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【サッカー少年】キャプテンEDIT【奮闘記】
[960]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:05:08 ID:??? 金成(くっくっくっ……予想通り、こっちを過小評価するヤツと慎重になるヤツに二分されたな。まずは相手の意表を突く。 そうすれば、本当の策を実行するのに都合がよくなるからな。 だが、このフォーメーションの真の恐ろしさは、これから発揮されるんだぜ?) 実況「ま、まずは清栄の奇怪な布陣に度肝を抜かれましたが、ともかくキックオフです! 鳴紋中ボールから始まります。小豆沢くんの蹴り出したボールを預かるのは、FW転向した瀬川くん! 軽快なドリブルで攻め上がっていきます!」 瀬川「ふふんっ! 何人で守ろうと、全員抜いちゃえば同じだもんね! さあ、俺の美技に酔い痴れろぉ!!」 金成(こいつの対処法は、人数を掛けるしかないんだよな……) キックオフボールを受けた瀬川が、サイドを駆け上がっていく。それを駆けつけるでもなく見送る金成。 だが、ただ見過ごしたわけではない。すぐさま、背後のスリーボランチに指示を飛ばす。 金成「お前ら! 手筈通りにいけ!」 清栄の7番「言われなくても分かっている!」 清栄の11番「まずはこいつを何とかしなきゃ!」 指示に従い、自軍ゴールに向け逆走する二人。 実況「ああっと!? 清栄学園、三人のボランチをもペナルティエリア内に引き込み、完全防備の構えーっ! これはドリブル突破には厳しいぞーっ!?」 早瀬「な、なんだこいつら!? エリア内に8人だと? 固めるにもほどがあるぞ!?」 比良山「ですが、代わりにミドルシュートはほぼ完全にフリーで撃てます。ここは――」 瀬川「あいよ! ――キャプテン!」
[961]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:06:09 ID:??? 瀬川が一旦ボールを小豆沢に戻そうとした時、……金成が動いた。 金成「やっぱ、小豆沢に持ってくるよなあ!?」 瀬川「げ!?」 瀬川のパスボールを、空中で巧みにカットする金成。 そして、取ったボールは足元に落とし、ドリブルを開始する。 実況「おっと、ゴール前を固められた鳴紋中。ボールを中盤に戻そうとしたところをカットされました! 今大会初出場の金成くん、決勝まで温存されていただけのことはあるぞ!」 金成「へへっ、まだまだこれからさ!」 小豆沢「これから? それはこちらのセリフだ」 実況「小豆沢くんがすかさずチェック! 取られたボールは取り返すという構えです!」 金成(そうだよなあ。自分へのパスがカットされたってことは、当然カットした相手に近いのも自分。 しかも相手チームは守り人数を割き過ぎていて、中盤と前線にパスを出す先がない。 取りに行くのが、確実。けど、読み通りなんだよなあ……!) 小豆沢(なんだ、コイツの不敵な笑いは……? まさか、本気でマリーシアを狙っているのか!?) 小豆沢がそう思った瞬間、よろりと体勢を崩す金成。 僅かでもぶつかれば派手に転倒するだろう、危うい状態となった。 そうなると、強くチャージを掛けるのは得策ではない。 試合前にちょっとした騒動を起こして審判を煽っているのだ。すぐさま笛が鳴るだろう。 金成「へっ! 迷っちゃったな、小豆沢さん?」 小豆沢「なっ!?」
[962]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:08:09 ID:??? ポーン……。 小豆沢の背後のスペースに向けて、ボールを蹴りだす。 その気になれば小学生でも出来る、簡単なフェイント。 金成はそれを、奇策によって引き出した動揺と演技力をもって、県内最強と呼ばれるプレイヤーを相手に決めてみせたのだった。 実況「な、なんと小豆沢くんが抜かれたぁ!? 信じられません! 決勝の舞台とは言え、相手は年下の1年生! それが常勝・鳴紋の不動の10番を華麗に抜き去るぅ! すごいぞ金成くん!」 落田「あ、小豆沢さんが抜かれたぁ!?」 渡会「うるさいなあ、落田は。見りゃわかるよ」 大前(小豆沢さん、一瞬、よろけた金成に躊躇して、ボールから目が逸れていた。……なるほど、嫌なサッカーをしやがる) やす子(これが狙い? けど、それだけだと一回きりしか武器にならない。次は本当にマリーシアを仕掛ける? それとも、まだ他に狙いが?) 小豆沢「や、やられたっ……一連の行動はこちらの動揺を引き出すためのフェイクか! そ、それに攻め込む先は――」 金成「――それは当然、左サイド……そっちから見たら右だったっけ?」 雪村の守る右サイドに向けて、金成は駆けだす。 実況「金成くん、中央からサイドへと攻め口を変えます! そこを守るのは奇しくも同じ1年生、雪村くん!」 雪村「金成……僕が止めてみせる!」 金成「へへっ……いいぜ、来なよ雪村。改めて格の違いを教えてやるよ!」 好戦的に笑う金成。苛立ちのまま突っかかる雪村。 二人が交錯する一瞬、
[963]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:09:16 ID:??? 金成「……レッドが出ないといいな、雪村」 雪村「!?」 金成の呟きが、雪村を金縛りにした。 小学校時代経験した、金成のマリーシア。試合の流れが一変し、ボロボロの大敗を味わった。 あれからしばらくプレイには精彩を欠き、チームメイトに戦犯扱いの陰口を叩かれたこともある。 サッカーを純粋に楽しんでいた少年が味わった、初めての苦い記憶。 それが瞬時によみがえり、心と体を固く縛る。 金成「チョロいねえ、まったく!」 雪村「――あっ!?」 一瞬の隙を突き、スピードで抜き去った。 後には、呆然と立ち尽くす雪村だけが残される。 大前(なにやってんだ、雪村! 今のガチガチな動きはなんなんだよ!?) 実況「金成くん、またまた突破ぁ! チームメイトが守りを固める間、たった一人で鳴紋中を攻め立てます! この快進撃はどこまで続くのか!」 金成「まさか、ここまで図に当たるとはな。笑いが止まらな――あん?」 豊原「瀬川じゃあるまいし、ここで終わりだ!」 本多「これ以上好きにさせるか!」 柿原「観念しろ。ここまでだ」 実況「ここで金成くんに三人が向かう! ディフェンスに定評のある豊原くん、1年ながら守備に長ける本多くん、 ボランチ柿原くんと鳴紋の守備巧者がそろい踏みです!」
[964]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:10:16 ID:??? 普通ならば、絶体絶命の状況。だが、金成の余裕は崩れない。 金成「『ここまで』? そうだな、ドリブルはここまでにするか!」 豊原・本多・柿原「「「!?」」」 グワァァァァ…… 金成の脚が、高く上がる。 実況「ここで撃つのか!? 金成くん、ゴールまで30mの距離でシュートの構えです!」 豊原「なめるな! ブロックしてみせる!」 本多「ちっ! 厄介な仕事が回ってきたもんだ」 柿原「シュートだろうがなんだろうが、通さん!」 三人がかりで、シュートコースを塞がれる。 だが、金成は笑っていた。振り上げた脚を打ち下ろすのも、止めなかった。 金成「馬鹿正直にどうも! そらよっ!!」 バコンっ! ドシュっ! 蹴られたボールは、三枚の壁を避けるようにして飛んでいく。 だが、それは確かにゴールへ向かって飛んでいるが、枠を大きく横へ外していた。 柿原「なんだこれは?」 本多「パスにしちゃあ勢いがあるし、第一、あそこには誰もいないぞ」 豊原「ヤケクソでしくじったか?」
[965]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:12:18 ID:??? 金成「……ひひひっ」 実況「ああ〜っと、金成くん、三人につかれて焦ったか? ミスキックです。ボールはラインを割り、ゴールキッ―― い、いえ! 違います! こ、これは!?」 江崎(鳴紋CB)「な、ボールが!?」 無辺山(鳴紋GK)「ま、曲がる――!?」 実況「こ、これはバナナシュートだァ!! 見事なパスカットから相次ぐドリブル突破、更にはバナナシュートまで! この1年生は規格外だ! 予期せぬ奇襲が、鳴紋ゴールを脅かす〜〜〜〜〜っ!!」 無辺山「ぐっ! ゴールは割らせん!」 鳴紋のGK・無辺山は、せめて軌道を逸らそうと必死に手を伸ばす。 ……彼の不幸は、ここまで強烈な変化を起こすシュートに慣れていないことだった。 鳴紋のシューターは、針に糸を通すような正確なコース取りのミドルシュートを持つ小豆沢と、 ダイレクトシュートを得意とする早瀬。いずれも曲げるタイプのシュートには暗い。 必然、彼らと練習する無辺山も、そうしたシュートには疎くなってしまったのだ。 無辺山(届く、何とか拳の先くらいは――) ググッ…… 懸命に手を伸ばす無辺山を嘲笑うかのように、ボールの軌道が変わる。 無辺山(なっ!? まだ曲がり終わって――) ザシュ! テン、テン、テン…… ボールがゴールネットに食い込み、やがて勢いを無くして地面に落ちた。
[966]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:13:26 ID:??? ……ピィイイイイイイイイイイイイイイ! 数瞬後、ホイッスルが鳴った。 実況「ご、ゴォォォォォルッ!! 二強激突の決勝戦、まずは清栄学園が一点先取! 決めたのは1年生の金成くん! 攻めあぐねた末のバックパスを遮断し、ドリブルで小豆沢くんらを抜き、華麗なミドルシュートで点を奪いました! 個人技では鳴紋の圧倒的優位と思われておりましたが、この大型新人の登場で分からなくなりました!」 観客「め、鳴紋がこんなにあっさり先制された?」「し、しかも相手は1年って……」「まだ10分も経ってないぞ……」 「どうなるんだ、今年の県大会は……」「あ、小豆沢ーっ!! しっかりしろーっ!!」 清栄応援団「ウオオオオォォォォォッ!!」「清・栄っ! 清・栄っ!」「かーなーりっ! かーなーりっ!」 「勝ーてっ、勝ーてっ、清・栄っ!」 金成の決めた先制弾に、観客席は二色に染め上げられた。困惑と不安に包まれた鳴紋陣営と、歓喜に沸く清栄陣営である。 金成「ハーハッハッハァ! いい気分だぜ! 雑魚どもをからかってお褒めの言葉を頂けるとはよ!」 得意絶頂の高笑いを上げる金成。それとは対照的に、屈辱的な形で先制を許した鳴紋イレブンは、すっかり沈み込んでいた。 無辺山「やら、れた? 俺が? 1年に?」 柿原「ば、馬鹿な。なんてシュートを……」 本多「……小学生時代より、確実に力を付けているな。それも、俺たちより格段に早く、だ」 豊原「……なんてこった」 雪村(自分勝手なワンマンプレーの見本みたいなゴール……くそっ、認めてたまるかっ!) 比良山「やられた……これが狙いか」
[967]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:15:25 ID:??? 早瀬「ちっ、やってくれるぜ。まったく」 瀬川(これならあのまま突っ込んでた方が良かったかなー) 大前「……同じ1年に、あんなプレイヤーがいたなんて」 渡会「嫌なヤツだが、実力は見たとおりだ」 末松「ふ、ふんっ! 曲がるシュートなんか男らしくないぞ〜!! そんなので点を取っても、威張れるもんか〜!」 国岡(ちっ……金成の野郎、腕を上げてやがる。同じ県内にあれだけのMFがいちゃあ、スタメンになってからも苦労しそうだ。 目障りなヤツはどこにでもいるもんだぜ) やす子「やられた! リトリートでこちらがミドルシュートを狙うのを誘い、小豆沢くんにボールを回そうとしたところをカット。 そのまま攻め上がってゴールを狙うの作戦だったのね。あの奇妙な防御一辺倒の布陣も、これで合点がいったわ。 そして、金成を決勝まで温存していたのも……。 あれだけのルーキーを温存していたのは、彼に中盤を一人で抑える守備力と単独突破が出来る攻撃力があることを隠蔽していたわけね」 菱野「で、でもそれを見抜けたなら、もうこの手は――」 長池「いや……清栄のキーパーもキャプテンが直々に務めているだけあって、決してザルじゃない……。 ディフェンダー越しに、ミドルシュートで点を狙えるのは、小豆沢さんくらいだろう……。 早瀬はダイレクトシュートを得意とするタイプだしな。多人数でクリアーに来られると分が悪い。 結局、向こうの狙いにのって小豆沢さんにボールを回すしかない。……正にパーフェクト・ミッションだ」 菱野「そ、そうなんですの……」 篠田(今日はベンチスタート)「その冴えを試合でも見せてくれよ」 長池「……どぉせ俺なんか、実践の伴わない理屈倒れだよ……」
[968]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:16:59 ID:??? やす子「パーフェクトかどうかはともかく、良く出来た作戦だわ。 チームではなく、個人の力で成り立っているところに目を瞑ればね。でも――」 一旦言葉を切って、飯地監督はフィールドを見やる。 やす子「――ウチのキャプテンに、火が着いちゃったみたいよ? もう向こうの思い通りにはならないわ」 小豆沢は怒っていた。 それは鳴紋の選手を嘲笑うかのように点を決めた金成にではなく、それを止められなかったチームメイトにでもない。 他ならぬ、自分自身への怒りだった。 小豆沢(何をしていたんだ、僕は……! 金成の言動からダーティプレイの匂いを感じただけで格下と決めつけ、 結果出し抜かれてしまった。挑発へ精神的に追い込まれていた雪村のケアを怠って、むざむざとそこへつけこませた。 ディフェンスへも全然指示が出来ていなかった……! 全国へ行くことだけを考えて、県大会を軽視した結果がこれだ。 もう……これ以上はやらせない!) 早瀬(お? 小豆沢さん、本気だな……全国まで見られないと思っていたが) 振り向くと、まだ気落ちしているフィールダーが目につく。 小豆沢は、声を張り上げた。 小豆沢「落ち込んでいる場合か! 相手は毎年決勝で戦っている清栄だ! 一点程度、取られないとでも思っていたのか! そんなに先取点を取られたのが悔しかったら、全力で取り返せ! そんなに守れなかったのが腹立たしいのなら、次の攻撃は粉砕しろ! 僕らはまだ負けていないし、――最後には勝つ!」
[969]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:18:03 ID:??? 豊原「きゃ、キャプテン……」 柿原「……そうだな。少し相手を見縊り過ぎていた。小豆沢がいれば、県大会はどうにでもなるなどと……。 目が覚めたぞ。今度は止める!」 本多「相手は同じ1年……決して、歯が立たないほどの差は無い」 比良山「取られたら取り返す……FWの本懐だ」 早瀬(へへっ……やっぱりアンタ、最高だぜ。色々足りてないところもあって、全国で戦うにゃ頼りないチームだけど……、 キャプテンだけはナンバーワンだ!) 気力を充溢させ、戦意を取り戻す鳴紋中の選手たち。 小豆沢はそれに満足げに肯くと、次いで暗い顔のままの雪村を見る。 小豆沢「雪村」 雪村「は、はい!」 弾かれたように顔を上げる雪村。 小豆沢「君の本分を思い出せ。サッカーを楽しむ、だろう? わざわざ挑発に乗って相手の土台でプレイせず、自分なりにやってみるんだ。頭の中で描く、一番楽しそうなプレイを、ね」 雪村「―― 一番楽しい、プレイ」 小豆沢「それが出来れば、金成なんて怖くないさ。失敗を恐れて縮こまるサッカーは、雪村らしくないよ?」 そう言って肩を叩くと、キックオフに備えてセンターサークルへ戻る。
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0ch BBS 2007-01-24