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【魔界の】幻想のポイズン50【軽業師】
[746]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/20(水) 23:56:41 ID:??? 既に日が暮れたフランス市内を――霧雨魔理沙はただふらふらと歩き回っていた。 どこに行くアテがあったという訳でもない、何がしたかった訳でもない。 ただ、魅魔に新たな技を教えてもらえかった今――幻想郷Jrユースにはもはや魔理沙の居場所は無かったし。 何より、魅魔に突き放され、靈夢に圧倒的な才能の壁を見せ付けられた今――何をする気も起きなかっただけである。 魔理沙「………………」 やがて霧雨魔理沙は、ある川にかかった橋に持たれかかり……ゆらゆらと揺れる水面を眺めながらそこで考え事をしていた。 近くに電灯はあるものの、しかし、数が不十分な為に辺りは薄暗く。 魔理沙が見つめる水面も、暗く、濁り、じっと見つめていると吸い込まれそうな程だった。 いや、事実、魔理沙はこの時少しずつその闇に染まる水面へと吸い込まれかけていた。 疲弊した体でフランス市内を動き回った為に、肉体的にも精神的にも、既に彼女の体は限界に程近かった。 魔理沙「………………」 虚ろな瞳を水面に向け、魔理沙は考える。 持つ者と持たざる者に人間や妖怪を分けるならば、魔理沙は間違いなく、"持たざる者"だった。 それは弾幕ごっこなどにおいてもそうだったし、サッカーにおいてもそう。 霧雨魔理沙には、華やかな才能というものは決定的に欠如していた。 例えば、リグル=ナイトバグはエースとしての誇りと自覚を自身の力へと変換する能力を持っていた。 例えば、十六夜咲夜は特定のエリアにいる時無条件で動きがよくなるという特性を持っていた。 例えば、東風谷早苗は奇跡的なセービングを見せる事が出来た。 例えば、反町一樹はキーパーの苦手なコースを即座に判別し、的確にそのコースを射抜くセンスを持っていた。 例えば、博麗霊夢は、それら全てを無効化してしまうような凶悪な力があった。 しかし、霧雨魔理沙には何も無い。 気持ちのよいくらいに、何も無かった。
[747]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/20(水) 23:57:50 ID:??? 前途した者達の中には、努力によってその力を手に入れた者もいる。 というよりも、大半が努力によってその力を手に入れた者達だ。 しかし――才能があったからこそ、努力によってその力が開花をしたのは事実。 だが、霧雨魔理沙には、いくら努力をしても開花するような才能というものは1つも無かった。 それでも頑張れば、必ず霊夢たちと対等な立場で戦い――勝つ事だって出来る。 今まではそう信じていたし、そう思っていたからこそ戦ってこれていた。 だが、それも――魅魔に教える事も無いと、暗に伸びしろというものが無いと言われ。 靈夢のあまりにも凄まじすぎる才能を見ては、完全に闘志というものが消え失せてしまっていた。 魔理沙「そうだよな……よくよく考えてみれば、私があいつらと対等に戦えるなんて考えていた事自体が間違いだ……」 消えかかった声で、そう呟く魔理沙。 魔理沙「咲夜は元々は外の世界にいたらしい、言ってみれば幻想郷じゃそれだけで特別な人間。 早苗はそれに加えて外の世界の偉い巫女さん。 妖夢だって半人半霊……小さい頃は凄い剣豪の爺さんに指南を受けてたんだ。 今は私の方が強くても、これからどんどん伸びるのは違いない。 霊夢に至っては、博麗の巫女……次元が違いすぎる」 自身の友人達の名をぽつぽつと出して、乾いた笑い声を出す。 それに対して、自分は果たして特別な人間だろうが――答えは、否。 魔法も生まれながらにして使えるのではなく、あくまで魅魔に教わったものと研究によって使えるのみ。 しかも、普通に使う事などは出来ず――魔法の森にあるキノコを使ってでなくては魔法を駆使する事は出来ない。 生まれは人里ではそれなりに有名な大商店であり、それは一種特別とも思えたが――それもあくまで人の世ではの話。 博麗の巫女として生まれた霊夢に比べれば――そして、それ以外の者達に比較をしてもあまりにも平凡な出生だった。
[748]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/20(水) 23:59:35 ID:??? 魔理沙「私だけが違う……」 博麗霊夢にも、十六夜咲夜にも、魂魄妖夢にも、東風谷早苗にも。 才能があり、特別なものがあり――しかし、霧雨魔理沙にだけはなかった。 その事実が、魔理沙に対して大きな疎外感と、喪失感を与えていた。 自分だけが霊夢たちとは違うという事実を、"凡人"霧雨魔理沙は改めて悟り。 やがて涙を流しながら、小さな嗚咽を繰り返しつつもう一度口を開いた。 魔理沙「私だけが……違うんだ……!」 悔しさと、それ以上の悲しさを含んだその言葉を吐いた後。 魔理沙はじっと見つめていた水面へと吸い込まれていった。 今まで自分がやってきた事が全て無駄なのだと悟り、そして、霊夢達に置いていかれる事を悟った今。 彼女の絶望は計り知れず――だからこそ、このような愚行に走ってしまったのだろう。 バシャアアアアアアアアアアアアアアッ!! ドボォッ!! 黒と白の衣服を着込んだ1人の少女が水面に叩きつけられ、派手に水の柱が立ち上る。 やがて、音を聞きつけた現地の人間が辺りを取り囲み、救急車などがやってきて、その少女は救出された。 彼女にとって幸か不幸かは定かではないが、とにもかくにも、彼女は救出された。 しかし、肉体はともかく、精神はまるで救われていない状況で――。 明くる日の午後、この事件の一報が幻想郷Jrユースの宿舎に届けられてからも。 魔理沙の意識は戻らず、ただうめき声を出しながら苦しげに眠り続けるのだった。 暗く淀んだ川の底に、意識も心も置いてきてしまったように。
[749]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/21(木) 00:00:37 ID:??? ―― 幻想郷Jrユース 宿舎 ミーティングルーム ざわ…… ざわ…… 咲夜「……ごめんなさい、よく聞こえなかったわ。 もう一度言って頂戴」 輝夜「……昨日、ここから数キロ離れた川で……少女が溺れているのが発見されたわ。 そして、その少女の身元を探ろうと地元の警察……まあ、幻想郷で言えば博麗の巫女かしら。 そいつらが持ち物を確認したところ、ここの入行証が出てきた――。 それでそいつらがここに連絡をしてきて……その少女の特徴を聞いた所……。 どうにも、昨日から姿が見えなかった魔理沙らしい事がわかったわ」 反町「(そんな……俺が見送った後……魔理沙さんに何があったんだ……?)」 日を一日進め、魔理沙が川へと投身を図ってから明くる日の午後。 前日、とうとう帰って来なかった魔理沙を一部の者は心配し。 また一部の者達は子供じゃないんだからすぐに帰って来るだろうとタカをくくっていたのだが……。 しかし、監督である輝夜が珍しく真剣な面持ちをして語る事の次第を聞き。 一同はざわめきながら、一体魔理沙に何があったのかと動揺をする。 妖夢「そ、それで魔理沙は無事なんですか!?」 輝夜「一応ね。 意識は戻っていないみたいだけど……体に別状は無いようだわ。 現在、身元を受け取りにイナバ(うどんげ)と松岡コーチが行ってくれてるから」 リグル「ねぇ、具合が悪くなって死んだら食べて……」 カスッ!! リグル「ひえぇっ!?」 咲夜「………………」 リグル「ううう、なんだよメイド……」
[750]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/21(木) 00:01:49 ID:??? 一応命に別状は無いと聞き、安堵をする妖夢やにとりといった魔理沙と親しい者達。 また、そうでない者達も、殆どは見知った者が不幸に見舞われるのはやはり嫌なのか。 ほっと安堵のため息を吐くのだが……。 人間を食べて生活をする為にそういった価値観が他の者達と違うリグルやキスメといった野良妖怪勢。 また、そもそもの前提として。 妖精であるが為に死や生といったものの概念が希薄なチルノやヒューイといった妖精達は特に何かを感じている様子はなく。 むしろ、魔理沙を嫌悪している者達でそういった考えを持つ者達は、喜んでいる節もあった。 それに対し、咲夜は無言でキツい視線を送り……銀のナイフを投擲する。 無論、ある程度の理性は残っている為、当てる事はなく……しかし、脅しには十分となる程度に近い場所に刺さるようにである。 にとり「命に別状が無いなら安心だよ……うどんげもついてるんだよね?」 輝夜「ええ、あいつもあれで永琳の弟子だから……まあ、安心して頂戴。 ただまあ……当然ながら、魔理沙はこれで大会には間に合わないわ」 早苗「それで、これからの予定はどうするんですか?」 輝夜「うん……とりあえず、魔理沙はこっちに戻ってき次第に幻想郷に帰すつもり。 ここに置いておいても、良くなりはしないし……。 永遠亭に移して、ゆっくり養生してもらうつもりよ」 永琳、それにうどんげはいないが……それでも永遠亭にはまだ幾多の因幡達がいる。 簡単な医療ならばその因幡達でも出来る為、永遠亭に移し治療に当てるとその永遠亭の主が言い。 これを聞いて、にとり達も納得をし安心をするのだが……。
[751]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/21(木) 00:02:51 ID:??? 霊夢「……じゃ、私も行くわ」 咲夜「そうね……サッカーなんてしている場合じゃないわ」 早苗「(咲夜さんも一緒というのは気がかりですが……)私も戻ります。 魔理沙さんが心配です」 妖夢「魔理沙が戻り次第、私達も一緒に戻りましょう」 反町「……へ?」 不意にそう言いながら、パイプ椅子から立ち上がったのは――4人の少女。 一瞬、反町が間抜けな声を上げながら声の方向へと視線を向ければ……。 魔理沙と仲たがいをしていた筈の霊夢に、先ほど静かにリグルに向けてナイフを投擲した咲夜。 それに、心底不安そうな表情を浮かべる早苗に、口を真一文字に結んだ真剣な表情を浮かべた妖夢。 魔理沙と縁深い者達、4人の人間(一部半分だけ)が、口々に魔理沙と共に幻想郷に戻るという意思を込めた言葉を吐いていた。 これには当然ながら反町を含め、殆どの者達が驚いていたのだが……。 しかし、輝夜だけはこの4人が言い出す可能性を考えていたのか、特に狼狽はせず。 ただ、思案をするかのように顎を撫でながら口を開く。 輝夜「……それは4人共、このチームを離脱して魔理沙の看病に当たるって事かしら?」 早苗「そうです。 ……許可、願えますよね?」 輝夜「………………」 反町「………………」 A.「ちょ、ちょっと待った! そんなに大量に抜けられちゃ大会が……」 ちょっと待ったをかける! B.「そんなに大人数で行く事も無いでしょう?」 冷静に看病に当たる人数の過剰さを指摘する C.「あんな奴の為にわざわざ看病する事なんか無いでしょう」 行く必要は無いと言い張る D.「監督、行かせてあげましょう。 今はサッカーよりもそっちの方が大事です」 ここは行かせてあげようと提言する E.「っていうか大会出てる場合じゃねぇ! 大会辞退して幻想郷に俺達も戻りましょう!」 そうだ、幻想郷に帰ろう F.「………………」 ここは監督の判断に任せよう G.その他 自由投票枠 先に3票入った選択肢で続行します。 age進行でお願いします。sageではカウント出来ません。
[752]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/04/21(木) 00:03:56 ID:??? >>736 どうもどうもです。これからもよろしくお願いします。 いやぁ、これがJOKERの恐ろしいところなんですよ。 ただ、翼君本人はそれなりに幸せそうで嬉しそうなので良かったです。 石崎あたりの翼派閥はかなり狼狽しているでしょうが。 >>737-738 ひゅうが「そりまち おれはかねもちだ。 かねもちはいいぞ」 >>741-743 帰って来た頃には老け顔になって爪楊枝銜えているんですね。わかります。 >>744-745 にとり「河童とクライフォートさんの技術は世界一ィィィィ!!」
[753]森崎名無しさん:2011/04/21(木) 00:04:07 ID:KxF/Qr7U D
[754]森崎名無しさん:2011/04/21(木) 00:04:33 ID:CIUEEsTA D
[755]森崎名無しさん:2011/04/21(木) 00:05:10 ID:??? 失踪だと思ったら、まさか身投げとは…
[756]森崎名無しさん:2011/04/21(木) 00:05:18 ID:sjgMXh1+ B どこまでもたたってくれるなあ、白黒
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0ch BBS 2007-01-24