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【真・東洋の】キャプテン森崎36【守護神】
[317]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:10:54 ID:ShjjSqVH 早苗「…ねえ。ブラジルのプロって、やっぱり凄い?」 翼「うん、それは勿論。中学卒業前に実業団のチームの練習に混ぜてもらっていた事があったけど ブラジルに渡ってから実際にプロの試合を見てみたら、実業団の人たちには悪いけど 日本のレベルの低さが恥ずかしくなる位だったよ。これじゃ日本がサッカー後進国なのも当然だってね」 早苗「…そこまで?(昔から実力主義だったけど、そこまでハッキリ言うなんて…)」 翼「うん。日本人って言うだけでバカにされる環境だったよ。だから努力し続けたんだ。 練習は辛くて苦しくて嫌だったけど、バカにされるのはもっと嫌だったから…」 早苗「(れ、練習が辛くて苦しくて…嫌だった?翼くんが…大好きなサッカーの練習が嫌だった!?)」 話題が翼自身のサッカーに移ると、いよいよ早苗は驚きを隠せなくなった。 彼女が一度も見た事も無い程鋭く固い表情の翼から、翼の口から出たとは思えない言葉が出てくる。 翼「その甲斐あって俺をバカにする奴は居なくなったよ。日本人はサッカーが出来ない、 なんて言う奴らも居なくなった。まあ、これは同じ時期に森崎も活躍していたのもあるんだろうけど…」 早苗「(何か相槌、相槌…)森崎くんが…そう言えばリオカップって言う大会で森崎くんに勝ったのよね?」 翼「…うん。ブラジルの強豪チームを複数倒して勝ちあがってきた森崎を大差で倒し、 俺は名実共にブラジルリーグの若手ナンバー1として認められたんだ。マスコミもファンも大騒ぎしてくれた」 早苗「(な…なんで…楽しい話題の筈なのになんで…)」 翼「クラブも手放しで褒めて凄い高額のプロ契約をしてくれたんだ。俺は来月からプロとして戦う。 引退するまでの長い長い戦いの舞台に立てるんだ…なのに」 早苗「(子供の頃の夢が叶ったんでしょう?思う存分サッカーが出来るんでしょう!? なのに…なのになんでそんなに怖い顔をしているのよ、翼くん!)」
[318]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:11:53 ID:ShjjSqVH 話が進む毎に翼の顔と声は固く重くなっていき、それは最早叶い始めた夢を追う若者ではなく 終わりが見えない戦争に徴兵された若者の様な姿だった。三年間思い描いてきた前向きで凛々しい翼とは あまりにも違うその様子に早苗は恐怖で竦み上がり声が出せなくなってしまう。 翼「なのに…(なのに、なんだか不愉快で堪らないんだ。森崎に勝ってプロ選手になれたのに、念願をいくつも叶えたのに)」 早苗「(つばさ、くん、よね…?私が好きな翼くんなのよね?)」 翼「(…ってこんな事早苗ちゃんに言えないよ!何考えているんだ俺!…あれ?)早苗ちゃん?どうしたの?」 ようやく翼が我に返った時、早苗は自分を抱きしめながらガタガタ震えていた。 慌てた翼が普段の顔と声に無意識に戻り、それを見た早苗も怯えが収まる。 だが二人の破滅はここからだった。 翼「ゴ、ゴメン!俺、何か傷つける様な事言ったの!?」 早苗「う、ううん。そうじゃないの。ちょっと怖かっただけ…」 それは、早苗にとってはなんでもない一言だった。 翼「怖かった?お、俺が?」 早苗「うん…さっきの翼くん、なんだか凄く張り詰めた表情と声で…」 目の前の恐怖から解放されて深く考えずに出した素直な一言だった。
[319]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:12:14 ID:ShjjSqVH 翼「そんなに?確かにサンパウロでもそんな事を言われた事はあったけど…」 早苗「きっと私の知らなかった翼くんなんだわ。でも当然よね、私達二人とも大人になったんだもの」 だがそれは翼にとって呪いの一言となる。 翼「そうなのかな…俺、そんなに変わった?」 早苗「うん。そういえば、ジャパンカップでプレイを見た時も、あれ?って思っていたわ」 サッカーと共に育ち、サッカーを愛し、サッカーに人生を捧げるのが当たり前だった翼に。 早苗「今の翼くんって、まるでサッカーが好きじゃないみたい」 彼女はその一言を言ってしまった。 翼「………え?」 傍目には翼は驚きで固まった様にしか見えなかっただろう。 早苗もそう判断し、慌てて弁解を試みた。だがそれが翼の心に届く事は無かった。 早苗「あ、ごめんなさい!私バカな事言ったわね」 翼「(サッカーが…好きじゃない…?)」
[320]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:12:46 ID:ShjjSqVH いったんここまで。
[321]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:28:40 ID:ShjjSqVH その概念は今まで翼の意識下に眠っていた。 早苗「自分からサッカーバカって認めちゃう翼くんがサッカーを楽しんでいないなんて事、有り得ないのに…クスッ」 翼「(俺は…サッカーが好きじゃない…?)」 翼の心の中に何時の間にか根付き、宿主に気付かれる事無く成長し続け奥底から心を少しずつ蝕んでいた。 早苗「一生貴方を応援し続けるって決めたのに、こんな事を言うなんて…私もまだまだね」 翼「(そんな筈無い。俺はずっとサッカーをやってきたんだ)」 翼はひょっとしたら気付いていたかも知れない。自分の心に走る痛みとその原因に。 早苗「…翼くん?どうしたの?」 翼「(俺がサッカーを嫌っているって?馬鹿げている!)」 だがその概念の存在を認めるのが怖くて翼はそれを放置し続けた。 早苗「つばさくん…?」 翼「俺がサッカーが好きじゃないなんて…そんなの…」 早苗の言葉が水となった今、その概念は一気に芽を出した。 翼「 そ ん な の ウ ソ だ ぁ あ あ あ あ ー ー ー っ ! ! 」
[322]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:28:59 ID:ShjjSqVH 翼は叫んでいた。何時の間にか立ち上がって叫んでいた。 早苗「きゃあっ!?」 早苗がショックで仰け反り倒れ、弾みで側にあったサッカーボールを転がしてしまう。 翼「………!!」 この時翼は早苗より傾斜の下の位置に居た為、ボールは翼の方にゆっくりと転がり始めた。 自分に近づいてくるボールとその向こうから自分を見つめてくる早苗を見た時、翼は走り出していた。 気がついたらまるで殺人鬼に追われている様に走っていた。 鍛えに鍛えた脚と肺が彼の望み通り速度を提供し続け、目に映る光景が 次々と絵の具の様に流れて消えていく。後ろの方で彼の名を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、 翼は振り返らなかった。振り返られなかった。もっともっと速く走っていた。 ぜいぜいと息を吐く音が聞こえる。それが自分の息だと理解した時、 翼は実家の玄関に辿りついていた。笑う膝と破裂しそうな肺を叱咤し鍵をかけ、 ようやく翼は一息をつき僅かながら落ち着きを取り戻した。 ただ、その僅かな落ち着きも長持ちしなかった。 翼「な、何を…やっているんだ俺は…早苗ちゃん、置いてきちゃったな… 後で電話をかけて、謝らなきゃ…でもその前に、横になろう…」 翼は安息を求め自室に向かった。 そしてまた絶叫を上げそうになった。
[323]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:30:01 ID:ShjjSqVH 翼「あ…ああ…あ…!」 壁と窓ガラスにはマラドーナなど名選手のポスターに様々のサイズのサッカーボールやクラブロゴのシール。 柱には中学生時代に刻んだ「おれたちの夢全国制覇V3!」の文字。 本の類はサッカーに無関係な物など殆ど見当たらず、子供の頃遊んだおもちゃもサッカー関連の物ばかり。 勿論サッカーボールは部屋中にいくつも転がっており、ユニフォームや運動着が大半を占める 衣装箪笥の底にも使えなくなったサッカーボールの残骸がどっさり。 安息を求めに来た筈のベッドのかけ布団まで水玉模様ならぬサッカーボール模様である。 大空翼と言う一人の人間のこれまでの生き様が凝縮された部屋。 数え切れない程の思い出を積み上げてこうしてきた自室。 それは今の翼には恐怖しかもたらさなかった。 翼「か…帰ろう…じゃなくて、戻ろう…」 這う様に自室から遠ざかりながら翼は自分に言い聞かせる様に呟いていた。 だが今の彼に自分を安心させられる言葉は何も思いつかなかった。 翼「ブラジルへ戻ろう…寮の部屋はあんなになっていないから…ブラジルに戻って…戻って… 何をするんだ…トップチームに混ざって、サッカーを…サッカーをしに、戻る…」 彼は今、怯えていた。サッカーが好きではないと言う概念に。その概念を否定できない事に。 翼「嫌だ…嫌だ…サッカーが嫌いだなんて…嫌だ。そんなの、嫌だ…」 ピンポーン。
[324]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:30:19 ID:ShjjSqVH 大空家のインターホンが鳴ったのはその時だった。 そしてそれを押したのは勿論今翼がもっとも会いたくない人物だった。 早苗「ハァ…ハァ…つ、翼くん、居る…?居るよね…靴が外に脱ぎ捨ててあるし…ハァ…ハァ…」 インターホン越しの早苗の息は荒かった。翼の脚についてこようと相当無理をしたのは明らかだった。 早苗「フゥフゥ…スゥ…ごめんなさい!私、プロデビューを控えた翼くんの心を乱す様な事を…」 翼「帰ってくれ!」 気が付いたら翼はまた叫んでいた。気が付いても止まらなかった。 翼「(えっ、今俺はなんて…)」 早苗「え?つ、翼く…」 翼「帰ってくれよ!どうしてあんな事を俺に言えるんだ!(違う!早苗ちゃんは悪くない!)」 早苗「つば、さ…く、ん…」 翼「(止めろ!止めるんだ大空翼!)酷いじゃないか!君のせいでサッカーが嫌いになったんだよ!」 早苗「つ………」 翼「(頼むから誰か止めてくれーーーっ!!)頼むから帰ってくれーーーっ!!」
[325]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:30:42 ID:ShjjSqVH 早苗「……………」 翼「ゲホッ!ゲホゲホゲホッ…」 あまりに甲高く叫びすぎて翼は咳き込みそれ以上声を出す事が出来なくなった。 しばらく痛々しく咳き込む音だけが響いた後、早苗の涙ぐんだか細い声が翼の耳に届いた。 早苗「ごめん、なさい…わたしが、よけいな、こと…」 翼「(違う、違うんだ!君は悪くなんかない、全部俺のせいなんだ!)」 早苗「きょうは、かえるね…あした、ううん、あさってまたくる…」 翼「(明後日?それじゃダメなんだ、俺は明日の便でブラジルに戻るから…)」 早苗「かえさないと、いけないものが、あるから…」 翼「(返さないといけない物…?俺があげたプレゼントとか?)」 早苗「さよ、うなら…」 翼「(立て!何をやっているんだ翼、今すぐ追いかけて謝るんだ!お前は今とても 大切な物を失おうとしているんだぞ!早く立て!頼むから立ってくれーーーっ!!)」 翌日翼はブラジル行きの飛行機に乗っていた。壮絶な疲れを堪えている表情で。 その次の日早苗が大空家を訪れた時、翼は当然そこには居なかった。
[326]2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:33:26 ID:ShjjSqVH 今日はここまで。 たまには厨二っぽい展開も良いかなと思いました。 なんだか厨二の解釈を間違えている気もしますが。
[327]創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 18:41:40 ID:x5c9QXVQ 乙です ていうかお前早苗に何かプレゼントしたことあんのかいw なんて野暮なツッコミは置いといて 厨二展開ごちそうさまでした これもまた青春 しかし2ねいさんは早苗の影が薄いとか言ってたから 油断してたらまさかこんな役回りにw
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0ch BBS 2007-01-24