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【楽な戦い】Another-C_4【なんて無い】
[910]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/09(月) 21:37:03 ID:??? アルシオン「・・・・・・」 ??「どこにも傷はないか?」 アルシオン「・・・!」 絶句していた所で突然に言葉をかけられ、アルシオンは珍しく慌てた。 だが恐らく目の前の少年は命の恩人と言って良いだろう。 慌てていても最低限の礼くらいはしなければならない。 アルシオン「お陰様で何処にも怪我はありません。 助かった・・・感謝している。」 一言目は一応考えたような文句を言う事が出来たが、二言目は完全に独り言のようになってしまった。 言い直すべきかと一瞬だけ検討したが、すぐに取りやめた。 それよりも先に相手の方が言葉を紡いできたからだ。 そしてその言葉に、アルシオンは警戒と緊張の糸を一瞬で張り巡らせる事となった。 ??「無事なら結構だ・・・お前に怪我をされてはたまらないからな、“アルシオン”。」 アルシオン「!!!」 アルシオンは表舞台に立った事がなかった。 常に暗い夜道を歩いて来た人間だ。 特別な知り合いでもない人物が、そんな自分の名を知っている筈が無いのだ。
[911]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/09(月) 21:38:07 ID:??? それでもアルシオンは思い当たる節を何通りも必死で考えたが・・・ 結局解答は目の前の少年には突き当たらなかった。 アルシオン「お前は誰だ? 何故オレを助けた?」 仕方なく、アルシオンは相手へストレートに問いかけた。 考えて判らない事をいつまでも考えているのは無駄だと観念したからだ。 問われた方の少年は一瞬キョトンとし、直後に笑い出した。 ??「ハハハッ、そうかお前はオレを知らなかったな。 なるほど、その強張った表情も頷ける。 そりゃあお前のような生い立ちの人間が、いきなり自分の名を呼ばれれば警戒もする。」 ヒーッ、ヒーッ、と一頻り笑い終えると改めて少年はアルシオンと向き合った。 ??「オレはユブンタイだ、ナムリス・ユブンタイ・・・」 アルシオン「ユブンタイ! あの男か・・・・・・!」 あまり良い印象を持っていない・・・どちらかと言うと嫌っている人間の名が飛び出し、 アルシオンは安堵すると共に若干顔を顰(しか)めてしまう。 ナムリス「そう、今思い浮かべた奴・・・お前の爺さんのパートナーの息子がオレだ。 そして・・・」 『お前のチームメイトだ』とナムリスと名乗る少年は言葉を続け、手を差し出してきた。 アルシオンはこれまでの人生の中、少なくとも覚えている限りこんな奴は居なかったと思った。 先程の笑いとは違い・・・これほど邪悪で不敵に笑う人間を、彼は今まで見た事がなかった・・・実際に。
[912]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/09(月) 21:43:53 ID:??? 本日はここまででーす。 次回は明日か明後日でしょうか…。 取り敢えずそろそろトンデモ展開にレディーゴーです。
[913]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:18:27 ID:??? ユブンタイの名は彼にとって好意を抱くような物ではない。 ジョアンと遣り取りをするナジーブ・ユブンタイの姿から、その人となりはある程度理解していたからだ。 目的遂行の為には手段を選ばない、金も人も等しく自分の道具であると固く思い込んだ人間であり・・・ アルシオン自身も彼にそのような目で見下ろされている事には気付いている。 その息子であるナムリス・ユブンタイも父と同様に尊敬できない人間性と直感するが・・・ しかしこの場面においてナムリスはアルシオンにとって命の恩人という事になる。 それゆえアルシオンは目の前に差し出された手を一応握り返した。 だが同時に零れた問いはおよそ恩人に対しては出る事のない、懐疑的な物であった。 アルシオン「何故オレを助けた? ・・・いや、何故都合よくオレを助けられたと聞くべきか?」 だが同時に零れた問いはおよそ恩人に対しては出る事のない、懐疑的な物であった。 偶然の出来事としては考えられないようなシーンにアルシオンは置かれている。 それが全て目の前の少年が・・・いや、彼の父が演出した物ではないのかとアルシオンは考えたのだ。 しかしこの問いに対し、相手は表情を何ら崩す事なく平然と返してきた。
[914]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:20:03 ID:??? ナムリス「ふふん、なかなか挑戦的な問いをするんだな、アルシオン。 けれど・・・お前は“何故自分が命を狙われたのか”とは考えないのか?」 アルシオン「なに・・・?」 意外な返答であった。 “自分が命を狙われる”という現象をアルシオンは予想していなかった。 ナムリス「おかしいじゃないか。 お前は子供の頃から夜を歩いて来た。 それは歩かなければいけない理由があったからじゃないのか?」 アルシオン「・・・・・・!」 その言葉はアルシオンにとって返答に窮する物であった。 それはジョアンとの長い旅における基本的な決まり事であった。 何故かと聞いてもジョアンは『昼に歩けるようになったら教える』と優しく言うだけ・・・ ゆえに、アルシオンはこの旅路のスタート地点・・・さらにその前については思考を停めていた。 ジョアンに対する信頼と愛情がそうさせて来たわけだが・・・ こうしてジョアンと自分以外の人間が口にする事で、アルシオンは揺らされてしまった。 そして同時に・・・神聖な領域に土足で踏み込まれたような怒りも覚えた。
[915]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:22:35 ID:??? ナムリス「ふふ、まあそれは良い。 それよりもオレからお前に聞いてみたい事がある。 この問いの先に先程の答えもある・・・だから耳を傾けておけ。」 アルシオン(グッ・・・コイツ・・・・・・!) どうでもいい事の様に話題を変えようとするナムリスの言葉に、アルシオンはいよいよ不快になってきた。 それでもこちらが気に留めるように付け加えられた言葉は、実に効果的にアルシオンの関心を誘う。 アルシオンはその不快感にも拘らず、ナムリスの言葉から耳を背ける事が出来なくなっていた。 アルシオン(クソッ・・・!) こうなればと腹を据え、何が飛び出してくるのかと身構えたが・・・ ナムリスが口にした問いというのは、アルシオンにとって全く意味の解らない物だった。 その問いとは・・・ ナムリス「“ゲンソーキョー”という単語に覚えはあるか?」
[916]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:23:36 ID:??? そう言った後、ナムリスは付け加えるように続ける。 ナムリス「ファンタジーホームでもネバーランドでも良い、そういった類の言葉だ。」 アルシオン「・・・知らんな、聞いた事もない。 いや、ネバーランドは映画か何かで耳にしたかも知れない。」 ナムリス「そうか・・・。」 やや落胆した様子のナムリスに、アルシオンは少なからず不思議に思った。 これまで全て意味有り気にアルシオンの興味を(怒り、嫌悪を買いながらも)誘っていたナムリス・・・ その彼が聞いてみたいと宣言し、わざわざ関心を買うように口添えてまで放った問い。 それが意味不明の単語を知っているか否か・・・なのである。 しかも知らないと答えたその反応には実感が伴なっているように思えた。 ナムリス「まあいい・・さ・・・・・。当然と考えていた事が肯定されただけだ。」 アルシオン「なんだ・・・? その・・・ゲンソーキョーとは・・・」 目の前で見せられた反応のせいで思わずアルシオンはそう口にし・・・そして後悔した。 返ってきたナムリスの答えが輪をかけてバカバカしい物だったからだ。
[917]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:24:51 ID:??? ナムリス「・・・解明出来ないようなオーバーテクノロジーやオーパーツが存在する場所だ・・・多分な。」 アルシオン「・・・・・・何を言っているんだお前は?」 思わず溜め息を吐いてしまった。 失笑すら出ない・・・不快な思いを我慢して相手をしていた自分こそが馬鹿に思えた。 力も抜け、ホテルに戻っていい加減休みたいという気持ちが生まれてくる。 ・・・同時に、この瞬間まで忘れていた数日前からの不安感も再発した。 アルシオン「じゃあな・・・病院は早く行った方がいいぞ。」 ちょっとだけ皮肉を言い捨てて、アルシオンはナムリスに背を向けた。 ナムリス「待てよ・・・。」 アルシオン「悪いがお前の妄想に付き合えるほど元気じゃない。」 ナムリス「数年前、ユブンタイの施設で体力テストをした事は覚えているな?」 アルシオン「・・・・・・」 そのテストについては確かにアルシオンも記憶していた。 確かユブンタイがジョアンに対して破格の出資をする対価の一つとして要求した、データ採取の為の試験だった。
[918]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:26:30 ID:??? スポーツ医学、スポーツ科学の一人者と呼ばれる大人達がが何人も見守る中・・・ 時に原始的、時に理解不能な装置を用いて言われるままにアルシオンは自らの体力を披露した。 そして一部ではあるがサッカーボールを用いた試験も行われた記憶がある。 アルシオン「それについては覚えがある・・・。 確か対年齢で世界屈指の身体能力、サッカー技術があると言われたな。」 カール・ハインツ・シュナイダーやファン・ディアスと言った、当時から既に名を上げ始めていた 未来のスターと思しき選手達と比較しても、少なくとも同等以上の実力と断言された結果に、 ジョアンが甚(いた)喜びを示していたのが強く印象に残っている。 アルシオン「それで・・・?」 ナムリス「そのテストの結果において、1点だけ不可解な項目があった・・・。 どの分野の専門家も匙を投げたほど、文字通り手に余る結果だよ。」 アルシオン「はぁっ・・・?」 ナムリス「オーバヘッドキックだ・・・お前が放つオーバーヘッドキックは人智に余る代物の筈だ。」 アルシオン「・・・・・・!」
[919]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:27:33 ID:??? アルシオンは内心ハッとした。 ナムリスが口にしたオーバーヘッドの事はアルシオンにも心当たりがある。 いつからそれが出来るようになったのか分からない・・・ それを実行する時、いつも頭に浮かぶ不思議な言葉・・・ 以降、アルシオンはナムリスの言葉を一笑に臥す事が出来なくなった。 ナムリス「ある一定の条件で放たれたお前のオーバーヘッドは、物理学的にも生物科学的にも説明がつかない。 マグレか何らかの外乱に依って齎(もたら)された結果だと奴等は結論付け、データは秘匿された。」 アルシオン「・・・それで貴様は何が言いたい?」 ナムリス「この世には、何億人か・・・何十億人かに一人、そう言った原理とは外れた人間が存在している。 何処からか漏れ出したゲンソーキョーのオーバーテクノロジーを手に入れた人間か・・・ さもなくば、ゲンソーキョーに身を置いた経験のある人間か・・・」 アルシオン「ふう・・・まさかオレがそれに該当するとでも言いたいのか・・・? 変なドラッグでもやっているんだろ? 本気で病院に行く事を勧めるぜ・・・」 ナムリス「お前はある時期を境にして記憶が無い。 お前のサッカー技術のほとんどはジョアンコーチに叩き込まれた賜物だろうが・・・ その才をコーチに見出させる程度には磨かれていなければならなかった筈だ! 当時生き死人となっていたジョアンコーチに希望を与える程度にな! その秘密がきっとお前が失った記憶の中にあるんだ!」
[920]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:28:37 ID:??? アルシオン「バカバカしい! 夢物語を語るのもいい加減にしてくれ! なんだ貴様は!? 突然計ったかのように現れて、言いたい放題好き勝手に!!」 ナムリス「協力しろアルシオン! オレと一緒に来い! そうすればお前の知りたい事も全て教えてやる!」 アルシオン「黙れ! 貴様はもう喋るな!!」 耳を被う行為の変わりにアルシオンは怒鳴り叫んだ。 行為を実行すれば弱みを見せる事になる、それでは抗えなくなる。 しかしナムリスはアルシオンの叫びに耳を貸さなかった。 ナムリス「オレはお前よりも、ジョアンよりもお前の事を知っている! お前が何故命を狙われ、何故夜を生きなければならなくなったかも! お前が数日間煩い続けている悩みの原因も! お前が誰を憎むべきなのかもな!! その全てを教えてやる! もう一度言う、一緒に来いアルシオン!」 アルシオン「誰が!! 誰が・・・・・・そんな事・・・・・・!」
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0ch BBS 2007-01-24