※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】
[306]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:12:53 ID:??? エクセレント! この最終ターン、神がかった引きでポイントを使わず 自軍を勝利に導いて下さった>>286,289,291,294,299,305の皆様に それぞれCP1を進呈いたします! *** *強制イベント (敵本隊壊滅) 「―――ヤング! ヤング・マジョラム!」 荒野を駆ける、敗軍の将がいる。 手勢のすべてを喪い、己自身も無数の手傷を負いながらしかし、追いすがる兵の悉くを斬り捨てて ただ一騎、因縁浅からぬ男の名を呼ぶその将を、セイル・ネクセラリア。 人は彼を『疾風』と呼んだ。 「ヤング……!」 その二つ名の通りに疾風の如く戦場を駆けるネクセラリアが叫ぶ、その行く手に一人の男がいる。 その鉄鎧は返り血にまみれて赤黒い斑模様に塗り替えられ、髪は乱れ顔は泥と垢とで汚れきり、 しかし、見紛うはずもない。 求めた、敵である。 「……久しぶりだなセイル。どうした、虫の居所が悪いのか?」 迎えるヤングはしかし、口の端を上げて笑みさえを浮かべてみせる。 その余裕に、ネクセラリアが激昂の度合いを増す。 「ヤング! 貴様はどこまで俺を虚仮にする……!」 ぎり、と手綱を引き絞れば駿馬が応えて地を駆ける。 巨躯が、優美に跳ねた。
[307]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:13:54 ID:??? 「我こそはヴァルファバラハリアン第三大隊長、セイル・ネクセラリア! 敵将に一騎討ちを所望する!」 叫ぶや、大槍を翳して突っ込むネクセラリア。 ヤングはそれを正面から見据え、 「応!! 我はドルファン王国陸軍、外国人傭兵大隊長ヤング・マジョラム! その申し出、受けようぞ!!」 大音声をもって、応えた。 腰の剣はいまだ抜き放たれてすらいない。 「いい度胸だ、ヤング!」 奔るのは茜色の弧である。 夕陽に照らされた、ネクセラリアの槍であった。 風を巻いた刃が、ヤングの騎乗する馬を捉える。 重く濡れた音と、掠れた嘶き。 槍の穂先が、馬の首筋を切り裂いたのである。 否。嘶きは、二つ。 「なにィ……!?」 驚く間もあらばこそ、鐙から足を抜き、鞍上から飛び降りるネクセラリア。 ずうん、と。倒れて足掻くのは、二頭の馬であった。 地響きを立てる愛馬を見やれば、その目に深々と短刀が突き刺さっている。 ヤングの、投擲したものであった。
[308]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:15:06 ID:??? 「……やってくれるな、ヤング」 「教導官暮らしで衰えていると思ったか?」 「ハンガリアの狼とまで呼ばれたお前が、ドルファンでヒヨコの世話か……見るに堪えん。 それ以上の生き恥、晒さずに済むようにしてやろう」 「育てるのが鷹の雛なら、その名にも恥じないさ」 言ったヤングが、剣を構える。 ブロードソードとしては刃渡りや柄の長い、片刃の直剣である。 盾を持たぬ軽装は欧州一般のそれとは距離を置くものであったが、しかし下段の構えに隙はない。 迂闊に踏み込めば一刀のもとに斬り捨てんとする威圧感が、その全身に満ちていた。 「ヴァルファの『疾風』の名を耳にしたときは驚いたぞ、セイル。お前らしいとも思ったがな」 「あの下らない革命の後、俺は再びいくさに身を投じた。それだけだ。 ……そして貴様は、ドルファンという安寧に逃げた!」 吐き棄てるようなネクセラリアの言葉に、ヤングが苦笑する。 「逃げたのはお前だろう、セイル。確かに革命の後に残ったのは下らない鞘当てと醜い利権争いさ。 俺たちが命を懸けて得たのは結局、密告で地位を奪い賄賂で家を買うような日常だ。 だから……お前はそれに耐えられなかった」 「……! 違う!」 ネクセラリアが、槍を振りかざして間を詰める。 「俺はクレアを護ったのだ! あいつの父親はボルキア人だった! だから!」 「腐れ豚の大佐殿がクレアを所望した、ボルキア人は革命で奴隷同然にまで落ちたからな」 「豚は言った―――支配層だったボルキア女を犯す度に革命が実感できる、とな!」 「それで斬ったか!」
[309]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:16:07 ID:??? 振り下ろされる穂先に退くことなく、ヤングがその縦の軌道から半身を逸らしつつ一歩。 下がれば二の槍三の槍が襲う、そのことをヤングは熟知している。 間合いが、槍から剣のそれにまで縮まった。 「斬って悪いか!」 「逃げていれば世話はない! 残されたクレアがどれほど悲しむか、考えもせずに!」 下段から斬り上げるヤングの剣を、しかしネクセラリアが石突で右へと弾く。 そのまま左の肘を支点として逆回しに回転した槍の柄が、ヤングの頭上へと迫る。 すんでのところで上体を反らしたヤングがバックステップ。 二歩を飛び退いて、しかしそこは槍の間合いである。 「ならば貴様はクレアを豚の慰み者に差し出せばよかったというのか!」 「護るということの意味を考えたのかと言っている!」 「貴様にはそれができたというのか!」 電光石火の突きを弾いて一度、踏み込もうとしたヤングの足元が薙ぎ払われる。 重心移動の瞬間を狙われ、下がるのが遅れた。 辛うじて届いた剣先が槍の軌道を僅かに変え、脛を断ち割ろうとしていた刃は ヤングの膝下を浅く裂くに留まった。 槍の伸びきるのを感じたヤングが、鮮血を噴く足を強引に踏み出す。 右の半身を前に、跳ね上げるような片手の払い。 体重を乗せず遠心力と剣の重量だけで斬撃する、奇策であった。 しかし、浅い。 下がろうとしていたところからの踏み出しは、ほんの拳半個、遠かった。 縦に半円を描くような軌道の剣は、ネクセラリアの顔に届かず、その長い前髪を幾房か切り飛ばすだけである。 そのまま踏み込み、体を入れ替える。 交錯の刹那、柄での打撃は空振り。 互いに三歩を駆け抜けて、振り返る。
[310]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:20:36 ID:??? 「できたさ……今、クレアを護っているのは、俺だ」 「なにィ……!?」 「今のクレアは俺の妻だ。いつまで恋人気取りでいる」 「フン……風の噂には聞いていたが、横恋慕を実らせて満足か? それが貴様の言う、護るということか!」 構えは互いに正眼。 じり、と摺り足が左右に、そして前後に滑り、間合いを僅かずつ変えていく。 ヤングが右に指一本を動けば、ネクセラリアは前に小石ひとつ分。 応じてヤングは剣先を指の腹一つ上へ。ネクセラリアが、元の位置にまで下がる。 息の詰まるような、駆け引きであった。 「―――人を斬って姿を消せば、それで何もかもが解決するとでも思ったか。 お前は何もわかっちゃいない……残された者の苦しみも、悲しみもな」 呟くような声音には、襞がある。 積み重なった時という、襞であった。 「知った風な口をきくなよ、ヤング」 「言ったろう、今の俺は教導官でな。ガキを見れば説教の一つもしたくなる」 「老いを誇るか、いくさ場で……!」 それきり、互いが口を噤んだ。 「……」 「……」 きいん、と。 周囲の音が消えていく。 一撃必殺の気構えが、互いの内側を満たし、溢れ、辺りを染め上げているかのようだった。 張り詰めた静寂が、その頂点に達した瞬間。
[311]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:21:41 ID:??? 「―――」 光と光が、交わった。 剣閃が華を咲かせる。 血飛沫という、魅惑の華だ。 「ぐ、ぅ……!」 華はネクセラリアの鎧の隙間、肘や、腿や、或いは腹から咲き乱れて真紅の鎧を更に赤く染め、 そして、 「……か、はっ……」 最も大輪の華は、ヤングの胸から、咲いていた。 鉄の甲冑の継ぎ目を正確に貫き通したその槍が、静かに引き抜かれる。 「……さらばだ、ヤング」 体中の傷、とりわけ腹を割いた深い裂傷からぼたぼたと鮮血を流しながら、細く長い息をついた ネクセラリアの前、ぐらり、と傾いで。 「―――」 ヤング・マジョラムが、斃れた。 ***
[312]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:22:48 ID:??? 「モリサキ! モリサキ、いるか!?」 その一団が駆け込んできたのは、森崎隊が次の攻撃に備えて準備を整えようとしていた頃のことである。 「どうした……って、トニーニョ!? お前、どうしてここに……!? それに、その傷……」 出てくるなり森崎が目を見開く。 傷ついた一団、傭兵たちの先頭に立っていたのはトニーニョである。 そこかしこに巻かれた汚れ布に滲む血は激戦を潜り抜けてきたことを示していたが、 しかし息せき切って走ってきた、その五体に深刻なダメージはないようだった。 「俺のことはいい、それより……!」 荒い呼吸の中、トニーニョが告げた、その内容に一同が絶句する。 「嘘……だろ? ヤングのおっさんが……死ん、だ……?」 「敵の軍勢はあらかた仕留めたが……敵将だけが、止められなかった」 「くっ……!」 その死に衝撃を受ける間など、ありはしなかった。 情報は瞬時に伝わり、全軍に計り知れない動揺をもたらすだろう。 てんでに潰走を始めれば、それこそ取り返しのつかない損害を被ることにもなりかねなかった。 「……わかった。残ってるのは一人だな。トニーニョ、お前はとにかく隊の連中を取りまとめて、」 言いかけた、ときである。 「―――ヤング・マジョラムの子らよ、聞け!!」 戦場に、その声が響き渡った。
[313]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:23:49 ID:??? *** 「―――ヤング・マジョラムの子らよ、聞け!!」 その声は朗々と響き渡り、いくさ場を駆け抜ける。 「我が名はヴァルファバラハリアン八騎将が一、『疾風』のネクセラリア! 貴様らが将、ヤング・マジョラムは我が槍で討ち取ったり! 誰ぞ、仇を討つ気概のある者はおらぬのか! 我はいつでも受けて立つぞ!!」 それはいくさの昂揚に任せた挑発であり、あるいは誰も名乗り出てはこまいという侮蔑であり、 そしてまた、散った勇士への手向けでもあった。 「ヤング……貴様の置き土産、見せてもらうぞ」 呟いたその口元から、つぅ、と血が垂れる。 口腔が切れているものではない。 赤黒い血は、喉の奥から溢れてくるのであった。 周囲には百を超える敵兵、救援など望むべくもなく、愛馬は傍らに事切れている。 腹の傷は臓腑を抉り、既に助からぬことは自分自身がよくわかっていた。 それでも、ネクセラリアは雛鳥の囀りを待つ。 ***
[314]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:25:06 ID:ab6Q1276 *** 「……」 森崎は、じっとその声の主の方を見やっている。 「……モリサキ。俺は、お前に任せる」 トニーニョが、拳を握って森崎の胸鎧を叩きながら言う。 その様子に何を感じ取ったか、慌てたようにネイが口を開いた。 「お、おい。やめとけよ、モリサキ。あのヤング隊長でも勝てなかったんだぞ」 「まあね〜。隊長がこんなことになって、君までやられたら、僕らはオシマイだからね〜。 そこんとこ、よく考えてほしいかな〜」 仲間たちの口々に言う声を、聞いているのか、いないのか。 しばしの黙考の後に開かれた、その口から出たのは――― *選択 A「……行ってくるぜ」 一騎討ちに臨む。 B「……後退するぞ」 一騎討ちを回避する。 森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。 その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。 期限は『8/19 12:00』です。 ***
[315]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/18(土) 01:26:46 ID:??? ****** この後は個人戦闘、それを飛ばせば戦後処理、といったところで 本日の更新はこれまでとさせていただきます。 夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。 それではまた、次回更新にて。
前
次
写
0ch BBS 2007-01-24