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【さらば】森崎in異世界完結編【遠き日】
[77]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:33:19 ID:??? 「デビルガンダムはどうなっているか?!」 「未だ交戦中です!!」 ラー・カイラムの艦橋で艦長のブライト・ノアが状況を把握せんと声を張り上げる。その声色には明らかな焦燥が混じっている。 今地球は二つの危機に襲われていた。一つは【デビルガンダム】。元は「自己進化」「自己再生」「自己増殖」を備え 地球環境を浄化する為に開発されたものだったが、ある事件により暴走。以降は人類を地球環境浄化の障害と捉え、 全人類の抹殺を遂行せんとする兵器へと化してしまう。そしてもう一つは── 「ならばアクシズの方は!!MS隊はどうか?!」 「…Zガンダムが敵の防衛網を突破したもようです!」 アクシズと呼ばれる小惑星を地球に向けて落下させ、地表付近での核爆発により核の冬を引き起こす【アクシズ落とし】 どちらか片方でも成就されればそれは地球という星に人が住めなくなってしまう。 その為独立部隊「ロンド・ベル」は否応にも水際での二正面作戦を強いられていた。
[78]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:34:27 ID:??? 【閃光の中のMS】 http://www.nicovideo.jp/watch/sm5522480 「くッ…!何とか防衛網は突破できたけど…アムロさん達は?!」 幾重もの偶然も重なったのだろうが、幸運にもアクシズへの進行を阻む防衛網をかいくぐる事に成功したのはZガンダム。 しかし他の機体はまだ梃子摺っているのだろうか後続がついて来る気配は全く無い。無論いずれも百戦錬磨のパイロット達。 そのうち突破はしてくるだろうが、現実問題それを悠長に待っている時間は残されてはいない。現にアクシズは今の瞬間でも 刻々と地球に向かって進路を取り続けているのである。 「ッ…!?このプレッシャーは…?!」 その時Zガンダムのパイロットであるカミーユ・ビダンの全身を不快感が貫く。このような感覚を持つ人物はカミーユは 一人しか知らない。自らを歴史の立会人と称し、常に自分以外の他者を見下し、傲慢で不遜な男。だが今回は その不快感の中に同時に違和感も感じる。その男が普段絶対持ち得ない感情が混じっていたからである。 しかし今のカミーユにはそれについてゆっくり考察している暇は無い。カミーユは意を決しZガンダムを巡航形態の ウェイブライダーに変形させるとその男がいるであろうポイントへ向かうべくブーストペダルを踏みしめた。 「!?…この不愉快な感覚は…フッ…どうやら腐れ縁…というのは存在するものらしいな」 そして彼の存在をカミーユが感じ取ったのと同じように彼…パプテマス・シロッコも脳髄に軽く疼きを感じながら カミーユの存在を感じ取っていた。相も変わらず生の感情をむき出して見境も無くその感性を撒き散らし、 常に自分の邪魔をする少年の存在に思わず秀麗な眉を顰めるが、次の瞬間思い直し、口の端を吊り上げていた。 自分の置かれている状況があまりにも滑稽だと思えたからだ。そしてシロッコもカミーユを迎え撃つべく動き始めた。
[79]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:35:34 ID:??? 「──!!」 脳裏に閃光が迸ると同時にカミーユは操縦桿を押し込める。刹那…赤と青の光芒が螺旋状に絡み合いながら ウェイブライダーの脇を掠めていく。あと数瞬でも回避行動が遅れていれば今の攻撃で宇宙の藻屑と化していたであろう。 その事にひやりとするも、カミーユには今の攻撃に見覚えがあった。そして事態はもっと深刻なものだと告げていた。 「シロッコはジ・Oじゃない…!?それに今のは…!」 シロッコの愛機はジ・Oという「人型を成したモビルアーマー」とも言うべき機体であったはずだが、 ジ・Oに今のような武装は無い。コンソールを忙しなく叩きメインカメラを最大望遠にして捉えたその機影は── 「ヴァルシオン…」 かつて一人の天才科学者が作りし究極ロボ…ヴァルシオンであった。 【ヴァルシオン】 http://www.nicovideo.jp/watch/sm9473631 ヴァルシオンの火力の前にはZガンダムの装甲など紙細工も同然であり、真正面から直進するのは危険だと判断すると、 ヴァルシオンを中心に反時計回りに旋回しつつ距離を徐々に縮める。そして肉眼でもヴァルシオンを捉えられる距離まで 来たときカミーユは反射的に通信回線をオープンにして叫んでいた。
[80]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:36:42 ID:??? 「パプティマス=シロッコ!」 『カミーユ=ビダンか…』 「こんなことをして、お前は何をなそうとしているんだ!?」 『…俗人には理解できんだろうな』 「出来るわけがない!あんなものが落ちたら地球は誰も住めなくなる! お前の名は非人道的な悪行をなした男として忌み嫌われる事になるんだぞ!?」 そう、まるで理解できない。行為そのものも無論そうだったが、パプテマス・シロッコという男がこれを行っていると言う事こそ 一番理解できない。シロッコは確かに傲慢ではあるが、彼の場合その傲慢さは優秀さから来ているところが大である。 パイロット技術も無論の事、政戦両略に秀で、人を引き込むカリスマ性も持ち合わせまさに天才と評すべき人物。 だからこそ大勢が決した今、このように戦略的にもなんら意味の成さない殆どヤケとも言える見境の無い大量虐殺に手を 染めようとするほど愚かな人物ではない。…少なくとも次のシロッコの返答を聞くまではカミーユはそう思っていた。 『ふふふふ…私という存在が人々の記憶に残るのならそれでいい…それだけでな』 「存在?…記憶?シロッコ…何を言っている…?」 一瞬シロッコが何を言っているのか本気で理解が出来なかった。しかしここに来てシロッコから発せられる 違和感の正体に気が付く。彼が抱えている感情…それは絶望だった。
[81]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:37:44 ID:??? ヴァルシオンの掲げた右腕から先程見せた赤と青の光芒…クロスマッシャーがウェイブライダーに向けて放たれる。 それを予め読んでいたカミーユはその暴力的な光を回避しつつ間合いを詰めながら機体をモビルスーツ形態に変形させ、 同時に右マニピュレーターでサイドスカートアーマーのウェポンラックからビームサーベルを取り出しそのまま切りかかる。 「シロッコッ!分からないのか!?今お前がやろうとしている事こそお前が忌み嫌う、地球の重力に魂を引かれた 人間のする事と同じだと言う事が!!」 『言ったはずだ…俗人には理解できんとな。しかし人類にとっては善き事を私はしている』 それに対しヴァルシオンも左腕に持たせた接近戦用の実体剣ディバインアームで真っ向から受け止めると、 ビームサーベルの粒子が飛び散り互いの機体を照らし上げる。 「善き事だって…?地球の重さと大きさも理解出来ない奴が何を…!」 『ならば聞くが、その重さと大きさとやらを理解した者が何をしてきた?所詮は天才の足を引っ張る事しか 出来なかったではないか!でなければデビルガンダムのような存在を許すはずが無かろう!』 「そんな事、根暗な感情をむき出しにして言えたことか!!」 『その感性…あくまでも私を否定するか…賢しい事だカミーユ=ビダン。ならば、私をもっと憎め。 憎しみを持って私の名をその心に刻むがいい!』 「ああ、それが望みならそうしてやる!そして、俺はお前を…倒す!」 『フッ…良く吼えた…と言いたいところだが、果たして貴様にそれが出来るかな…少年ッ!!』 そしてヴァルシオンがバーニアを噴かすとそれまで一応拮抗を保っていた鍔迫り合いが一気に瓦解し、 あっという間にZガンダムが押し込まれる形となる。
[82]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:39:11 ID:??? 『そんな軟弱なモビルスーツでこのヴァルシオンは倒せはせんよ!!』 「くぅ!?」 Zガンダムは後方に全力でバーニアを噴かす事で辛くもその圧力から逃れると、再びウェイブライダーに変形し一旦距離を取る。 『フッ…さっきまでの威勢はどうした?私を倒すのではなかったのか?』 「くッ…!」 シロッコのせせら笑いにカミーユは臍を噛むが、実際Zガンダムとヴァルシオンでは機体性能に絶望的な差がある。 火力は勿論の事、今のように馬力、その大出力から運動性すら上を行っており、Zガンダムが勝っているところ言えばせいぜい 変形機能とヴァルシオンより全長が小さいがゆえに小回りが利くといった程度である。 その中でも最も深刻なのは…Zガンダムの火力不足にある。 Zガンダムの最大火力であるハイパーメガランチャーはその大きさゆえシロッコ程のパイロットと対するにはデッドウェイトでしかなく、 すでに投棄している。なので仕方無しにメインウェポンであるビームライフルを三連射するが、一発目、二発目は ヴァルシオンのバリア装置…歪曲フィールドに弾かれ、最後の三発目は何故か歪曲フィールドに阻まれる事無く、 ヴァルシオンの右肩辺りに命中はしたのだが、せいぜい装甲の塗装が剥げた程度のものでしかなかった。 他の武装と言えば実弾兵器のグレネードランチャーもあるが、ビームライフルより弾速が遅いものをむざむざと食う程 シロッコは甘い相手ではないし、頭部に据え付けられたバルカンなど当たったところでヴァルシオンの装甲にとっては 紙吹雪以下のものでしかないだろう。残る道は接近戦しかないのだが──
[83]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:40:22 ID:??? 「シロッコめ…どこまでも人を見下して馬鹿にする!」 憤るカミーユ。武器が通じない事に憤っていたわけではない。そんな事は最初から分かっていた事。 本来であればロンド・ベルの全主力をもって当たるべき相手であり、モビルスーツ単体での交戦など自殺行為と同義である。 カミーユが歯痒いのは今の攻撃もシロッコの技量ならば回避できるのをわざわざ歪曲フィールドで弾いた事や、 更にそのフィールドまで外してわざと受けて見せた事でカミーユとZガンダムの無力さを嘲笑っている事にある。 もっと言えば先程の接近戦すらも仕組まれたものだったと気付いてしまった。現に今はヴァルシオンのクロスマッシャーの火力と シロッコの精密射撃の前にZガンダムは這う這うの体で回避するのがやっとであり、もう一度接近などとても 出来る状態ではなかったからだ。 「くそッ…!どうすればいいんだ…どうすれば…!このままじゃ…」 弱音を吐くというつもりは無いが、流石にヴァルシオンをZガンダム単機で相手をするには荷が勝ちすぎており、 このままではジリ貧になるのは火を見るより明らかであった。故に増援に期待したいところではあるが、 元々二正面作戦によって戦力が分断されており、更に皮肉にもカミーユの戦場全体を把握しうる 類まれなニュータイプ能力が未だ苦戦を続ける友軍の思念を感じ取っていてそれを否定していた。 正に状況は八方塞でカミーユの脳裏に「敗北」の二文字がよぎったその瞬間── 『諦めんじゃねぇ!!』 それを打ち消すかのようにカミーユの脳裏に叱咤激励する声が響き渡る。 「──!?今の声は…?」 幻聴ではない。男…それも少年の声を確かに聞いた。しかしカミーユには今の少年の声に全く聞き覚えが無い… はずなのだが、その響きにはどこか懐かしいものを感じ、ほんの一瞬だがカミーユは気勢を緩めてしまった。
[84]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:41:38 ID:??? 「戦場で感傷事かい、少年ッ!!」 そしてそのカミーユが見せたほんの僅かな隙をシロッコは逃すはずも無く、その緩みの呼吸に合わせるように 容赦なくクロスマッシャーを放り込んでくる。これをバランスを崩しながらもギリギリのところで回避するZガンダムだったが、 シロッコからすればこれは想定内で本命はこの次の一撃。 『しま──ッ!?』 「落ちろ!カトンボ!!」 姿勢制御もままならないZガンダムの目の前にバーニア全快で躍り出ると、通信越しに慌てふためくカミーユの声に 優越感を感じながら一気にディバインアームを振り下ろす。…だがこの確信を持った一撃でもZガンダムは咄嗟に ビームライフルの銃口にビーム刃を形成させ、ロングビームサーベルでディバインアームを受け止めてみせ、 何とか機体を一刀両断されるのだけは免れる。しかし流石にZガンダムのパワーではそれを受けきる事までは不可能で、 ロングビームサーベルは弾き飛ばされ、更に続けざまにヴァルシオンが放つ蹴りをまともに胴体に受けるZガンダム。 重量では約10倍位の差がある特機からの渾身の蹴りをまともに受けてはもはや機体制御どころの話ではなく 慣性の赴くままに吹き飛ばされる。 「ええい!…どこまでも不愉快にさせる奴だ!」 勝敗の帰趨はすでに決したが、最初の一刀で仕留め切れなかった事に明らかな苛立ちと共に舌打ちをするシロッコ。 感情に身を任せて自らピンチを招いたかと思えば、今のように咄嗟の反応では常人ならざるものを見せつけてくる。 敵味方強力なニュータイプがひしめく中でも抜きん出て高い感応力と敏感過ぎると言ってもいい感性を持つカミーユ。 しかもそれがある意味自分の踏み込める領域でない事を思い知らされればシロッコにとっては尚の事不愉快でしかない。
[85]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:42:44 ID:??? 「だが…ここまでだな。いくらセンスがあろうとも、自らの力の使い方も満足に知らず、感情を碌にコントロール できんような子供ではこれが限界だ」 そしてもうすでにまともに動けないであろうZガンダムにゆっくりとクロスマッシャーの照準を合わせるシロッコ。 後はトリガーを引くだけで己の天敵ともいえる不愉快な存在を消滅させられる。その事に柄にも無い高揚感を覚えながら シロッコはクロスマッシャーのトリガーに手を掛ける。 「く…くそッ…ううう…」 コクピット内でロックオン警告音が鳴り響く。それだけではない。機体の異常を示すアラートも同時に鳴り響いている。 何とかしなくては…と頭では思っているのだが、今のヴァルシオンの蹴りの衝撃はZガンダムのショックアブソーバーシステムの 限界を有に超え、カミーユの体は大きく揺すられてしまいどうやら軽い脳震盪を引き起こしているらしく、 操縦桿を握る手は震えるだけで全く動いてはくれない。 そして…ヴァルシオンの右腕から螺旋状に絡む赤と青の光芒がZガンダムに向かって放たれる── (直撃…!やられる──!?) こうなってくるとなまじ直感力が高いのは残酷である。自分が撃墜されるのをまるでスロー映像を見るかのように 感じ取ってしまうのだから。だがカミーユを包んだのは赤と青の光芒ではなく… 先程も感じたどこか懐かしい感覚を持つ碧の光だった。
[86]キャプ森ロワ:2010/07/27(火) 21:43:53 ID:??? 「バカな…有り得ん…」 我が目を疑い思わず呆然と呟くシロッコ。それはそうだろう。クロスマッシャーの威力からすればZガンダムの装甲など 紙細工にも等しいはずで、直撃すれば文字通り塵一つ残るはずがないのだ。しかし目の前の光景では塵どころか、 さしたる損傷も無くZガンダムは存在していた。そして更にそのZガンダムを粉状の淡い碧の光がオーラのように 覆い尽くしている。その光はまるでZガンダムを護るかのように徐々に広がりつつあった。 どこからか自分の名を呼ぶ声が聞こえる。 (誰だ…誰が俺を呼んでいるんだ?) それは少年のようであり、少女のようであり、大人の男性のようであり女性でもあり、それらが代わる代わる カミーユの名を呼んでいる。だがどの声もカミーユの記憶には存在しない。その一方でそれらの声を懐かしいと感じる 自分も確かにいて、知っていそうで知らない、二律背反したもどかしさをカミーユは感じていた。 《カミーユ》 《お兄ちゃん》 「フォウ?ロザミィ?…そうか……だったら…!」 しかし続けて自分の良く知る二人の少女の声がカミーユの名を呼んだ瞬間、全てが理解できた。たとえ記憶が定まらなくとも、 自分が今何をすべきか、そして彼らは自分に何をもたらそうとしているのかをはっきりとその感性で把握出来たからこそ── 「俺の体を皆に貸すぞ!!」 迷う事無く自分の体を預けられた。この時すでにニュータイプの能力とは関係無しにカミーユは何となく理解していたのかもしれない。 この声の主達がかつて自分の仲間であったと言う事を。そしてその仲間達の意思を吸い込んでZガンダムは発動する。
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0ch BBS 2007-01-24