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【さらば】森崎in異世界完結編【遠き日】
[100]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:25:40 ID:??? 「ああ…正直意味がわからん…歓迎会までしてくれたって言うのに…」 「歓迎会…」 歓迎会という言葉にいよいよ嫌な予感を覚え思わずシュナイダーとピエールは顔を合わせる。その表情は若干の恐怖と苦味が 程よく混じっていた。そして自分の想像が外れてくれればいいと思いながら恐る恐るピエールが質問する。 「まさかその歓迎会で何かやったんじゃ…」 「オイオイ。そんな馬鹿な事するかよ。ただ先輩方に芸を披露して見ろって言われたんでな。まあ俺の芸と言えばカラオケだろ? だから『俺の青春』をフルコーラスで歌った位で後はおとなしくしていたさ」 ((それだ…)) それで全てを悟ったシュナイダーとピエールは歓迎会まで開いてくれたという心優しいパルメイラスの選手たちに心から同情した。 不意打ちでしかもフルコーラスとあれば恐らくトラウマ位で済めば御の字であろうから。 『寧ろチームから叩き出されないだけ温情があると見るべきなんだろうな…しかしこのままでは下手をすれば 飼い殺しにされかねんな…ピエール、お前のところで面倒みてやれないか?』 『…そうしてやりたいのは山々だが…生憎今ウチはキーパーの枠は埋まっていてな…お前のところこそどうなんだ?』 『う、う〜む…確かにウチの方は優秀なキーパーは欲しいと言えば欲しいんだが…外国人枠の方がな…』
[101]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:27:05 ID:??? 「何二人してこそこそ話してんだよ?」 「あ…いや何、もしパルメイラスが駄目なら(というかほぼ絶望的だろうが…)どこか他のチームはどうかと思ってな… お前の実力なら引く手数多だろうし、何なら俺がどこかに口を利いてもいいが…とはいえ立場的にはまだ俺もトップじゃ 駆け出し同然だからな…それほどツテがあるわけじゃないが…」 シュナイダーの提案に森崎は顎に手にやりながらしばし考え…それからシュナイダー達にとっては 思ってもみなかった事を口にした。 「う〜ん…他ねぇ…と言うより俺はこの三人でチームを組めたら面白いだろうなって思うがね」 「俺たちで…か?」 「ああ…俺たちでチーム組んでさ。国内リーグやら、それこそUEFAチャンピオンズリーグやらタイトルというタイトルを 総ナメにすんのさ。それはさぞかし愉快だろうなって思うけど。どうよ?」 そう言う森崎の表情は悪戯っ子が極上の悪戯を思いついた時のように無邪気なものであった。 「…それも…悪くはないかもな…」 「そうだな…それは楽しそうだな」 かつてオールスターズと言うチームが存在した。だがチームメイトは元の世界へと戻り、もはやそれが復活することはないだろう。 だが自分たち三人は違う。同じ世界、同じ時代を過ごしている。そんな当たり前のことを今森崎は一つの道として示した。 勿論この先自分たちがどうなるのかはまだ分からないし、もしそれを実現するにしても様々な障害もあるだろう。 だがこの時はだけはその事に思いを馳せてもそれは若者の特権として許されるはずであろう。
[102]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:28:07 ID:??? 『躍動していますっ!サンパウロFC!!さぁ…今ボールを持つのは……10番の……』 『大空翼選手ですね。いや〜軽やかですよ彼のドリブルは』 『ブラジルでいい影響を受けたようデスネ。いや〜これは将来が楽しみデスヨ』 実況の解説と共に歓声が巻き起こる。どうやら雑談に夢中になっていた間にすでに試合が始まっていたようである。 グラウンドに視線を落とすと、そこにはボールを持ったサンパウロFCの10番を背負う大空翼が ハンブルガーSVの中盤を得意の南米式ドリブルで切り裂いている所だった。 「ほう…腕を上げたなツバサ・オオゾラ。それにプレイというか雰囲気も随分変わったように思うが…」 「確かにな…以前はキレこそあったが…何というかプレイに余裕が無いというかそんな印象すら感じさせていたが… 今はまるで憑き物が落ちたかのように伸び伸びとしているように思えるな」 確かに翼の技術は上達していたが、それは成長期であるから当たり前のものとしてそのこと自体にはさほど大きな驚きは無い。 それよりもシュナイダー達の関心は翼のプレイの質が大きく変化している事に注視していた。今の翼には以前の翼には無い 溌溂としたものを感じ取ったからであるが… 「あれは変わったんじゃねぇよ…」 しかし森崎はそれを静かに、だがきっぱりと否定する。そしてその森崎の表情は無表情で視線は翼を捉えているようで── 「…元に戻っただけさ…元のサッカー小僧にな」 翼ではない何か別のモノを見ているようでもあった。そしてシュナイダー達も森崎の言葉に思い当たる節があったのだろう。 特にそれについて言及することは無かった。しかし代わりに…
[103]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:29:10 ID:??? 「成る程な…それでお前はあのツバサにリオカップとやらで負けたわけか」 「ッ…!?」 「お、おい…シュナイダー…」 ブラジルで行われたリオカップという大会。リオカップ決勝で森崎のパルメイラスは翼のサンパウロに0対1で敗れ去っていた。 そしてその優勝チームがこのジャパンカップに招聘される事になっており、シュナイダーが言っているのはこの事である。 ほんの少し悪戯心が沸いたシュナイダーが何気なく放った一言に対して森崎は… 「あれは…俺が悪いんだ…俺が…俺が悪いんだ…」 「え?あ…お、おい?モ、モリサキ?」 表情を青ざめさせ、ともすればそのまま泣くのではないかと思われるくらいに顔をくしゃくしゃにして 自分を責める言葉を吐き続ける。流石にこの様な状態になるとは言葉を放ったシュナイダーも思っておらず、 逆にうろたえてしまう。そしてその時だった。スタジアムが揺れたのではないかと思われるくらいに 地響きのような歓声が聞こえてきたのは。そしてその地響きを巻き起こした原因である選手は…
[104]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:30:16 ID:??? 『●△※□☆×ッ!』 『うわ〜ッ!いや〜スゴイですヨ今の!!もう今日のお客さんもこれを待ってたんデス!!』 『今のプレーッ!!そうですこの人が、グローバルフットボーラーのターク・ハル選手です。ぜひ注目してください!!』 中盤を切り崩した翼から、ペナルティエリアに陣取っていたサンパウロのエースのFWストラットにクロスが入り、 あわや先制点かというところで、それを驚異的な反応でゴールラインの外にヘディングで弾き出したのは… この試合ハンブルガーSVで最終ラインに入っているグローバルフットボーラーのターク・ハルであった。 それもただ外に弾き出すだけではなく、いつもの様にゴールバーを掠めるように狙う芸術的なクリア。 もしボールが後数ミリ分下だったら…恐らくターク・ハルのオウンゴールが宣告されていただろう。 そのリスクをあえて行うエキサイティングなプレーに観客は溜息と惜しみない拍手と賞賛を送るばかりであった。 『いや〜この辺りはもう鉄壁と言った感じと言っていいんでしょうね?やはりまだまだこの男……』 『確かに今のタークのプレーはスゴイんですケドネ…それだけにリオカップ決勝のロスタイムでのオウンゴールがネ…』 『いや〜あれがターク選手の持ち味だからしょうがないですよ。寧ろ恐れずにガンガンやっていただきたいですね』 「…!?オイ!あれはタークのせいじゃねぇだろ!……あれは俺が…俺が悪いんだ…タークのバックパスを取れなかった俺が…」 (成る程な…そう言う事か…) 実況の解説に激しく反論を見せる森崎を見てようやくシュナイダーにも話が見えてきた。それが原因ならば 森崎がここまで気落ちするのも無理は無いことだと思う。
[105]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:31:18 ID:??? リオカップ決勝にてパルメイラスのグローバルDFとして出場していたターク・ハル。森崎とターク・ハルのコンビは絶妙で まさに難攻不落としか言いようがなく、二人で終始サンパウロの攻撃を跳ね返し続けたのだが…後半終了間際のターク・ハルからの 強烈なバックパスを森崎が痛恨のファンブル。ボールはそのままパルメイラスゴールへと吸い込まれ、 ターク・ハルのオウンゴールが記録された。そしてそれが決勝点となり直後試合も終了。こうしてパルメイラスは敗北した。 この試合で日本サッカー協会が期待していた森崎対翼という点に限れば森崎は勝っていたと言っても差し支えないだろう。 しかしそんな事は森崎にとってはどうでもよく、試合に負けたという事よりもただただターク・ハルのバックパスを ファンブルしたという事実が彼を深く傷つけていた。ターク・ハルのバックパスはキーパーへの信頼の証でもある。 その信頼を自分は裏切ってしまったのだと激しく己を責め続けた。しかしそんな自分に対してターク・ハルは笑顔で 肩を叩きながら「気にするな」と言葉を掛けてきた。オウンゴールをして一番辛い筈のターク・ハルがである。 そしてターク・ハルにここまで言わせてしまった自分が心底情けなかった。だからこそ森崎は自分を責め続ける。 何度オウンゴールをしても尚、未だにゴールキーパーを信じてバックパスを出す彼の信頼を二度と裏切らない為に… 森崎の様子がある程度落ち着いた所を見計らって今度はピエールが質問してくる。 「そう言えば聞こうと思っていたんだが…」 「ん?何だ?」 「今回モリサキはキャプテンじゃないのか?さっきのウルグアイ戦では…誰だったか…確か…」 「ああ…今全日本ユースのキャプテンは来生って奴がやってるよ」 事も無げにさらりと言う森崎に顔を見合わせるピエールとシュナイダー。様々な思惑やチーム事情があるのかもしれないし、 別段キャプテンが誰であろうと良いと言えば良いのかもしれないが、それにしても違和感は尽きない。 しかも森崎以外の全日本のメンバーの停滞振りを見せられれば彼らだけでなくともそう思うだろう。 そんな二人の様子に森崎はニヤリと笑みを浮かべ逆に質問をしてくる。
[106]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:32:22 ID:??? 「お前たちのチームってさ…キャプテンってどう選ばれるんだ?」 「それは…監督から指名されてだな…」 「ウチも同じくだな…」 「まぁ〜普通はそうだろうな…でもウチはな、何と選挙制なんだよ」 「選挙制?」 選挙制という言葉に思わず秀麗な眉を顰めるピエール。確かにチームによっては選挙でキャプテンを決める方法を とる所もあるにはあるが、それをナショナルチームでやるというのは余り聞かない。クラブチームと違って悠長に信頼関係を 築く時間が無く、それでいて早急にチームを纏めなければならないからだ。しかし選挙制と聞き、一つ疑問が解決もした。 「選挙制か…成る程…それが全日本の仲違いの理由の一つという訳か…」 シュナイダーの脳裏に浮かぶのは異世界での全日本Jrユースのチグハグ振りである。それに対し森崎は軽く肩をすくめる。 「そう言う事…まぁサッカー後進国の悲しい事情って奴だな。そうやってめぼしい所を競わせ血で血を洗うように 仕向けでもしなけりゃ世界には通用しないって事なんだろうけどな…で、今回は俺は立候補しなかったわけ。 まぁ後は残った奴で立候補しそうなのが日向と来生位で、日向は俺がちょいと実力で黙らせてやったから、これもナシと。 で、他薦も無いから最後に残ったのが来生というわけさ。しかし来生に決まったときの監督や連中の表情は傑作だったがな」 「しかし…お前はそれでいいのか?」 全日本のキャプテンという立場に森崎は結構なこだわりを持っていたようにシュナイダーは思う。 だからこそこのような質問をするのだが、それに対し森崎はシュナイダーとピエールにフッと微笑を見せると…
[107]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:33:36 ID:??? 「いいも何も…あの時はお前たちが選んでくれただろ?」 「あの時…?」 「そうあの時さ…」 森崎の脳裏によぎるのはオールスターズというチームが産声を上げた時。そのキャプテンに シュナイダーとピエールが私心もなしに純粋に自分を推してくれたその時の事を思い返していた。 「だからかな…もし俺がキャプテンになるんならちゃんと全員が納得した上でなりたいと思ってな。 それに今の大人の思惑にまみれたやり方にちょっとした反抗期ってやつだ。 まぁ心配しなくてもワールドユース本選までにはちゃんとキャプテンに返り咲いといてやるよ」 「そうか…モリサキならばきっと大丈夫さ」 「フ…せいぜい期待しておこう」 そして三人は再びグラウンドに視線を落とす。試合は中盤を支配し攻め続けるサンパウロと ターク・ハルとGKの若林を中心に鉄壁の守りを見せるハンブルガーと膠着状態に陥っていた。 そんな中森崎が唐突にポツリと呟く。
[108]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:34:52 ID:??? 「そういやさ…俺ブラジルで会ったんだよな」 「ほう…それならば俺たちもヨーロッパで見かけたぞ?」 「ああ…中々珍しい人物をな」 その森崎の物言いだけでピンと来るものがあったのか、シュナイダー達もあえて問い返さずに同じように 自分たちが出会った人物の事について言及すると、途端に森崎の表情がつまらないといった風に変化を見せる。 「何だよ…お前たちもかよ…せっかく驚かしてやろうと思ったのにさ…」 「生憎それは彼らに会った時に済ませてしまったからな。とは言え…彼らは俺たちの知る“彼ら”とは別の存在だがな…」 「まぁな…」 シュナイダーの言葉に同意する森崎。そしてその事はこの広い世界でも自分たち三人しか共有できない事実。 自然と脳裏に浮かぶのは森崎達が本当に知っている今はもういない向こうの“彼ら”の事。 「たまにな…あの世界で俺はもっと色々出来たんじゃねぇかって…そう思う時があるんだ…」 森崎が誰にとも無く呟く。それは何も“彼ら”だけの事ではない。“彼ら”の世界の事。“彼ら”に仕組まれた戦いの事。 そして最後別れも言えず消えた仲間の事。もっと言えば向こうで起きた全ての事に対して。それらが代わる代わる脳裏をよぎる。
[109]キャプ森ロワ:2010/08/09(月) 22:36:01 ID:??? 「それは随分と傲慢な考えだな…モリサキ」 「…そうかな?」 「そうさ…あの世界であれ以上俺たちに何が出来たと言うんだ?」 そう言われれば森崎としても何も言い返すことは出来ない。確かにシュナイダーの言うとおりあの世界で自分は 出来る事は全て遣り通したという自負もあったからだ。しかし次の瞬間シュナイダーは自嘲気味に笑みを見せると、 「だが…俺とてそう思うときはある…そういう意味では俺も傲慢…と言う事なのだろうな」 森崎に同意し肩をすくめながら語る。それを無言で見守っていたピエールはそんな二人のやりとりを見て、 かつての恩人の言葉を思い出し、ポツリと呟く。 「そう言えばヤン提督がこんな事を言っていたな… 『過ぎた事は全て忘れてしまおうなんてそんな馬鹿な話はないさ。後悔した事があったら 次にまた同じ場面に出会った時こそ失敗しないように自分の過ちをよく覚えておかなきゃな』と…」 「フ…あの人らしいな…」 「確かにな…でも…また同じ場面ってのは金輪際勘弁してもらいたいけどな」 そしてその森崎の言葉に違いないと三人は笑い合った。
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0ch BBS 2007-01-24