、たまたま1本2本がミスの無いよう注入するのは……まあ、あり得るかもしれんが。
それを24回連続であり得ると想定するのは、些か不自然に思えるからな」

てゐ「――でもさ、ホントに大変なのかな? 時間が掛からない可能性だってあるんじゃないの?
そこについてはどうやって立証するの?」

鈴仙「そこについては、普通に考えて、ドリンク24本に注射をするのは時間が掛かると思う……
ってなるから、論理としてはやや弱いかもね。
強いて言うなら、『あんまり時間がかかっては怪しまれるので』……って言ってた位なんだし。
通常は時間が掛かるものと佳歩は認識していた……と考えられるってのが、根拠かしら?」

388 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/06/05(金) 19:51:29 ID:???
てゐ「ふ〜ん。……ま、確かにそこを差っ引いたとしても。
他の選択肢よりも、論理として強そうなのは揺るが無さそうだね。
何より、問題の核心である下剤の混入シーンだもの。このムジュンについては、大事にしていくべきさね」

鈴仙は多少の質問についても、余裕を持って答えていく。
その結果、鈴仙の指摘はこれまで以上にチームメンバーの同意を得る事ができた。
多くのメンバーが、佳歩の証言と今、現にここにあるドリンクとの相違について納得し頷いている。

佳歩「……そ、そうでしょうか? これだって、証拠としては弱いのでは?
確かに私は、スタジアムに着いてからミーティング開始までの僅かな時間を縫って下剤を混入させました。
でも、多少雑であってもミスが出ないよう注射をするべく、練習をしていたかもしれないじゃないですか!
だって、これだけの計画なんですよ。ぶっつけ本番でやる訳がありません!」

……とはいえ、佳歩とてこれだけで引き下がる程弱くは無い。
苦しみながらも辛うじて反論を行い、鈴仙の論撃に対し食い下がる。

鈴仙「――確かに、その想定は……まあ充分あり得る、自然な言い訳と考えられるわ。
第一に、それなら証言でその旨を補強すれば良かったのに、『雑でも良いから』としか言わなかった事。
第二に、外界でも最近普及したばかりのペットボトルを、私達にバレないようどうやって、練習用にこっそり仕入れたかという事。
第三に、仮に練習したとしても迅速に動いて24本中24本ともに新品同様の外観に出来た事は、結構苦しいと思うけど。
……でも、まあ。第一の点については佳歩のミスかもしれないし、
第二と第三の点については、それを論証出来る根拠が無いから目を瞑るわ。
ペットボトルじゃない安価な素材で練習したのかもしれないし、24本中24本間違えずに出来たと言い張れば済む話だしね。

――だけど。それを差し引いたとしても。
もし佳歩の言う通り、事前に練習していたのだとしたら、より不自然な推測が成り立つわ」

佳歩「な、なんですかっ、それは」

しかし鈴仙は動じない。佳歩にもひるまず、淡々と自身の考えを述べていく。

389 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/06/05(金) 19:52:42 ID:???
鈴仙「――佳歩。あんたは神子の命を受けて、事前の取り決め通り、スタジアムで下剤を仕込む事になってたのよね?」

佳歩「そ、そうですよ! 練習、大変だったんですから!」

鈴仙「……なんで、そんな非効率的な事をするの?」

佳歩「……えっ?」

鈴仙「佳歩の話が本当だとすると、佳歩と神子とはある程度前からやりとりがあったことになる。
その際、今回の計画を遂行するにあたっての肝である、
佳歩が注射器で下剤を注入する事ができるか否かについては、神子は当然に確認しているでしょう。
そして神子は、佳歩が注射で下剤を仕込むには、ある程度の練習が必要という事を聞いている筈」

ウサギC「うん。 で、それの何がおかしいの〜?」

鈴仙「……あの聡明すぎる神子が、練習が必要だという前提条件付きの計画をOKするかしら?
しかも、彼女が信を置く側近ならともかく、単なる内通者である、子どもの妖怪ウサギの作戦に対して」

ウサギD「あっ……!」

鈴仙「そう。佳歩に私達の妨害をして貰うにも、もっといい方法がある筈なのに、神子はそれをしなかった。
ただでさえ、ペットボトルという幻想郷では未知の素材に対し、迅速かつ正確に下剤を注入する事は……。
100%無理とまでは言わずとも、信頼度としては落ちるというのに。
――それを、命令を下した時から注射の練習を始めさせてでも、ゴリ押しするでしょうか?」

輝夜「そっか。練習しないとできないような作戦だったら、最初からやらない方が良いもんね。
まあ、ウソというか見栄を張って「注射できます!」……とか言っちゃった可能性もあるけれど。
アイツがそんな子どもの発言全て、真に受けたりするかは割と疑問よね」

てゐ「(それを言い出したら、佳歩ちゃんをスパイに選んでる時点で終わってるけどね〜。ま、いいか)」

390 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/06/05(金) 19:54:14 ID:???
鈴仙「そうです。それなのに、今佳歩が言ったような作戦が行われているという事は、
あの神子の性格からして、少し自然には考えにくいと思うんです。
佳歩が最初から練習せずとも、100%確実かつ迅速に注入出来たというなら別ですけど」

佳歩「じゃあ、ミス無く100%やったんですってば! 私の注射の腕前は最強なんです!
その余りの腕前に、神子様もご満足されていましたし!」

鈴仙「それって、神子が今回の計画を話す前から注射の練習をしていたって事?
それなら流石の神子も、腕によっては佳歩を信頼するかもしれないわね。 ……でも、どうして?」

佳歩「わ、私はドクターにあこがれてたんです! だからコッソリ注射器を買って、練習をしてたんです!」

ウサギB「そんな話、今始めて聞いたよ」

佳歩「皆にも秘密にしてたんです!」

永琳「だったら私か、そうで無いにしても、ウドンゲの所に相談に行けばよかったのに」

佳歩「えっと……は、恥ずかしかったからです!!」

鈴仙「……まあ。これで皆も、佳歩が迅速かつ間違い無く下剤を注入できた可能性は、
0とは断言できないにしても、限りなく低い事が何となく分かったと思うけど。
――佳歩。あんたはそれでもどうしても、自分はドリンクを下剤を注入したスパイだって言い張るのね」

佳歩「そ、そうですよ! だってそうなんですから! 私は注射の天才だったんです!!
つぎはぎ顔の医師の隠し子だったんです! ブラックジャックによろしくです!!」

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