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【サッカー少年】キャプテンEDIT【奮闘記】
[949]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:48:38 ID:??? その後も続々と参加校の選手たちが入場する。 氷潤と同じくベスト4〜8には毎年食い下がる浪野中学。 レベルは低いがチームワークに優れた寂庄中学。 その他、大迫中学、赤口中学などが続く。 出場校が全て出揃った後は、優勝旗返還や選手宣誓など、お決まりの流れが続く。 そして、式次第を恙無くこなした後に、本格的に試合が始まった。
[950]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:49:39 ID:??? 〜数日後、県大会・準決勝〜 実況「試合終了っ!! 県大会決勝へコマを進めるのは、やはり鳴紋! 氷潤中、やはり二強との差は大きかったか! 8−0で鳴紋中の勝利です!」 準決勝第一試合は、前評判の通りに鳴紋が圧倒的勝利を収めた。 しかし、鳴紋イレブンの中にも、それを素直に喜べずにいる者たちがいた。 早瀬(何言ってやがる。今回は正規のスタメンを揃えてやっているっていうのに、前半主力を温存した練習試合と同じスコアだ。 前の試合からたった一ヶ月で、確実に差を縮められてやがるじゃねーか。6番を始めとした手強い連中は、俺と同じ2年くらいか? 小豆沢さんたちが抜けた後の秋は、確実に強敵になるぞ……) 小豆沢(惜しいな……彼らの世代が僕と同世代なら、もっと互いを高めあうことが出来たろうに。そうすれば鳴紋も全国で――、 いや、これは詮無い話か。僕は今の鳴紋のキャプテンだ。このチームで、全国で勝つことを考えなくては) 雪村(次は清栄との決勝戦だ。けれど、今までの金成が出たっていう話は聞かない。……選手入場の時にはいたはずなのに。 1年とはいえ、アイツがベンチに大人しく引っ込んでいるなんて、とてもじゃないけど考えられない。何を企んでいる?) 比良山(勝ち進むに連れ、雪村の顔が曇っていくな。……試合にプレッシャーを感じるタマでもないのに。 大前のことを多少は引き摺っているのかと思ったが、それも違うようだ。一体どうしたというのだ?) 決勝への切符を手にしながら、それぞれ懸念を抱えた面々。だが、やはりそういった考え方は少数派のものだろう。 大多数の部員は勝利と決勝進出に沸き返っていた。 瀬川「へへへっ♪ 今日も俺のドリブルは冴えわたっていたぜ! 勝利の女神は、この色男にメロメロだな!」 氷潤の2番(くそっ、またアイツを止められなかったとは……) 篠田「今日は2ゴールか。ストライカーの面目躍如だな」 長池「いいよなぁ、瀬川や篠田は試合に出れて……どぉせ(ry」
[951]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:50:39 ID:??? 氷潤の6番(長池が出てくれば集中的にそこを狙えたのだが……そう上手くはいかんか) 本多「小豆沢さんのインターセプトが冴えていたお陰で、ほとんど仕事が無かったな。流石に次の清栄戦はこうはいかんだろうが」 柿原「やれやれ。なんとか今年も、全国に行って締めくくれそうだ。」 多くのチームメイトは、未だに楽観していた。 不安を抱えた者にも気付くものはいなかった。 県大会決勝戦、そこで待ち受けているものの正体を。 〜準決勝・第二試合〜 氷潤を下した後の鳴紋レギュラーは、客席の補欠メンバーと合流して決勝の相手を品定めに掛かっていた。 小豆沢「清栄の相手は浪野か。なんというか、嫌になるくらい例年通りだね……」 早瀬(その例年通りってのが意外に曲者なんだよな……そこに慣れて安住しちまうと上積みが小さくなる。 小豆沢さんも、その点は危惧しているんだろうけど) 眼下のピッチでは、清栄学園が浪野中学を蹂躙している様が繰り広げられていた。 組織力も個人技も清栄が圧倒し、対する浪野は為す術なく攻撃の頓挫と失点を繰り返す。 先程の試合との差異は、有利な側に小豆沢のような圧倒的なプレイヤーがいるか否か。 不利な側に何としても抗おうという執念があるか否か。それくらいのものである。 雪村「…………」 大前「…………」 大前と雪村は、図らずも並んで試合を観戦することになったが、二人の間に会話は無い。 目線すら合わせようとしなかった。
[952]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:52:20 ID:??? 雪村が大前に感じた失望はそれほどまでに深く、大前が雪村に抱く屈託はそれほどまでに大きい。 比良山(く、空気が重い……) 菱野(大前さん、顔が凄く怖いですわ……やっぱり、チームメイトと上手くいかないことより、 雪村さんと不仲になったことの方が深刻なんですのね……) 国岡(いいねえ。目障りな大前とポジション争いに邪魔な雪村が潰し合ってくれれば、利益は俺の総取りになるってもんだぜ) 早瀬(他の部員の真ん前であれだけ派手に決裂したんだ。そりゃあ後を引くわな……どっちかが折れてくれればいいんだが……) 緊迫感を孕んだ観客席をよそに、試合は淡々と進む。 準決勝第二試合は、すでに清栄の勝ちが確定したようなものだった。優勢の清栄、劣勢の浪野、共に試合を流す体勢に入っている。 そして、審判の笛が鳴った。 実況「試合終了です! 準決勝第二試合、先ほどの第一試合をなぞるかのように二強の一翼が大差圧勝! 清栄学園、浪野中学を下しました!」 柿原「……まるで予定調和だな」 瀬川「そんでもって、予定通りに俺たちが勝つ! これで決まりだね♪」 長池「そうだといいが。しかし相手を甘く見て高をくくっていると、手痛いしっぺ返しを食うぞ……」 瀬川「縁起の悪いこと言うなよ。ずっとベンチだったからって、ふてくれさてんのかー?」 長池「……いいよなあ、お前は前向きで……はぁ……」 早瀬「長池が最近ネガティブなのは確かだが……油断は禁物って気はするな。ここのところ俺らの勝ち越しだっていうのに、 清栄の試合運びは気味悪いくらいにいつも通りだった。何かを隠している気がする。 決勝に向けて隠し玉の一つくらいは、温存してるんじゃねーか?」
[953]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:53:53 ID:??? 瀬川「早瀬も心配性だなー。とりもち苦労ってやつだよ、きっと」 大前「それを言うなら取り越し苦労では?」 瀬川「細かいなー、大滝くんは」 大前「……だから俺は大前ですって」 雪村(隠し玉……やはり金成のことだろうか? けど、いくらアイツが上手いからって、小豆沢さんに対抗できるほどじゃない。 一体、何を企んでいる……) 一方その頃、清栄学園陣営では、 金成「よう、先輩方。予定通り決勝進出、ご苦労さん」 今までベンチを温めていたのにも関わらず、不遜な言葉を投げかける金成。 だが、清栄のスタメンも他の部員も、あまつさえ監督さえもそれを制しようとはしない。 清栄の9番(くそっ、1年がデカイ面しやがって……) 清栄の7番(抑えろ。現状、俺たちが小豆沢に対抗するための駒は、コイツしかいないんだ) 清栄の監督(部員たちの間にも不満が燻っているな……だが、これも決勝で勝つためだ。 私の任期も今年で三年目。その間、一度も小豆沢のいる鳴紋に勝てなかったとなったら、この首が危ない……。 金満私立校の監督業は、実業団を引退した私にとって、年金のようなもの……決して手放せない……) 金成(けっ。どいつもこいつも、小豆沢にビビってるのが透けて見えるぜ。だが、裏を返せば――) ニヤリと、金成が嫌な笑みを浮かべる。 金成(――小豆沢さえいなければ、勝てる自信があるってことなんだよなあ……。くひひっ!)
[954]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:55:20 ID:??? 〜決勝当日〜 実況「さあ、遂にサッカー県内最強の中学校を決める時がやってまいりました! 炎天下のピッチを舞台に雌雄を決するのは、やはりこの二強。鳴紋中学と清栄学園中等部です! 不動の10番に率いられた、前年度王者・鳴紋か? 科学的トレーニングを積んで鍛えられた清栄か? 勝つのはどっちだ!?」 観客「へへっ! 悪いが今年も鳴紋だぜ!」「小豆沢はまた腕を上げてたからな……」「清栄は苦しいだろうな」 清栄応援団「勝ってーっ! 勝ってーっ! 清・栄!」「打倒鳴紋・清・栄っ!」 金成「さて、と。仕込みが上手くいってりゃ、俺らの勝ちなんだが」 清栄の8番「……今年こそ勝たなきゃ。今年こそ、全国へ行くんだ……(ブツブツ)」 雪村(やはり出てきたか、金成……!) 早瀬(去年の小学生の大会じゃ、ダンチのパフォーマンスだったていう金成か……。 だが、そいつ一人で覆るほど勝負は甘くねえぞ。いくらなんでも、1年坊に小豆沢さんと同じ役割を求めるってのはな……) 比良山(顔を合わせた途端に雪村の表情が変わった。不安の種はコイツか) 本多(相変わらず嫌な顔だぜ、金成は……また何か悪だくみでもしているのか?) 金成「おっ? 誰かと思えば、雪村じゃん。去年は世話になったな〜、ホント」 雪村「よくもぬけぬけとそんなことが言えるね……」 金成「それはどっちかというと、俺のセリフだぜ? 去年の大会でお前に削られた時は、ホントに痛かったからよ」 雪村「ふざけるな! あんなのシミュレーションじゃないか! 大体、その後は平気でプレイを――」
[955]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:57:08 ID:??? 金成「おー、熱くなっちゃって! 恐い顔するなよぅ、お前は『サッカーは楽しく』が信条だろう? 笑顔笑顔! ……ひひっ♪」 雪村「コイツ……!」 早瀬「ばっ、止せ、雪村!」 カッとなって、金成に掴みかかる雪村。 が、その直前に金成は身をかがめる。 金成「わあっ!? やめてくれよ、雪村くん! いきなり酷いよ!」 雪村「なっ!?」 突然、しおらしくなり弱々しい声を上げる金成。その様子に面食らい、雪村は掴みかかろうとした姿勢で止まってしまう。 そこへ、変事に気付いた審判が現れた。 審判「何事だ? 騒がしいぞ」 金成「か、彼がいきなり僕に暴力を! 僕は、ただ小学生の時の大会の話をしていただけなのに!」 雪村「か、金成……! 白々しい真似を……!」 金成「知った顔に会ったから嬉しくて昔話をしただけなんです! けど、ついうっかり、彼が負けた時の話をしちゃって――」 早瀬(こすっからい野郎だ……バレてもいいよう、ウソにはならねえ言葉を選んでやがる) 小豆沢「(今日まで温存していた1年……こういうプレイを得手とするタイプか?)すいません、雪村には良く言って聞かせます」
[956]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:58:21 ID:??? 審判「とにかく、試合を前にケンカは困る。君たちは中学生だ。小学生の様に、顔を合わせれば揉め事というのは考えものだな。 以後は注意すること。因縁のある相手というのは分かるが試合が荒れるような事態にはしないように」 雪村「はい……」 キャプテンである小豆沢が頭を下げたためか、審判は一旦矛を収める。 金成「こんなことになっちゃって残念だよ、雪村くん。本当にね――」 金成はそう言って頭を下げ、 金成「――退場しとけば、俺との勝負から逃げる言い訳になったのによ。本当に残念だったなあ?」 醜い笑いを浮かべて顔を上げた。 雪村「う、ぐっ……(が、我慢だ。ここで堪えないと、コイツと戦うことすら出来なくなる……)」 歯を食いしばり、怒りをこらえる雪村。 金成「(……この辺で十分か)じゃあな、雪村。ボールを持ったら、俺に近づかない方がいいぜ? はははっ!」 金成は満足げに笑うと、整列に戻る。 小豆沢「今年は随分と毛色の違う選手を出してきたね?」 清栄のキャプテン「……これもお前に勝つためだ」 小豆沢(『お前ら』ではなく『お前』に、か……標的は僕。とすると、相手の目的はマリーシア狙いか? 金成との接触プレイには気をつけるべきかな。いや、それを匂わせて動きを封じに来たというのも考えられる) 清栄のキャプテン(金成と監督はこう言えと言っていたが……何を考えているんだ?)
[957]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:59:52 ID:??? 金成(ひひひっ、順調順調……精々考え込め、小豆沢。俺が今の段階では勝てないと判断して、織り込んだ罠だ。光栄に思いな。 そして、じっくりと堪能してくれよ?) 一方、試合前のこの騒動は、観客席からも見えていた。 国岡「おーおー、なんか揉めてたなぁ今(ここで雪村もやらかしてくれれば良かったんだが)」 渡会「あいつは金成か。清栄に行ったって聞いていたが、相変わらずみたいだな」 大前(…………そういや、前に雪村が嫌なヤツだって言ってたっけ。くそ、嫌なこと思い出したぜ) 落田「なんか荒れそうな雰囲気だよな」 末松「気のせいだよ〜。どうせ小豆沢さんがなんとかしてくれるさ〜」 ベンチでは、飯地監督がしかめっ面をしながら、清栄の策を看破しようと頭を回転させていた。 やす子(考えろ……今大会初出場の1年生、試合前の挑発、マリーシアを匂わせるセリフ。これらの要素を突き合わせると……。 駄目、考えがまとまらない。一体何を企んでいるっていうの? 退場に追い込もうっていうなら、自分から明かす必要は無い。 わざわざマリーシアを警戒させたのが味噌な気がするんだけど……) 長池(……出られないのがもどかしい。あの清栄の1年の暗い目。絶対に何かをしかけてくる。 地獄を覗きこみながら、自分はそこには落ちないと思い上がっている目……気に入らないな) ともあれ、試合は開始の時刻となった。 実況「さあ、試合開始を控えて両校ともに配置につきます。……お? こ、これはどうしたことでしょう!? 清栄学園、不可解なフォーメーションを取ります!」 ざわざわ……。 あまりにも突飛な事態に、会場が騒然となる。
[958]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:01:02 ID:??? 観客「な、何考えてるんだ清栄は?」「そんなに鳴紋の攻撃が怖いのかよ!」 清栄応援団「さ、サッカー部は気でも狂ったのか? こんな試合を俺たちに応援させる気なのか!?」 清栄 −−@−− @清栄キャプテン − A B − E−C−D −FJG− −−−−− −−I−− I金成 −−−−− −−H−− −−H−− H早瀬 F−−−J F比良山 J瀬川 −−I−− I小豆沢 E−−−G E有末 G雪村 −−D−− D柿原 −B−C− B本多 C豊原 −−A−− A江崎 −−@−− @無辺山 鳴紋
[959]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 02:02:45 ID:??? ―観客席― 大前「ふぁ、5バックに3ボランチ!? しかも1トップだって!?」 渡会「正気かよ、清栄。どんだけ守りを固めても、これじゃ得点なんて覚束ないぞ……」 国岡「へっ! そんだけキャプテンたちにビビってるってこった!」 末松「それに〜、いくら防御が堅くても〜、点を取られる時は取られるんだな〜」 落田「しかも前線と中盤をほとんど放棄してるようなもんじゃないか。始まる前から飲まれてやがるよ。こりゃ駄目だな」 ―鳴紋ベンチ― やす子「な、何が何だかわからない……向こうさんの監督は、何を考えてるのよ!?」 菱野「か、監督! お、落ち着いてくださいませ!」 長池(不味いな……向こうの狙いは分からんが、こっちには動揺と侮りが生まれる。相手の策につけこまれやすくなるぞ) ―フィールド― 雪村「これが、金成の作戦? この腰の引けた布陣が?」 瀬川「なーんだ、ビビってんのかあいつら? あんな人数を集めただけのディフェンスなんて、俺のドリブルで最終一食だぜ!」 比良山「それを言うなら鎧袖一触です(……いかん。相手をなめてかかっている空気だ。 向こうは一人一人が俺たちと互角の清栄、見くびれる相手ではないというのに……)」 小豆沢(まずは一当たりして様子を見よう。情報が少ないまま挑むのは危険すぎる)
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0ch BBS 2007-01-24