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【いつか】キャプテン森崎38.1【通り過ぎた道】
[71]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/15(日) 18:37:25 ID:lbb4EV7V 昨年サンパウロはブラジル全国選手権を制していた。しかし今年は他クラブに先行されており、 シーズン後半の現在は3位に留まっていた。悪くは無いが良いとも言えない成績である。 リオカップ後にプロ契約し、然程苦労せずにレギュラーもしくは準レギュラーに定着した バビントン、マウリシオ、アマラウ、ドトールのルーキー4人組。彼らはともすれば昨年比の成績低下を 自分たちのせいにされかねなかったが、幸か不幸かより目立つ存在が彼らの風除けとなっていた。 それは勿論、翼である。 翼「………」 マウリシオ「(今日も元気ないなあ…最近すっかり話していないし)」 バビントン「(ツバサ…)」 チームメイトの視線から背けているその顔は焦燥しきっており、ユース時代の張り詰めた冷静さすらない。 誌的に表現するなら、焦る事にすら疲れた顔だろうか?それは19歳とは思えない程老けてみえた。 周囲の期待とは裏腹にプロ昇格後の翼はパッとしないスタートを切り、冴えない結果しか出せなかった。 まだプロ生活に慣れていないだけだ、足を引っ張っている訳ではないのだからじっくり育てていけば良い… 当初は周囲もそんな寛大な視線を向けてくれたが、やがて翼のパフォーマンスがどんどん落ちていき チームの成績に影響を及ぼす様になると白い目は増えていき、反対に出場機会は減っていった。 そして今、ユース時代の同僚ですら彼に話しかけられず遠巻きに眺める事しか出来ない。 しかしそれはまだ良い方で、怒りを露に歩み寄る者も居た。 オリベイラ「良い身分だな、ツバサ」 翼「キャプテン…」 アマラウ「(ゲッ…こりゃ不味いか?)」 ドトール「(いや、止めておけ。俺たちが行っても事態は悪化する)」
[72]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/15(日) 18:37:38 ID:lbb4EV7V パウロ・ルイス・デ・オリベイラ。精悍な20代後半の黒人選手であり、ブラジル代表に何度も選ばれている実力者でもある。 そして彼はサンパウロFCの現キャプテン、即ちデビュー直後の翼に自分の10番を託した男だ。 オリベイラ「試合の役に立たないのなら、せめて心配してくれる者達の前で明るく振舞ったらどうだ。 自分の調子が悪くてもそれを周りに伝染さない。その程度のプロ精神すらないのかお前は?」 翼「っ………」 オリベイラ「何か言え。お前にはルーキーには破格の年俸が払われている。だんまりでは済まされないんだぞ」 翼「それは…」 バモラ「ストップストップ!オリベイラ、そんな事言われても言い返せる奴なんかいないヨー」 この日翼は何時も以上に厳しく詰問され、逃げ場を塞がれたがそこに助けが入った。 帽子を被った黒人GKバモラ(本名バウデニール・モンテイロ・ラモス)、陽気な彼は チームのムードメーカーであり翼に対し最も優しく接してくれる主力選手だった。 オリベイラ「庇うなバモラ。こいつを甘やかしてもいい事はない」 バモラ「だからと言ってルーキー苛めても良くないデショ。君はスパルタ過ぎるって」 翼「バモラさん…」 ネルソン「そうだオリベイラ。キャプテンはただ悪者になればいいだけではない」 オリベイラ「…運が良かったなツバサ。今日はこれ位にしておいてやる」 ザッ、ザッ、ザッ…
[73]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/15(日) 18:37:53 ID:lbb4EV7V 更にチーム最年長(41歳)のベテランである白人MFのネルソン・ベベットも仲介すると、 オリベイラは見るからに不承不承そうな表情で翼から離れていった。 最近のサンパウロFCで似たようなシーンが起きる事は珍しくない。 翼「ネルソンさん…すみません、二人とも…」 バモラ「なーに、気にしない気にしない。オリベイラも君も真面目過ぎるんだヨ」 翼「でも、オリベイラさんは俺が合流する前から色々便宜を図ってくれました… 皆が見ている前でわざわざ10番までくれたのに…俺がどれだけ迷惑をかけているか…」 バモラ「だから真面目すぎるって!サッカー人生山アリ谷アリ。どんなスーパースターだって 不調な時もあるし、スターになれそうだったけどなれなかった奴なんか星の数程居るサ!」 翼「それはそうですが…」 バモラ「なーに心配するなって!ツバサの腕ならサンパウロをクビにされても 別のクラブが拾ってくれるよ!年俸はぐぐっと下がっちゃうだろうけどネ!」 翼「そ、それは…励ましなんですか?」 バモラ「モチロン!おっといけない、オリベイラの機嫌を取ってくるヨ。ピンガ買ってやるかナー」 タッタッタッタッタッ… 次にバモラもオリベイラの後を追っていき、翼はネルソンと二人きりになった。 ネルソン「相変わらずだなバモラも…だがチームに一人はああいう選手が居た方がいい」 翼「そうですね…」 ネルソン「そして今の君は、チームに居ない方が良い選手なのも事実だ」 翼「………」
[74]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/15(日) 18:38:07 ID:lbb4EV7V バモラに分けてもらった元気を奪い取る様な言葉を浴びせるネルソン。 再び黙りこんだ翼は僅かに顔を顰めたが、それに構わず彼の言葉は続いた。 ネルソン「オリベイラは決して私怨で君を責めているんじゃない。 君をエースにしようと監督や経営陣に推薦したのが結果的に間違いだったとしても、 彼にはその程度では揺らがない程の実績と信頼がある」 翼「…はい」 ネルソン「オリベイラとバモラ二人が今日言った事は紛れもない事実なんだ。 このままチームのお荷物であり続ければ、給料泥棒として他のクラブに叩き売りされるだけだよ」 翼「分かっています」 ネルソン「分かっているならなんとかするんだ。もうあまり時間は残されていないよ」 ザッ、ザッ、ザッ… 翼「分かっている…分かっているよ。でも、どうしたらいいんだ…」 そしてネルソンも引き上げると翼はまた一人になった。 バビントン達も何時の間にか居なくなっており、彼しか居ないグラウンドはとても広く見えた。 翼「もし森崎なら、こんな時どうするんだろう…いや、あいつには”こんな時”なんて来ないのかも知れない。 失敗を嘆く事はあっても、それでスランプになるなんて想像できないな…今の俺を見たらあいつは きっと笑うだろうな。”日本は俺の力でワールドカップで優勝させてやるよ、安心してTVで見ていな”とか言って…」 地球の反対側でアジア予選を戦っている筈のライバルを思い、ため息がひとつ出てくる。 翼「あいつの事を思い出しても腹立たしくないなんて…今の俺って、何なんだろう…」
[75]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/15(日) 18:38:33 ID:lbb4EV7V いったんここまで。
[76]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/17(火) 00:12:29 ID:nKlThG9C 〜日本沖縄県某所〜 そしてもう一人の全日本ユースの主力選手、日向小次郎は今沖縄にいた。 ゴオオオオッ… ガシャン!! 日向「くそっ…がぁあああ!!」 グワアアアアアアアアアアアッ!! バッギュワァアアアアアアアアアアアアアアアン!!! ゴォオオオオオオオオ! ガッシャン! 全日本ユースから無断で失踪し、そのまま行方不明となっていた日向はかつて自分が 肥満児から超人に生まれ変わった猛暑の地、沖縄で自らに過酷なトレーニングを施していた。 わざわざトレーニングジムを自分専用に買い取り、体調調節の為にスポーツドクターとマッサージ師も雇い、 携帯電話で部下に指示を出す休憩時間以外は全て特訓に当てる偏った生活。 それは世俗的な金の流れを無視すれば禁欲的な修行僧の物にすら見えなくもなかった。 これらは全て自分が世界を獲るに相応しいストライカーであると言う自信を取り戻す為の行いだった。 そしてその甲斐あって元々人間離れしていた彼の身体能力は更に磨きがかかっていった。 しかし日向は満足できなかった。 グワアアアアアアアアアアアッ!! バッギュワァアアアアアアアアアアアアアアアン!!! ゴォオオオオオオオオ! ガッシャン!
[77]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/17(火) 00:12:41 ID:nKlThG9C 日向「(ダメだ…基本的なシュート力を上げるだけじゃ何時まで経っても変わらん…)」 日向の代名詞でもあるネオタイガーショット。フランス国際Jrユース大会で猛威を振るったそれは ブラジル帰りの森崎にあっさり防がれ、ジャパンカップでは複数のシュートに威力で上回られた。 日本の高校サッカーと言う敵が居なかった環境で鈍ったせいなのは確かだったが、こうして数ヶ月を 猛特訓に費やしてもまだネオタイガーショットの威力では横に並んだだけ。日向にはそう思えてならなかった。 日向「(追いついただけじゃ足りねェ。追い抜かなくちゃ意味がねェ。だが…どうしたら ネオタイガーショット以上のシュートを撃てるんだ?今更小細工に頼るなんて出来やしねえ…)」 グワアアアアアアアアアアアッ!! バッギュワァアアアアアアアアアアアアアアアン!!! ゴォオオオオオオオオ! ガッシャン! この悩みを胸に日向は今日も通常のボールの3倍重いブラックボールを蹴り続けていた。 そしてそれは偶然彼に光明を、なおかつ一人の少女に不幸をもたらす事になった。 日向はこのシュート練習をロードワークのコースの途中にある野球用グラウンドで行っていた。 勿論彼の財力ならサッカー専用グラウンドを借りるどころか立てる事すら出来るのだが、 面倒くさいと言う分かり易過ぎる理由で勝手に野球用グラウンドを使っていた。 当然サッカー用ではないグラウンドは荒れ、ボールを何度もぶつけられたゴール代わりの金網フェンスは凹んだが 彼のあまりにも堂々とした振る舞い、見ただけで分かる強靭な肉体、どう見ても優しさとは無縁の風貌、 そして轟音を上げるネオタイガーショットを見た者は皆見て見ぬフリをし、彼に文句など言おうとしなかった。 赤嶺「ちょっとあんた!」 日向「あん?」 だが今日現れた赤嶺真紀と言う少女は気も強く、正義感も尚強い性格だった。 しかも彼女はサッカーが嫌いなソフトボール少女だった。
[78]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/17(火) 00:12:54 ID:nKlThG9C 赤嶺「ここはサッカーじゃなくて野球のグラウンドよ。全くもう、大事なグラウンドこんなに荒らしちゃって」 日向「フン、何か文句あるのか?」 赤嶺「へ〜、そういう態度取る訳?だったらこうしてやるわ!」 キュポン! ジョボボボボボボ… 日向「わっ、俺の大好物のコーラを…!」 赤嶺「フフン、あんたも一応スポーツ選手なら炭酸飲料は体に良くないわよ。 飲むんだったら水かスポーツドリンクにしなさい」 日向「てめえ…」 赤嶺「はい、グラウンド荒らした罰よ。ちょっとキャッチボール手伝ってね」 ポイッ。 日向の注意を引き、有無を言わさず彼のコーラを捨て、更に野球用グラブを放り投げて押し付ける。 彼女を知る者なら間違いなく「ああ、流石男勝りの真紀だ」とその光景に苦笑したであろう。 彼女はこの日の行動を生涯悔いる事になる。 日向「………クククッ」 ブチブチブチブチッ! ビリリィッ!! 赤嶺「ヒッ!?」
[79]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/17(火) 00:13:08 ID:nKlThG9C 重ねて言うが、赤嶺真紀は男勝りと言われる程気が強い。一方で人懐っこい面もある。実は彼女は以前にも 何度かロードワーク中の日向とすれ違っており、同じ体育会系として話をしてみたいと思っていたのである。 男勝りの自分でもこういう屈強なタイプなら女の子扱いしてくれるのではないかと言う多少の下心もあった。 しかし彼女の前に居るのはそんな乙女心など察せられる訳がなく、例え察しても屁とも思わない男だった。 日向は投げ渡されたグラブを両手で紙の様に引き裂き、赤嶺の顔が恐怖に引きつるのを楽しむ様な男だった。 赤嶺「あ、あんた、あたしのグラブ…!」 日向「お前のグラブと俺のコーラじゃとても釣り合わねえよ。残りのお代は…そうだな、お前にキーパーをやってもらおうか」 ザッザッザッ… 赤嶺「ちょ、ちょっと、あんた女の子に暴力ふるうつもり!?」 日向「安心しろ、俺は男女平等主義者だ。それにこれはただのサッカー、ただのスポーツだぜ?ククク…」 赤嶺「(ヤ、ヤバい!こいつ完全にキチガイだわ!)」 日向がボールを蹴りながらゆっくりと近づいてきた時、ようやく彼女は身の危険を感じた。 ちなみに日向はこの時ネオタイガーショットを彼女の至近距離で放ち、間近で轟音を立てて脅かすつもりだった。 流石に実際に当てたら彼女の負傷は免れず、そうなると彼の力を持ってしても揉み消すのは面倒だからだ。 倫理面など最初からファクターではないが、余計な金も時間も使いたくない。日向小次郎はそういう男だった。 だが赤嶺真紀はそれを知る由もない。パニックを起こした彼女の目の前に立つ男は殺人鬼にすら見えた。 ここで彼女は二度目のミスを犯した。この時点で一目散に逃げるべきだったのだが、そうしなかったのだ。 赤嶺「あ、あんた、こんな事してタダで済むと思ってるの!?警察に捕まるわよ!」 日向「心配すんな、死にはしねえよ。多分な」
[80]2 ◆vD5srW.8hU :2010/08/17(火) 00:13:26 ID:nKlThG9C 次の数秒間の出来事はこういう流れで発生した。 グワアアアアアアアアアアアアッ!! 日向が(外すつもりで)ネオタイガーショットの為に利き足を振り上げる。 赤嶺「…このーーーーっ!!」 シュッ! キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン… 日向「@#$%^&*!?」 赤嶺が決死の覚悟で振り上げた爪先が日向の股間を直撃する。 グィイイイイイン… ピキピキピキッ! その衝撃で日向が更に前かがみになり、利き足が痛みが走る程高く上がり、一瞬停止してから振り下ろされる。 ブォオオオオオオオオオオオンッ!! ブゥオワッギュァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!! ジュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ… バキイ!ブチッ!フシューーーー… ドタッ… 日向「おおおおお…おおお、おおおおおおおお…!!」 そしてボールを蹴り終えた日向は股を両手で抑えながら地面に倒れて悶え始めた。
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0ch BBS 2007-01-24