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【魔界の】幻想のポイズン50【軽業師】
[704]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/18(月) 01:34:23 ID:??? こうして霧雨魔理沙が、かつての師匠に痛烈な罵声を浴びせられ突き放されていた頃。 一方でその魔理沙が歩いていった方角にある、スタジアムに併設されていた小さなサッカーコートには……。 博麗霊夢と博麗靈夢、先代の博麗の巫女と――現在の博麗の巫女。 今日の試合、キーマンになると思われていたが思っていた程は活躍しなかった10番と。 それなりに活躍はしていたがすぐに引っ込んだ10番が相対していた。 霊夢「で? もう若くない癖にJrユース大会に出ようとしている恥知らずが何の用かしら? そろそろ私達の宿舎に帰らなきゃならないんだけど?」 靈夢「ふぅ……今日の試合、勝てなかった割に随分と大きな口を叩くわね」 霊夢「勝ったじゃない、6−0で」 靈夢「選手間の話よ。 貴女、私に無様にボールを奪われたの覚えていないの?」 霊夢「あら? じゃあ、あんたは私にボールを零されてそのせいで失点した事を覚えてないのかしら?」 両者に共通をするのは、相手を蔑むような目をしているという事。 ただ唯一違うのは、靈夢の瞳には哀憫のような感情が混じっており。 逆に霊夢には、嫉妬と憎悪のような感情が混じっているという事だろう。 お互い全力を出す事を嫌い、努力もまた嫌い、才能に恵まれた背番号10番。 しかし、それでも尚、靈夢の前には霞む霊夢の才覚。 それが悔しく、悲しく、故に霊夢は今日の試合で証明しなければならなかった。 自身が靈夢以上の才覚の持ち主であるのだと……努力をせずに証明しなければならなかった。 博麗霊夢にとって、努力という行為を行う事自体が靈夢に対する屈服なのである。 かつて幼少の頃、努力をしても追いつけなかった姉に対し、才覚だけで勝てる事を今日の試合で証明しなければならなかった。 そして、今日の試合、霊夢は勝利をした――6−0という大勝で。 選手間の勝負にしても、あまり胸を晴れるような成績ではないが、それでも決して悪くは無い。 確かに1度は負けはしたが、逆に1度零れ球にしたことが上手く得点に繋がったのだ。 結果を見れば、靈夢の1勝と霊夢の1分けでは、後者の方がより価値あるプレイだったのは明白である。 だからこそ、霊夢はこの時、完全に自身の方が靈夢よりも優れていると思っていた。 既に引退をした身である靈夢に、勝ったのだと思っていた。
[705]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/18(月) 01:35:35 ID:??? しかし、靈夢はそんな霊夢の考えを把握しつつ……くすりと小さく微笑を浮かべると。 足元に転がっていたボールをリフティングし、口を開く。 靈夢「6−0は単純にチーム力の差ね。 あなたのチームは化け物が本当に多い。 世界屈指のストライカーが3人に世界屈指のキーパー。 二流ストライカーと三流キーパーしかいないウチが勝てる道理が無いでしょう」 霊夢「ハッ、傑作ね靈夢。 言い訳でもするつもり?」 靈夢「そうね、言い訳よ。 でも実際そうじゃない? 仮にあなたが私の立場だったら、今日の試合勝てた?」 霊夢「お生憎様。 そういう仮定の話は興味ないの。 要は結果が全てでしょ? あんたが負けて私が勝ったっていう結果がね」 靈夢「――ま、そう言うわよね。 私が貴女でもそう言ってたわ。 ……じゃあ、少し遊んで証明してあげましょうか? 私が貴女より優れているという事を」 霊夢「……は?」 靈夢の言い訳を鼻で笑う霊夢。 そして、そんな霊夢を見ても尚、涼しい顔をしている靈夢。 博麗霊夢が、己が靈夢よりも優れていると思っていたのに対して……。 博麗靈夢は、己が霊夢よりも優れていると――確信を持っていた。 間違いなく一選手として、自分は霊夢よりも優れている……霊夢はまだまだ、自身の足元にすら及んでいない事に。 靈夢「さて……まずは簡単なところで……ま、こんなもんかしら?」 パシュッ 霊夢「(……反町の、メイア・ルア?)」 リフティングしていたボールを一旦地面に落とし、走りながらボールを前に蹴り出す靈夢。 その動きは、今日の試合反町が使っていたドリブル技――メイア・ルアそのものであり……。 キック精度も、反町のそれとは遜色が無い。もしもこの場に観客がいれば感嘆の息を吐いていただろうが……。 しかし、霊夢はまるで何も感じるものが無い様子でそのまま見つめていた。 人の技を自分の物にするのは、霊夢の十八番。反町のメイア・ルアも、霊夢はやろうと思えば出来るレベルの技なのだ。 故に、今更驚くこともなく……むしろその程度で何を自慢しているのかと思わず噴出す。
[706]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/18(月) 01:36:50 ID:??? しかし、当然ながら――靈夢はこれだけでは終わらない。 靈夢「次は……これね」 ギュギュギュッ!! 霊夢「(ヒューイの曲がるパスか……別に今更そんなパスしなくったって、ドライブ回転かけたパスあるしねぇ)」 次に靈夢が見せたのは、ヒューイが得意とするカーブ回転を大きくかけたパス。 その曲がり具合と精度もまた、ヒューイのそれと遜色がなく。 ボールはゴールバーへと当たると、そのまま上空へと跳ね上がっていく。 さて次は何を見せるのか、大方パチュリーの賢者の石のような――カーブ回転をかけたオーバーヘッドか。 そんなことを考えながらゴール前へと視線を移した霊夢が見たものは……。 ダダダッ!! バッ!! グルンッ!! 霊夢「……え?」 靈夢「確か……こうだったわね……」 大きく助走をつけながら、天高く飛翔をする靈夢。 しかし、そのフォームはオーバーヘッドではない――膝を抱えながら前転をし、大きく両足を伸ばす。 そして、その縦回転で得られたパワーを両足の踵に込め……ボールへと叩きつけ。 渾身の力で、踵に全体重をかけるようにしながら一気にシュートを打ち放つ。 靈夢「ライトニング……リグルキック、だったかしら?」 バゴォンッ!! ゴガァァァァァァアアアッ!!!
[707]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/18(月) 01:37:55 ID:??? 涼しい顔をしながら蹴り抜いた靈夢は……そのままボールの行方を見る事なく、地面に着地するや否や。 即座に逆走をしてPA内を離れ出す。 それと同時――靈夢の放ったライトニングリグルキックはゴールバーに直撃し……。 靈夢の元へと、ピタリと戻ってきた。 そして、それを持った瞬間……靈夢は再び振り向きざま、シュートに向かう。 靈夢「……これが、オータムドライブ」 ドゴォッ! ギュルルルルルルルッ!! カァンンッ!! 次に放ったのは、幻想郷が誇る天才ストライカー――反町の必殺技、オータムドライブ。 普通のドライブシュートと殆ど違いが無いように思えるそのシュートだが……。 しかし、実際にはシュートコントロールが上手い反町だからこそ出来る。 集中し、狙いを定め、正確にゴールを射抜こうとする行為を上乗せする分、普通のドライブシュート以上の威力を秘めている。 つまり、シュートコントロールが上手い反町にしか出来ない、特別なドライブシュートなのだ。 だが――靈夢は、それすらも真似をした。 天賦の才と弛まぬ努力、どちらもあったからこそ極限までに昇華された反町のシュートコントロールと――。 まるで努力をした事の無い稀代の天才のシュートコントロールがほぼ同等だったからこそ出来た芸当。 そして――。 靈夢「最後に……ファイナルスパーク!」 霊夢「!!!」 バゴッ……ギュオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!! バシュウッ!! パァンッ! 最後に靈夢が放ったそれは――反町さえも撃つ事が出来ない、極大のパワーシュート。 テクニックを得る事が出来ないからと、極限まで力技を鍛え上げ。 通常のボールの何倍もの重さのブラックボールをけり続ける事で、ようやくにも会得をした魔理沙の必殺技。 しかし、そのシュート――ファイナルスパークもまた、即座に靈夢によって模倣をされていた。 ボールを蹴る時に漏れる閃光、ボールを蹴った後に出る轟音、そして、ゴールネットを射抜く快音。 その全てが魔理沙のそれと同様――否、基礎的なシュート力が高い分。 それ以上の威力へと昇華されたものとなっていたのだった。
[708]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/18(月) 01:39:19 ID:??? 靈夢「ふぅ……ふぅ……。 流石に超級のシュートを何本も撃つと疲れるわね」 霊夢「…………」 ゴールネットを突き破り、壁に当たり破裂したボールの破片を拾い……。 肩で息をしながら、笑みを浮かべつつそう呟く靈夢。 その靈夢のプレイを見ていた霊夢は……完全に言葉を失っていた。 誰かの技を一度見ただけで模倣をする――それ自体は、霊夢の得意技でもある。 しかし、その模倣をするというものも……限度があった。 彼女は、パワー系の技は決して使えないのである。 持ち前のセンス――即ち、テクニックや勘のみでプレイをする霊夢。 彼女の唯一と言っていい弱点は、力技がまるで使えないというただ1点であった。 故に、彼女は決してファイナルスパークやライトニングリグルキックのような技は模倣出来ない。 そして、反町程のシュートコントロールが無い彼女は――オータムドライブもまた、模倣出来ない。 だが、靈夢はやってみせた。 今、霊夢の目の前で繰り広げられた3本のシュートは――間違いなく、本人達のそれと遜色が無いもの。 それは、なんだかんだ言いながら1ヶ月近く同じチームでやってきた霊夢が一番良くわかっている。 博麗靈夢は、博麗靈夢には出来ない事を……やってのけてしまったのである。 霊夢「……なんで」 靈夢「なんでも何も……出来るのだから仕方ないじゃない?」 そう、出来るのだから仕方ない……靈夢にとっては、ただそれだけの事である。 霊夢がテクニックと勘"しか"持って生まれなかったのに対し。 靈夢は霊夢が持っていなかったありとあらゆる――全てのものを持っていた。 元々の才能自体が、まるで違うのである。
[709]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/18(月) 01:40:20 ID:??? もしも靈夢が見せた技が、パワー系であろうと――例えば、非常に威力の低いもの。 既に威力が不十分なものと言える魔理沙のマスタースパークや、リグルのリグルキックなら霊夢もここまでショックは受けない。 だが、靈夢の見せた技は、間違いなく世界でも屈指の威力のものばかりであり……。 大会で彼女が使えば、脅威となるのは目に見えている。 何より、靈夢に出来て自分に出来ないという事実は――試合に勝ち、完全に靈夢の上位に立てたと思っていた霊夢にとって。 その認識を根底から崩すようなものであった。 靈夢「ま、大会を楽しみにしてるわよ霊夢。 あなたが私に勝てなくても、あの反町君っていう男の子と早苗ちゃんっていう女の子がいれば……。 まあ、私達にも勝てるでしょうから」 霊夢「………………」 そんな霊夢の肩を軽く叩きながら、靈夢は言いたい事は全て言い終えたとばかりにその場を去ってゆく。 そして、霊夢は――しばらくその場に微動だにしないまま、ただ佇んでいた。 霊夢「………………」 今日の練習試合には、勝った。 そして、大会でも――恐らくは、勝てるだろう……と、霊夢は踏んでいた。 強力なストライカーである反町と、セービングだけを見れば鉄壁と言える早苗。 その2人がいるだけで、幻想郷Jrユースは間違いなく世界でもトップレベルの実力は持っているのだから。 しかし――それで、自分は靈夢に勝ったと証明が出来るだろうか。
[710]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/18(月) 01:41:27 ID:??? 霊夢「………………」 今日の試合で霊夢が愉悦に浸れたのは、あくまでも靈夢が失態を見せ続けていたからだ。 だが、もしも……もしも、靈夢が下手をこいていなければ……少し本気を出して、全てのプレイを本気でやっていたら……。 自分は今日の試合で、靈夢に完全に勝てたと言えただろうか? 霊夢「………………」 今日の試合、自分は間違いなく本気だった――少なくとも、靈夢を相手にするときは、全力だった。 しかし、靈夢が手を抜いていたのは……先のプレイから見ても明白。 引退をした今でも、靈夢と霊夢との間にある実力差は……大きい。 霊夢「……っ!!」 バゴォッ!! パサァッ。 霊夢は思わず、近くに置いてあったボールを蹴った。全力で蹴り抜いた。 だが、ボールは先ほどの靈夢が放ったファイナルスパークのような轟音をかきたてる事もなく。 ただ、綺麗な音を立ててゴールへと突き刺さるのみ。 霊夢「(私は……負けてない……靈夢には負けていない……! 靈夢には負けていない……!!)」 しかし、霊夢には靈夢の出来た事が、出来なかった。 そこが、霊夢の才能の限界であった。 霊夢「………………っ!」 決して霊夢は弱くは無い――否、むしろ……彼女は間違いなく、一流プレイヤーと呼べる選手だった。 しかし、そんな肩書きや何かは、霊夢には興味の無い事。 霊夢の胸中にあるのはただ、何故自分は靈夢に勝るものが1つとして無いのか……。 何故やる事、為す事、容姿や何かも全て靈夢にそっくりでありながら……。 それら全てはあくまでも靈夢の劣化版のようなものでしかないのかという事実に対する、やるせなさだけであった。
[711]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/18(月) 01:43:27 ID:??? その後、霊夢は……袖でごしごしと瞳を拭った後、その場を足早に去っていった。 彼女はまだ、立ち直れるだけの気力が残っていた。 靈夢の才能を見せ付けられ、格の違いを見せ付けられても、まだその闘志は折れなかった。 しかし、この場を見ていた1人の少女だけは――違った。 魔理沙「……は、はは」 先ほど魅魔に突き放され、途方に暮れて歩き回っていた少女――霧雨魔理沙。 彼女は、偶然にも、靈夢が霊夢に自身の実力を見せる場に居合わせた。居合わせて、しまった。 そして、見た。霊夢の放つ、ありとあらゆる技という技。 当然ながら、その中に――自身が苦労をして作り上げた、必殺技がまぎれていた事も。 魔理沙「……………………」 瞳は虚ろに虚空を見つめ、口元には張り付いたように小さな笑みが浮かぶ。 魔理沙「傑作だ……ああ、傑作だ……。 面白すぎて、腹が捩れる……」
[712]森崎名無しさん:2011/04/18(月) 01:44:21 ID:??? シゴクハタノシイヨ
[713]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/18(月) 01:44:35 ID:??? 帽子を目深に被り、心底楽しくなさそうにそう呟きながら……魔理沙は小さく嗚咽した。 それと同時、地面のアスファルトに、2、3滴の水滴が落ちた。 それから、魔理沙はしばらくそこで……声が枯れるまで、空笑いを続けた。 そして、段々アスファルトに落ちる水滴の量が増え……やがてそれも止まると……。 ゆっくりと、のろのろと、その場を立ち去り始めた。 反町やリグルにも敵わず、このままレギュラーを落ちるという危機感。 落ちた後、間違いなく自身に刺さるであろう周囲の嘲笑に対する恐怖心。 魅魔に突き放され、見捨てられたという絶望感。 そして、靈夢に綺麗なまでに完璧に自身の技を模倣されたのを見て沸いた……喪失感。 強く張っていた糸ほど、切れた時の反動は大きい。 危機感と恐怖心を精一杯の虚勢で今まで隠し通していた魔理沙は、絶望感と喪失感を同時に覚えた事で。 今まで自身がやってきた事も、これからの自分の行く末も……全てがただただ崩壊していくのを感じていた。 瞳から光が消え、目を真っ赤にし、魔理沙は歩く……宿舎が無い方角へ。 涙もとっくに枯れ果てた魔法使いが……果たしてどこへ向かっているのか。 それは、本人にもわからない事だった。
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0ch BBS 2007-01-24