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【どん底からの】キャプテンEDIT2【出発】
[21]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 22:39:33 ID:GE+4f6OQ そして、その試合を決する交錯が繰り広げられた。 … … … 清栄の8番は、試合の直前に監督に呼びだされていた。 清栄の監督『この清栄学園はスポーツの強豪校だ。当然、大会で優秀な成績を残したチームは、高等部に特待生で入ることになる。 それは知っているな?』 清栄の8番『は、はい』 清栄の監督『だがな……我がサッカー部はここ数年全国大会への出場経験が無い。 それが原因で理事会では、サッカー部枠の特待生を、外部からの受験者に割くという話が持ち上がっているんだ』 清栄の8番『そ、そんな……俺たちの中には中等部から特待生で入ったものもいるんですよ!? そんなことをされたら学費が……』 清栄の監督『心苦しいが、それが現実だ』 そこで、フゥーっと溜息を吐く監督。 清栄の監督『せめて……今年全国に行くことが出来れば、理事会を説得する決め手になるんだが』 清栄の8番『全、国……』 清栄の監督『だが、それも難しい注文ではあるな。同じ県内に鳴紋が……いや、小豆沢がいるのだから。 せめてヤツさえいなければ、何とかなるんだが――』 清栄の8番『……小豆沢さえ、いなければいいんですね?』
[22]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 22:42:38 ID:GE+4f6OQ 清栄の監督『(おっ、切り出す前に食いついてきた!)鳴紋と我々の差は、小豆沢と同じレベルの選手がいるかどうかだ。 ヤツさえいなければ、組織的な戦術に優れる清栄の勝ちだろうな』 清栄の8番『も、もし小豆沢を退場に追い込めたら……』 清栄の監督『10人でも勝てる。今年は金成がいるからな、中盤をヤツ一人に任せて放棄し人数を攻守に振り分ければ、 相当に有利な立ち回りが出来る。……もし自分と引き換えに小豆沢を退場させられる男がいれば、それは英雄だろうな』 清栄の8番『英、雄……(そうだ……俺がチームを救うんだ。英雄になれるんだ!)』 清栄の監督『(目の色が変わったな。なんというか、淀んだ色に)……しかしそんな男はどこにもいないだろう。 一時とはいえ汚名を受けるのだ。今日日の臆病な男子にはとても――』 清栄の8番『お、俺は――』 … … … 清栄の8番(――そうだ、俺がチームを勝利に導くんだ……スタメンになるのに三年かかった。 実力はベンチ組よりマシ程度、って陰口を言うヤツもいる。けど、そいつらにこんな勇気があるか? 金成だって口だけで小豆沢に歯が立たなかったじゃないか。俺は違う。 俺は英雄だ。チームの前に立つ障害を、身を持って粉砕する英雄なんだ! 無能な臆病者なんかじゃない!!) 小豆沢(!? コイツ、初めからボールを見ていな――) 小豆沢が気付いた時には遅かった。 8番のショルダーチャージは、元より小豆沢を倒すことを狙っていたのである。 フェイントを掛けようと体勢を不安定にしていた小豆沢は、それをモロに受けた。
[23]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 22:44:09 ID:GE+4f6OQ 小豆沢「うわっ!?」 清栄の8番「(や、やった! けど、これだけじゃ駄目だ。もっと確実に――)うわあああああっ!!」 もつれるようにして、二人はピッチに倒れこむ。 小豆沢を――下にして。 ドシャア!! ボキッ……!! 倒れた身体と地面との間に挟まれた腕から、破滅的な音が鳴った。 小豆沢(…………ッ!!?) 清栄の8番(き、聞こえたぞ……骨までイッた!!) ピピィイイイイイイイイイイイイイイ!! 反則を告げるホイッスルの音が、けたたましく響いた。
[24]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 22:45:13 ID:GE+4f6OQ ―フィールド― 早瀬「え……あ……? い、一体何が……!?」 瀬川「な、なんなんだ?」 比良山「きゃ、キャプテン!?」 雪村「……う、嘘でしょう!?」 柿原「こ、こんなことが!?」 ―鳴紋ベンチ― 長池「…………今、明確に当たりに行ったな」 菱野「あ、あ、きゃ、キャプテンが全然動いてません!」 やす子「菱野ちゃん、落ち着いて! 今、大会医が駆けつけるわ!(まさかとは思うけど、これって――)」 ―観客席― 大前「な、なんてこった……」 国岡(あ、明らかに退場覚悟で当たりに行ってたぞ! そんなのアリか!?) ―再びフィールド― 実況「な、なんということでしょう! 小豆沢くん、負傷発生か!? 横たわったまま、ピクリとも動きません!」
[25]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 22:47:22 ID:GE+4f6OQ 金成(ひっ、ひひひっ! 計画通りだ! 試合前から挑発して注目を集めれば、自然、警戒心のほとんどは俺に向く! 試合前のやりとりでウチのキャプテンが苦り切って見せたのも、他の選手を疑わせないのに一役買った。 そして、もっとも警戒していた俺を抜いた直後は緊張が解けて、他の選手からの反則への警戒は格段に緩む。 そこを狙えば、普段なら避けられるかもしれないファウルチャージも、まともに食らうって寸法さ!! リトリートも、単独突破の先取点も、マリーシアも、全てはこれから目を逸らすための布石ってわけよ。 いひひひひっ!) 清栄の8番(やった……! 俺が小豆沢のヤツをやってやったんだ! こ、これで全国に行ける! みんなも俺を、認めてくれる!) 清栄の監督(……まさかここまで上手くいくとは。し、しかし、これで監督の座は安泰だ。 後は、試合に勝つだけだ!) 金成(――それにしても、よくもまあ都合のよく操りやすい手駒が揃っていたもんだ。 クビがチラついている落ち目の監督に、コンプレックスの塊なヘタれたスタメン。しかもお誂え向きにボランチと来た。 まるで神様が俺に用意してくれたみたいだな。いや、この場合は悪魔か……) 予想外のアクシデントに騒然となるピッチの中、この三人だけはせせら笑っていた。 一方、倒れた小豆沢の周りには、鳴紋のフィールダーが取り囲むようにして集まる。 早瀬「あ、小豆沢さん! しっかりしてくれよ、小豆沢さん!」 柿原「い、いかん! 揺すったりしたら怪我に響く!」 大会医「どきなさい、今診る!」 人垣を押し退けて現れた医者が、倒れたままの小豆沢の傍に屈みこむ。 大会医「酷いな……腕の骨が完全に折れている。倒れ掛って来た相手選手の体重がかかったせいだろう。試合の続行は無理だな」 早瀬「そ、そんな! これが、小豆沢さんの最後の大会なんだ! なんとかしてくれよ、医者なんだろ!?」
[26]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 22:48:51 ID:GE+4f6OQ 大会医「医者は魔法使いではない。すぐにどうこうなど出来ないんだよ。……監督はいらっしゃらないのか?」 やす子「ここにいます」 飯地監督に向き直る大会医。 大会医「……申し上げにくいことだが、彼は重症ですな。これ以上の出場は不可能です。 詳しい症状を知るには精密検査が必要ですが、……少なくとも、ここを勝っても、全国大会には間に合わないでしょうな」 やす子「……! そう、ですか……」 柿原「そ、そんな……」 一様に沈鬱な表情で沈み込む鳴紋イレブン。 その時だった。 小豆沢「ま……まだだ……」 早瀬「!? ……小豆沢さん!」 小豆沢「僕は……まだ、やれる……折れたのは、腕だ……脚が折れて、立てなくなったわけじゃ――ぐっ!」 よろりと頼りなく立ち上がる小豆沢。右腕がだらりと垂れ下がる様が痛々しかった。 大会医「む、無茶だ! 痛みに気を取られて、まともなプレイが出来るはずが無い!」 小豆沢「なら、痛み止めでも何でも打ってください。この試合だけは絶対に――」 やす子「駄目よ。監督として、これ以上の出場は許可できないわ」 小豆沢「――か、監督……?」
[27]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 22:50:08 ID:GE+4f6OQ 飯地は断固とした表情で小豆沢の前に立った。 やす子「確かにこの試合は中学生活最後の県大会決勝、とても大事な試合なのかもしれない。けどね、小豆沢くん。 例え痛み止めを打ったとしても、碌な治療も受けないまま出場して、もしその怪我が悪化したらどうするの? ひょっとしたら、一生続く後遺症が残るかもしれないわ。あなた、この怪我を一生背負っていく気?」 小豆沢「う……」 やす子「あなたの人生もサッカー選手としての経歴も、この大会が終わってもずっと続いていくのよ。 ここで意地を張って、全部を棒に振ることはないわ。……それと、キャプテンならもう少し、チームメイトを信じてあげなさい」 瀬川「そ、そうだよ! 俺たちもいるしさ!」 柿原「俺だって三年間お前のサッカーを見ながら戦ってきたんだ。留守を預かるくらいは出来る」 小豆沢「……みんな、すまない」 早瀬「そんな顔しないでくださいよ。俺らはみんな、小豆沢さんに助けられてここまできたんだ。その借りがある。 あんたが怪我した時くらい、少しは宛てにしてくださいよ?」 小豆沢「そう、だな……みんな、後は頼んだ」 鳴紋中一同「「はいっ!!」」 やす子「……それじゃあ、小豆沢くんの代わりに長池くんが入って。トップ下の経験は無いから、守備位置は雪村くんとチェンジ。 わかった?」 長池「……了解」
[28]森崎名無しさん:2010/03/07(日) 22:50:36 ID:??? おお…ここで兄貴の登場か!
[29]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 22:51:19 ID:GE+4f6OQ 実況「小豆沢くん、やはり試合続行は不可能の様です。チームメイトに見送られ、担架でピッチを後にします。 あ、今、審判の裁定が出ました! レッドカードです! これは当然でしょう! 同点直後に攻め入られて相手を反則で止め、深刻な負傷を負わせたのです。重い判定も仕方ない!」 観客「バカヤロー! 汚ねえぞ清栄ーっ!」「いやーっ!! 小豆沢くーんっ!!」「何がスポーツ私立だ、反則野郎が!!」 審判「……即刻、退場したまえ。ピッチは勿論、ベンチへも立ち入りは許されない。控室で頭を冷やしなさい」 清栄の8番「へへっ……すいません……」 反省の色が見られない8番に、審判も眉を吊り上げた。 審判「即刻と言ったはずだ! 駆け足!」 清栄の8番「は、はいっ!!」 逃げるようにピッチを後にする8番。 その背に、鳴紋中一同の怒りの眼差しと、観客の罵声が浴びせられた。 観客「二度と来るんじゃねーぞ!」「このっ、最低男!」「鳴紋の地元を歩けると思うな、コラァ!!」 清栄の8番(……馬鹿が。俺はチームを救ったんだ……英雄なんだ……ふへへっ……馬鹿どもには分からないかもしれないけどな) 心中でそう嘯き、自分を正当化する。 だが、彼は気付いていなかった。彼が救ったはずのチームメイトたちすら、蔑みの視線を送っていたことに。
[30]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 22:52:24 ID:GE+4f6OQ 清栄の7番(スタンドプレーの挙句、反則退場だと? ……何考えてるんだ、あの野郎) 清栄の9番(小豆沢との勝負がこんな幕切れだなんて、納得できねえ。俺たちは実力で勝つために練習してきたんじゃないのか!?) 清栄のキャプテン(地道に練習を積み重ねてきたヤツだと思っていたが、見込み違いか……) 清栄の監督(……役に立ってはくれたが、この空気でアイツを庇うのは危険だな。早めに切り捨てねば) 金成(ひひひっ……ご愁傷様……) その後の試合は、惨憺たる結果に終わった。 清栄の反則で得たフリーキックこそ、早瀬がセットプレーでものにしたが、得点はそこまで。 中盤を金成にいいようにされ、攻撃はリトリートによる数の暴力で弾かれた。 結果は、 実況「試合終了! 波乱の決勝戦を制したのは、大物ルーキー金成くんを擁する清栄学園! スコアは2−5! この超大型新人は、ほとんどたった一人で中盤を支配し、攻撃をも担い、なんとハットトリックを達成しました! 退場で10人に減ったチームを、見事勝利に導いたのです! 対する鳴紋中は、小豆沢くんの負傷交代以降、まったくと言っていいほど精彩を欠いていました。 中盤の人材の差が、勝敗を分かつ一因となったのでしょう!」
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0ch BBS 2007-01-24