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異邦人モリサキ
[296]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:44:19 ID:??? 「やっぱり、俺にはまだ早いんだよ……」 『帰るなら止めないけどね……まあ、よく頑張った方じゃない』 四軒目の、流麗な筆記体で新トルキア語ではない文字が躍る看板を三十秒ほど眺めた森崎が そう漏らすと、ピコがそよ風を微塵に刻んだような小さな小さなため息をついて、 森崎の背をぽんぽんと叩いた。 その小さな手の感触に押されるように踵を返した森崎が、とぼとぼと坂を下り出した、そのときである。 「あらン? ……ちょっと、そこのお兄さン」 蕩けるような声とともに森崎を包んだのは、くらくらするような甘い香りだった。 鼻腔の奥にまとわりつくように濃密なそれを麝香だと森崎が看破したのは、 かつて幾度か招かれた高級娼館に漂っていた匂いに酷似していたからである。 振り返ると、そこに女がいた。 「―――」 森崎が、息を呑む。 女性の、女性たる所以をその体一つで表現するような、それは女であった。
[297]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:45:20 ID:??? 波打つ長い髪は陽光に融けてそれ自体が宝飾品であるかのように輝く黄金。 匠が生涯を賭けた一筆に引かれたような切れ長の瞳から真っ直ぐに鼻筋を下ると、 ふっくらと柔らかそうな唇は鮮烈な朱を引かれ、微笑のかたちに囚われている。 細い喉から流れるような肩のラインは青空の下に晒すことが赦されない罪業であるかのように 白くたおやかで、露出した二の腕に填められた大ぶりな黄金の腕輪は、まるでこの女を 誤って天へと登らせぬよう、大地に繋ぎ止めようとする風ですらあった。 ロングノーズの黒いブーツと萌黄色の長い薄布のドレープとに包まれた足は 御簾の向こうにその影だけを映す高貴な姫君のように脚線美だけを浮き上がらせ、 その魅惑の肌を軽々と覗くことを許さない。 衝動に任せて抱けば折れてしまうだろうと思わせる柳腰から視線を上げれば、 そこには楽園が揺れている。 南国の果実の皮を剥いて中からこぼれ出た白く甘い果肉のような、馥郁たる二つの膨らみに、 森崎の目はピンで留められたように固まっていた。 動けない。否、動くことを網膜が、視神経が、それを司る脳髄が、いま視線を動かすことを 徹底的に拒絶していた。 ふわふわと、ふるふると、おそらくは女の呼吸とともに上がり、下がり、揺れるそれを、 森崎の中の男性と呼べるすべてが求めていた。 世界から音が消える。 温度が消え、匂いが消え、色が消え、ただ視覚と触覚だけが残る世界で、森崎が静かに集中を高めていく。 光が、見えた気がした。 その光に向かって手を伸ばそうとした森崎が、 『この……ばかちんがぁ〜っ!!』 「ぐおおっ!?」 盛大に、叩かれた。 突然の衝撃に森崎は受け身も取れず、前のめりに転がる。
[298]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:46:21 ID:??? 「……そんなに驚かれるとは思わなかったわぁ。ごめんなさいねン」 色も音も戻った世界で、女が眦の下がった目を丸くして森崎を見下ろしていた。 「……転んだだけだぜ。で、俺に何か用かい、お嬢さん」 『倒れたままカッコつけようとしても無駄だと思うよ』 じとりとした半目で腕を組んだまま、ピコが言う。 思わずそちらを睨んでしまう森崎だったが、女は意に介した風もなく口を開いた。 「お兄さン、この辺じゃすごぉく珍しいカッコ、してるわねぇ。 私、断然お兄さンに興味持っちゃったのよン」 ねっとりと絡みつくような声音は森崎の耳朶に蠱惑的な響きと熱とを残して溶ける。 その言葉に、森崎がガバリと顔を上げた。 「俺に、興味? ……フフ、フハハ! どうだ! 俺のセンス、見てるヤツはいるってことだ! ロムロ坂、恐るるに足らずだぜ!」 『……センスって、きったないだけじゃない』 ぽつりと悪態をつくピコ。 まるでその言葉が聞こえているかのように、女が微笑んで、言った。 「センス? 何を言ってるのン」 「……え?」 大輪の花が開いたような、甘い魅惑に満ちた笑み。 唇の間から、白い歯が覗いた。
[299]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:47:23 ID:??? 「私が興味あるのは、この街をそンなカッコで歩けるお兄さンの度胸よン。 アナタ、磨き甲斐ありそうだわぁ。私の服で、変身させてあ・げ・る」 「……なにィ!?」 尻餅をついたままの森崎が見上げる先。 女の背後には、陽に映える白い看板に銀細工の文字が輝いている。 『サロン ノエル・アシェッタ』。 それが彼女の店の名であり、ブランド名であり、そして彼女自身の名でもあった。 ***
[300]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:48:42 ID:??? 「……で、俺にこの中から選べってのか」 「そうよン。まずはアナタがいまどこまでやれるのか、試させてもらうわぁ」 麝香の香り漂う室内に、声が響いた。 できる限り外の光を取り込まぬよう工夫された飾り窓の薄明かりが、店内を淡い色調で満たしている。 外界と切り離されたような静かな空間にいるのはノエルと森崎、そしてピコだけであった。 色彩もデザインもまったく統一感のない、かろうじて衣服というカテゴリだけで括ることのできる 生地たちが所狭しと吊り下げられている中、ノエルが森崎の前に並べたのは三種類の服である。 「……これは分かるぜ。ごく普通だ。仕立ても丁寧で悪くねえし、外に出てもまあ恥ずかしくはねえ」 言って森崎が指さしたのは、真ん中に置かれた一群である。 綿の開襟シャツに無地のスラックス。 風合いにも変わった点はない。 森崎がこの店に入って最初に注文した下着もこざっぱりとしたものが用意されている。 「が、こいつは何だ。服か。本当に」 「私としては、そっちがオススメなのよン。……ちょっと初心者にはキツいのが玉に瑕だけどねぇ」 右側に置かれた一群を指さした森崎に、ノエルが平然と答える。 『……ピエロみたいだね』 ぼそりと漏らしたピコがちょこんと座るその布地は、言葉通りサーカスの道化がその身に纏うような、 過剰なまでのフリルやレースに溢れたものであった。 薄暗い店内でもはっきりとわかるような極彩色をふんだんに使ったその珍妙な装束は上着とズボン、 更には帽子と靴までがどうやら一体化されているようで、蝉が脱皮する様を逆回しにするように 背中から体を入れ、丸く開いた穴から顔だけを出すらしい。
[301]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:49:48 ID:??? 「……頭痛くなってきたんだが、一応最後まで聞くぜ。……こっちのは、本当にこれだけなんだな」 「勿論よン」 最後に、左側に置かれたそれを目線だけで示した森崎に、ノエルが魅惑の微笑を浮かべながら言う。 「これはこういうものよン。シルクロードの向こうからやってきた東洋の神秘よン」 「よーく知ってるぜ。……ただし、俺らはそのシンピとやらをこう呼んでたがな―――」 置かれた白く長い布切れを、森崎が掴むや叫ぶ。 「フンドシだろ、これ! 確かに下着だけどよ! 俺、ずっと着けてたけどよ!? どうしろってんだよ、これだけで!」 「注目、集まるわよン」 「そりゃそうだろうよ!」 ほとんど怒鳴りつけるような森崎の声にも、ノエルは動じない。 とろんとした蕩けるような瞳で森崎の目を見ると言ったものである。 「オリエンタルモード、来ちゃうかもしれないわよン? そうなったらアナタ、間違いなくファッションリーダーとして注目の的になれるわン」 「その前にお縄になるわ!」 力いっぱいに褌を握り締めて言う森崎の鼻先に、つい、と白魚のような指がつきつけられる。 「選ぶのは、アナタ。磨くのは、私」 ふっくらとした唇から声とともに漏れた吐息の震えが、薄暗い店内の大気を揺らして 森崎の耳に、或いは鼻孔に、そして舌の上に伝わる。 「リスクとリターンは仲の良い姉妹だわン。どちらかだけを連れ出すことはできないのよン。 私は、アナタというリスクに賭けたのよン。アナタがどの道を選んでも、私の張りは変わらない。 ……それでアナタは、どうするのン?」
[302]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:50:50 ID:aX5l3GLw *選択 A チャレンジ! アバンギャルド! B 無難! 初心者向け! C 漢! 褌一丁! (必要CP:1) ※森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。 その際【選択理由】を【森崎の視点から】必ず付記していただくようお願いいたします。 期限は『6/12 21:00』です。 *** といったところで、本日の更新はこれまでとさせていただきます。 夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。 それではまた、次回更新にて。
[303]雑魚モブ ◆.xniaLTHMk :2012/06/12(火) 06:47:41 ID:vU9c71/U B Aの服は相手によって不快感を与える恐れがあるから また、流行の服などは流行が過ぎるとただの変な服になってしまうから。
[304]聴衆 ◆0Sa9mRG4IM :2012/06/12(火) 13:53:14 ID:??? A 森崎なら奇抜なものを好むも一興
[305]傍観者 ◆YtAW.M29KM :2012/06/12(火) 14:51:40 ID:??? B 戦場で手柄を誇示するためならド派手な服もいいかもしれないけど、 このスレの森崎は(というか森崎は基本的に)派手なカッコでいつもいられるほど肝は太くないでしょ。 そのへん、彼の神経は基本的にマトモだよ。
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0ch BBS 2007-01-24