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【さらば】森崎in異世界完結編【遠き日】
[44]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:46:12 ID:??? レナス「さて…次はお前だなデスマスク」 デスマスク「ま、待て!俺はお前の…」 何か言いかけるデスマスクを遮るように彼の体が光に包まれ、徐々に昇ってゆく。 デスマスク「レナス〜ッ!!!」 それでもデスマスクはその流れに逆らうように懸命にもがきながら叫び声を上げる。その勢いたるやそのまま またこちらに舞い戻ってくるのではと思わせる程であった。それを見てレナスは呆れた様に小さくため息をつく。 レナス「分かった…分かったから…だから叫ぶのはよせ…まずは自分の世界でやるべき事があるのだろう? 全てはそれを終えてからだ…」 デスマスク「!?……クククク…ならばさっさとケリを付けてすぐお前の元に戻ってくるぞ! レナスよ待っていろ!!ワ〜ハハハハハ!!」 ヤン(彼女も大変な人物に目を付けられたな…根は悪い人物では無いとは…思うが…) レナスの何かを諦めたような口調の言葉を聞くや否や表情を輝かせ高笑いを見せるデスマスク。 ピエール「デスマスクさん!お元気で!!」 デスマスク「ん?ああ…お前達も精々気張れよ」 森崎(うわぁ…何このぞんざいな扱いは…) シュナイダー(まぁ…あの人らしいといえばらしい挨拶だな…) 一体先ほどの姿は何だったのかと問い質したくなるほどのピエールの言葉に対するそっけないデスマスクの言葉だったが、 短い付き合いながらもそれこそがデスマスクなりの別れの挨拶だという事は森崎たちも理解はしていた。 その証拠に彼のいつも吊り上げられている口元が緩んでいるのが見えたからである。 そして黄金の光もこの世界から去っていった。
[45]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:47:31 ID:??? レナス「さて次は…」 ヤン「ちょっと失礼…少し待ってくれないか?すぐに済む」 レナスが次はヤンの方へ視線を向けると、ヤンはそれを制するように手を上げ、そして森崎達の方へと 視線を移し、ゆっくりと語りだす。 ヤン「ジョアン氏のお陰で我々はこちらの世界の記憶を持ったまま元の世界に戻る事になる。私などはもう二度と サッカーをプレイするという事は無いだろうから、それは思い出でしかないが、サッカー選手である君達には 経験という点で大きなアドバンテージになるだろう。ただ気を付けて欲しいのは、あくまで持ち帰るのは記憶のみであって 能力では無い…という事だ」 シュナイダー「つまり…こちらの世界で身に付けた事は元の世界の肉体には反映されていない…という事ですよね?」 ヤン「そういう事だ」 森崎「う〜む…いくら時間が止まっているとはいえそれはそれで納得いかないな…」 無論ヤンの言うとおり記憶だけでも持ち帰れるという時点で大きなアドバンテージではあるが、こちらの世界で やってきた事はシュナイダーやピエールといったライバル達との切磋琢磨もそうだが、ヤンが立てたプランに基づいて 的確にアルスの回復魔法を駆使して通常行う数倍の練習を強引に、しかも短期間でこなしている為、元の世界で普通に 練習するのとは密度も意味合いも全く異なってくる。単純に言えばこちらの1ヵ月を取り戻すには元の世界では数倍… いや効率まで考えると下手をすれば1年以上掛かるかもしれなかった。 ヤン「まぁそこで…というほどの物でもないが、これまでの試合の君達のプレイを分析して私なりに纏めたものだ。 本当はもっと早く渡すつもりだったんだが…ジョアン氏の持論なども聞くことが出来たからそれも付け足しそうと思って ギリギリになってしまった…とは言っても所詮は素人の分析だからどこまで役に立てるかは分かりかねるがね… まぁ私が持っていても無用の長物になってしまうだろうからね。出来れば貰ってくれるとありがたい」 そしてヤンはそれぞれにメモ帳を渡してゆく。貰ったメモ帳に軽く目を通す森崎たちの表情が変化を見せるのには さほど時間は掛からなかった。
[46]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:48:46 ID:??? ピエール「そんな…無用だなんてとんでもないですよ…これは…」 シュナイダー(これは…凄いな…ここまで細かく分析されているとは…プロのスコアラーでもここまでは出来ないはずだ…) 森崎(オイオイ…この分析によると俺なんて弱点だらけじゃねぇか…) ざっと目を通しただけだが、自分というのを分析するのにこんなにも枚数を費やす必要があるのかというほどの情報量で、 しかも自分では絶対に気が付きようのないような癖、プレースタイル、更には注意点などまで網羅されていた。 確かにこのメモ帳があれば練習効率の面では大幅に改善されるというのは間違いなかった。 ピエール「わざわざ俺達の為に…ありがとうございます」 ヤン「まぁ役に立ちそうなら何よりだ…出来れば君達がせめぎ合う試合も見てみたかったが…まぁこればかりはね…」 シュナイダー「そうですね…」 森崎「……」 手渡されたメモ帳を見ながら、思えばヤンには最初から最後まで世話になりっぱなしでこちらから何かをするという事は ついぞ無かったような気がする。そしてそれに気が付いたとき自分がいかに周りが見えていない子どもだったという事を 否が応にも自覚させられた。そしてそれはシュナイダーやピエールも同じだったようで、三人とも何となく黙り込んでしまっていた。 そんなしんみりとした空気の中でレナスから声が掛かる。
[47]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:50:28 ID:??? レナス「悪いがそろそろいいだろうか?余り時間が無いのでな…」 ヤン「ああ…済まない…やってくれ」 そしてヤンが光に包まれゆっくりと上昇してゆく。 シュナイダー「提督!本当に色々とお世話になりました!!」 森崎「提督には世話になりっぱなしで何も出来なかったけど…色々とありがとうございました!!」 ピエール「どうか末永くお元気で!!」 だからせめて最後に自分の思いの丈をぶつけるようにそれぞれが大声を張り上げる。 それに対し魔術師は柔らかにそして静かに微笑んだ後、姿を消した。 シュナイダー「皆行ってしまったな…」 森崎「ああ…」 これで残るは自分達だけ。そして無言でいるピエールをチラリと見ると、まるで捨てられた子犬の様に今にも 泣き出しそうな表情だった。しかし今ばかりはそれを茶化す気にもなれない。自分も少しでも気を抜くと 同じようになるのは明白だったからだ。 レナス「さて…残るはお前達だな…」 レナスの言葉で何となく周りを見渡すとこの世界の殆どが闇に覆われていた。そして少し離れた所に ジョアン、アルシオン、コインブラの姿が目に入る。その表情は全てを受け入れ、とてももうすぐ消える運命とは 思えないほどにすがすがしいものだった。彼らがもはや森崎たちに声を掛ける事は無い。彼らとしては対話ならば 先ほどの勝負で終えており、そして加害者である自分達が偉そうに見送る資格も無いと思っているからだ。 そして彼らが無言で見守る中、森崎達は光に包まれ、ゆっくりと上昇してゆく。
[48]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:51:29 ID:??? 森崎「…くそッ…!!」 シュナイダー「モリサキ…?」 森崎「来いッ!!」 そんな何も言おうとしない彼らに気が付けば森崎は叫び、自らの手をジョアン達に差し出していた。 勿論そんな事をしたところでもう無駄な事は分かっていた。しかしそれでも森崎は手を差し伸べたかったのだ。 もしかすると同じ運命を辿っていたかもしれないある意味自分と同じ境遇の彼らに。 それに対しジョアンは静かに微笑んだ後ゆっくりと首を振り、唇を動かす。しかしもはやそれを聞き取れる距離ではなかった。 だが唇の動きで何を言ったのかははっきりと分かった。 ピエール「ア、リ、ガ、ト、ウ…か…」 シュナイダー「…確かに彼らがしでかした事は許される事では無いだろうが…しかしやり切れんな…」 森崎「くそッ…何がありがとうだ…勝手に呼び出して勝手にハイさよならって…本当最後の最後まで気に食わない奴だぜ… あのジジイはよ…これじゃあいつらの事俺達が覚えといてやるしかねぇじゃねぇかよ…!」 ピエール「そうだな…だからこの世界の事…彼らのプレイ…そして彼らの思いを俺は絶対に忘れない…」 森崎達の目の前には光が徐々に広がってゆき、それにつれて意識が遠のいてゆく。 森崎「…忘れたくとも…忘れらんねぇよ…こんな事…」 遠のく意識の中で森崎がポツリと呟いたこの言葉がこの世界で発せられた最後の言葉となり、 彼らはそれぞれが在るべきところへと戻る。そしてこの世界における最後の異邦者、戦乙女が姿を消したと同時に 一つの世界が幾多の記憶と共に終焉を迎えた。
[49]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:52:31 ID:??? 「……なさい…起きなさい…有三」 (ん?何だ?誰だ?) 誰かが自分を呼ぶ声がする。それはかつてはいつも日常的に聞いていてそれでいてどこか懐かしい声。 その声に導かれるように森崎有三はゆっくりと覚醒した。 「いい加減起きなさい!有三!!」 「うわッ!!」 だが導かれるというよりは一般的にそれは叩き起こされるという方が正しいだろう。一気に布団を剥がれ 否応無しに起きる羽目になったのだから。そして未だはっきりしない意識で目の前の人物をぼんやりと見詰める。 その顔には見覚えがある…というよりあって当然で、森崎の母親であった。 「え?あ?ここは…あれ?どこだ?」 異世界での記憶と今の現実の記憶が混濁して目の前に母親がいるという事実とここが自分の部屋という事を 認識するまでしばらくの時間を要した。 「もう…何を寝ぼけてるの。今日は朝練だから早く起こしてくれって言ったのは有三でしょう? 朝ご飯は出来ているから早く着替えて来なさい?」 渋々気だるげに体を起こしながらも、何故か違和感を感じる。今の現実こそがいつもに日常的に行われてきたはずなのに。 そして森崎は立ち上がろうとして自分が両手に何かを握りこんでいるのに気が付いた。 「これは……やっぱり夢じゃ…ないんだよな……俺は…戻ってきたのか…」 右手にはオールスターズメンバーの名前が書かれたスコアブック。左手にはヤンから貰ったメモ帳があった。
[50]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:53:32 ID:??? 「はぁ…お袋の料理ってあんなに味気なかったけなぁ…」 久方ぶりに食べた母親が作る朝食に何となく物足りないものを感じながら森崎はとぼとぼと通学路を歩いていた。 そこでふと気が付く。 「ん?でも向こうの世界で食ってたのって結局何だったんだ?…そういやヤン提督が言ってたな電脳世界って……」 何となくそれ以上は精神衛生上宜しくないと判断して考えるのを止め、それを振り切るように 今度はヤンから貰ったメモ帳にじっくりと目を落とす事にした。 (…何々…セービング技術は素晴らしいがそれ故にそれのみに頼り過ぎる傾向があり、試合後半息切れする 最大の原因でもあるか…ちぇ、初っ端から痛いとこ付いてくるねぇ…試合データによると…うわぁ… 俺って浮き球でも全然飛び出さないのな…やっぱもう少し選択肢は増やさねぇとなぁ…でこれを解消するには… フムフム成る程なぁ…いやあ本当に良く分析してるぜ。あの人の頭の中一体どうなってんだろうな? …後は…ゲッ!このままやってるといずれ腰をやっちまうだって?ウムム……ほう…こんな練習方法もあるのか… この練習方法なら腰にもそんなに負担を掛けなくても良さそうだ…ん?この練習プランって…ジジイ考案なのか…) メモを読みふける森崎の耳に突如ボールが弾む音が飛び込んでくる。何となくその音源の方へ視線を向けると 天下の公道でサッカーボールをドリブルしている少年…大空翼が目に入る。そして翼の方も森崎に気が付くと あからさまに嫌悪感を示しながら顔を逸らす。ここでもし以前の森崎であったならば同じように不快感と共に 翼から目を逸らし、悪態のひとつでもついていた事だろう。 (やっぱり向こうでの記憶は無いみたいだな…) しかし森崎は特にそれを気にするでもなく、今の態度でやはり翼から異世界の記憶は無くなっていると冷静に分析を行っていた。 もし記憶があれば今の自分みたいに違った反応を見せるはずだからだ。無論それでも翼に対して完全にわだかまりが 無いかといわれれば流石にそこまでは無かったが。だが翼に対して無闇に敵対心をもつ理由はもはや森崎の方には無かった。 だからこそ気づき得たのかもしれない。異世界で見せられた別世界の大空翼と目の前の大空翼の違いに。
[51]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:55:09 ID:??? (あいつ…あんなに無表情でボールを蹴ってたか?) 異世界の大空翼はサッカーが好きで好きでたまらないというのが全身からオーラとなって出ていると錯覚させられるほど サッカー馬鹿で、とにかくサッカーボールを蹴るのが楽しくてしょうがないといった感じだった。では今自分から逃げるように ドリブルを行う大空翼はというと…無表情でただボールを蹴っているという感じで、下手をすれば義務でそうしているのかと 思われるほど無機質な感じがした。 (いつからだ?昔からあんなんじゃなかったはずだが…) 少なくとも小学生時代は別世界の大空翼のように無邪気にサッカーボールを蹴りまわしていたような気がする。 ではいつから今の大空翼のように無機質になってしまったのか。そして何故そうなってしまったのか。 (やっぱり…俺の…せいなんだろうな…) 思い当たる節はいくらでもある。大まかなところで言えば南葛中三年時のキャプテン選挙…それまで順風満帆な サッカー人生を歩んでいた大空翼を自分が蹴落とし、初めて挫折を与えた。そしてJrユースでもキャプテンに任命され、 優勝の立役者でさらにはMVPに選出された。かたや翼はというとアルゼンチン戦での退場であやうく戦犯扱い。 そしてベストイレブンにさえ入れずと、優勝という栄冠こそ手に入れたものの散々な結果だった。それらの事が 彼からサッカーを楽しむ余裕を奪った要因の全てとは言い切れないが、一因というのは間違いなかっただろう。 無論だからといって今まで自分のやってきた事を否定するつもりは毛頭無い。それらは全て自分の努力 (余り褒められた内容でないのも含まれているが)で勝ち得たものだからだ。逆にそうしなければ別世界の森崎有三のように 自分も翼の引き立て役に甘んじていた事であっただろう。だから翼の今の現状に対して同情心というのは全く沸かない。 実力勝負というのはそういうものだからだ。しかし森崎には引っ掛かる事が一つだけあった。
[52]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:56:30 ID:??? (向こうでの事を覚えていない…って事はやっぱりこれって翼に対して俺が借りを作ってるって事だよな…) ラブマリーとの試合で敗退した翼に貸しを作り、それを最終戦で返して貰った。ここまではいい。 ただ翼が向こうでの記憶が無いと言うのなら話は変わってくる。何せ自分が作った貸しすらも覚えていないのだから 当然無効ということになり、対してこちらには返して貰ったという記憶はばっちりと残っているのだ。 となればすなわち今は森崎が翼に対して借りがあるという事になる。 「はぁ〜…となりゃやっぱり借りは返さんと駄目か…それにあいつがあのザマじゃ“あいつら”に 対抗できないだろうし…たく仕方ねぇな」 盛大にため息を付く森崎だったが、翼には異世界の記憶が無いのだから知らぬ存ぜぬでも全然通せたはずで、 以前の森崎ならば確実にそうしたはずだろう。しかし今の森崎が取った行動は前方をドリブルでひた走る翼を 追うべく駆け出していた。 だがこの時森崎は気が付いていただろうか。翼に借りを返すという名目は所詮自分に対する 理由付けでしかないという事に。もし仮にこの“借り”が無くとも同じように駆け出していたであろう自分に。 「お〜い!翼〜!!」 そして森崎の己を呼ぶ声に翼は何事かと驚きを見せながらゆっくりと振り返り────
[53]キャプ森ロワ:2010/07/09(金) 11:58:11 ID:O8af4spc これで更新ageと ひとまずここまでで、次からは個人個人のエピローグで、三回に分けて投下するつもりです。個人でと言っても 基本原作に繋げるという設定ですので簡潔に終わります…が、ただ一人だけ本編でケリが付いてないので その人は長くなる…というか何で森崎版でモビルスーツが出てくるんだとおしかりを受けそうな位ちょっとした短編になりそうです… おかしいなぁ…構想段階だともっと簡潔だったはずなのに…それではまた次の更新で〜
[54]森崎名無しさん:2010/07/09(金) 12:11:33 ID:XKB+uNKg 乙でした。 提督・・・・
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0ch BBS 2007-01-24