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【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】
[396]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:26:46 ID:??? >>392 ネームドキャラについては順次追加していく予定ですが、ご贔屓キャラがいた場合は 万が一の事態に備えてある程度ポイントに余裕をもたせるのも一手ですね。 >>393 はい、入院してしまうとかなり厳しいです。 翌月訓練が休憩に固定されるためガッツは強制的に200回復しますが、 様々なデメリットがありますので、できる限り避けてくださいね。 >>394 ちなみに今回、もし戦況が悪い状態(ヤングの判定失敗/全滅)でイベントが発生した場合は ネクセラリアのパラメータダウンは50%となっていました。 つまり、今回実際に戦った数値が1.25倍になる計算ですね。 7月訓練時に残りガッツが100前後だとちょっと怖いかな、と言った意味がわかっていただける…かも?w
[397]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:28:20 ID:??? *** 「よっ、モリサキ! 傷の具合はどうだ?」 「ネイか。……先生の話じゃ、明日には出られるってよ」 質素な病室の静寂を破った褐色の肌の優男に、森崎が笑みを向ける。 腰掛けるのは木組みの粗末なベッドではあったが、シーツは虫も湧いていない清潔なものだった。 ドルファン王立病院。 世界に冠たる文化先進国スィーズランドの様式を模して設立された、学園と並ぶドルファン文化の粋である。 この病院の存在こそが、ドルファンをして南欧随一の医療技術を維持させている。 「傷も……ほれ。もう薄皮が張ってるんだぜ」 「うわ! 男の胸なんざ見たくねえって! しまえ、しまえ!」 上着をめくり上げてみせた森崎に、ネイが顔を顰めて手を振る。 森崎の胸、既に包帯も取れた傷痕には確かに桃色の薄皮が張っていたが、しかし真一文字に刻まれた痕は どこまでも深く、それが消えることは生涯なかろうと思わせた。 「トニーニョはどうしてる?」 「ああ、もうすっかりいつも通りだぜ。俺たちにも鍛錬しろって喧しいくらいだ」 「そうか。あいつらしいな」 仏頂面の友人は、森崎に先がけて日常に復帰している。 それを聞いて安堵した森崎が、低い天井を仰いだ。 「……もう、一週間か」 「あー……」
[398]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:32:41 ID:??? 言われ、ネイもまた小さく息をついて窓を見やる。 開け放たれた窓の外には夏空が広がっていた。 「……生きてる、なあ」 「生きてるな。酒も美味い。女の子も可愛い。生きてるぜ、俺」 そう言ったネイの長く伸ばした前髪を、微かにそよぐ風が揺らす。 ニヤリと笑って、森崎が言った。 「俺のおかげだぜ。感謝しろよ」 「しょってらあ。その分隊長サマが病院送りになってりゃ世話ないぜ」 軽い冗談を交わし合って、笑う。 「―――生きてんなあ、ちくしょう」 六十一人と、一人。 死者の名は、出さない。 降りた静寂を、窓の外から聞こえてくる蝉の声が埋める。 欧州でこれほど蝉が鳴くのは南欧マルタギニア海の沿岸くらいだという。 蝉しぐれ、とでもいうような鳴き声の波に、ぼんやりと思い起こされるのは 遥か遠い故郷の光景だっただろうか。 「……そうだ。可愛い女の子といえば、モリサキ」 「あァ? 何が、といえば、だ」 沈黙を無理に破るように唐突に話題を変えたネイに、森崎が片眉を上げる。 「いや……ここんとこ、お前のこと、よく聞かれるんだよ。 ヴァルファをやっつけた東洋人ってどんな人? カッコいい? ……ってさ」 「へぇ。それで、何て?」
[399]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:33:49 ID:??? 大袈裟に肩をすくめてみせるネイに、森崎が尋ねる。 ネイはといえばおどけた様子で、 「ま、俺の半分……いや足元くらいにはイイ男かな、って伝えてるぜ。ちゃんと」 「こいつ!」 森崎の振り上げた拳から逃れるように、ネイが笑って飛び退く。 「ハハッ、すっかり『話題の人』ってわけだ。明日っからは町中でおちおち小便もできないぜ」 「しねえよ! ……いや、そうでもねえか……」 「へべれけでぶっ倒れたりとか、四股かけて怒り狂ったコたちに追っかけ回されたりもな」 「全部お前のことじゃねえか!」 「いやいや、俺は四股程度で下手はこかないぜ」 「自慢顔で言うな……」 呆れ顔で言った森崎に軽く手を振って、踵を返したネイが言葉だけを続ける。 「ま、そんな面白おかしい毎日を送れるのも、無事に生き延びたからってワケだ。 戦場じゃ色々言っちまったが……これからもその調子で頼むぜ、『隊長』!」 「おう、……ん?」 病室から出ていくネイの背を見送りながら、森崎が違和感に首を捻る。 「あいつ……今、何て言った?」 ******
[400]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:34:56 ID:??? ****** ※称号が『ウワサの人』になりました。 スキル『准騎士候補』を獲得しました。 種別:パッシブ 消費ガッツ:- 効果:全ヒロインの好感度が一段階アップする。 ****** ※称号が『話題の人』になりました。 スキル『青騎士候補』を獲得しました。 種別:パッシブ 消費ガッツ:- 効果:全ヒロインの好感度が一段階アップする。特殊なイベント以外でもドルファン城に入城できる。 ****** 『イリハ会戦』(了) .
[401]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:36:03 ID:??? *D26.8月 フレーバーテキスト ◎イリハの傷 「ヴァルファ、シンラギ対陣続く……か」 『こんなこと言う日が来るとは思わなかったけど……シンラギ様々、だねえ』 ふわふわと飛ぶピコの言葉に、森崎が新聞から顔を上げて大きく伸びをする。 戦場で負った傷はすっかり癒えていたが、鈍った身体はまだ戻りきっていなかった。 「シンラギなんぞに救けられるたあ……ケッ、情けなくて涙も出ねえや」 『上海でもカフカスでも散々やられたからね』 「うるせえよ! ラダックじゃあ勝っただろうが!」 『南葛では戦うこともできなかったくせに』 「……」 『……ごめん』 シンラギ、正式な名称をシンラギククルフォンというその組織は、東洋圏に拠点を置く軍事結社である。 ちなみにククルフォンとはウズベク地方に伝わる猿の妖怪を指す。 軍事活動部門を右陣、テロ活動を行う部門を左陣、政治活動部門を本陣と呼び習わし、 右陣では紅東軍団、紫南軍団などが東洋圏の大きな戦役で勇名を轟かせている。 流浪の傭兵たる森崎もまた、何度も苦渋を飲まされた相手であった。 今回プロキアに雇用されたのはその右陣、紫南軍団と呼ばれる一団である。 「……ま、実際イリハはひでえ負け戦だったからな。連中がテラ北河を渡ろうとしてなけりゃ ヴァルファは取って返したりしなかったし、そうなりゃ追い討ちで俺らは間違いなく全滅してた」
[402]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:37:04 ID:??? 森崎たち外国人傭兵大隊の活躍によりヴァルファ第三大隊を壊滅に追い込んだ ドルファン軍右翼であったが、戦線を押し込むことはできなかった。 辛勝を収めた傭兵大隊には追撃の余力は残されていなかった上に、後詰の第三、第五大隊は とうとう右翼に投入されることはなかったのである。 原因は、左翼である。 森崎たちの至近、即ちドルファン軍右翼に現れた大軍、トロサ騎士団。 彼らが本来担当していたのが、左翼であった。 「まさか担当正面をまるっきり放棄して転進してるなんざ、思わねえだろ普通……」 『あのまま街道通って帰っちゃったんだっけ、あの人たち』 「ああ……地元まで引き返して、『将帥の負傷により』だか何だかって言い訳の書面寄越したらしいぜ」 『何しに来たんだろうね……』 「さあな。おそろしく強かったのはこの目で見たが……何がしたかったのかは、正直さっぱりだ」 大穴の開いた左翼から雪崩込んだ敵軍により、ドルファン本隊である中央、第二大隊は 側面からの攻撃に対応しきれず、半包囲の窮地に陥った。 慌てて投入された後詰の軍勢では、一度傾いた形勢を覆すには至らない。 ほとんど総崩れとなった本隊は多数の死傷者を出しながら右翼の残存部隊とともに交通の要衝、 中部ウエールの北まで撤退を余儀なくされる。 迫るヴァルファの第二、第五大隊の勢いにウエールの陥落すら時間の問題と思われたとき、 もたらされたのは北部国境戦線の一報である。 シンラギ・プロキアの混成軍が、ヴァルファ本隊を迂回して国境であるテラ北河の渡河を企図し、 大規模に展開しているというものであった。 南北の二正面に兵力の大半を割いているヴァルファとしては、拠点である都市ダナンへの強襲は 絶対に避けねばならぬ事態である。 かくしてヴァルファの侵攻部隊は転進、ドルファン側は残存兵力の全滅とウエールの陥落を 辛くも免れたのだったが、局地戦での勝利を無に帰す、事実上の大敗であった。
[403]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:38:12 ID:??? 「今、こうして生きてんのもシンラギと……あとはまあ、ヤングのおっさんのおかげ、ってか。 あのとき向こうの傷が開いて槍が滑らなけりゃ、真っ二つになってたのは俺の方だったろうからな」 『……』 武骨にして口の悪かったハンガリア人の顔を思い出したのか、ピコが眉尻を下げて黙りこむ。 と、湿度の高い沈黙が降りかけた部屋の空気を吹き飛ばすように、森崎が笑ってみせた。 「暗い顔すんな! 俺たちゃ切った張ったで飯食ってんだ、おっさんや他のくたばった連中と 俺らの違いなんざ、昨日死んだか明日死ぬかって程度のもんよ。 んなこたあ、初陣の前に女奢られて腰振ってるヒヨっ子だって弁えてるぜ」 『うん……そうだね』 「しっかし、情けねえのは騎士団の連中だ」 うっすらと浮かんだ涙をこしこしと手の甲で擦るピコの頭をひと撫でして、森崎が話の向きを変える。 「指令は聞かねえわ、陣形も戦略もなしに突っ込んじゃあ無駄に死人を出して逃げ帰るわ……。 ああクソ、敵として相手したかったぜ……馬も武具も選り取り見取り、おまけに貴族の子弟となりゃ 捕虜にして身代金も取り放題だったのによ……」 『ヴァルファは大儲けしたんだろうねえ』 潰走した第ニ大隊の生存者は半数強。 右翼でヴァルファと交戦し壊滅した第四大隊に至っては参戦した兵の七割近くが死亡するという 凡そ考えられない被害を出していたドルファン正規軍であったが、その死者の殆どは歩兵や従卒といった 平民階級の者たちである。 騎兵、即ち騎士階級とみなされる者の多くは殺害されることなく拿捕され、多額の身代金と引換に ドルファンへと帰還を遂げていた。
[404]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:39:35 ID:??? 「俺たち傭兵は片っ端からぶっ殺されちゃあ身ぐるみ剥がれて捨てられるだけ、 良くて奴隷として売っぱらわれるのが関の山だってのに、不公平な話だぜ」 『でもお金が払えなかった家の人は、捕虜にされてもやっぱり殺されちゃったんでしょ?』 「まあな……騎士とは名ばかりで、恩給暮らしをしてるような没落貴族も多いみたいだからな。 腕もねえ、カネもねえのに気合だけで戦場に出た時点で、三途の川を渡るのは決まってたようなもんだ」 『ふ〜ん……それにしてもこの戦争、これからどうなるんだろうねえ……』 ふわりと飛んだピコが、森崎の手に腰掛けて新聞を覗き込む。 「さあな……プロキアとシンラギ次第ってとこじゃねえか」 『ドルファンの騎士にも頑張ってもらわないとね』 「まあ、自由騎士どもでなけりゃ少しはマシだと思いたいぜ。 いつまでも俺らだけで孤軍奮闘ってんじゃ割りに合わねえからな……」 言って窓の外を見る森崎。 夏の陽射しは朝から真白く街を照らしている。 「さ……今日は、葬式だ」 首都城塞を覆う熱波は、収まる気配もない。 ******
[405]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/08/28(火) 00:40:36 ID:??? *D26.8 「気のいい話題の人」森崎有三 訓練所イベント ****** 葬送の列は長く、足取りは重い。 幾十もの棺を担ぐ二百余の男たちが纏うのは例外なく黒衣である。 「……」 無言のまま歩む黒衣が担ぐ棺には、実のところ遺骸など入っていない。 撤退に撤退を重ねた負け戦に、戦死した者たちを後送する余裕などありはしなかった。 そしてまた、真夏のことである。 生き延びた者たちが再び戦場跡に赴いたとき、形を保っている骸などあるはずもない。 そもそもが鎧や剣など金目の物は敵兵や賊、付近の住民によって剥ぎ取られ、残った骸は 誰彼かまわず山積みにされている状況であった。 腐り融けた肉の山を掻き出して供養する習慣は、西欧にない。 代わりに棺に入っていたのは、死者たちが生前に使っていた形見の品々だった。 それはたとえば古びた銅貨であったり、僅かに中身の残った安酒の瓶であったり、 或いは馴染みの娼婦の肌着であったりと、形見といっても宿舎住まいの傭兵の身の上、 他愛もないものばかりである。 「……」 からり、からりと。 がらんどうの棺から、他愛もない中身の転がる、他愛もない音がする。 黒衣の男たちは、無言である。 ***
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0ch BBS 2007-01-24